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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


メコネの籤【The Lot of Mekone】

【0】
 これは、籤(くじ)だ。
 君の選択が明日以降の世界の運命を決める。
 目の前にはテーブルが二つ。テーブルの上には銀の小箱が1つずつ。テーブルの脇には二人のメイドが立っている。
 寸分の違いもない。
 ただし、片方の銀の小箱には、君らが欲しがってやまない「世界を救う鍵」がはいっている。
 もう片方は空だ。なにもない。あるのは絶望だけだ。
 二人のメイドは機械人形だ。同じ外見をもち、同じ服、同じ声をもつ。
 ただ一つだけ、心が違う。
 片方は正しいことだけを、もう片方は嘘だけを答える。
 質問が許されるのは一度だけ。
 さあ、君はどのようにして、どちらの箱を選ぶ?

 あわてて飛びのいた。
 水音がして、ただでさえ古ぼけて汚い草間興信所のじゅうたんにしみが広がる。
 広がった染みから、白くはっきりと湯気が立っている。こんなのかけられたら絶対にヤケドしている。
「ああっ、ご、ごめんなさい」
 零があわててあやまる。
 一度や二度なら笑って済ませられるが、最近とみに異常なほど零がそそっかしい。
 いや、零だけじゃない、なぜか能力者の知己がどことなく急にそそっかしくなった。
 りんごの皮をむいていてナイフを落とされたり、車を借りたらブレーキが緩んでたり。
 部屋に遊びにいったらなぜか床にトリモチがおちていて、ご丁寧にその上にスリッパがおいてあったりした。
(ちなみに、あれほど見事に転んだのは数年ぶりだ!)
 釈然としないまま、零が割れた湯飲みを片付けるのをみていると、扉がひらいて、この興信所に厄介と飯の種をもってくる、広域犯罪捜査共助準備室の第二種特殊犯罪調査官である榊千尋があらわれた。
 いつもどおり、秋の日差しのようにあたたかい笑みを浮かべていた榊だが、零と床にある湯飲みのかけらをみた瞬間、顔をこわばらせた。
 そして包帯がまかれた左手を額にあてて、小さな声でつぶやいた。
 どうやら、ここも感染し始めてるらしい。と。

「コンピュータウィルス?」
「そう、警察庁と総務省では"Gorgon"と呼んでます。三つのプログラムからなるウィルスでね。"Sthenno"が負荷をかけてコンピュータ機能を麻痺させ、"Eurysle"がネットワーク機能を掌握し、感染を拡大させる。そして最終段階の"Medusa"が起動すると、スクリーンセイバーが動くのですが、これをある種の人間がみたら、強い深層暗示にかかるみたいで」
「ある種……って、おい、お前が出てきたって事はまさか」
「そう、簡単にたとえるなら『異能なる同族を無意識のまま排除せよ。敵意なく偶然を装い排除せよ。特異な力もつ者達よ』ですかね?」
 同族を……無意識のままに……ということは、零の、知己のあの偶然ともいえる数々の事故は……?
「まさか、お前のその手は?」
「ああ、これ?」
 ひらひらと包帯が巻かれてる手を振る。
「ヤケドです。部下にコンビニのお弁当を温めてもらえるようお願いしたら、見事にお弁当とヘアスプレーを無意識に一緒に電子レンジにいれてくれましてね」
 ……そんなことをすれば、爆発する。
 よくヤケドだけですんだものだという、こちら側の驚愕をしってか知らずか、笑顔で涼しくうけながしつつ榊は続けた。
「ウチの情報犯罪捜査担当の段道(だんどう)技術調査官がいうにはね、オリュンポス系の一部のひね曲がったハッカーが作成した代物でだっていうんです。ああ、オリュンポスっていうのはハッカーのコミューンの一つで、全員がギリシャ神話にかかわるハンドルネームを使ってハッキングしてるみたいですね。ま、コミューンといっても仲間じゃなくて中には対立も抗争もあるみたいですけど」
「それで?」
「5日前、テトラシステムの爆破事件の直後から現れたこと、それとプログラミングの癖? からテトラから盗まれたウィルスじゃないかという事と、新宿あたりがウィルスの最初の発生源らしい、とまでは突き止めたんですが。それ以降お手上げ」
 なるほど。
 ウィルスを盗んだ奴を探して欲しいということか。
「早くアンチウィルスのワクチンを作らないと、"Gorgon"の暗示はどんどん深刻になっていくのはわかってます、ただ、アンチウィルスを作るにはマスターファイルの情報がないと無理らしいんです。それと、テトラシステム……いえ、オリュンポス系でもかなり異能力者に対して過激な行動をとるハッカー、Fuliesの系列の者が日本に来ているという情報も得ました。盗まれたのはただのウィルスだけではないとなると、マスターの回収には危険があるかもしれません。すでに感染しているかもしれないウチの部下では何が起こるか、おこされるか予測もつかない」
 言葉を切って肩をすくめると、携帯電話を取り出して画面を見せた。
「こんなものも届いていることだしね」
 榊が持つ携帯電話の白い液晶ディスプレイの上には、蒼いあざやかな文字で英文が刻み込まれていた。
 "Gorgon"を打ち倒す"Perseus"は"Prometeus"が知っている。――"Delphi"と。
 さて、どうする?


