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メコネの籤【The Lot of Mekone】
【0】
これは、籤(くじ)だ。
君の選択が明日以降の世界の運命を決める。
目の前にはテーブルが二つ。テーブルの上には銀の小箱が1つずつ。テーブルの脇には二人のメイドが立っている。
寸分の違いもない。
ただし、片方の銀の小箱には、君らが欲しがってやまない「世界を救う鍵」がはいっている。
もう片方は空だ。なにもない。あるのは絶望だけだ。
二人のメイドは機械人形だ。同じ外見をもち、同じ服、同じ声をもつ。
ただ一つだけ、心が違う。
片方は正しいことだけを、もう片方は嘘だけを答える。
質問が許されるのは一度だけ。
さあ、君はどのようにして、どちらの箱を選ぶ?
あわてて飛びのいた。
水音がして、ただでさえ古ぼけて汚い草間興信所のじゅうたんにしみが広がる。
広がった染みから、白くはっきりと湯気が立っている。こんなのかけられたら絶対にヤケドしている。
「ああっ、ご、ごめんなさい」
零があわててあやまる。
一度や二度なら笑って済ませられるが、最近とみに異常なほど零がそそっかしい。
いや、零だけじゃない、なぜか能力者の知己がどことなく急にそそっかしくなった。
りんごの皮をむいていてナイフを落とされたり、車を借りたらブレーキが緩んでたり。
部屋に遊びにいったらなぜか床にトリモチがおちていて、ご丁寧にその上にスリッパがおいてあったりした。
(ちなみに、あれほど見事に転んだのは数年ぶりだ!)
釈然としないまま、零が割れた湯飲みを片付けるのをみていると、扉がひらいて、この興信所に厄介と飯の種をもってくる、広域犯罪捜査共助準備室の第二種特殊犯罪調査官である榊千尋があらわれた。
いつもどおり、秋の日差しのようにあたたかい笑みを浮かべていた榊だが、零と床にある湯飲みのかけらをみた瞬間、顔をこわばらせた。
そして包帯がまかれた左手を額にあてて、小さな声でつぶやいた。
どうやら、ここも感染し始めてるらしい。と。
「コンピュータウィルス?」
「そう、警察庁と総務省では"Gorgon"と呼んでます。三つのプログラムからなるウィルスでね。"Sthenno"が負荷をかけてコンピュータ機能を麻痺させ、"Eurysle"がネットワーク機能を掌握し、感染を拡大させる。そして最終段階の"Medusa"が起動すると、スクリーンセイバーが動くのですが、これをある種の人間がみたら、強い深層暗示にかかるみたいで」
「ある種……って、おい、お前が出てきたって事はまさか」
「そう、簡単にたとえるなら『異能なる同族を無意識のまま排除せよ。敵意なく偶然を装い排除せよ。特異な力もつ者達よ』ですかね?」
同族を……無意識のままに……ということは、零の、知己のあの偶然ともいえる数々の事故は……?
「まさか、お前のその手は?」
「ああ、これ?」
ひらひらと包帯が巻かれてる手を振る。
「ヤケドです。部下にコンビニのお弁当を温めてもらえるようお願いしたら、見事にお弁当とヘアスプレーを無意識に一緒に電子レンジにいれてくれましてね」
……そんなことをすれば、爆発する。
よくヤケドだけですんだものだという、こちら側の驚愕をしってか知らずか、笑顔で涼しくうけながしつつ榊は続けた。
「ウチの情報犯罪捜査担当の段道(だんどう)技術調査官がいうにはね、オリュンポス系の一部のひね曲がったハッカーが作成した代物でだっていうんです。ああ、オリュンポスっていうのはハッカーのコミューンの一つで、全員がギリシャ神話にかかわるハンドルネームを使ってハッキングしてるみたいですね。ま、コミューンといっても仲間じゃなくて中には対立も抗争もあるみたいですけど」
「それで?」
「5日前、テトラシステムの爆破事件の直後から現れたこと、それとプログラミングの癖? からテトラから盗まれたウィルスじゃないかという事と、新宿あたりがウィルスの最初の発生源らしい、とまでは突き止めたんですが。それ以降お手上げ」
なるほど。
ウィルスを盗んだ奴を探して欲しいということか。
「早くアンチウィルスのワクチンを作らないと、"Gorgon"の暗示はどんどん深刻になっていくのはわかってます、ただ、アンチウィルスを作るにはマスターファイルの情報がないと無理らしいんです。それと、テトラシステム……いえ、オリュンポス系でもかなり異能力者に対して過激な行動をとるハッカー、Fuliesの系列の者が日本に来ているという情報も得ました。盗まれたのはただのウィルスだけではないとなると、マスターの回収には危険があるかもしれません。すでに感染しているかもしれないウチの部下では何が起こるか、おこされるか予測もつかない」
言葉を切って肩をすくめると、携帯電話を取り出して画面を見せた。
「こんなものも届いていることだしね」
榊が持つ携帯電話の白い液晶ディスプレイの上には、蒼いあざやかな文字で英文が刻み込まれていた。
"Gorgon"を打ち倒す"Perseus"は"Prometeus"が知っている。――"Delphi"と。
さて、どうする?
