コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


鏡の中の迷宮


オープニング


鏡の中に写った自分は、本当の自分だと思う?

―ドッペルゲンガー
自分と同じ姿、声を持つ人物をそう呼ぶ。
彼らは鏡の中から現れるとも言われているが
それが本当のことなのかは定かではない。

題名:鏡の中の迷宮
投稿者:レオナ
本文:夜中の零時ちょうどに鏡の中を覗き込むと鏡の中に引き込まれちゃうんだって!
それで鏡の中の自分と入れ替わっちゃうらしいの。

ゴーストネットに新しく書き込まれたのは、自分と同じ姿をもつドッペルゲンガーのことについてだった。
貴方は、その書き込みを見てふとした好奇心から鏡を覗き込んでしまい、
鏡の中に引き込まれてしまう。


視点⇒榊船・亜真知



 ―夜中の零時ちょうどに鏡を覗き込むと、鏡の中に写ったもう一人の自分に鏡の中に世界に引き込まれてしまうとか…。

 これがゴーストネットに書き込まれていた事。それを最初見た時は正直【胡散臭い】という気持ちが大きかった。だが、だからこそ興味を持ったのかもしれない。
「…鏡の中の自分ですか…このような書き込みがなければ考える事すらしなかったのでしょうね」
 時計を見ると零時十分前だった。亜真知は鏡を覗き込んでみる。当然のようにソレは冷たく反応もない。
「……え?」
 亜真知が突然声をあげたのは鏡の中の亜真知が笑いかけてきたように見えたから。
「……気のせい、ですわよね?」
 時計はまだ零時を指してはいない。少し怖くなった亜真知は鏡に布を被せて、自分で先程いれた紅茶を一口飲んだ。
「信じていないわけではないのですけれど…」
 苦笑混じりに呟く。その時ボーンと零時を知らせる時計の鐘の音が鳴り響いた。
「…時間、ですわね」
 亜真知は鏡に被せた布を取り、意を決して鏡を覗き込む。
 だが、何も起きない。
「…何も起きませんわね。やはり嘘だったのでしょうか?」
 少し安心したような、がっかりしたように溜め息を漏らす。だが、それが嘘ではない事に数秒後に分かる事になる。
「鏡を片付けなくては…」
 亜真知が鏡を片付けようと手をかけたとき、鏡の中から腕が現れて亜真知は声を出す間もなく鏡の中に引きずり込まれた。
「…いたっ…」
 投げ捨てられるように亜真知は倒れこむ。床は冷たく氷のようだった。
「来てみたかったのでしょう?いかがですか?鏡の中の世界は」
 亜真知は起き上がりながら、自分に話しかけてくる人物をゆっくりと見やる。
「あなた…は…」
 亜真知は驚いたような表情でその人物を見た。目の前に立つのは紛れもなく亜真知自身だった。
「これからはあなたがここで暮らしてください。わたくしの物真似人形として。代わりにわたくしが外の世界にいきますから」
 にっこりと笑って『亜真知』は数多く並ぶ鏡の一つを潜り抜けた。
「まっ−…」
 待って、と亜真知は『亜真知』を追いかけ、鏡を潜り抜けようとするが鏡にぶつかり痛い思いをするだけだった。
「……前言撤回ですわ。書き込みは嘘ではなく本当だったようですわね」
 困りましたね、と本日何度目かの溜め息をつく。とりあえずココで大人しくしていても何の解決策にもならないと感じ、亜真知は何かないものかと歩き出す。
 鏡の中は外の世界の反対の世界があると思っていたが実際は何もなかった。ガラス張りのように鏡の迷宮があるだけだった。遊園地のアトラクションのように陳腐なものではなく、迷い込んだら出られなくなる…本気でそう思わせるようなものだった。
(実際に迷っているのですけれどね…)
 それなりにピンチな状況なのだが、亜真知は何故か落ち着いていられた。逆にこのような状況だからこそ落ち着けるのかもしれない。
「…外の様子が気になりますわね。鏡にモニタリングできますでしょうか…」
 力が使えればここから脱出もできるかもしれない。逆に力が使えなかったら絶望的だ。
「…ふぅ…」
 亜真知は意識を集中させて力を使ってみる。何とか力は使えるようで目の前にモニターが現れ、外の様子を見る事ができた。その中に『亜真知』も確認できた。
「…ここは遊園地、でしょうか?」
 モニター越しに見える風景は最近よくTVのCMで見る遊園地だった。時間が時間なので閉園しているのだろう。ライトも何もついておらず真っ暗だった。
「とりあえず、何も問題はないようですわね」
 亜真知は今、自分がいる場所を見回してみる。何もない、静寂と孤独のみが支配する世界。一人でいるにはつらい世界だと思う。外の世界と一番近く、一番遠い場所なのかもしれない。
「…外に出たい、という気持ちは分からなくもないですわ」
 こんな退屈な場所にいて、遊ぶところも何もないのだから外に興味を持つのは当然だと思う。
 亜真知は力を使えば、外に出る事も可能だったが、もうしばらくはココにいてもいいかなという気分になっていた。同情とかではなく、もし自分が逆の立場だったら?という事を考えてしまったからだ。
「しばらくは様子を見てもいいですよね。何かあったら外に出ればいいだけですし…」
 無理に出て行っても解決にはならない、解決どころか事態を悪化させかねないと判断した亜真知はとりあえずはおとなしくしておく事にした。