【1】
  キーボードをはじいていた指を止める。
 ディスプレイを眺め続け、すっかり乾いてしまった瞳を閉じる。
 やれやれ、である。
 再び目を開けると、たった今仕上がった「情報工学実験(ソフトウェア)」のアルゴリズム推論レポートがディスプレイ一面を埋め尽くしている。
「これで何とか合格点、ですかね」
 小さく笑う。
 もちろん、提出する教授が出す合格点、ではない。
 成績でいけば斎悠也は悪くないどころか、上から数えた方が早い成績の持ち主だ。
 その悠也がレポートに手こずる理由は一つしかない。
 同居する助教授である。
 分野は全く違うとはいえ、レポートに関しては海千山千の学会をくぐり抜け今の地位に居る彼女である。
 非公式とはいえ同居している悠也がへなちょこな「可」だけを狙ったレポートをかこうものなら、即座に厳しい指導が入るのだ。
 逆説的に言えば、学生でありながら学会でも通用するようなレベルのレポートを書かねばならない今の境遇が、悠也の好成績および教授陣の覚えを良くしているという点もあるが。
 とにもかくにも、大学生である悠也の苦労の一つであることは変わりない。
 ぼんやりと画面を見つめていると、スクリーンセイバーがかかる。
 漆黒の闇に、ライトグリーンの数字が次々に現れては落下していく、近未来的な映像。
 レポートを保存するために、マウスに手を置こうとして止めた。
 携帯電話が鳴っている。
 立ち上がり、リビングを横切り、酒の並べられたカウンターの端にある携帯電話を取った。
 着信名は「草間興信所」だ。
 シュライン・エマからの電話に違いない。
 しかも依頼の、だ。
 もしプライベートなら、シュラインは自分の携帯を使うだろう。
 そして草間武彦は興信所の電話を自分からかけることはまずない。
 貧乏とはいえ、ケチもここまでくるとすばらしい。
 苦笑しながら通話ボタンを押すと、電波に阻害されながらなお耳に心地よく響く、シュライン・エマの声が聞こえた。
 曰く、コンピュータウィルスが蔓延してること。
 曰くその出所が新宿であること。
 ――そして。
 金色の瞳が、午後三時の夕陽を受けて、うっすらと紅く、あでやかに染まる。
 その奥底にある、妖かしの力を具現するかのように。
 悠也はシュラインの言葉を聞きながら、一度だけ人差し指で雪花石膏のように白くなめらかな頬を叩くと、ゆるりと言葉を口にした。
「テリトリーですので。さして時間も掛からないでしょう」
 すでに話も聞いている。レポートがあったから答えなかっただけで、予兆を示すメールは何通か携帯電話に届いてはいた。
「新宿界隈で事を起こしたら俺に筒抜けになると思っていただいて結構ですよ」
 電話の向こうの相手にむかって、宛然とほほえんで見せる。
『怖いわね、できるだけ変な行動しないように気をつけないと』
 軽やかな笑いで語尾を飾ると、電話の主は「自分はここをあたるから」と言って新宿の西方面の地名を告げると、手早く会話をうち切った。
 相変わらずだな、と想いつつ、機能的なカフェケトルを火にかけ、紅茶の缶を手にとると、何度か軽く放り投げては受け取る仕草を繰り返す。
「携帯メールにテトラならアキさんが絡みますね」
 緑の瞳の魔術師を思い出す。
 最後に合ったのはいつだったろうか。
 そして、もう一人の緑の瞳を続けて思い出す。
「お会いできるのが楽しみです」
 硬質的な音をたてて、缶をテーブルにおく。
 沸騰したのか、やかんの蓋が断続的に振動しはじめる。
 ティーポットに茶葉とお湯を注いで、夕陽と同じ色の紅茶をつくりあげながら悠也は目を細めた。
「さて、それよりも最初に、あの御仁に手を打たなければならないでしょうね」
 夕陽より、紅茶より、もっともっと赤く、鮮烈に透き通る炎の瞳と髪を持つ彼を。
 龍をその体に共生させ、その瞳にて人を操る者を。
「新宿界隈で事を起こしたら、俺に筒抜けになるんですよ……黒月焔さん」
 余裕すらみせながら、悠也はティーカップを手に取った。
 逃げるように素早く沈んでいく夕陽をながめながら。


【2】
 駅の構内はすでにラッシュが始まっていた。
 冬らしくコートやセーターで着膨れしている性か、他の季節よりずっと込み合ってみえる。
 駅を出てエルタワーの方に歩くと、シュライン・エマの視界に目的の人物が飛び込んできた。
「待たせちゃったみたいね」
 ガードレールに寄りかかる、金の瞳もつ青年に言う。
 と、青年――斎悠也は、軽く手をあげて答えた。
「美人に待たされるのは嫌いじゃないですから」
 動きやすさを重視した、メンズもののコーデュロイのパンツに、体形がわかりにくいざっくりとした手編みセーター、そしてなぜかさほど寒くないのにコートにマフラーという姿のシュラインを見ながら、微妙なイントネーションをつけつつ言う。
 が、シュラインは肩をすくめて悠也の額をつついた。
「そういう「武器」は効果がある人に使いなさいね」
「……最近みなさんに、よくそういう類の事を言われます」
 長い手足を器用にあやつりながら、悠也は立ち上がった。
「さて、行きますか。それにしてもペルセウスとはまんまな命名ねぇ……」
「まんま、というと?」
「ゴルゴンを倒す、ならそれはウィルスを倒す。つまりはワクチンって事でしょう?」
 人ごみを抜けながら、シュラインはすらすらと答える。
 なるほど、と悠也は相槌を打つが、実のところ悠也もまったく同じ考えをもっていた。
 ならば。
「鍵はプロメテウスですか」
「プロメテウスの意は「先に考える者」だけど」
 エピメテウスとプロメテウス。
 後に考える者と先に考える者。
 だが、それに引っ掛けているとするならば「エピメテウス」が出てこないのはおかしい。
「むしろそちらより、太陽の火の方が有名ですが」
「人に火を与えるために、神を裏切り盗み出した。か」
 んー。と、うなりながらシュラインは空を見た。
 灰色のそらはどこまでも重く、白い雪の結晶は当分舞い降りそうにない。
「港区なら日赤に像はあるけれどねぇ」
 像じゃない? なら、何だ?
「新宿で大きな当りの出た宝くじ売り場ってあったかしら?」
「は?」
 唐突過ぎる思考の飛躍に、思わず悠也は立ち止まり、瞳を見開いた。
「いえ、ただの連想」
「そうですか……てっきり草間さんの事務所が年末ジャンボ宝くじにすがるまで窮乏したかと」
 笑えない推測を口にして、悠也は安心したようにため息をついた。
「ともかくさがしてみますか」
「新宿界隈の占師等や占いゲーム機等あたりを中心にやってみましょう」
 決まれば、フットワークは軽い。
 地図と悠也の記憶から、ゲームセンターを探し出しては、手がかりになりそうな機械をさぐってみる。
 電子的な騒音に、耳がおかしくなりそうになる。
「んー。占い機じゃないのかな」
「テトラシステムが占い機を出したという話は聞きませんね」
 手遊びなのか、クレーンゲームで赤い猫のぬいぐるみを吊り上げながら悠也が言う。
「もともとがネットワークに特化した会社ですからね。ネットゲームとか、ネットワーク系のコンピュータや機械が主ですね。買収もそのあたり中心だったはずですし」
 さすがは理工学部に所属する現役大学生だけある。
 ついでにシュラインに説明しながら、吊り上げたばかりのぬいぐるみだのキャラクター時計だのを餌に、ゲームセンターにいた少女達をひっかけ、占い師についての噂を聞くが、あまり成果はあがらない。
 しいて言えば「新宿の父」とかいう占い師が良くあたる、といったところか。
 どちらにしてもあまり事件とは関係なさそうだ。
「二人ではラチがあきませんね」
 いいしな、悠也は懐から蝶の形に刻んだ和紙を数枚出す。
 白い蝶の式だ。
 形の良い唇から、歌うように呪が漏れる。
 そして、吐息を吹きかけた瞬間、冬の空に季節はずれの白い蝶が飛び立っていく。
「これで、よし。とりあえず他のエリアも探してみましょう」
「そうね」
 一度駅前に戻ろうと、大通り沿いを二人が歩いていた、ちょうどその時だった。
 紀国屋書店で、悠也は思わず声をもらした。
「あ」
「何? どうしたの?」
「いいえ、何でも」
 というか、何でもないどころではない。
 目の前を今、赤い髪をした男が通り過ぎていったのだ。
 それだけなら特に珍しいことではない。
 だが、その横顔に今にも動きそうなほど生命力を感じさせる龍の顔の刺青があったとしたら。
(黒月さん、が書店に?)