【1】
コーヒーの湯気が、薄くなって、やがて消えた。
榊が説明する間に、すっかり冷め切ってしまったようだ。
新しく入れ直すかどうか、草間興信所の予算と今の状況を天秤にかけて思案するシュライン・エマの横で、黒月焔が携帯をいじりながらつぶやいた。
「珍しく依頼の話が二つも着たと思ったら、両方とも同じうぃるすとやらが関わってくるとはな」
「どういうこと?」
耳が聡いシュラインが聞き止めて問い返す。と、ふと我に返った様子で苦笑とも微笑とも言えない表情をうかべて焔が手を振った。
「あ、いや。なんでもない」
あわてて焔はずいぶん旧式の携帯電話をレザーパンツのポケットにしまい込む。
この時、シュラインが焔の奇妙なつぶやきを気にして問いつめていれば、この事件の展開は変わっていたかもしれないが。
未来を予知できない人間にソレをいうのは酷だというものだろう。
それに、まさか草間とまったく正反対の依頼を焔が受け取っていたなど。
そして「面白そうだから」で両方の依頼を受諾したなど、まともな考えでは推測できるわけがない。
ヘタすれば双方に対する裏切りだ。
さらに付け加えるならば「感染」した零がソファーに座る面々の上に、またまた熱湯をぶちまけようとしたのも間が悪かった。
「零ちゃん!」
「うわあ」
情けない叫びをあげて、榊が飛び退く。
さっきの焔のつぶやきもすっかりわすれ、あわててシュラインが零の手を取る。
熱湯入りやかんが、取り落とされる寸でのところで零の手からシュラインの手に渡る。
「あっぶねー」
少年らしい機敏さで榊より一瞬早くとびのいていた御崎月斗がため息をついた。
「くそっ、巫山戯たマネしやがって。絶対見つけだしてやる!」
黒い夜闇のような瞳に、あからさまないらだちを浮かばせて、月斗が吐き捨てる。
セーターの袖口から見える健康的な小麦色の手首に、白い、いや、白すぎる包帯が見えた。
朝起きてベッドから降りたら、足下にコタツのコードが罠のように張ってあり、寝ぼけたまま引っかかり、そしてバランスを崩して倒れ、手をついたまでは良かったが、体勢がわるかったのか嫌というほど手首をひねってしまったのだ。
それだけじゃない。
くるくると良く動く大きな瞳の脇、頬の上の部分にはバンソウコウがぺったり張り付いている。
ここのところ期末試験やなにやらで忙しかった自分を後目に、流行のネットワークゲームにはまっていた弟たちがあっさりとウィルスの罠にかかってしまい、結果このザマである。
今は自分だけが「罠」の対象であるが、このまま症状が進行すれば弟たちが別の誰かを傷つけてしまうかもしれない。
それだけでも恐ろしいが、傷つけた弟たちの心に、傷がつくかもしれない事がもっとおそろしい。
現に、出掛けに、なぜかいきなりとんできたカッターを避けきれず、頬に薄い傷をつくってしまったのだが、怪我をした月斗より早く、弟たちが泣き出してしまったのだ。
怪我をさせてごめん、と。
――悪意のない攻撃は、された者よりした者が深く傷つく。
指先でバンソウコウをなでて顔をしかめる。
こんな卑劣なやり方は、許せない。
「ハッカーだかなんだかしらないけど、俺は絶対ゆるさねーからな!」
足で床を蹴る。
と、その音に驚いたのか部屋の隅にひっそりとたっていた少年が肩をすくめた。
「あ、悪い」
月斗がいうと、月斗よりずっと年上の少年は柔らかな微笑を浮かべて顔を左右に振ると、銀色の瞳を半分ふせるようにして言った。
「いや、ちょっと驚いただけだから」
かすかな動きに、細い黒髪がさらりと揺れる。
「ハッカーか」
零から取り上げたやかんに入っていた熱湯を、狭い台所のシンクに捨てるシュラインの背中をみながら、鷹科碧海はつぶやいた。
(そういえば碧は千尋さんの弟さんに手を貸すことにしたとか言っていたっけ……)
『悪ィ、あお。
ちょっとアキちゃんのオシゴトのオテツダイする事になったから、晩飯一緒に喰うの無理。
だからって晩飯くわずに居ちゃダメだからな!』
携帯に文字が浮かんでる。
所々に顔文字が多様されているその文章からはそれ以上の事実も、それ以下の現実も見えてこない。
(千尋さんの弟さん……ハッカーらしいって聞いたけど)
何も起こらなければいい、と想う。
応接テーブルに、観光雑誌から切り取ったやたらカラフルな都心地図を広げながら、草間と打ち合わせしている榊に目を向ける。
時折、左手をかばうように後ろに持っていくのをみて、心の奥がかすかに痛んだ。
(また千尋さん怪我してるのか……)
最近なんだか危ない事ばかりだ。
慣れているから大丈夫、とあの人はいうけど。
確かにあの人の仕事の危険さからすれば、大したことのない怪我なのだろうけど。
それでも、だからといって痛みが消える訳じゃない。
いつも笑ってばかりで、痛みなんて感じさせない微笑みで。怪我なんかしてないような振る舞いしている。
だから、よけいに。
あの人の痛みが分からないのが「痛い」。
白いニットの胸元をつかむ。
――役に立てればいい。それができないのならせめて。
(自分に痛みがうつればいいのに)
「早く治さないと」
唐突に自分の心を読んだような声に、碧海は再び驚く。
と、シュラインが腰に手をあてて碧海の隣にたっていた。
「零ちゃんが感染してるなら、ここに来る調査員達があぶないでしょ。普通じゃないから。武彦さんも鈍いから巻き込まれるに決まってるし」
決めつけるような言い方に、思わず笑いがでる。
「そうですね」
早く、終わればいい。誰も傷つく事なく。
シュラインと碧海が同じ気持ちうなづく。と、月斗が相変わらずの元気さで、ソファーを乗り越えて草間の腕を引っ張った。
「んで、草間のおっさん、そのメッセージ見せてくれよ」
テーブルに載せられた榊の携帯を取り上げる。
「このペルセウスってのがワクチンだとしたら、案外ゴルゴンの構成を真逆にしたらワクチンが作れたりしてな」
「それ、やってみたんですけどね。ダメでした」
しょぼーん、と変な擬音をつけくわえながら榊がいう。
「プログラムの部分部分にプロテクト……ああ、保護機能がつけられてて、パスワードがないと暗号が解読できないんですよ。解読器にかけてもいいらしいんですが。推定三十四年かかるらしいんですよねぇ、解読器」
「推定三十四年もかかってたら、草間のおっさん、年金生活どころか墓に入ってるじゃん」
月斗がいう。
「失礼なガキだな、俺はまだ二十代前半だ!」
「……武彦さん」
「嘘デス、ゴメンナサイ。鯖ヲ読ミ過ギデス」
鋭いシュラインのツッコミに、ぎこちなく草間が反応する。
「ともかく新宿をさがしてみましょうか」
広げられた地図に、赤いペンでマーキングする。
かなりの広範囲だ。
「ブロック分けして手分けするしかないわね」
「っとー、俺は俺でやらせてもらうからな」
それまで黙っていた焔が言う。
「ええっ」
「住所や地名に乗ってる新宿だけが「新宿」とはかぎらんだろうが」
無造作に椅子にかけてあった、黒いロングコートを取り上げると、焔がサングラスをずらし、その向こう側から深紅の目でシュラインをみた。
「どんなに頑張っても一見さんには、入れない界隈があるって事だ。おわかりか? お嬢ちゃん」
人差し指を伸ばし、シュラインを刺す。
「格好つけないで。映画の見過ぎよ」
とがめるような台詞だが、口調はからかうように弾んでおり、蒼い瞳は信頼に満ちていた。
「じゃ、そう言う事で。俺は行く。何かあったら携帯に連絡くれ」
影のように、音もなく動くと、古びたドアをすり抜けて黒月焔は草間興信所を出ていった。
「まったく」
いたずらっ子を見る母親のような目で、シュラインは数秒焔が出ていった興信所のドアを見ていたが、気合いをいれるためか、一度手を打ちならすと手際よくブロックを分け、メンバーを分けた。
「だいたい、こんな所ですかね? 私も一度本庁にもどってから、このエリア中心に出回ってみます」
榊は言うと、同じエリア担当の月斗と碧海を呼び寄せ、必要なモノなどを話はじめた。
三人の様子を横目でみながら、シュラインは最後のエリアを赤い丸でかこみこむ。
「新宿なら、彼の方がくわしいかもしれないから、連絡しておくか」
おそらくこの草間興信所で三本の指にはいるだろう、新宿を知り尽くしている青年の顔を浮かべる。
彼なら、きっと自分たち以上の情報を手にしてくれるだろう。
その、美しすぎる顔と恐るべき話術でもって。
【1】
立ち当番の警察官が変な顔をしていた。
それもそうだろう。
警察庁の中で一番奇妙な部署と言われる「広域犯罪捜査共助準備室」の、これまた珍妙といわれる調査官である榊千尋が、小学生である月斗と高校生の碧海をつれて、ひょこひょこ大手をふって庁内に入っていくのだから。
普通、一般人はこんな所はいれないはずだけど、と想いながら、碧海はどこか見られているような肩身の狭さを感じつつ前を歩く榊についていく。
榊はそんな事これっぽっちも気にしてないのか、当たり前のように自分の部署の前にいくと、「ちょっと、忘れ物」と言うが早いか扉の奥に消えた。
しょうがなく、入り口においてあった古びたソファーに月斗と碧海はならんで座った。
「プロメテウス、か。」
少しでも考えをまとめようかと、碧海がつぶやくと、同じ気持ちだったか月斗が言葉を継いだ。
「プロメテウスって神の火を盗んだってヤツだろ。連中にとってのそうなのか、それとも別の意味があんのか」
「うーん」
携帯電話を手に、過去のメールを検索する。
「千尋さんの携帯に入っていたメール。差し出し人は確か盗んだ張本人だとか碧が言っていたっけ」
検索して、メールを表示する。
”ぜってー本人だって。間違いねーよ。じゃなきゃ誰があのアホの携帯電話に好きこのんでメール送るんだ?”
