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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


マンドラゴラ収穫記

0・麗香
「最近ちょっと記事がマンネリ化してるわね」と碇麗香が呟いた。
「え?そ、そうでしょうか・・?」三下忠はビクッと肩を震わせた。
「そうよ。そこでちょっと面白いものを手に入れてきたの。それを体験レポートとして雑誌に載せてみようかと思って。」
麗香が机の下から取り出した紙袋をトンと机に載せた。
「・・なんですか?これ」
「マンドラゴラの栽培セット」麗香はニコリと笑った。
「そんなものを読者に栽培させるんですか!?」
三下がそういうと「何バカな事言ってるの」と麗香が眉間にしわを寄せた。

「あなたがやるに決まってるでしょう?」

1・門屋
ここは月刊アトラス編集部・時はすでに夜である。
「すいません、わざわざお越しいただいて・・」
三下はそういうと深々と頭を下げた。
そんな三下の様子を見て「ったく、情けねぇ…そんなに死にたくねぇなら、栽培断れりゃよかったのに」と頭を抑えたのは門屋将太郎(かどやしょうたろう)である。
「まぁまぁ、それが三下君のいいところだしね?」
門屋の肩をポンと叩き、相生葵(そうじょうあおい)はそう言った。
一応褒め言葉のつもりである。
「あの、もちろん御礼はしますのでよろしくお願いします」
再び三下がが頭を下げると今度はヘルツァス・アイゼンベルグが「顔を上げたまえ」と三下に表を向かせた。
「あ・・ありが・・」
三下がそれ以上の言葉をつむぐよりも先にヘルツァスはニコリと笑って言い放つ。
「報酬はマンドラゴラでいい」
ヘルツァスの目は笑っておらず、三下は本能的にただ首を上下に動かした。
「これがマンドラゴラかぁ。なぁこれって食えるの?今夜のおかず足らねぇんだけど、貰ってっていいか?」
門屋が物珍しげにジーと見ていたかと思ったら唐突にそう聞いた。
「そうだ。三下君。ここは1つキミが最初に抜いてみてくれないかい?麗香さんにいいトコ見せるチャンスだよ?」
相生はいいことを思いついたとばかりに三下に言ってみた。
が、そういうと三下は見る見る顔が引きつっていく。
「それは・・」
そんな三下の後ろに門屋が回りこみ、息を吸い込むと「ぎゃー!」と一声。
「うわー!・・ばた。」
「・・情けねぇ」気絶した三下に門屋ははぁっと溜息をついた。
三下君は相変わらずだなぁ・・と相生も苦笑いをした。

2・ヘルツァス
「先ほどの話に戻るが、食用にするのはやめといた方がいい。一般的に知られているのは抜く時に悲鳴を上げるということだが、実は表面に毒がある。そのまま食べるのなら死ぬ覚悟が必要だ」
ヘルツァスは淡々とそういうと三下が育てたマンドラゴラを観察した。
「へぇ。キミ物知りだね」
相生が感心した。20代の若さでここまで知っているというのはよっぽど研究熱心な人間なのだろう。
「・・じゃあ手で収穫できねぇってことか?」
門屋がおかずの一件について諦めたようだが新たな問題が発生していた事に気がついた。
「まぁ、そういうことだ」
「それなら聞いた事あるよ。確か犬に抜かせるんだっけ?」
答えたヘルツァスに相生が補足を入れた。まぁ、曖昧な記憶であったが。
「昔の話だが、よく知ってるな。まぁ、ここではそういうわけにもいかないからコイツにやらせる」
ヘルツァスは小さな人形を数体取り出した。
「なんだよこれ?」
門屋が不意に突付こうとすると人形はその門屋の指に攻撃しようとした。
「うわ!なんだこれ!?」
「ミニサイズだが、正真正銘のホムンクルスだ」
「ホムンクルス!?」
「コイツらに耳栓をさせて抜かせるのが一番安全だ。私たちも耳栓をしなければならないのは当然だが」
相生と門屋が「あんた何者?」という顔でヘルツァスをを見ていたがヘルツァスはそれを無視し、手早く耳栓を人数分作る。
「あ。三下君の分も忘れないでね」
相生がニコニコと傍らでヘルツァスの行動を見ている。
この男は意外と面白そうだ。もう少し観察してみよう、と相生は思っていた。
「俺が抜いてる間に三下にはきっちりレポート書かせようと思ってたのによぅ・・」
門屋はなにやらブツブツと文句を言っている。
男3人(+気絶者1人)はなにやら異様な楽しさを醸し出していた・・。

