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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


キノコ鍋?

------<オープニング>--------------------------------------

 ある日、草間武彦の所に一通のメールが届いた。差出人は霊峰八国山という、東京都西部にある妖怪の里に住む化け猫だった。
 …あいつら、メールなんて使えるのか?
 奴らも少しは成長したのかと、草間は驚いたが、ひとまずメールに目を通す。最近、パソコンの九十九神の妖怪が山に住むようになった事が原因である事を、草間は知らなかった。
 『おい、草間。いつもお世話になってるにゃ。ありがとうにゃ。私は化け猫の如月にゃ。名乗るのは初めましてにゃ。よろしくにゃ。
  そーいえば、少し遅くなったけれど、山のキノコ畑にいっぱいキノコが生えてるにゃ。
  マツタケとかテングダケとか、見たことも無いカラフルなキノコとが、おいしそうにゃ。わーい、わーい、にゃ。
  草間にはいつもお世話になってるから、キノコ狩りに来て欲しいって長老猫の陸奥君が言ってたにゃ。
  後で鍋に入れてみんなで食べれば、わーい、わーい、にゃ。
  だから、友達も連れて来るといいにゃ。
  だるかったら来なくてもいいにゃ。どーでもいーにゃ。でも、待ってるにゃ』
 …なるほど、文面から察するに、確かに差出人は八国山の化け猫のようだ。良くわからないが、日帰りでキノコ狩り→キノコ鍋をしに来ないかという誘いなのだろう。と草間は思った。
 あの山の妖怪に関しては、いつも世話をしている事は間違い無いし、何故かマツタケが畑に生えている事も、以前に確認した事がある。
 決して、悪い誘いでは無いと思えたが…
 果たしてテングダケって食べられるキノコだったのかと、少し首を捻りながらも草間は同行者を募る事にする。

 (依頼内容)
 
 ・近所にある妖怪の里で、地元の化け猫が適当に育てたキノコが収穫期を迎えています。
 ・普通に食べられるキノコも生えているようです。
 ・誰かキノコ狩り&キノコ鍋ツアーに行ってあげて下さい。

 (本編)

 0.護堂・霜月

 キノコを狩れ。ついでに鍋に入れろ。その依頼は草間興信所から各地に伝えられたが、草間武彦には一つの疑念があった。
 テングダケって、食べられるのか?
 彼の問いに答えたのは、護堂・霜月だった。
 「テングダケと一口に言っても、意外と種類がありますからな。
  例えば、ベニテングダケは幻覚作用はありますが、20本は食べないと毒の致死量には至りませんぞ」
 なるほど。と、草間は頷く。
 「20本か…普通は、そんなに食わんよな」
 あくまでも、普通は…
 「最も、ベニテングダケは色彩に関する感覚が異常に増進されますから、サイケデリックな世界を体験する事になりますぞ」
 かつて、全国を放浪する際に各地のキノコを食べたと言う霜月の講義は、それからしばらく続いた。

 1.キノコを狩ろう(霜月、ノイエ、弧月)