と、相変わらずな調子で送られてきていた。
「何故そんな人がウイルスを打ち倒す方法のような事を教えてくるんだろう?」
ウィルスをばらまいた、ではなく、ウィルスをばらまいて「しまった」か?
本人達がまちがって、ウィルスをばらまいた。
だけど、ウィルスをうち倒す方法はしらない。方法はしらないがヒントを知っている。なら?
一瞬、何かが、見えた、気がした。
「碧?」
もう少しで答えにたどり着きそうな気がして、目を閉じた刹那、月斗が怪訝そうにきいてきた。
「あ、弟」
「弟か。大丈夫なのか?」
言葉だけきいていれば、どっちが年上かわからない。
むしろ会話だけなら月斗の方が碧海より年上に聞こえる。
「大丈夫、だと、思う」
多分。と心の中でつぶやく。
碧のほうが、ずっと自分よりうまく立ち回るから。
そういう姿をいままでずっと見てきたから。
そっと心の中で付け加える。と、碧海の心中をしらないままに月斗が、満面の笑顔で告げた。
「そうか、それならよかった。兄として弟だけはちゃんとまもらなきゃな」
うんうん、とくりかえしながら、スニーカーのかかとで床を何度か蹴る。
小さな体。
その体で彼は多分、今までずっと何度も何度も、弟達を守ってきたのだろう。
泣きたい時も、痛い時も、それすら気にしないまま、ただひたすらに。
(だけど、俺は……)
どちらかといえば、守られてばかりだ。
「やっぱ兄として守った方がいいのかなぁ」
情けない気がしてくる。
精神的な強さも、肉体的な強さも、多分碧にはかなわない。
そんな自分に兄として守る資格があるのだろうか。
あるいは兄として何かできているのだろうか。このまま守られているだけの重荷なのだろうか。
どんどんと、思考が沈み込んでいく。
「他人がどうなろうとしったこっちゃないが、弟達にしたことの報復はきっちり取ってもらうぜ」
まるで、碧……弟みたいな事を言う子だな。と碧海は想った。
強い、うらやましい程強く、まっすぐで、まぶしい。
そういう目で月斗を見ている自分に気づき、ため息をついた。
(こんなんじゃ、ダメだ)
ふと顔を上げると、過去の事件がいくつもファイリングされた棚があった。
榊が担当した事件なのだろう、碧海が知らない事件がいくつもあり、また碧海が知ってる事件が少しだけあり、なんだかわからない……ぽんぽこ山お地蔵様殺人事件……のファイルなんかあったりした。
その中で、特に分厚い赤いファイルに目がとまった。
――レプリカント。
短く手書きされたタイトルに、心臓がかすかにいたんだ。
去年のクリスマスにおきた、事件。
(そういえばあの機械人形を作ったのは一体誰だろう)
碧も、あまり詳しくは教えてくれなかった。
確かにあのビルの向かい側にいたのは碧だったというのに。
「プロメテウスは、人を作り出した存在……単純に読めばウイルスを倒す方法を知ってるのは人を作り出した存在…というような事かな」
「人って、つくれんのか」
「機械人形、とか」
であるなら、その人とプロメテウスをかけているとは考えられないか。
「俺はさ、プロメテウスっていったらやっぱりあれだな。神様の火を盗んだ裏切り者ってやつ」
勢いをつけて立ち上がる。
「それが一番有名じゃないのか? 弟達の教科書にのってたぞ。国語だっけなー」
神の火を、与えてはならないと言われていた火を、神を裏切り人に与えた。
その罰として、岩山にくくりつけられ、臓物をついばまれる。
「裏切り、かぁ」
まとまらない思考のまま言うと、不意に頭の上から声が飛んできた。
「あら、ボク達。榊君のお手伝い?」
ボク、と言われて気に障ったのか、月斗が小動物の素早さで振り向く。
つられて碧海もふりむくと、癖の強い髪をショートカットにした女性が立っていた。
「あ、はい、ええと……たしか御統さん?」
榊が死にかけた事件で、一度顔を合わせた。
確かこの部署で一番偉い人である。
「僕はないだろ、おばさん」
「あらごめんなさいね、僕ちゃん」
けらけらと声をたてて笑われる。とてもではないが偉い人に対する口調ではない月斗の反撃を、あっさりかわすあたり、ただ者ではない。
偉い人であるところの御統綺陽子(みすまる・きょうこ)は、ひとしきり月斗をからかって笑うと、碧海の頭に軽く手をのせた。
「ま、気をつけてね。榊君になかされちゃだめよー」
「えぇ?!」
「人をいじめっ子みたいに言わないでください」
先ほどとは全く違う、スーツではない、セーターにジーンズというラフな格好で榊が現れる。
「忘れ物って、着替えかよ。まあ、背広でうろつくよりはましだけどなっ」
腕を組むと、呆れた調子で月斗がいう。
弟達が気になるのか、こんな時間すらも勿体なく感じているようだ。
「まあ、早くかたづけようぜどっちにしろ、最初の発生源が新宿って事はわかってるんだから」
「はいはい」
まるで遊園地につれていけとせがまれる父親のように、気軽に榊が答える。
「とりあえず、シュラインさんがくれた地図もってそのあたりからまわりましょう」
【3】
新宿の中心から少し離れた公園。
その中央に御崎月斗は立っていた。
踏み固められた大地はコンクリートのように固く、乾いた冬の風で砂粒と枯れ葉が巻き上げられる事をのぞけば、都会のさなかにあるとは思えないほど静かな場所だった。
それもそうだろうな、と想いつつ、背中に引っかけるようにしていたバッグから八角形の銀盤を取り出す。
「もう少し、こっちか」
手のひらの上に収まる銀盤を見る。
「九星相剋の月盤ですか」
初めてみるなぁ。と関心した調子で榊が言うのに、うなづくことで返してみせる。
北である九紫火星から順番に右周りに八つにエリアが分割してあり、二黒土星・七赤金星・六白金星・一白水星・八白土星・三碧木星・四緑木星の文字と記号が刻まれている。
基本的に隣り合う星は相生。お互いを生かし合う関係にあるが、南西にあたる八白土星だけが隣り合う星と反発する。
故に、ここを気が集う場所。総じて鬼が集う場所……鬼門というのだ。
実際に鬼がいるわけではない。
静に対して動があるように、他の七方で封じられた動の気が集い力が暴走しやすいから、人はおそれ封じている。
つまり、逆をとればその場所がもっとも呪力を高めやすい。