 何の用かはわからないが。
 今追わなければ、という気がした。
「すみません、ちょっと用事」
「ええ?」
「あとですぐ連絡しますから」
 シュラインが止める間もなく、悠也は駆け出していた。
「……まったく。いつもながらしょうがないんだから」

 
【3】
 新宿駅前から少し歩いた場所。
 伊國屋書店の三F……コンピュータや情報工学、電気関係の本が並んでるエリアに足を踏み入れると、斎悠也は注意深くあたりを見回した。
 自分の記憶が間違いなければ、いや、間違いなどあるはずがない。
 全身に絡みつくように彫りこまれた龍を抱く男など、新宿が広いといっても、数人しかいないだろう。
 しかも、その龍の呪力により他人を操る力を持つ男など、一人しかいやしない。
(あんな男が二人もいられては、新宿はそれこそ三日で壊滅でしょうけれどね)
 その力の巨大さと、気ままさを思い出して苦笑する。
 バーのマスターに収まってるのも、儲けなど露ほども思念になく、ただただ、純粋な暇つぶしといったところか。
 フロアを歩く。
 場所はすぐにわかった。
 女子店員たちが興奮に頬を上気させ、だが、どこか遠巻きにたっている。
 その視線の中心に彼はいるのだ。
「わかりやすい人ですね」
 そういう悠也もかなり人目につく容貌なのだが、この際自分の事は棚の上なのだろう。
「ぷろぐらみんぐ…って、何だろ。まぁ、いいや。すくりーんせいばーとは……すくりーんせいばぁ?」
 一つ棚をはさんで、相手の様子をうかがっていると、素っ頓狂な調子でたどたどしくコンピュータ用語を繰り返している。
 普段は深みがある声も、こういう使い方をしては形無しだ。
 相手――黒月焔は、『おじいちゃんいもわかるインターネット!』や『すぐにできるホームページ』といういかにもお子様か初心者入門のコーナーを抜けて、何を考えているのか、専門書の方へと歩き出した。
 が。
「だー、わかんねぇぞおい」
 思わず、悠也はこけそうになった。
(何でわからないのに、専門書に来るんですかね)
 背中にあきれから来る汗をかきながら、焔の歩く先に回る。
 と。
 黒いレザーパンツに黒いコートという死神のような姿が目にはいった。
 そして後ろに流した、紅玉石のようにどこまでも赤い髪。
 時折、一房、二房と混ざる黒い髪が焔のシャープな顔を引き立てている。
 ワイルドに少しだけのばしているひげの下には、精巧に刻まれた龍の刺青。
 両手で髪をかき回す焔の横顔に宿る刺青の龍が、店内照明をうけてぎらりと光り、まるで悠也を威嚇したように見えた。
「お久しぶりです」
 できるだけ敵意を感じさせない微笑を作り上げる。
 だが相手も場数を踏んでいるからか。
 悠也の「純真そうな」笑顔の罠に引っかかるまいと、赤く暗く燃える瞳でちらりと悠也をにらみつけた。
(ずいぶん、警戒心が強いようで)
 苦笑する。
 しかし、それぐらい出なければ闇の世界を生きていけはしまい。
 これは絡め手から行ったとしても、すぐに払われるな、と覚悟する。
 策をもって操る事ができない相手なら。
 本音をもって仲間とするしかない。
 書架にある翻訳されたプログラム言語学の本を手にとり、めくりながらつぶやく。
「さて、アキさんとどんな取引したんです?」
 いいしな、目的のページに指先を差込、そこに掲載されてある写真を爪ではじく。
「ぎ、ぎくっ」
 そこには白衣を着てきまじめそうな顔でコンピュータに向かう、アキの……いや、情報工学の研究者としてのチアキ・タディアス・サカキの写真が載っていた。
「わかってるんですよ」
 もういちど、アキの写真を指先ではじいて問い詰める。
「プチ家出中のオトモダチから、面白い奴らがそろってネットカフェでこそこそしてるってメールを頂きましてね。次からは新宿のネットカフェなんか使わない方がいい。」
 もっとも、ネットカフェじゃなくても、新宿でこの黒月焔とあのハッカーが肩をならべれば、いやでも自分の情報網には引っかかるのだが。
 手の内をすべて明かす必要もない。
「俺は、新宿に女の子という密偵をごまんと放ってますから」
 本を閉じて書架にもどす。
 もちろん、半分はハッタリだ。
 残りの半分は、自分の名誉のためにも言わないのが花だろう。
 にっこりと、先ほど以上に無邪気そうな笑顔で告げると、焔は半悠也を指さして口を数度開閉させた。
「何をやっても、女の目があるかぎり、筒抜けって訳かよ」
 半分なきそうで、半分は完全にあきれきった顔である。
 降参、ともいえる焔の態度に、悠也はかすかに口の端をあげて目を細めた。
「その、堕天使の目をした天使の微笑みはな、そこらを歩いてるお嬢ちゃん達だけにしな。俺はそういう趣味はないんでね」
 ひどい言われようだ。
 まったく外れてるともいえないのは自覚しているが、なんとなくやり返したくなって悠也は肩をすくめたあとで口をひらいた。
「俺は異性でも同性でもどっちでもいいですが」
「はぁ?!」
 逃げるようにあわてて焔が振り返り周囲をみわたした。
 とたんにコートにひっかかった、積み上げ台の雑誌がなだれのように床に落ちる。
「まあ、そんな関係になりたくなかったら、俺の言うことはちゃんと聞いてくださいね」
 にっこり。
 一度手にいれた精神的優勢を手放す気はない。
 それを釘さすように、からかっていると感じさせないように、真剣さをまぜながら告げる。
 長いため息。
 もちろん、それは悠也のものではない。
 焔は雑誌を拾いながら、渋々と、しかし簡潔明瞭に告げた。
 草間に榊千尋が持ち込んだ依頼。その依頼で探してるブツと全く同じブツをFuliesが探していること。
 奴らの目的はウィルスメールではなく、一緒に盗まれた別のファイルであること。
 そして奇妙な少女、Hydoraの監視を。
「なるほどね。榊さんのところに来たメールも、何か噛んでますね」
 書店のエスカレーターを降り、人の波を抜けるように歩きながら悠也がいう。
「Perseusは父を殺すという神託を受け、海に流された息子。そして、メデゥーサを倒した英雄。最後に結果的に父を殺した息子。か」
 水商売の呼び込み男、カラオケBOXのアルバイター、女子高生。
 騒がしい事この上ないが、術者として発声訓練をしているからか、焔の言葉は不思議なくらい明瞭に悠也の耳に届く。
「うぃるすとやらはペルセウスが倒せて、その居場所はPrometeusが知ってるという事か」
 コンピュータ用語だけ、たどたどしく幼児のような言葉になるのは、焔がパソコン初心者だからだろうな、と想いながら、悠也はマフラーを押さえて頭を縦に振った。
「ペルセウスとはおそらくウィルスをとめるアンチウィルスのパターンファイルのことですよ」
「ぱたーんふぁいる?」
「と、特効薬みたいなものだとおもってください」
 幼稚園児のように、タバコを口にもっていきかけた姿勢のまま、きょとんと訪ねる焔に苦笑しながら告げる。
「"Sthenno"、"Eurysle"、"Medusa"」
 呪文のように抑揚をつけてその名を呼び、記憶の糸をたどる。
「"Gorgon"というのはギリシャ神話の三姉妹というのはご存じですよね?」