「起きてください、………こんなところで寝ていると風邪を引きますよ?」
 ふいに体を揺すられる感覚に亜真知は目を開く。どうやら待っている間に寝てしまったらしい。
「なんで外に出てこなかったんですか?」
 亜真知の目の前に『亜真知』が座り込む。自分を前に話すというのは妙な感じだった。
「無理やり出てきてほしかったんですか?」
 欠伸を噛み殺しながら目の前の『亜真知』に話しかける。
「そうではないですけれど…絶対出てくると思ってましたから。無理やり鏡の中に引きずり込まれたんですよ?」
 状況を分かってます?と亜真知に問いかけてくる。
「分かってますわ。でも外に出さないつもりだったのなら、なぜ力を使えるようにしていたのですか?力を使えないように結界を張ることも可能だったはずです」
 亜真知はにっこりと笑いながら話す。すると『亜真知』は下を俯きながら口を開いた。
「ずるいですわ。もっと…わたくしを責めてくだされば…心置きなく外の世界にいけましたのに…」
 でも、と『亜真知』は言葉を区切りながら言う。
「外の世界。絶対に見ることはないと思っていましたのに…。嬉しかったですわ。あなたは優しいのですね」
 自分に誉められて、亜真知は複雑な気持ちで苦笑いをする。
「もう、帰ってください。元々わたくしは鏡の中の住人、外の住人に取って代わるなどできるはずもなかったんです」
 少し淋しそうに笑う『亜真知』を見て自分がいかに幸せなのかを実感する。亜真知にとっては当たり前のことでも『亜真知』にとっては夢のような事なのだという事が…。
「…あの鏡を抜ければ帰れますわ」
 驚かせてすみません、と『亜真知』は最後に付け足した。
「…それでは、わたくしは戻りますわ」
 さようなら、と『亜真知』に告げて鏡を抜けた。
 元の場所に戻る途中で、いつもは無理だけど時々なら変わってあげる事も可能ですわよね…と亜真知が考えていた事に『亜真知』はまだ知らない。
 “二人”が再び出会うのは、そう遠い事ではないのかもしれない。



□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】
1593/榊船・亜真知/女/999歳/超高位次元知的生命体・・・神さま!?
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

>榊船・亜真知様
いつもお世話になっております、瀬皇緋澄です(^−^
【鏡の中の迷宮】に発注をかけてくださいましてありがとうございます!
またまた亜真知様を書けてうれしいです〜。
分かりにくいかもしれませんが『亜真知』がドッペルゲンガーの方です(^−^;
【鏡の中の迷宮】はいかがだったでしょうか?
ご意見等がありましたらどうぞです〜。
では、またお会いできる事を祈りつつ失礼します〜。
                  −瀬皇緋澄