式神をつくるには、うってつけの場所だ。
「おし、ここだ……っと。碧海兄ちゃんは離れててくれよ。静なる和魂導く神道の奴がいたら、鬼門に集う気が流転して散っちゃうからな」
「えっ、あ、ごめん」
碧海があわてて飛び退く。と、月斗が目を見開いて少年らしい声で笑った。
「そんなにあわてなくって、いーって。一応年の為だ」
言うが早いか、正方形の白い紙を出すと筆ペンで文字を素早く書き連ね、言葉遣いとは裏腹な繊細さで紙を折り合わせ、十二種類の動物を折り上げていく。
「くびら、ばさら、めきら、あんてら……っと、おし。びからで最後だな」
折り上げた動物達を小さな手の平にのせる。
そして勢いよく息を吐き、目を閉じると、風の動きにあわせて月斗は息を吸い始めた。
それまで、点で無秩序に動いていた風が、一定の法則をもって月斗を中心にして吹きはじめる。
冬の風とも思えない緩やかさで、時折金色に光る何かを抱きながら。
月斗の呼吸が止まる。
風がとまる。
刹那。
白とも蒼ともとれないオーラが月斗の内から放たれた。
「現世に仮初の姿を与えん。式、招来っ」
一息に言う。
ふわりと、手のひらの折り紙が風に巻き上がる。
手のひらから離れるが早いか、様々な色に明滅し、ふくらみ、紙とは違う形質を身にまといはじめる。
白い毛皮持つねずみ、ぬいぐるみのような両手サイズの牛と虎。
さわってみたくなる柔らかさをもつ桜色の兎。ひょろりとした龍。
「よし、Delphiを、あるいはそれを追う者達を探してこい! 行けっ」
ばっ、と右手を振ると、十二匹の動物達が新宿の夜空に飛んでいく。
「十二神将を呼ぶほどじゃないからな。十二支の式神全員を総動員してもあらゆる情報を探ってやるさ」
ひょい、と肩をすくめて笑う。
確かに戦闘専門の神将より、小さい動物である十二支の方が調査には向いている。
「あとは、ここで待ってればいい。そんなに長い事じゃない」
銀盤を鞄にしまいこみ、公園の隅にあるベンチに座る。と、目の前に黄色と茶色の缶がそれぞれ差し出される。
「はちみつレモンとコーヒー、どっちが良いです?」
にこにこと、そこだけ春みたいな笑顔を浮かべながら榊千尋が缶を差し出す。
月斗はだまってコーヒーをあけると、両手で缶を包み込む用にして持った。
榊は礼を言われなかった事を、さして気にもせず、ポケットから緑茶の缶を取り出すと、少し離れて座っていた碧海に渡した。
「あ、なんだかデートみたいですねぇ。両手に美少年あはは」
二人の間に座りながら、榊がのほほんと笑い、はちみつレモンに口を付ける。
「てめーみたいなおっさんと、誰が好きこのんで出歩くかよ」
「じゃあ、兄貴友の会」
「なンだそれっ。なんか変態的だぞ」
さすがに兄貴友の会はない、と想ったのか、碧海も肩をふるわせて笑っている。
「いやあ、一応、ここ全員「兄」だから」
「あんたもか」
「見えないでしょ。これでも一応双子の兄。……そして不肖の弟は現在私より早くファイルを手に入れようと奮闘中」
さらりと、当たり前のように言う。
「ちょっとまて。それ、どういうことだ? まさかヘタしたらあんた弟と戦う事になるってのか?」
何かが、胸の奥でざわめいた。
「私だけじゃなくて、碧海君もでしょ」
どこか遠くを見ながら言った榊の言葉に、碧海がはじかれたように顔をあげた。
「やっぱり気づいてなかったか。うん、そうだろうなぁと想った」
相変わらずの微笑みで、言う。
理解できない、と月斗は唇を噛んだ。
それはいろんな家庭の事情があるだろう。
だけど、自分はどうなっても、どれだけ地の底の劫火に焼かれたとしても。
弟達が平穏に暮らしてくれればいい。
そう考えてる月斗には、榊は理解できない。
碧海のように、知らずそうなった、とは思えない。
そして相対することにショックを受けているという訳でもない。
大人と子供の違いかもしれないが、何か、納得できない気持ちがあった。
「榊、さんは弟さんと戦うことになるかもしれないのに、この事件担当したんですか」
かすかに唇をふるわせながら、碧海が言う。
「ああ、それは」
と、榊が目を細める。
言わない言葉の奥が、何故かわかった。
ああ、それは「仕事ですから」だ。
コーヒーのスチール缶を握りしめる。
水音がして、かすかに缶がへこんだ。
「草間のおっさんから依頼を受けたから、最後までやるけど。何かアンタの考え方理解できない」
心の奥底にたまった毒素を吐くように、息を吐き出して言い捨てる。
「まあ、普通はそうでしょうね」
笑っているような、途方にくれているような、ひどくあいまいな微笑みで榊は空になった缶を握る。
「でもね、どうにもならない事ってあるでしょう?」
あいまいな微笑のまま右の人差し指を立てると、つい、と月斗の目の前を横切らせた。
音が、消えた。
世界から色が薄らぎ、黒い、ただ黒い世界になる。
時間が進んでいるのか、とまっているのかもわからない。
不意に怖くなり、走り出した。
目的があるのかないのか、逃げているのか追いかけているのかわからなかった。
遠くから女の声が聞こえた。
それはずいぶんと長く聞いてない母親の声のようでもあり、また別の……ひどく美しい巫女の声にも聞こえた。
……せ、……と……り……せ。
かすかな声。言葉にならない声にあわせるようにひらひらと、雪ににた桜の花片が一つ、二つと闇の天上から舞い降りてくる。
――とおりゃんせ。
歌だ。
耳をふさいで月斗は走った。
聞きたくない。
だが、耳をふさいでもなお、女の声は楽しげに歌う。
――この子の七つのお祝いに。
月斗は叫んだ。
とたんに、視界すべてが桜の花びらに、その吹雪に覆われる。
吹雪はやがて赤い血の飛沫をまじえて、何かを封じるように自分の周囲を取り囲む。
子供の悲鳴。
そして。
「っっ!」
とん、と軽く額をつかれた。
瞬間、世界が色と音を取り戻した。
月斗は肺の中の二酸化炭素をすべて吐き出し、いつのまにかにじんでいた額の汗と、自分を突いた指を――榊の指先を払った。
「何、した?」
ずいぶん長かったように感じたが、缶コーヒーから上る湯気はまだ消えてはいない。
月斗の問いに、榊はかすかに目を細めると、ささやくように先ほどと同じ言葉を言った。
「どうにもならない過去って、あるでしょう?」