「ああ、醜悪な顔に永遠の命の長女と次女、そして元は美女であったがアテナの不信を受け、蛇頭の化け物になった末妹のメデューサだろ?」
 蛇頭と表現するあたりが、焔らしいなとと想った。
 おそらく、そこに関する説明はする必要はないのだろう。
「スティンノーが「強い女」、エリュスレイが「遠くに飛ぶ女」そしてゴルゴンが「支配する女」……今までのパターンからいってFuliesは必ずギリシア系の呼び名や命名を行い、その意味通りの役割を割り当てます。止まらない女「アレクト」や嫉妬する女「ティシポネ」のようにね」
「なるほど。ということは、「ペルセウス」が「ゴルゴン」を……つまりはそのうぃるすとやらを殺す事ができる特効薬か。そしてその特効薬は」
 神話や術系統になると、さすがに飲み込みも推察も早い。
 どうしてその頭の回転速度をパソコンに生かせないのか不思議でならない。
 そんなことを考えながら、歩みを止める。
「プロメテウスが持っている、と。……とりあえず、プロメテウスが何か、を探さないと」
 そしてその鍵があるとするならば。
 ――新宿のブラックホール。
 先ほどまでの呼び込みも、学生の嬌声もない。
 ただひたすらに静かな……静謐ではない、ただ音のない空間が二人の前にあった。
 横切る影は人ではなく、不吉といわれる黒い猫。
 誰もが避けたがる、犯罪のるつぼといわれる一角。その境目に並んで立つ。
「ともかく先にアキさんに連絡をとっていただきましょうか?」
 最初のたくらみをそのままに告げる。
「なぜ?まあ聞かなくてもわかるが」
 酷く旧式の携帯電話をコートのポケットから取り出しながらつぶやかれた焔の言葉に、嫣然と唇をうごかす。
 さすが、というところだ。
 おそらく自分の登場からすでに「展開を読んで」いるのだろう。
 しかし、だからといって手順を省く訳には行かない。
「アキさんと連絡をとり、ファイルを警察関係に渡さない事を条件として、目的のファイルを先に手にいれた方が管理するように、取引させてもらうよう言ってもらえます?」
 念を押すために、言葉にすると焔は心底面白そうに笑ったあとで、タバコに火をつけた。
「なるほど。榊の奴と、弟の競争に、俺らが横やりをいれて、いずれかのチームが取ったモノ勝ちということにするのか……面白いな」
「そう、面白いでしょう。いずれにしても」
 煽るように言う。
 この男を動かすのに必要なのは、金でも大義名分でも名誉でもない。
 ただ「面白い」かどうか。だけだ。
 舞台設定を整えさえすれば、おそらくこちらが願わなくても、願い以上の動きをしてくれる。
 それを悠也は知っている。
 ともかく今はアキに連絡をとらなかればならない。
 なぜなら。
「榊警視はどこか信用ならない」
 いままでがそうであったように。


【4】
「取引しませんか?」
 新宿の外れに近い路地裏で、合流するが早いか悠也が言った。
「よろしければワクチンを作りを手伝わせてください。プログラムも専門分野なんです。お役に立てると思いますよ」
「お前ら」
 アキがため息を付く。
「そのマスターファイルの他にも何かありそうですしね」
 かまわず悠也が続けた。
 そうだ。ウィルスのソフト以外にも別のソフトがあるはずだ。
 問題はそれが「何」のソフトか、という事だ。
「もう一枚のディスクの内容は何だ」
 サングラスをずらして、焔がアキを、そしてその後ろに影の用に寄り添うヒュドラをにらむ。
「それについては黙秘する。依頼人の事情を聞かないのが一流なんじゃないのか?」
「なるほど」
 何を馬鹿な、と言いたげなアキの言葉に、分かった、と悠也が頭を縦に振る。
 だが、焔と碧は見逃さなかった。
 微かに悠也がその金の瞳で合図を送ったのを。
「壁に耳あり障子にメアリーさんだなっ!」
 碧が動いた。
 人より数倍優れた反射神経は、ヒュドラが反応するより早くその体に蹴りをたたき込んでいた。
「ぐっ」
 うめきながらヒュドラは何とか持ちこたえ、4人に向かってナイフを放つ。
 銀色の矢のように、迷い無く急所を狙ったナイフが飛来してくる。
 しかし、これ以上の特異な事件にかかわってきた碧や焔に取っては、どうという事でもない。
 わずかな動きで焔はナイフをかわすと、意識を集中した。
 途端、金属のような高い音が微かになった。
 ヒュドラの顔色が変わる。
 焔の瞳が胎動するかのように、魔力で明滅し始める。
 刻まれた龍の刺青がうねった。
 そして少女が軽く後ずさる。
 彼女の脳内では、自分が放ったナイフが己に戻ってくる幻覚が繰り返されているハズだ。
 微かな狼狽の隙をぬって、碧が手首をひねり上げる。
 ナイフが手から放れ、落ちるより早く、いつのまにか後ろに回り込んでいた悠也が手刀を少女の首筋にたたき込んだ。
 うめくまもなく、崩れ落ちる。
 最後のあがきか、すがるように碧に手を伸ばし、コートの裾を握りしめたが、そのまま地面に倒れ伏す。
「ボディーガードの割になさけない」
「お前ら……」
 動けずにいたアキが、再度うめいた。
「ん? どうだ? 監視の目が無くなってすっきりしただろう?」
「これで話したいことが好き勝手に話せるでしょう」
「あー、でも、アキちゃん、裏切られたとか想われちゃうかもね。ごめんな」
 あはは、と碧を含め悪辣な男三人が笑う。
 こうなっては、もうどうしようもないだろう。
 裏切ったと想われること間違いない。
「あきらめたら? もう、絶対裏切られたって想われるし。どーやっても言い訳できなさそうだし?」
「たった今、そう言う立場に追い込んだのは誰だ!」
 いらだちもあらわにアキが叫ぶ。
「んんん? 見られてる方がいいとは、なかなか変態な趣味をもっていたんだな」
 からかうように焔は口にした。
「冬でも関係ないですからね、真の変態は」
 相づちをうつように悠也がいう。
「誰が変態だ」
「おや、失礼。でもああでもしないと、いつまでもうだうだ悩んで、テトラと手を切るきっかけ作れなさそうでしたので。微力ながらお手伝いしたまでです」
 軽い口調で、辛辣な批判を交えながら言った悠也の言葉に、焔は賛同だった。
「さて。まずはもう一つのファイルの話から聞かせてもらおうか。当然、こことは別の場所でだが、な」

 先ほどまで悠也と焔が居た、闇が巣くう場所との境界線に4人はいた。
「一つ気になっていたんだがな、テトラについてだが」
 ポケットからタバコをとりだし、火をつけると焔は煙とともに言葉を吐き出した。
「特異な力を持った者を互いに殺し合わせる暗示。深層意識に刷り込ませる幻覚。精神を支配する。何だか俺の力に似ているような…って、気のせいか?」
「そうともいえないさ」
 息を切らせながら、アキがいう。
 運動不足なのか、四人の中で一番先に息が上がっていた。
「キアラが俺のナニを一番気に入ってるか知ってるか? そして嫉妬の対象である異能力者である俺を手元に置いているか」
 白く濁る息の合間に自嘲的につぶやく。
「裏切られるのが好きなんだろ」
「それもあるが」
 焔の茶々を軽くながして先を続ける。
「能力をプログラムで発動できることに興味があったのさ」
 携帯電話に「魔法陣」のプログラムを入れ、衛星を介在して地上にコンピューターが導き出した完璧な陣を描いて攻撃する。