 「赤ではなくて、紅ですね」
 愛車を運転しながら、呟いたのは柚品・弧月だった。考古学を専攻する大学生である。
 「紅の葉と書いて紅葉とは、よく言ったものですな」
 後部座席で頷いているのは、真言宗の僧侶、護堂・霜月である。
 「要するに、田舎ですわね」
 微妙に論点がずれた感想を述べたのは、助手席の魔女兼メンタルセラピスト、ノイエ・シュバルザークだった。
 「でも、日本の四季の綺麗さも確かですわ。都会のネオンも好きだけれど、やっぱり自然の中の方が大地の気が集まってくるから清々しいわ」
 ノイエは言葉を続ける。
 「まあ、田舎な事は確かですな…」
 紅葉の景色の先には、山が見えている。霊峰八国山だ。
 弧月と霜月、ノイエの三人は、キノコ狩り&鍋ツアーに向かう所だった。愛車で山へ向かう途中の弧月が、霜月とノイエの2人を拾った格好である。
 「そうだ、お2人とも日本の方でしたら、キノコ狩りにも詳しいかしら?
  私、ずっと不思議だったんですけど、日本のキノコって、歩き回って畑を荒らしたりするのかしら?
  山の妖怪が興信所に協力の要請までして、狩りをする位だから、大変な事なのよね?」
 ノイエはキノコ狩りを、イタチ狩りや狐狩りなどと等価の行為として考えているようだ。中世の貴族が狐狩りをしていた頃はヨーロッパに住んでいた魔女らしい発想である。
 「うむ、キノコは菌類ですから植物よりも動物に近いかもしれませんが、歩き回ったりはしませんな」
 全く動じず、解説しているのは霜月である。彼の落ち着きは人魚の肉を食した結果、ノイエよりもさらに昔から生きている僧侶の年の功かもしれない。
 「言葉のあや…ですね。
  キノコ狩りは、狐狩りやイタチ狩りよりも薬草採りに近いものですよ、ノイエさん。
  …毒キノコと食べられるキノコの線引きも、薬草採りと同様に難しいです」
 やはり、穏やかに解説しているのは弧月である。彼の場合は他の2人とは違い、見た目通りの年齢なのだが、元々落ち着いた性格なのだろう。
 日本のキノコが歩くのかと質問をする方もそうだが、全く動じずに冷静沈着に答える方も、少し普通では無かった。そんな三人は八国山へ向かっていた。
 やがて、山の麓の駐車場に車を止め、三人は山に入る。
 「長老猫に軽く挨拶をしてから、キノコ狩りといきましょうか?」
 弧月が言う。無難な流れである。
 「陸奥殿に会うのも、久しぶりですな…」
 現長老猫の化け猫とは何度か会った事がある霜月が呟いた。
 三人は、山の奥へと歩く。
 陸奥と名乗る長老猫は、山の少し奥で仲間の化け猫や妖怪達と一緒に佇んでいた。一見、ただのパソコンに見える九十九神も居た。パソコンの九十九神を山に連れてきた張本人の一人であるノイエは、九十九神と軽く挨拶を交わした。
 肝心の陸奥はと言うと、人間の少年の姿に化けていた。むしろ人の姿に化けて過ごす時間が長いとの事で、最近は学校にも通っているそうだ。
 陸奥は見かけどうりの若い化け猫だったが、語尾に『にゃ』と付けずにしゃべる事が出来る天才を買われて長老猫になったらしい。
 少し挨拶を交わした後、陸奥は言った。
 「あの、僕が長老になる前はキノコ畑は僕が管理してたんですけど、僕が長老になったんで、今は如月ちゃん達が管理してるんです。
  どういうわけか、最近は得体の知れないキノコも生えてるみたいなんで、気をつけて下さいね」
 なるほど…と、頷きながら三人は陸奥の所を離れた。
 「さてと、薬草採りみたいなものでしたら、グリーディガットが適任ですわね」
 と、使い魔…使魔を召還したのはノイエである。
 「ほう、魔女らしくて良いですな」
 現れた使魔を見て、霜月が感想を述べる。
 グリーディガッドと呼ばれた黒い獣は、ノイエに従順な様子で足元に跪いている。
 「簡単に言えば、嗅覚に優れた使魔ですわね。おいしいキノコの匂いを覚えさせれば、きっと、幾つも同じキノコを探してくれますわ。
  一を呼び水にして十を手に入れる…魔術以前の基本ですわね」
 「ふむふむ。その通りですな」
 霜月が感心している。
 「まるで、地中のトリュフを探す豚のようですね」
 弧月が言った。西洋では地中の特殊なキノコを探すのに豚を用いる事もあるという。
 「それなら、丁度いいにゃ。
  僕たちのマツタケは地面に埋まってるから、探してもらうといいにゃ」
 マツタケ畑の見張りをしながら昼寝をしていた猫が起きて、三人に言った。泥棒避けの為に、品種改良して土の中で育つようにしたそうだ。もちろん、やったのは陸奥である。
 それから、三人は地中のマツタケを探して回った。
 元々、香りと風味(だけが)取柄のマツタケである。グリーディガッドは次々にマツタケを掘り当てたが、ちょっと油断するとマツタケを丸呑みにしてしまう。
 「トリュフ探しの豚なんか、及びも付かない位に貪欲ですね…」
 「ごめんなさい、少し欲張り過ぎるみたいね…」
 ノイエは元気過ぎる使魔を制御するので忙しかった。
 そうしてマツタケを集めた一行は、その他のキノコを求めて山に入る。
 「あら…日本のキノコはカラフルですわね」
 赤、青、黄色。チューリップのように色とりどりなキノコは、毒物に詳しい魔女の知識を越えていた。
 「いやいや、これは日本の中でもかなり特殊なキノコです」
 これは珍しい、妖気を養分に育つ特殊なキノコだと霜月は言った。基本的には毒キノコなのだが…
 「あんまり、いっぱい食べない方が良さそうですわね」
 「いっぱいと言うか、一つたりとも食べない方が良い気もするんですが…」
 と、弧月はカラフルなキノコを珍しそうに眺めている。
 それから、三人+使魔は食べられるキノコを集め始めた。
 考古学の傍ら、そういった研究をした事がある弧月も他の2人同様にキノコには詳しかったので、三人は無難に食べられそうなキノコを集めた。もっともノイエは食用以外の目的で毒キノコを集めていたが…
 一方、他の参加者達も同様にキノコ狩りをしていた。
 シュライン・エマ、藤井・葛、桜木・愛華、草間・武彦のグループは、無難に無難にキノコを狩っていた。
 花房・翠、高橋・理都、斎賀・東雲の仲良し三人組+海原みなもの、仲良し三人組+1グループは、多少勝負を賭けて、ヤバ目のキノコも採っているようだった。
 そうして、キノコを採取した参加者達がキノコ鍋の会場の湖の辺に向かったのは夕方だった。