答えられない。
どうにもならないかもしれない。
けれど。
自分はただ。
これ以上弟たちを傷つける存在を許さない。
同じ時に生まれた三つの命。一つだって欠けることも、傷つくことも許したくない。
もう一度缶を握り締める。
「まあ、心配することはありませんよ。何ひとつね」
根拠がないのにあっさりと榊が言った。そのすぐ後だった。
「蝶」
ぽつりと碧海がつぶやいた。
銀色の視線の先をたどると、白く、優美な揚羽蝶が冬のにごった空を踊るように飛んでいた。
そしてそれを追うように飛ぶのは、月斗が放った干支の龍。
立ち上がる。と、足元にはねずみの干支が戻っていた。
手のひらに誘い、その小さい頭を指先でつつく。
キー、という小動物らしい小さく細い泣き声をあげる。
とたんに、いくつかの風景がねずみの視点で頭の奥になだれこんできた。
雑踏の足だらけの林。
自動販売機の下に落ちた硬貨の冷たい輝き。
そして。
地面にうねる黒い髪と、ゆっくりと閉じられる蒼い瞳。
ばら撒かれたメガネは確か……。
舌打ちして地面をけりつける。
「シュラインさんがヘンな占い師に捕まりやがった」
月斗の言葉に、きょとん、と榊と碧海は目を見合わせたが。
続けられた言葉に真顔になる。
「仲間の能力者の集団がきてどっかに拉致していったみたいだ。それとDelphiを追ってる奴らを見つけた。あの蝶の式つかいの所だ」
「えっ? あの式は斎さんの式じゃ」
碧海が記憶をたどりつつ言う。
「知らねぇけど。なんか黒月のおっさんまでいるらしい」
地面を蹴って月斗は走りだす。
背後で榊があきれたように「やれやれ」とジジィ臭くつぶやくのを聞き流しながら。
【4】
そこは新宿の奥深く。
人がようやくとおれるような狭い路地裏。
それはまるでビルという大樹に囲まれた森にひっそりと存在する、闇の獣道。
「ここ、か」
息をとぎれさせて月斗が言う。
微かにシュラインの痕跡を感じる。
ここから、不意にとぎれている。
「結界」
それまでビルの狭間から見える、爪の先のような細い月を見上げていた碧海がつぶやく。
「空間がゆがんでます。たった今あわてて閉じたみたいに」
呼吸を整えて目を閉じる。
視界ではなく、感覚であたりを「視」ればわかる。
細い、月の光の糸で編み上げたような繭が、空間を隔てている。
「西洋の……魔術?」
この国の神域が作るモノではない。
陰陽の術からなるものではない。
もっと計算高く、法則性のある術の破片が螺旋をえがきながらあたりの空気にうねっている。
「結界は言葉や思念を核にしてるもの……どこかに継ぎ目があるはず」
意識を集中して、肺のなかの酸素を吐き出し、碧海は柏手を打った。
刹那。
何かが光った。
柏手の音にふるえるように、周囲を覆う薄い膜が、碧海の放った神道の気に揺らいだ。
(どこだろう?)
必ずある。
結界は最初から輪として成るモノではない。
言葉の糸を、術と力の糸をつなぎ合わせてつくりあげた輪だ。
月の光が銀の瞳を冷たく静かに輝かせる。
脳裏に、あたりの景色が浮かぶ。
少しずつ時間がさかのぼる。
老婆が見えた。
そして老婆の問いに答えながら倒れるシュラインの姿が。
歪む。
シュラインをうけいれるように結界が歪み、武装した男達が乱雑に担ぎ上げてその歪みから隠された空間へと入っていく。
「え……」
「どうかしましたか?」
碧海の術を見守っていた榊が訪ねる。
「シュラインさん……その、「千尋さんと同じ声」を使ってました」
とたんに、榊がああ、とうめいた。
「以外と大胆な人だなぁ」
「どういう事だよ」
月斗が一房だけ違う、金の髪を指先に絡めつつ言う。
「今更隠してもしょうがないですがね。ファイルを盗んだテロリストが探してる「プロメテウス」はおそらく、私の双子の弟です」
「何だって?」
「人の病と同じですよ。ウィルスはワクチンがなければ不治の病です。ウィルスがひろまっているのにテトラからはワクチンが出ない。ということは放っておけばウィルスは蔓延します」
理解、した。
おそらく、テロリスト達にも被害が出るだろう。
それを止めるにはワクチンが、それを作れる人間が必要だ。
直せない病魔は、兵器にならない。
ただ人を滅ぼすだけ。
「ウイルスをばら撒きながら倒し方を知っている人を教えている犯人……矛盾しているようだけど、本当は被害を最小限で抑えようとしてたと考えるなら、誤ってウィルスをばらまいて、それを倒す方法を持っていないのだとしたら、つじつまは合いますね」
「案外、それが正解じゃないかな、と私は考えてます」
碧海の推理を榊は肯定する。
「それは榊さんの声を使ったシュラインさんが拉致された事で、真実味を増す、か」
榊千尋と弟の千暁は双子だ。
ならば声もほとんど同じだっただろう。
間違われても仕方がない。
「じゃあ、アンタの携帯電話に送られたメールは」
「罠、でしょうか」
兄をおびき出す罠か、あるいは兄が弟に連絡を取ると想ったのか。
「案外警察のネットワークなんて、一部を除いてザルみたいなものです。私の行動はおおよその所で報告として本庁にあげられ、記録されていきます。それをたどって先読みすれば弟にたどり着くとでも考えたのか、それとも」
ふ、と笑う。
「まあそんな事はどうでもいいことです。私たちの仕事には関係ありません。今はシュラインさんの後を追うべきです」
「だな」
短く言うと、月斗は碧海をみた。
碧海はもう一度周囲を探ると、シュラインが消えた場所を確認する。
そこに、小さな硝子のような破片が落ちていた。
「水晶、かな」
迂闊に触れないように、周囲をそっと両手で囲む。
と、微かに声が聞こえた。
――目の前にはテーブルが二つ。
テーブルの上には銀の小箱が1つずつ。テーブルの脇には二人のメイドが立っている。
寸分の違いもない。
ただし、片方の銀の小箱には、君らが欲しがってやまない「世界を救う鍵」がはいっている。
もう片方は空だ。なにもない。あるのは絶望だけだ。
二人のメイドは機械人形だ。同じ外見をもち、同じ服、同じ声をもつ。
ただ一つだけ、心が違う。
片方は正しいことだけを、もう片方は嘘だけを答える。
質問が許されるのは一度だけ。
さあ、君はどのようにして、どちらの箱を選ぶ?
どちらを?