 アキの陣魔法を思い出す。
 同じ事を考えていたのか、悠也が腕を組んで路地の壁に寄りかかった。
「なるほど。詳しくはしりませんが、白魔法や黒魔法は幾何学の範疇だといいますしね」
「レプリカ、ウィルス、まさか」
 ある考えに行きついて、焔は言葉を止めた。
「お察しの通り。他の能力も発動できないかと研究していたわけだ。とくに東京は、人種のるつぼだ。サンプルを集めるのに都合がいい」
 そして開発された何かが、どう使われるか。
 聞くまでもない。
 兵器、だ。
 キアラ自身は、兵器にしようとは想っていないだろう。
 ただ純粋な好奇心で、知識を探求するゲームの一つとしてその研究に挑んでいるだろう。
 相対性理論を作った学者が、原爆を生み出すと考えることもなくただ、己の知識の追求を行っていたのと同じに。
「もう一枚のファイルは」
「デュカリオン計画」
 悠也の問いに、簡潔に答える。と、碧が何度か目を瞬きさせた。
「あの雨がふって地球が沈むって……ヤツ?」
 ギリシャ神話の洪水伝説を思い出したのだろう。碧の言葉に、アキはいや、と頭をふった。
「ダムだ」
「ダムぅ?!」
「東京都および近県のダム管理プログラムを完全に乗っ取るプログラムだ」
「そんなもの……」
「そうとも言えませんよ。東京の小川内ダムは総貯水量一億八千五百四十万立方。半分でも東京ドーム九十杯の水があります。それが一気に放水されるとなると、まさしくデュカリオンの洪水ですよ」
 想像の域を超えているのか、悠也の解説に、碧は口をあけて指先で頬を数度かいた。
「そして放水された後せき止めても、急に水はたまらない。東京大渇水という訳か。なるほど。テロリストがほしがる訳だ」
 やれやれ、と肩をすくめて焔はタバコをブーツのかかとで揉み消した。
「キアラはそれを使ってゲームをするつもりでいるのさ」
「ゲーム?」
「見ての通り、あの女はプライドが高いからな。前回アレクトの件のお返しをしたいらしくてね」
 確かに今まで数度か、Fuliesとの戦いがあった。
 そして、何とか力を、そして知恵を使ってくぐり抜けた。
 それが気に入らないのだろう。
「つきあいきれんよ。キアラのやり方にも、虚無の境界にもな!」
 吐き捨てて、手近な壁をアキは殴りつけた。
「虚無の境界って、テトラをおそったテロリストだろ? 全部こわしちまえーっていうエライおおざっぱな教義の」
 そこで言葉を切ると、碧は苦笑して続ける。
「そしてアキちゃんがさっきいってたように、誤って罠であるウィルスの方を起動させて大騒ぎしてる?」
「ほう」
 意識するより早く、言葉が漏れた。
 確かにそれならつじつまは合う。
「止められるのはテトラのキアラか、あなたしかいない。……となれば、貴方を探して「作らせ」ようとする筈ですね」
 ならば、榊警視の方のメッセージは罠。だ。
 悠也の言葉が終わるより早く、全員がそれを悟った。
「榊警視がこの事件にかかわってるなら、あのメッセージをおとりにおびき寄せて……人質にするつもり?」
「アホだな」
「うん、アホ榊以上にアホだとおもう。アレが素直に人質になるタマかよ」
 間髪いれずに焔と碧がつっこむ。
 さすがにこれはフォローのしようがない。
「まあ、それはおいておいて、根本的な問題を解決しましょう」
 それ以上つっこむのは哀れだと想ったのか、悠也が話題を転換させる。
「そうだな。まずアキさんよ。アンタが「何をしたいか」だろう」
 人差し指をつきつけて、眉間を三度つつく。
 うっとおしげに、アキは焔の指先を払うと、最初から決めていたかのように言葉を口にした。
「まず、ワクチンを作成してそれをネット上にばらまく。当然それに必要なウィルスプログラムを奪還する。だ」
「ほうほう、そして?」
「俺は「デュカリオン」をキアラにも虚無の境界にも渡す気はない」
「そしてそうする事はあの天才の予測の上にあるのだろうな」
 軽口めかせて、確信を付く。
 だからこその監視だったのだろう。
 それは託宣――オラクルだ。
「Oracle(神託)にDelphi(神託を授ける地)……さて、どういった未来を示すというのかね」
 まあ、退屈はしないだろうが。と言葉をしめくくり、唇の端を数ミリだけ持ち上げてみせる。
「さしずめ今の状況は「メコネの籤」といったところでしょうか」
 ひょい、と肩をすくめる。
 牛の分け前を巡ったギリシャ神話を思い出す。
 人と神で牛を奪い合い、メコネの神殿においてプロメテウスが策略をもちいて、神に骨を選ばせ、人が肉を食らう事をみとめさせた話。
 私怨で世界をゲームの舞台としおもちゃのように壊す嫉妬の女神たるキアラにも、すべてを無に返そうとするテロリストの「虚無の境界」にも、肉を選ばせる訳には行かない。
「とりあえず、相手が出てくるのを待っている余裕はありません。こちらから踏み込みましょう」
 宛然と笑って、悠也は指先を空にさしむける。
 と、高いビルの隙間をぬって、ひらりと雪の様に、白い蝶が舞い降りた。


【5】
 白い蝶に導かれるように、暗い路地を歩く。
「少し、調べたんだがな」
 夜の冷気に息を染めながら焔がつぶやく。
「能力者を殺したがっているようなセクトはいくつもある。東京に根城をもつやつに限定しても両手の指じゃ足りないぐらいな。それこそFuliesもサイバーテロといえなくもない」
 ざり、と足下で砂粒が砕ける音がした。
「何故、虚無の境界なんだ? 正直あいつらはイカれてる。あんた”Kyrie eleison”って言ったな?」
 足を止める。
 と、後ろに続いていたアキ、悠也、碧も立ち止まった。
「なんであんたが"キリエ"を知っている?」
 キリエと呼ばれるのは虚無の境界では一人しかいない。
 幹部のみの前に現れる盟主。
 ほとんどの奴らはキリエを知らない。知っているとしたら帳の向こうのおぼろげな影か、あるいは彼女を取り巻く霊体の一つか。
 いずれにしても名前を知らされる事もない。
 なのに、何故アキが知っている?
 ハッカーにしても、行きすぎている。
 沈黙がよけいに周囲の空気を冷たくする。
 アキは立ち止まったまま何も言わない。
「ま、いいさ」
 楽しみは後に取っておくものだ。
 そう割り切ると、焔は薄くわらった。
「ついたようですね」
 薄汚い路地の中で、そこだけ月の光があふれていた。
 そして多くの蝶が空中に集い舞っていた。
 ――結界の結び目。
 悠也が指先で蝶が舞う中心を触れた途端にあたりの空気が揺らぎ、白き式の蝶が吹き飛ばされただの紙片となりちぎれ飛ぶ。
 声が直接、脳に響いた。

 目の前にはテーブルが二つ。テーブルの上には銀の小箱が1つずつ。テーブルの脇には二人のメイドが立っている。
 寸分の違いもない。
 ただし、片方の銀の小箱には、君らが欲しがってやまない「世界を救う鍵」がはいっている。
 もう片方は空だ。なにもない。あるのは絶望だけだ。
 二人のメイドは機械人形だ。同じ外見をもち、同じ服、同じ声をもつ。
 ただ一つだけ、心が違う。
 片方は正しいことだけを、もう片方は嘘だけを答える。
 質問が許されるのは一度だけ。
 さあ、君はどのようにして、どちらの箱を選ぶ?