 2.キノコを鍋に入れよう。

 「皆さん、こんにちは。今日はご苦労さまです」
 と、湖の辺、キノコ鍋の現場に集まってきた一同に声をかけたのは若い化け猫だった。語尾に『にゃ』と付けずにしゃべれる陸奥という若い化け猫は、若いが長老役もやっている。
 「別に、苦労は何もしてないぞ」」
 言ったのは翠である。少々のマツタケと多量の謎のキノコを抱えている。翠と仲間の理都、東雲達とみなもの四人グループは、多少怪しげなキノコも食用にキープしていた。
 「若いうちの苦労は、面倒だからしない方がいいにゃ」
 化け猫が独自のことわざを翠に言う。湖の辺には地元の妖怪(大半は化け猫)も数十匹集まっている。化け猫達は、箸を持つために人間の姿に化けていた。
 それから、一行はそれぞれ準備を始めた。
 「やっぱり、松茸は炊き込みご飯だよな」
 「そうですね、風味だけが売りの松茸を鍋に入れるのはもったいないと思います」
 炊き込みご飯の準備をしているのは、葛と弧月である。火を焚いて、湖の霊水を調理用に煮沸消毒しながら調理の準備をしている。キノコ以外の材料は各人が用意してきたり地元にあったりして、十分にあった。
 肝心のキノコ鍋に関しては、近所の金物屋で作ってもらったステンレス製の大鍋二つ程に、主に地元の妖怪用として水が注がれている。他にも小さな鍋が用意され、それぞれ火にかけられている。
 「そっか、キノコって前は陸奥君が管理してたのね」
 「はい、長老猫になったんで、最近は如月ちゃんが管理猫ですけども。土竜ネズミ君も手伝ってくれてるみたいです」
 「管理猫っていうと、何となくカワイイですね」
 シュラインと愛華が、長老猫の陸奥と雑談しながら鍋の材料を切っている。なるほど、陸奥君がキノコの管理をやめたから、見た事も無いカラフルなキノコが生えるようになったのか。とシュラインは納得した。
 鍋の準備は進む。
 「おすそ分けにゃ。よくわかんないから、全部入れてあげるにゃ」
 「わけわからんもんを、入れるな!」
 東雲は、自分達の鍋に有り得ない食材を入れようとする化け猫と人知れず戦っている。
 そうするうちに鍋も温まり、材料を入れ始めた。
 地元妖怪用の大鍋の方は、いきなりカラフルなキノコその他が入れられて激しい事になっている。比較的静かなのは、草間達、一般参加者の鍋だった。
 「やっぱり、あんまり無茶な材料を入れちゃだめですよね…
  というわけで、はい、東雲君。あーん、して」
 理都が自分の所の鍋のキノコを摘み、東雲に食べさせようとする。
 「あーん…
  て、食えるんかい、このキノコは!」
 理都と翠の2人は、微妙なキノコは仲間の東雲に食べさせて安全を確認する作戦だった。
 「段々、騒がしくなってきましたねー…」
 持参してきた土鍋で、ひっそり材料を煮ているのは、みなもである。
 「時間の問題ですわね」
 「勝負は、最初の数分ですな」
 ノイエと霜月が頷きながら、キノコ鍋を突いている。
 「いいよ、最悪、松茸ご飯だけ食べてるから」
 「俺も、そうします…」
 葛と弧月は、平和なうちに。と、鍋に手を伸ばしている。
 「このキノコ、食べると頭も体もふらふらしてきて、マタタビみたいでサイコーにゃ!
  だから、みんなの所にも入れてあげるにゃ!」
 真っ赤なキノコの束を抱えて、数匹の化け猫がふらふらと、一般参加者達の方にやってきた。
 「キノコ、ノコノコ、ゲンキのコ〜
  みんなで向こう側に行っちゃいましょう〜」
 何となく、妖怪達の鍋を見物に行っていた愛華も一緒に帰ってきた。アルコールでも飲んだかのように、顔が赤い。人間が食べると、そういう風になってしまうらしい。
 「だから、変なもんを入れるなと言うとるがな!」
 と、東雲が静止する間もなく、赤いキノコが東雲達の鍋に入れられた。
 「うむ、マタタビダケですな。幻覚効果や酩酊効果、麻酔効果等があるらしいですぞ。体の弱い人間が食べると狂い死ぬ事もあるんで、注意が必要ですな」
 「あら、面白いですわね」
 年の功と言う訳ではなく、めずらし物好きの霜月とノイエは平然と赤いキノコを食べている。
 「GO、東雲君!」
 「お前なら、食える」
 「だから、山盛りにすな!」
 翠と理都は東雲の器に、山盛りの赤いキノコをよそった
 すでに東雲達の鍋は真っ赤に染まり、怪しい匂いも立ち込めている。
 「…とりあえず、退避しましょう」
 「そーですね」
 シュラインとみなも達はマタタビダケを一口位づつ持って、土鍋を離れた所に移した…
 「松茸ご飯て、おいしいよな」
 「全くですね」
 すでに退避済みの葛と弧月は、松茸の炊き込みご飯に手を付けていた。
 それから、普通の酒等も入ったキノコ鍋の宴は夜中まで続いたという…