3・相生
ようやく準備が整った。
と、相生は突然ヘルツァスに耳打ちをした。
「これってさ、抜く時にワインに浸してみたりとか甘い言葉囁いたら悲鳴上げないなんてことない?」
ヘルツァスの表情が苦虫を噛んだ様に眉間にしわを寄せ不快感をあらわにした。
「あ、やっぱ駄目?まぁ、冗談だからそんな顔しなさんな」
相生がにっこりと笑ってヘルツァスの肩を叩いた。
やっぱり思った通り、真面目なヤツらしい。
この男は本当にからかい甲斐がありそうだ。
「さっさとやろうぜ」門屋が2人に促した。
「あぁ。そうだな」
キュキュッとヘルツァスは耳栓をした。相生と門屋も耳栓をした。
と、相生は三下を指差す。三下に耳栓を忘れていた。
門屋が察して三下の耳に耳栓をした。
ヘルツァスが小さくホムンクルスに指示を出すと、ホムンクルスたちはマンドラゴラの入った容器へと駆けていく。
相生は心に秘めていたことを実行に移すときが来たのを知った。
突然マンドラゴラの容器とホムンクルスを包み込むように水の壁が出現した!
「なんだ!?」
声は聞こえずとも振り向いたヘルツァスと門屋がそう言ったのが聞こえるようだった。
にっこりと笑い相生はヒラヒラと手を振った。
門屋は呆れたような顔になり、ヘルツァスは頭を抑えた。
本当に面白い。ここまで素直に顔に表すヤツも珍しい。
門屋がヘルツァスの肩をポンポンと叩いた。
どうやらヘルツァスを気遣っているらしい。ヘルツァスは頷き、溜息をつくと水の壁の向こう側に目を凝らした。
本当にからかい甲斐のあるヤツだ・・。

4・G・ザニー
数体のホムンクルスが死んだものの、マンドラゴラは無事に収穫できた。
「先ほどの水の壁は何のつもりだ?」
耳栓を取ったヘルツァスの第一声は相生に向けられた。
「僕って心配性だからさ、できる限りの防衛策はとっておこうと思ってね」
あっけらかんと言った相生にヘルツァスはまた顔をしかめた。
「とにかく、俺たちの仕事は終わりか・・夕飯のおかずでも調達に行くかな」
門屋が話題を転換するように大きく伸びをした。
「三下君はどうするんだい?」
「そのままでいいだろう。朝になれば嫌でも目が覚める。何ならホムンクルスに起こすように命令しておけば確実だ」
ヘルツァスはそういうとホムンクルスを三下の傍らに置いた。
「では約束どおりにマンドラゴラは頂いていこう」
「2,3本は置いてってやれよ?記事が書けなくなっちまう」
「それはそうだな。ではそれ以外を頂いていこう」
「キミ・・意外と容赦ないねぇ・・」
3人は帰路に着いた。
3人が帰った後、実は1人の来客があるとも知らず・・。

5・三下
「うわーーーん!マンドラゴラがぁぁああ!!」
翌朝、相生は三下の電話口での叫び声により月刊アトラス編集部へと足を運ぶ羽目になった。
編集部には同じように三下によって呼び出されたヘルツァス、門屋も顔を揃えていた。
「一体どうしたんだい?」
「マンドラゴラがぁ・・」
三下が泣きながら指差す方向には、昨日三下の目覚まし用においていったホムンクルスの食いちぎられた死体が数体。
三下用に置いていったマンドラゴラが見当たらない。
「おかしいね。昨日僕たちは確かに三下君用にマンドラゴラを置いていったんだけど・・」
相生は訳がわからないといったように両手を天に向けた。
「お、俺は持ってってねぇぞ?な?」
門屋がブルブルと首を振り否定した。
「ホムンクルスが何者かに食われている。誰か来て持っていったと考えるのが妥当だな」
ヘルツァスはそういうと三下はごくんと唾を飲み込んだ。
「で、どうすんだよ?記事の方」
門屋が三下にいうと、三下は顔を引きつらせた。
どうやらそこまで頭が回っていなかったらしい。
「その心配はなくてよ」
声は唐突に入り口から聞こえた。
振り向くとそこには月刊アトラス編集長・碇麗香その人の姿があった。
「三下君のやることだから何かやるだろうと思って、もう1セット用意してあるの。それでもう一度育て直しなさい」
麗香はそこでいったん言葉を切ると語気を強くこう言った。
「次はないわよ?」

「みなさーーーん!お願いです。僕にもう一度力をぉぉ!」
ホムンクルスを食べ、マンドラゴラを奪ったのが誰なのか。
それは既に闇に葬られた真実。
相生は心に決めていた。
ヘルツァスが参加するのなら、面白いから次も手伝ってやってもいいと・・・。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
 1887 / ヘルツァス・アイゼンベルグ / 男 / 901 / 錬金術師・兼・医師…或いはその逆。
 1522 / 門屋・将太郎 / 男 / 28 / 臨床心理士
 1974 / G・ザニ− / 男 / 18 / 墓場をうろつくモノ・ゾンビ
 1072 / 相生・葵 / 男 / 22 / ホスト

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■         ライター通信          ■
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相生葵様
初めまして、とーいです。
この度は「マンドラゴラ収穫記」にご参加戴きありがとうございます。
マンドラゴラについてご存知だったので大変助かりました。
あと、やたらヘルツァス様に絡んでますが同性愛的なではなく、からかいの対象としてヘルツァス様が気に入ったようです。
もしお気に召さなかったら申し訳ないです。
今回は男性ばかりの参加で花がないカナとも思ったのですが、皆様それぞれが大変個性的で書いていて楽しかったです。
あと、G・ザニー様のみ別シナリオとなっており、ヘルツァス様・相生様・角屋様のシナリオでは4章のタイトルとしてのみご参加いただいております。
ミッシングリンク的な役割をG・ザニー様に担っていただきましたのでお暇があればお読みいただければと思います。
それでは、またお会いできる日を夢見て。