もし、どちらかをゆびさして「この中に正しい鍵が入っているか」と聞いても無駄だ。
空の方を指さしていた場合、天使は「いいえ」で悪魔は「はい」。
正しい方を指さしていた場合、天使は「はい」で悪魔は「いいえ」だ。
どちらも「はい」と「いいえ」の二つの答えで識別はできない。
ならば。
(この箱は正しい箱かと質問したら、あなたはハイと答えますか)
あるいは。
「もう一人のヤツはどっちが世界を救う鍵が入ってる箱と答えるか?」
碧海が考えた二つ目の正しい答えを、月斗が口にした。
「正解」
榊がつぶやく。
そうだ。
正しい箱かと質問して、本当に正しい箱なら天使は「はい」と答えるから質問の答えは「はい」。
悪魔は「正しい箱」という質問で、本当に正しい箱ならば「いいえ」と答えるから、その逆であるイエス、つまりは「はい」。
空の場合は両方ともいいえと答える。
「ロジックとは珍しいですね」
関心したように榊が答える。
いくつかの事件で様々な術者を知ってる彼でも、こんなややこしい結び目はお目にかからないらしい。
「ロジック?」
「ああ。言葉と図形の魔法。陣魔法ともいいますけどね。答と様式さえわかれば普通の人でも作れますよ」
いぶかしげな月斗の質問に簡潔に答える。
「もっとも円周率を42桁の3乗を、規則にのっとった呪文で解を求めるなんて、コンピュータでもつかわなきゃ無理ですけどね」
「……算数かよ」
宿題を思い出したのか、心底嫌そうな顔で月斗が告げる。
まあ、そんなところです。と軽く返して榊は碧海をみた。
「急ぎましょう。シュラインさんが、心配です……榊さんの弟さんも」
【5】
歪んだ結界から抜け出した先は、コンクリートで四方を囲まれた地下倉庫だった。
そこいら中においてある木箱には、大量のおがくずと、そして、鈍く光る鉄のかたまり……ライフルだの拳銃だの、果てにはロケット砲とおぼしきものまで詰め込まれていた。
いくつか蓋をされたままの木箱の上には真新しいディスプレイとキーボード、そしてパソコンなどがおかれており、4名ほどの男が必死でキーボードを叩き続けていた。
時折甲高い電子音がなるのは、おそらくパスワードロックを解除するのに失敗している音なのだろう。
「すごい」
ささやくように碧海がいう。
「まったく、大した情熱です」
嫌そうに言うと、榊はポケットから携帯電話を出した。おそらく応援の警察官を呼ぶつもりなのだろう。
だが、それは果たせなかった。
「おい、あれ」
月斗が顔をこわばらせて、倉庫の中央を指す。
そこには、いつもより若干着ぶくれしたシュライン・エマが、両手をガムテープでぐるぐる巻きにされたまま、頭を拳銃でつつかれながら、歩いている姿があった。
「あらら。ま、こうなるんじゃないかなと想ってたりしましたけどね」
いつも通り緊迫感のない声で榊がいう。
「いい加減姿を現したらどうかね?」
「そうします」
あっさりと、榊が答える。
結界を抜けた時点で、おそらく気づかれていたのだろう。
(何とか、しなきゃ)
碧海は想ったが、この状況ではどうにもならない。
「そちらも出てきて頂きましょうか」
容貌を年老いたものに見せている白髪をうっとおしげに振り払い、シュラインを人質にとっている男が笑った。
「Delphi」
と、榊によくにた声が響いた。
「早く出てこないと、恋人がどうなってもしらないぞ」
せかすようにデルファイと呼ばれた男が続ける。
「まさか草間さんとか……ねぇか」
月斗が苦笑する。
いくつかの足音が乱雑に響いた。
そして。
「シュラインさん?!」
聞き慣れた声……焔、悠也、碧が、異口同音に彼女の名前を呼んだ。
「ごめんねぇ。やっちゃった」
ぺろり、と舌を出して笑う。
「本当にやらかしてくれましたね。驚きです」
ひょい、と肩をすくめて榊がいう。その後にあたりに聞こえるか聞こえないかの声で「まあ、人質になって取り乱さず、冷静でいるあたりは上出来」とつぶやいた。
かき消えた榊の言葉の後に、酷く榊に酷似した声が聞こえた。
「ヒロ」
視線の向こうに、榊によくにた、だけど若干おとなびた顔立ちに肩まで伸ばした髪を持つ男がいた。
「さて、どうしたモノかな。これは。実に感動的じゃない双子の再会だな。アキさんよ」
冗談めかせて言った焔の言葉が、やけにコンクリートの壁に反響しつづけていた。
だが、当の双子同士は、視線を合わせようとはしない。
一人は悠然とその存在を無視し、もう一人は怯えるように視線を逸らして逃げた。
「まあ、一応要求をききましょうか。聞かなくてもだいたいわかるのですが」
物事には手順というのがありますからね。
悠也は言って、近くにある空き箱の端に腰かけて足を組んだ。
「デュカリオン計画を発動させるキーワードと、ワクチンの作成だ」
「予想通りですね。そんなことだろうとおもった」
榊がうなづく。
「私としてはワクチンがいただければそれでもかまわないですが」
「千尋さんっ」
「アホ榊っ、てめぇ」
鷹科兄弟がそれぞれ抗議するように叫んだ。が。
「まだ死者がでたわけじゃないですからね」
「超法規的措置というわけか。なるほどな。法を杓子定規に解釈するだけなら、六法全書もった幼稚園児にもできるからな」
司法取引をしよう、ということなのだろう。
テロリストを見逃すかわりに、シュラインとワクチンをよこせと、逆に要求しているのだ。
「なんて言うか、したたかなヤツだな。おっさん」
呆れたように月斗がいう。
彼も同じで、ワクチンが手にはいり、弟たちが元にもどればいいのだ。
今テロリストを倒す必要性はない。
「相変わらず、警察官らしくない台詞ね」
頭に銃をつきつけられているのをものともせず、いつもの調子でシュラインが皮肉をいう。
「そうでしょうか? 警察官僚らしい考えしていると想いますよ。国家としての国をどうまもるかが私には重要な事ですから」
あはは、と世間話をするように笑う。
「でも、もしそれに応じてくれないというのなら実力行使ですかねぇ」
周囲を見渡す。
倉庫にいるテロリストは二十名。
戦って勝てない数ではない。
「ここでシュラインさん尊い犠牲になってください。とかいったら私だけ悪人ですよね」
微かにうつむいて、目線だけを上げる。
勝手に、体が震えた。
月斗はふるえを止めるために両肩をだいた。
榊の緑の瞳が、冷たく、底知れない輝きに満ちていた。
悪魔より狡猾に、神よりすべてを見抜くように。
(怖い)
碧海も、また、かつての事件の時と同じ榊の眩い瞳に、胸を押さえる。
「さて、シュラインさん、最後の言葉はありますか?」
冷たい榊の瞳に、本当に見殺しにされるのではないかと、背筋が凍る。
(何、どういうつもり)
瞳で問いかける。
「最後の、言葉はありますか?」
もう一度、聞かれる。
最後の言葉?
最後の……?