 3.帰ろう(霜月、ノイエ、弧月)

 「あら、車がデコレーションされてますわね」
 翌朝、山を離れようとしたノイエが弧月の車を見て言った。
 ボンネットや窓などに、色々と落書きがしてある。ついでに赤いテープなどがかけられ、クリスマス風に飾りつけされていた。
 「なかなか洒落てますけど、これで街を走るのは少し勇気が要りますね。」
 弧月は他人事のように笑っている。
 地元の化け猫が悪戯したのだろう。
 「うむ、少々惜しいですが、人間の街を走れるように装飾を取り払いますかな」
 霜月が言った。ノイエも手伝って、三人は車の落書きと装飾品を外した。
 そうして、キノコ狩り&鍋を終えた一行は、人間の街へと帰っていった。

 (完)

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【1069 / 護堂・霜月 / 男 / 999歳 / 真言宗僧侶】
【1312 / 藤井・葛 / 女 / 22歳 / 学生】
【1252 / 海原・みなも / 女 / 13歳 / 中学生】
【1582 / 柚品・弧月 / 男 / 22歳 / 大学生】
【1848 / ノイエ・シュバルザーク / 女 / 750歳 / 魔女・兼・メンタルセラピスト】
【2219 / 斎賀・東雲 / 男 / 19歳 / 半雪男&大学生&鉄腕アルバイター】
【2155 / 桜木・愛華 / 女 / 999歳 / 高校生・ウェイトレス】
【0523 / 花房・翠 / 男 / 20歳 / フリージャーナリスト】
【0366 / 高橋・理都 / 女 / 24歳 / スチュワーデス(FA)】

 (PC名は参加順です)


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■         ライター通信          ■
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 結構おひさしぶりです、MTSです。今回はご参加ありがとうございます。
 そんなかんじのキノコ狩り&鍋だったんですが、いかがでしたでしょうか?
 おつかれさまです。また、気が向いたら遊びに来てくださいです。