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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


リフレインが叫んでる
●オープニング【0】
「純、聞いた?」
 ノートパソコンから顔を上げ、天川高校『情報研究会』会長の鏡綾女は言った。いつもの『情報研究会』部室でのことだ。
「何を?」
 資料整理中だった副会長の和泉純は、作業の手を止めて綾女の方を向いた。
「んー、先週くらいからかな。鈴浦海岸で真夜中、綺麗な歌声……なのかな、それが聞こえてくるんだって。お姉ちゃんから聞いた話なんだけど」
「へえ。誰かが練習してるのかな」
「それだけだったらいいんだけどねー」
 小さな溜息を吐く綾女。はて、他に何かあるというのか?
「聞いた人の耳に、その歌声が残り続けるって話だよ。まるでリフレインみたいに」
「……そうなの、綾女さん?」
「うん。そうみたい。どんな歌なのかお姉ちゃんに聞いてみたけど、分かんないんだって。何の歌か、どこの歌かも。なのに耳には残り続けて……不思議だよね」
 綾女が首を傾げた。しかし、ややあって笑みを浮かべる。この表情、どうも何か思い付いたらしい。
「ね、純。今日デートしよっか」
「あ、うん。別にいいけど……どこ行くの?」
 綾女のデートの誘いに、笑顔を見せる純。
「鈴浦海岸で、真夜中に♪」
「えっ?」
 純は困ったような視線をこちらへ向けてきた――。

●低気圧の及ぼす影響【1D】
 鈴丘新聞社・資料室。
「へえ……ヨットが何隻か海へ流れ出してるのね」
 1週間ちょっと前の新聞に目を通しながら、シュライン・エマが小さな声でつぶやいた。鈴浦海岸の謎の歌声について調べている最中に、この記事を見付けたのであった。
 記事によると、先週冬美原を通過した低気圧の影響で天気ともども海も大荒れとなり、ヨットハーバーに停泊していたヨットが何隻か海へと流れ出したのだそうだ。
 その3日後には、流れ出したヨットのほとんどは回収出来たが、1隻だけ未だ発見・回収出来ていないという記事も載っていた。
(……見付かっていないヨットが、居場所を伝えるために歌ってる?)
 一瞬そんなことを思ったが、すぐさま頭を振ってその考えを頭の外へ追い出した。まあ可能性はゼロではないのかもしれないが、まだ何かの加減でヨットが歌声みたいな音を発していると考えた方が現実的ではある。
「見た所、先週からの出来事で関係ありそうなのは、このくらいよねえ」
 思案するシュライン。冬美原全域で考えれば交通事故だとか火事だとか、そんな事件はもちろん起きている。けれども、鈴浦海岸に関係する事件に絞ると、目につくのは前述の事件くらいであった。
(波にさらわれたとか、海で溺れた事故もないのよね)
 念のため、シュラインは1ヶ月ほど前まで遡って海での事件事故も調べてみたが、やはり見付からなかった。
 ネット検索でその手のサイトも調べてみたが、件の歌声に関する投稿は精々2つ3つしか見付からず、綾女の話以上のことは書かれていなかった。
「むー……低気圧の通過で、何か異変が生じたと考えるべきなのかしら……」
 今ある情報で推理するなら、そうなるか。何にしろ、現場で実際に体験してみる他にはなさそうだ。