はっ、と息をのんだ。
そして。
「あああああああああぁあぁぁ」
腹のそこから、力一杯叫んだ。
自分の持ちうる限りの最高の高音で。
人の聴覚限界に近い高い、高い、オクターブのかかりすぎた声で、咽が痛むまでさけんだ。
たまらず、デルファイが耳を押さえた。
「焔さん、悠也さんっ、月斗くん」
榊の真意を読んだ碧海が、気の裂帛を放ち、手近にあった木箱を飛ばして壊すと同時に叫んだ。
「承知してます」
混乱の中、短く告げると、悠也は流麗な動作で木箱をけって地面に降りると、まるで踊りに誘うように手刀を空にすべらせ、デルファイの喉元を突いて、シュラインを抱き留め保護した。
「よし、こい。伐折羅大将! 急々如律令っ」
ポケットから符と小さな木像を取り出し、月斗が呪を唱える。
と、顔を溶岩のごとくそめ、身の丈ほどある宝剣をふりかざした神将が現れる。
「いけっ」
人差し指と中指で符をはさんだまま、自分の額の真央と、敵の場所を指し示す。
残像を残しながら風のごとく間合いをつめた式神の剣が、武器のつまった木箱ごと敵をなぎはらう。
「若いってのは、良いことだな」
自分もまだ若いくせに、焔は老人ぶって言うと、自分に向かってライフルの照準を合わせようとしていたガスマスクの男二人を睨んだ。
刹那、空気が歪んだ。
焔から一瞬の、しかしそれだけに鋭い殺気が放たれた。
全身にからみつくように彫り込まれた龍が、焔の気が揺らぐのにあわせてなまめかしく身じろぎした。
瞬間、焔から照準をずらし、お互いの頭に銃口を向ける。
幻覚ではない。
強い催眠の力。死してなお説けない催眠の能力を解き放つ。
理性は残したまま、体だけが焔の想うままに動かされていく。
そして。
銃声がして、二人の男の頭が、まるでトラックにぶつかったスイカの用に砕け散った。
「っと。これはあまり、教育上によろしくないか」
頬に一滴だけ跳ね返ってきた返り血を指先でぬぐって、ぺろりとなめて焔が笑った。
「アキちゃん!」
血にまみれた戦場と化した倉庫を、アキが駆け抜ける。
見止めるが早いか碧もそれを追う。
そこに襲いかかろうとする男達を、ある者は拳で、ある者は回し蹴りで昏倒させながら後を追う。
と、アキは動いているパソコンの一つの前に来ると、ピアノを弾くように旋律的にキーボードをはじきはじめた。
「解除するぞ」
「え」
「ウィルスを解除するから、防御頼む」
「合点承知っ!」
短く言うと一瞬だけ瞑目し、息を整え、気を満たしていく。
「おらおら、近寄るとあぶねーぞ! 今日の俺はマジに出血を大サービスだからなっ」
言葉通り、気の白い光を体に当てられた男が、内から血をはきながら数メートル吹っ飛ばされる。
「そろそろ、終幕にしましょうか」
ほとんどテロリストを制圧した、と関知した悠也が、シュラインの手からガムテープをはぎとってつぶやく。
「適当に身をまもっててください」
「適当にって……もうっ!」
シュラインが聞き返す間もなく、悠也は倉庫を走り抜けシュラインの視界から消える。
「それを持って行かれると、困るですよ」
逃げようとしていたデルファイの前に、唐突に現れしな悠也は言葉にした。
「な、何の事だ」
「デュカリオン計画。時代錯誤もいいところです」
腕を組み、呆れた表情をつくりあげて言う。とたんにデルファイが胸を押さえた。
「なるほどやはり「そこ」でしたか」
突如、奇声をあげて、デルファイが悠也に遅いかかる。
それはもはや正気ではない、目が血走り、口からよだれすらたらしながら、手をめちゃくちゃに振り回す。
「最後のあがきにしては、っつ」
頬を爪がかすり、一筋の血が流れる。
「このっ」
手加減する余裕などない。
地面を蹴ると、片足を軸にして足を斜めに振り上げた。
鈍い音がして、デルファイの鳩尾に悠也のつま先が吸い込まれる。
胃液を吐きながらデルファイは倒れると、エビのようにのたうち回り、奇声とも悲鳴とも突かない声を上げ続ける。
変だ、と感じた時は遅かった。
血を吐いて、病的な白さをしていた顔が、土色に変化した。
息が、途絶えた。
あわてて抱き起こして首筋を見る。と、小さい牙がささったような痕があった。
「まさかっ!」
おいてきた筈の少女を思い出す。
彼女の名前は……ヒュドラ。
「アキさんが、危ない?」
その可能性に気づくが早いか、デュカリオン計画のファイルをデルファイの胸ポケットから奪うと、悠也は元来た道をかけもどる。
戦闘はほぼ終わっていた。
ただ、コンピュータの前でしきりにキーボードを打つアキだけが、せわしなく動いていた。
「アキさん!」
悠也が叫んだ瞬間。
銀色のナイフが戦いの合間を裂くように、倉庫を横切り、アキの体に突き刺さった。
「え?」
きょとん、とアキが目を見開いた。
そしてナイフがささった脇を触り、血がその指先を汚したと同時に倒れた。
「アキちゃんっ!」
碧が叫ぶ。
「どこだっ」
予想外の出来事に焔が目を血走らせて周囲を見る。
再び飛来する数多のナイフ。
だが、それは一瞬のうちにすべて砕け散り、細かい銀の砂礫となり、空気を舞った。
誰の力か、などと考えている余裕はなかった。
ナイフが飛来した方向を計算する。
ヒュドラの居場所を……アキの命を狙う暗殺者の居場所を頭の中で導きだす。
「悪いな、手加減する余裕は、ない」
そこにいる、と確信した場所に向かって一気に距離を縮めると、焔はブーツに隠していた細身のナイフを抜き取る。
そして目の前に立ちつくすヒュドラの頸動脈を狙い投げつけた。
血の花が倉庫中に広がる。
肉という圧力をうしない、血管という檻から解き放たれた血が倉庫を染め上げる。
だが少女は笑っていた。
唇が最後の力で微かに動く。
Hydraの血は毒。
裏切り者は死。
「馬鹿が」
吐き捨てる。
哀れむ気はない。彼女は信じた者に殉じたのだ。
そこまで信じられる、狂える何かがあるというのは幸せなことだ。
歩いて、倒れたアキと、そのそばにしゃがんで叫ぶ碧のそばに行く。
碧のダッフルコートの裾を荒々しくつかむ。
「くそ、やっぱりだ。あいつ気絶する前にコートに発信器つけてやがった」
「え……」
碧が青ざめる。
記憶がよみがえる。
確かにあのときコートの裾を捕まれた。あのとき、発信器をつけられた。
だから。
俺のノ性デ?
「出血は少ないな」
「毒です」
悠也がかけより、短く言う。
「デルファイがやられました。ナイフには致死性の毒があるはずです」
俺が、なんとか治癒系の術でおさえますが。とつぶやき、目を閉じたままうめくアキを見る。
解毒は毒の種類がわからなければ、出来ない。
「アキちゃん、俺、どうして」
完全に理性を失った緑が、手をとりながら、泣きそうな顔でいう。
事実、目の回りには涙がたまりかけていた。
「……ト」
「え?」
「ラスト、解除ワードだけだから。打って……くれ」
うっすらと瞳を開いて、アキが碧を見る。
「だって、俺」
「こんな、馬鹿やってる、暇ねーの。こうしてる、間に、ウィルスがどれだけ広まると」
「しゃべらない方がいいです。消耗が激しすぎると、体が……」
術に耐えられない、と悠也がいいかけるのを制止して、アキは体を起こす。
「ていうか、俺、まるご、と、林檎コンポート喰ってない、し」
に、と笑う。
「碧君、責任を感じてるならやりなさい」
いつの間に来たのか、榊が冷たい口調で命令した。
だが、反発する気にはならなかった。
「OK、どうすればいいんだ? 教えてくれよ」
「半角英数、文字」
――Dabit deus his quoque finem.