 暗闇に二つのテーブルが現れる。
 そして人形じみた二人のメイドがその脇にたっていた。
 テーブルの上にはそれぞれ金と銀の箱がのっていた。
 月の幻影のように、風ごとにゆらゆらと揺れる半透明の幻を前に4人は顔を見合わせる。
「どっちのメイドかって?「世界を救いたいか」との問いに「救いたくない」と答えたねーちゃんの方だな」
 やる気なさげに焔が答える。
「俺パスね……アキちゃんまかせた」
 焔よりさらにやる気がないのか、テストが終わってまで頭を使いたくないのか碧は手を振った。
 と、悠也が苦笑した。
「違いますよ」
 つい、と前にすすみでて、結び目に手を沿わせたまま唇を緩やかに動かす。
「私が貴方達にどちらに鍵が入っているかと尋ねたら自分ではないもう一人の方はどちらを指し示しますか? でしょうか?」
「正解」
 アキが言う。
「右を天使、左を悪魔。右に正しい箱があると仮定するだろ。質問した場合。右は「天使」だから当然正直に「悪魔は正しくない方を指さす」のだから「左」を刺す。左は「悪魔」だから「天使は正しい方を指さす」の嘘だから「左」」
 後頭部をかきながら言う。
「だから、右にはいっている箱が正しい事が証明される」
「逆もまた、真なり……ですね」
 悠也が言った瞬間、結界の中心がはじけた。
 空間が歪む。
「ほう。それなりの術者はいるようだな……少しは楽しめそうだ」
 不意に現れた地下への階段を一瞥して焔はサングラスを外した。
 その瞳は、この上ないほど楽しそうに、そして鮮やかに血の色そのままに輝いていた。
 

【6】
  しめった薄暗い通路を降りる。
 と、角を曲がった場所で、ほのやかに蒼い光がまたたいていた。
 時折電子的な音と、かたかたという音。そしてファンが回る音が続いている。
「やれやれ。ようやく本拠地というところか」
 焔がつぶやいた瞬間。
「そちらも出てきて頂きましょうか」
 金属をひっかくような、高く掠れた声がした。
「Delphi」
 アキが漏らす。
「どうやら強襲は出来ないようですね。結界を抜けた時点で出入りがバレていた。という事でしょうか?」
「多分ねー。それにしても地下基地とかベタだよなぁ」
 両手を頭の上で組んで碧が言う。
 ひょろいハッカーの一人や二人、すぐ片づくと想っていた。
 たとえ集団にしても、焔と悠也がいれば何とかなるという自信もあった。
 だが、その自信もすぐに覆された。
「早く出てこないと、恋人がどうなってもしらないぞ」
「恋人ぉ?!」
 ベタな台詞に笑おうとして、笑えなかった。
 三人がアキの方を視ると、アキがあわてて頭をふった。
「いや、そんなはずは絶対に、あり得ない」
「と、いうことは」
 あわてて走り、通路を駆け抜ける。
 と。
 そこには病的に蒼白い肌に白髪の男が、草間興信所の財布を握る蒼い瞳の女性の頭に銃をつきつけて立っていた。
「シュラインさん?!」
 異口同音に焔、悠也、碧が叫ぶ。
「ごめんねぇ。やっちゃった」
「本当にやらかしてくれましたね。驚きです」
 アキと同じ声で、しかし違う方向から声が聞こえた。
「ヒロ」
 ぽつりとアキが漏らす。
「さて、どうしたモノかな。これは」
 実に感動的じゃない双子の再会だな。と冗談めかせて言った焔の言葉が、やけにコンクリートの壁に反響しつづけていた。


【7】
 歪んだ結界から抜け出した先は、コンクリートで四方を囲まれた地下倉庫だった。
 そこいら中においてある木箱には、大量のおがくずと、そして、鈍く光る鉄のかたまり……ライフルだの拳銃だの、果てにはロケット砲とおぼしきものまで詰め込まれていた。
 いくつか蓋をされたままの木箱の上には真新しいディスプレイとキーボード、そしてパソコンなどがおかれており、4名ほどの男が必死でキーボードを叩き続けていた。
 時折甲高い電子音がなるのは、おそらくパスワードロックを解除するのに失敗している音なのだろう。
「すごい」
 ささやくように碧海がいう。
「まったく、大した情熱です」
 嫌そうに言うと、榊はポケットから携帯電話を出した。おそらく応援の警察官を呼ぶつもりなのだろう。
 だが、それは果たせなかった。
「おい、あれ」
 月斗が顔をこわばらせて、倉庫の中央を指す。
 そこには、いつもより若干着ぶくれしたシュライン・エマが、両手をガムテープでぐるぐる巻きにされたまま、頭を拳銃でつつかれながら、歩いている姿があった。
「あらら。ま、こうなるんじゃないかなと想ってたりしましたけどね」
 いつも通り緊迫感のない声で榊がいう。
「いい加減姿を現したらどうかね?」
「そうします」
 あっさりと、榊が答える。
 結界を抜けた時点で、おそらく気づかれていたのだろう。
(何とか、しなきゃ)
 碧海は想ったが、この状況ではどうにもならない。
「そちらも出てきて頂きましょうか」
 容貌を年老いたものに見せている白髪をうっとおしげに振り払い、シュラインを人質にとっている男が笑った。
「Delphi」
 と、榊によくにた声が響いた。
「早く出てこないと、恋人がどうなってもしらないぞ」
 せかすようにデルファイと呼ばれた男が続ける。
「まさか草間さんとか……ねぇか」
 月斗が苦笑する。
 いくつかの足音が乱雑に響いた。
 そして。
「シュラインさん?!」
 聞き慣れた声……焔、悠也、碧が、異口同音に彼女の名前を呼んだ。
「ごめんねぇ。やっちゃった」
 ぺろり、と舌を出して笑う。
「本当にやらかしてくれましたね。驚きです」
 ひょい、と肩をすくめて榊がいう。その後にあたりに聞こえるか聞こえないかの声で「まあ、人質になって取り乱さず、冷静でいるあたりは上出来」とつぶやいた。
 かき消えた榊の言葉の後に、酷く榊に酷似した声が聞こえた。
「ヒロ」
 視線の向こうに、榊によくにた、だけど若干おとなびた顔立ちに肩まで伸ばした髪を持つ男がいた。
「さて、どうしたモノかな。これは。実に感動的じゃない双子の再会だな。アキさんよ」
 冗談めかせて言った焔の言葉が、やけにコンクリートの壁に反響しつづけていた。
 だが、当の双子同士は、視線を合わせようとはしない。
 一人は悠然とその存在を無視し、もう一人は怯えるように視線を逸らして逃げた。
「まあ、一応要求をききましょうか。聞かなくてもだいたいわかるのですが」
 物事には手順というのがありますからね。
 悠也は言って、近くにある空き箱の端に腰かけて足を組んだ。
「デュカリオン計画を発動させるキーワードと、ワクチンの作成だ」
「予想通りですね。そんなことだろうとおもった」
 榊がうなづく。
「私としてはワクチンがいただければそれでもかまわないですが」
「千尋さんっ」
「アホ榊っ、てめぇ」
 鷹科兄弟がそれぞれ抗議するように叫んだ。が。
「まだ死者がでたわけじゃないですからね」
「超法規的措置というわけか。なるほどな。法を杓子定規に解釈するだけなら、六法全書もった幼稚園児にもできるからな」
 司法取引をしよう、ということなのだろう。
 テロリストを見逃すかわりに、シュラインとワクチンをよこせと、逆に要求しているのだ。
「なんて言うか、したたかなヤツだな。おっさん」
 呆れたように月斗がいう。
 彼も同じで、ワクチンが手にはいり、弟たちが元にもどればいいのだ。
 今テロリストを倒す必要性はない。
「相変わらず、警察官らしくない台詞ね」
 頭に銃をつきつけられているのをものともせず、いつもの調子でシュラインが皮肉をいう。
「そうでしょうか? 警察官僚らしい考えしていると想いますよ。国家としての国をどうまもるかが私には重要な事ですから」
 あはは、と世間話をするように笑う。
「でも、もしそれに応じてくれないというのなら実力行使ですかねぇ」
 周囲を見渡す。
 倉庫にいるテロリストは二十名。
 戦って勝てない数ではない。
「ここでシュラインさん尊い犠牲になってください。とかいったら私だけ悪人ですよね」
 微かにうつむいて、目線だけを上げる。
 勝手に、体が震えた。
 月斗はふるえを止めるために両肩をだいた。
 榊の緑の瞳が、冷たく、底知れない輝きに満ちていた。
 悪魔より狡猾に、神よりすべてを見抜くように。
(怖い)
 碧海も、また、かつての事件の時と同じ榊の眩い瞳に、胸を押さえる。
「さて、シュラインさん、最後の言葉はありますか?」
 冷たい榊の瞳に、本当に見殺しにされるのではないかと、背筋が凍る。
(何、どういうつもり)
 瞳で問いかける。
「最後の、言葉はありますか?」
 もう一度、聞かれる。
 最後の言葉?
 最後の……?
 はっ、と息をのんだ。
 そして。
「あああああああああぁあぁぁ」
 腹のそこから、力一杯叫んだ。
 自分の持ちうる限りの最高の高音で。
 人の聴覚限界に近い高い、高い、オクターブのかかりすぎた声で、咽が痛むまでさけんだ。
 たまらず、デルファイが耳を押さえた。
「焔さん、悠也さんっ、月斗くん」
 榊の真意を読んだ碧海が、気の裂帛を放ち、手近にあった木箱を飛ばして壊すと同時に叫んだ。
「承知してます」
 混乱の中、短く告げると、悠也は流麗な動作で木箱をけって地面に降りると、まるで踊りに誘うように手刀を空にすべらせ、デルファイの喉元を突いて、シュラインを抱き留め保護した。
「よし、こい。伐折羅大将! 急々如律令っ」
 ポケットから符と小さな木像を取り出し、月斗が呪を唱える。
 と、顔を溶岩のごとくそめ、身の丈ほどある宝剣をふりかざした神将が現れる。
「いけっ」
 人差し指と中指で符をはさんだまま、自分の額の真央と、敵の場所を指し示す。
 残像を残しながら風のごとく間合いをつめた式神の剣が、武器のつまった木箱ごと敵をなぎはらう。
「若いってのは、良いことだな」
 自分もまだ若いくせに、焔は老人ぶって言うと、自分に向かってライフルの照準を合わせようとしていたガスマスクの男二人を睨んだ。
 刹那、空気が歪んだ。
 焔から一瞬の、しかしそれだけに鋭い殺気が放たれた。
 全身にからみつくように彫り込まれた龍が、焔の気が揺らぐのにあわせてなまめかしく身じろぎした。
 瞬間、焔から照準をずらし、お互いの頭に銃口を向ける。
 幻覚ではない。
 強い催眠の力。死してなお説けない催眠の能力を解き放つ。
 理性は残したまま、体だけが焔の想うままに動かされていく。
 そして。
 銃声がして、二人の男の頭が、まるでトラックにぶつかったスイカの用に砕け散った。
「っと。これはあまり、教育上によろしくないか」
 頬に一滴だけ跳ね返ってきた返り血を指先でぬぐって、ぺろりとなめて焔が笑った。
「アキちゃん!」
 血にまみれた戦場と化した倉庫を、アキが駆け抜ける。
 見止めるが早いか碧もそれを追う。
 そこに襲いかかろうとする男達を、ある者は拳で、ある者は回し蹴りで昏倒させながら後を追う。
 と、アキは動いているパソコンの一つの前に来ると、ピアノを弾くように旋律的にキーボードをはじきはじめた。
「解除するぞ」
「え」
「ウィルスを解除するから、防御頼む」
「合点承知っ!」
 短く言うと一瞬だけ瞑目し、息を整え、気を満たしていく。
「おらおら、近寄るとあぶねーぞ! 今日の俺はマジに出血を大サービスだからなっ」
 言葉通り、気の白い光を体に当てられた男が、内から血をはきながら数メートル吹っ飛ばされる。
「そろそろ、終幕にしましょうか」
 ほとんどテロリストを制圧した、と関知した悠也が、シュラインの手からガムテープをはぎとってつぶやく。
「適当に身をまもっててください」
「適当にって……もうっ!」
 シュラインが聞き返す間もなく、悠也は倉庫を走り抜けシュラインの視界から消える。
「それを持って行かれると、困るですよ」
 逃げようとしていたデルファイの前に、唐突に現れしな悠也は言葉にした。
「な、何の事だ」
「デュカリオン計画。時代錯誤もいいところです」
 腕を組み、呆れた表情をつくりあげて言う。とたんにデルファイが胸を押さえた。
「なるほどやはり「そこ」でしたか」
 突如、奇声をあげて、デルファイが悠也に遅いかかる。
 それはもはや正気ではない、目が血走り、口からよだれすらたらしながら、手をめちゃくちゃに振り回す。
「最後のあがきにしては、っつ」
 頬を爪がかすり、一筋の血が流れる。
「このっ」
 手加減する余裕などない。
 地面を蹴ると、片足を軸にして足を斜めに振り上げた。
 鈍い音がして、デルファイの鳩尾に悠也のつま先が吸い込まれる。
 胃液を吐きながらデルファイは倒れると、エビのようにのたうち回り、奇声とも悲鳴とも突かない声を上げ続ける。
 変だ、と感じた時は遅かった。
 血を吐いて、病的な白さをしていた顔が、土色に変化した。
 息が、途絶えた。
 あわてて抱き起こして首筋を見る。と、小さい牙がささったような痕があった。
「まさかっ!」
 おいてきた筈の少女を思い出す。
 彼女の名前は……ヒュドラ。
「アキさんが、危ない?」
 その可能性に気づくが早いか、デュカリオン計画のファイルをデルファイの胸ポケットから奪うと、悠也は元来た道をかけもどる。
 戦闘はほぼ終わっていた。
 ただ、コンピュータの前でしきりにキーボードを打つアキだけが、せわしなく動いていた。
「アキさん!」
 悠也が叫んだ瞬間。
 銀色のナイフが戦いの合間を裂くように、倉庫を横切り、アキの体に突き刺さった。
「え?」
 きょとん、とアキが目を見開いた。
 そしてナイフがささった脇を触り、血がその指先を汚したと同時に倒れた。
「アキちゃんっ!」
 碧が叫ぶ。
「どこだっ」
 予想外の出来事に焔が目を血走らせて周囲を見る。
 再び飛来する数多のナイフ。
 だが、それは一瞬のうちにすべて砕け散り、細かい銀の砂礫となり、空気を舞った。
 誰の力か、などと考えている余裕はなかった。
 ナイフが飛来した方向を計算する。
 ヒュドラの居場所を……アキの命を狙う暗殺者の居場所を頭の中で導きだす。
「悪いな、手加減する余裕は、ない」
 そこにいる、と確信した場所に向かって一気に距離を縮めると、焔はブーツに隠していた細身のナイフを抜き取る。
 そして目の前に立ちつくすヒュドラの頸動脈を狙い投げつけた。
 血の花が倉庫中に広がる。
 肉という圧力をうしない、血管という檻から解き放たれた血が倉庫を染め上げる。
 だが少女は笑っていた。
 唇が最後の力で微かに動く。
 Hydraの血は毒。
 裏切り者は死。
「馬鹿が」
 吐き捨てる。
 哀れむ気はない。彼女は信じた者に殉じたのだ。
 そこまで信じられる、狂える何かがあるというのは幸せなことだ。
 歩いて、倒れたアキと、そのそばにしゃがんで叫ぶ碧のそばに行く。
 碧のダッフルコートの裾を荒々しくつかむ。
「くそ、やっぱりだ。あいつ気絶する前にコートに発信器つけてやがった」
「え……」
 碧が青ざめる。
 記憶がよみがえる。
 確かにあのときコートの裾を捕まれた。あのとき、発信器をつけられた。
 だから。
 俺のノ性デ?