アキが最後の解除ワードを告げる。
ふるえる指でタイプする。
と、画面白一色に変わり、何度か明滅する。
――Running CounterVirus Program
ネットワークを中継して、ワクチンを配布します。とコンピュータが告げた。
「やった」
月斗が短くつぶやく。
これで弟達は元に戻るのだ。
が。
このままではアキが……榊千暁が死ぬという事が、本当の喜びから月斗を隔てていた。
「どう、すれば」
碧海がつぶやく。
だが、榊だけは、兄の千尋だけはどこまでも冷淡だった。
「立って下さいね」
「おい」
さすがの焔も制止しようとした。
だが、榊はただひたすらに冷たい目で倒れたアキを見下していた。
「プライドがあるなら、自分で立って、ナイフをぬくんだね。……アキ」
「この、アホ榊てめぇいい加減にしろよ!」
碧が叫んだ瞬間、アキが笑った。
笑って、ゆっくりと立ち上がり。
そしてナイフを抜いた。
「これで、満足か? ヒロ」
あざけるように、怒るように、そしてどこか悲しげにアキがいう。
と、榊は微かに笑った。
一瞬だけ同じ顔の、同じ瞳が触れ合った。
そして。
アキが倒れた。
「ちょっ」
シュラインがあわてて駆け寄る。
だが、もう、アキから血は流れては居なかった。
気を失ってはいたが、アキは穏やかな呼吸で眠っていた。
「どういうこと?」
いぶかしがるシュラインの前で、榊はくるりと背中を向けた。
そして肩越しにひらひらと手を振った。
「傷、なおしておきましたから」
全員が絶句した。
「あ、それとあと一時間後に応援よびますから、警察に合いたくない人は逃げてくださいね」
軽く言ったまま、榊は倉庫を出ていく。
「ち、千尋さん」
碧海が榊を追いかけた。
「まあ、これで解決って事かな」
月斗が訳がわからないままつぶやいた。
「そうですね」
寝息を立てるアキの横で、悠也はポケットからデュカリオン計画の磁気ディスクを取り出すと、焔に渡した。
「燃やしてください、焔さん、お得意でしょ」
「ん……」
「ない方がいいんですよ。こんな代物は、ね」
呪文が微かに聞こえた。
焔の指先に火がともる。月斗も呪でそれに力を貸す。
どろり、とプラスティックが溶けていく。
異様なにおいなのに、なぜか心地よく感じるのは、血と硝煙のにおいで鼻が壊れたからだろうか。
人騒がせなファイルが炭化し消えた倉庫に、密やかに冬の風がはいりこんできた。
そして、それと同じくひそやかに。電子の世界でワクチンがウィルスを中和していっていた。
だけれど、それは、誰もしらない。
ここに居た者達以外は。
【6】
追いかけた。
出たすぐの場所で、歩いていた榊が、壁に手をつき、だけどすぐに力つきたように座り込む。
何かにせかされるように、咳を繰り返す榊を助け起こそうと近寄ると、手にぽたりと血が落ちた。
自分のでは、ない。
「千尋さん!」
あわてて抱き起こし、ビルの壁に背中をもたれかけさせる。
「かっこわるい、ですね。最後まで持たなかった」
どういう事か、わからない。
どうしてこの人は何も言わずに傷ついて行くんだろう。
どうして、それを人に見せずに笑っていけるんだろう。
混乱する頭の中でくりかえした。
しかし答はでない。
「とにかく、病院に」
何の役にも立てない自分に、いらだち、傷つきながらも碧海はそう判断する。
が。
できなかった。
不意に手首を取られたかと想うと、榊が碧海にすがるように抱きついてきた。
「ごめん。なさい」
「え?」
「血が……」
「そんなこと」
反射的に支えると、背中から別の声が聞こえた。
「あーあ。やっぱりな。そうだと想ったよ」
「月斗、くん?」
冷めた口調で、だが、どこか同情するように月斗がつぶやいた。
「形代になっただろ。アンタ。弟の」
「ふ……」
「同じ腹から生まれた命ってのは、すでにその時から呪術的なつながりがある。だから、痛みを分け合う事も、移し合うこともできる」
自分を省みて、つぶやく。
弟達が酷い風邪を引いた時、自分もなぜかぼんやりとして頭痛がしていた。
怪我をしたとき、自分が怪我したわけじゃないのに同じ場所が居たんだ。
意識せずとも、双子や三つ子は痛みを分け合い感応する事が出来る。
「あんな冷たい事いったのも、同じ立った姿勢で瞳を合わせなきゃほとんど痛みが自分に来ないで「残る」からだ」
形代は鏡。
同じ体勢、血、顔。
同じ条件がそろえばそろうほど多く移し込める。
「早く病院いかないと、アンタ内臓切れてるだろ」
ぶっきらぼうに言い捨てながらも、痛み払いの呪を唱え、榊に授ける。
「肉の傷みなんて、執着する程の事じゃありません」
「……変態だな」
呆れたように言うと、月斗はきびすを返す。
だが、本心は違っていた。
理解できない、と想っていた。だが、今は理解できる。
榊は守っている事を知られたくないのだ。そして、その意志は痛みより強い。
自分が、体をうしなっても弟を守ろうと想う位に。
冷たい風の中、月斗がさっていった道をみながら、碧海は何も言えなかった。
「ごめんなさい、本当に」
「そんな、いつもと、逆、です」
榊を落ち着かせようと、背中をなでて言う。だがそれでも、榊は繰り返す。
ごめん。と。
すがるように碧海に回した手を、微かにふるえさせながら。
(ああ、そうか)
わかってしまった。
本当は榊が誰にあやまりたいのか。
(なら、自分は)
身代わりになって、その嘆きを受け止めようと。
汚れた東京の冬空の下。
誰も通らない路地で、涙も無く嘆く榊の背中を抱きながらそう想った。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 /草間興信所事務員&翻訳家&幽霊作家】
【0164 / 斎・悠也(いつき・ゆうや)/ 男 / 21 / 大学生・バイトでホスト】
【0308 / 鷹科・碧海(たかしな・あおみ)/ 男 / 17 / 高校生】
【0599 / 黒月 焔(くろつき・ほむら)/男/27/バーのマスター】
【0778 / 御崎・月斗(みさき・つきと) /男性/12/陰陽師】
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■ ライター通信 ■
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こんにちは立神勇樹(たつかみ・いさぎ)です。
今回はロジックをいれてみましたが。
難易度高かったかもしれません(汗)
解答を試みた人全体をみて、正解者が半数以下の場合はテロリスト側の手に「デュカリオン計画」のファイルが渡され。
解答を試みる人が一人も居なかった場合は「デュカリオン計画」のファイルの存在に気づけないという構成になっていましたが。
いかがでしたでしょうか?
こちら側のパラグラフとしては「Prometeus」を何と捕らえるか。です。「人」かつ「裏切り者」とみた方が居た場合はウィルスは解除されます。
ともあれ、参加していただいてありがとうございました。
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