「出血は少ないな」
「毒です」
 悠也がかけより、短く言う。
「デルファイがやられました。ナイフには致死性の毒があるはずです」
 俺が、なんとか治癒系の術でおさえますが。とつぶやき、目を閉じたままうめくアキを見る。
 解毒は毒の種類がわからなければ、出来ない。
「アキちゃん、俺、どうして」
 完全に理性を失った緑が、手をとりながら、泣きそうな顔でいう。
 事実、目の回りには涙がたまりかけていた。
「……ト」
「え?」
「ラスト、解除ワードだけだから。打って……くれ」
 うっすらと瞳を開いて、アキが碧を見る。
「だって、俺」
「こんな、馬鹿やってる、暇ねーの。こうしてる、間に、ウィルスがどれだけ広まると」
「しゃべらない方がいいです。消耗が激しすぎると、体が……」
 術に耐えられない、と悠也がいいかけるのを制止して、アキは体を起こす。
「ていうか、俺、まるご、と、林檎コンポート喰ってない、し」
 に、と笑う。
「碧君、責任を感じてるならやりなさい」
 いつの間に来たのか、榊が冷たい口調で命令した。
 だが、反発する気にはならなかった。
「OK、どうすればいいんだ? 教えてくれよ」
「半角英数、文字」
 ――Dabit deus his quoque finem.
 アキが最後の解除ワードを告げる。
 ふるえる指でタイプする。
 と、画面白一色に変わり、何度か明滅する。
 ――Running CounterVirus Program
 ネットワークを中継して、ワクチンを配布します。とコンピュータが告げた。
「やった」
 月斗が短くつぶやく。
 これで弟達は元に戻るのだ。
 が。
 このままではアキが……榊千暁が死ぬという事が、本当の喜びから月斗を隔てていた。
「どう、すれば」
 碧海がつぶやく。
 だが、榊だけは、兄の千尋だけはどこまでも冷淡だった。
「立って下さいね」
「おい」
 さすがの焔も制止しようとした。
 だが、榊はただひたすらに冷たい目で倒れたアキを見下していた。
「プライドがあるなら、自分で立って、ナイフをぬくんだね。……アキ」
「この、アホ榊てめぇいい加減にしろよ!」
 碧が叫んだ瞬間、アキが笑った。
 笑って、ゆっくりと立ち上がり。
 そしてナイフを抜いた。
「これで、満足か? ヒロ」
 あざけるように、怒るように、そしてどこか悲しげにアキがいう。
 と、榊は微かに笑った。
 一瞬だけ同じ顔の、同じ瞳が触れ合った。
 そして。
 アキが倒れた。
「ちょっ」
 シュラインがあわてて駆け寄る。
 だが、もう、アキから血は流れては居なかった。
 気を失ってはいたが、アキは穏やかな呼吸で眠っていた。
「どういうこと?」
 いぶかしがるシュラインの前で、榊はくるりと背中を向けた。
 そして肩越しにひらひらと手を振った。
「傷、なおしておきましたから」
 全員が絶句した。
「あ、それとあと一時間後に応援よびますから、警察に合いたくない人は逃げてくださいね」
 軽く言ったまま、榊は倉庫を出ていく。
「ち、千尋さん」
 碧海が榊を追いかけた。
「まあ、これで解決って事かな」
 月斗が訳がわからないままつぶやいた。
「そうですね」
 寝息を立てるアキの横で、悠也はポケットからデュカリオン計画の磁気ディスクを取り出すと、焔に渡した。
「燃やしてください、焔さん、お得意でしょ」
「ん……」
「ない方がいいんですよ。こんな代物は、ね」
 呪文が微かに聞こえた。
 焔の指先に火がともる。月斗も呪でそれに力を貸す。
 どろり、とプラスティックが溶けていく。
 異様なにおいなのに、なぜか心地よく感じるのは、血と硝煙のにおいで鼻が壊れたからだろうか。
 人騒がせなファイルが炭化し消えた倉庫に、密やかに冬の風がはいりこんできた。
 そして、それと同じくひそやかに。電子の世界でワクチンがウィルスを中和していっていた。
 だけれど、それは、誰もしらない。
 ここに居た者達以外は。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 /草間興信所事務員&翻訳家&幽霊作家】
【0164 / 斎・悠也(いつき・ゆうや)/ 男 / 21 / 大学生・バイトでホスト】
【0308 / 鷹科・碧海(たかしな・あおみ)/ 男 / 17 / 高校生】
【0599 / 黒月 焔(くろつき・ほむら)/男/27/バーのマスター】
【0778 / 御崎・月斗(みさき・つきと) /男性/12/陰陽師】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは立神勇樹(たつかみ・いさぎ)です。
 今回はロジックをいれてみましたが。
 難易度高かったかもしれません(汗)
 解答を試みた人全体をみて、正解者が半数以下の場合はテロリスト側の手に「デュカリオン計画」のファイルが渡され。
 解答を試みる人が一人も居なかった場合は「デュカリオン計画」のファイルの存在に気づけないという構成になっていましたが。
 いかがでしたでしょうか?
 こちら側のパラグラフとしては「Prometeus」を何と捕らえるか。です。「人」かつ「裏切り者」とみた方が居た場合はウィルスは解除されます。
 ともあれ、参加していただいてありがとうございました。