●静かな海岸【3】
 夜中・鈴浦海岸――砂浜の波打ち際に、1組の少年少女が寄り添うように立っていた。
「静かだよね、純」
「うん……」
「先週の大荒れの天気が嘘みたい」
「うん……低気圧が通過した時だよね。海も荒れて、ヨットが流出したらしいけど……全部見付かったのかな」
 それは綾女と純のカップルだった。この時期の海岸は冷えるのであろう、綾女はさらに純へと寄り添った。
「もっと何か着てくればよかったかな」
「うん……」
「ふふっ。でもそうすると、こんなに寄り添ってないけどなあ」
 穏やかな海、夜空には丸く銀色に輝く月と瞬く綺麗な星たち、くるくると上空を旋回している2羽の大梟、そしてどこからか漂ってくる美味しそうな匂い。えっ……美味しそうな匂い?
 その美味しそうな匂いは、近くの砂浜を見下ろす駐車場の方へも風に乗って届いていた。駐車場には黄色いビートルが1台、その前に眼鏡をかけた茶髪で2つに分けた三つ編みの女性の姿があった。
「こんな時期に海岸でパーティ?」
 防寒のためか厚手のジャケットを羽織ったその女性――朝比奈舞は、砂浜の光景を見て一瞬眉をひそめた。砂浜には、1台のカセットガスコンロを囲んだグループが居たのである。
 カセットガスコンロの前には、振袖を着て防寒具を羽織った1人の幼女が居り、せっせと寸胴鍋の中からお椀におでんを取り分けていた。
「食べた分の代金は、そこの箱の中に入れるのじゃ!」
 と言ったのは、おでんを取り分けている本郷源。そばにはちゃんと『りょうきんばこ』と書かれた箱が置かれていた。中には小銭がバラバラと入っている。
「はふはふ……味が中まで染みてて旨いな。光夜、ちゃんと食べてるか?」
「食べてるって。けど身体の中から温もるよな〜、北斗」
 温かいおでんに舌鼓を打っているのは、守崎北斗と御崎光夜の2人である。各々2杯目に取りかかった所か。
「おでんには酒がよく合うが……調査中だからな」
 そう言ったのは真名神慶悟である。こちらは3杯目を受け取ったばかりだった。
「今夜は特別に勉強して3割引なのじゃ」
 ぐるり3人の顔を見回して、源が笑みを浮かべて言う。普段営んでいるおでん屋台ならともかく、今夜のこれは臨時商い。多少の不備もあるということで、源が弾き出したのが3割引という結論であった。
「美味しそう〜、あったかそ〜」
 源たちの方をじっと見つめる綾女。不思議であるが、他人が美味しそうに食べている姿を見ると、どうして自分も食べたくなってしまうのであろう。閑話休題。
 そんな綾女の前に、すっと温かな湯気を立ち上らせるカップを差し出した者が居た。ダウンジャケットを羽織ったシュライン・エマである。
「飲む? 魔法瓶に野菜スープ入れてきたんだけど」
 用意万端と言うべきか、シュラインは温かい飲み物を用意してきていた。ちなみに野菜スープだけではなく、珈琲もある。
「わあ、いただきまーす☆」
 ぱっと表情を輝かせ、カップを受け取る綾女。3口ほど飲んでから、純へと手渡した。
「はい、純。残りは全部飲んでいいからね」
「ありがとう綾女さん。じゃ……いただきまーす」
 こくこくと野菜スープを飲み干す純。この様子から、2人が仲よいことが窺い知れる。
「それにしても静かねえ……」
 穏やかな海を見つめ、シュラインがつぶやいた。聞こえてくるのは波の音だけ、未だ歌声は聞こえてこない。
「うん、静かだよね。ほんとに聞こえてくるのかなあ?」
「とりあえず、根気よく待つしかないでしょう」
 3人の背後から、青年の声が聞こえてきた。振り返るとそこには宮小路皇騎と、皇騎に似た面影のある30歳くらいの見た目麗しい細身の女性が立っていた。
「あれ? お姉さん……ですか?」
 純が皇騎と女性を交互に見て尋ねた。すると皇騎はほんの少しだけ照れながら、こう言った。
「母です」
「初めまして。皇騎の母で、宮小路綾霞と申します」
 と言ってにこっと笑うと、宮小路綾霞はぺこりと頭を下げた。
「わっ……若〜い!!」
 目を丸くする綾女。純と同じく、皇騎の姉かと思ったのだから、その驚きは当然だろう。
「皆、例の噂を調べに来たのね……たぶん」
 その頃、舞が砂浜に降り立って、茶色い瞳で辺りをゆっくりと見回していた。手には歌声を録音するためなのか、テープレコーダーが握られていた。
 かくして、砂浜には歌声を調査に来た10人が勢揃いしたのであった――。

●推測【4】
 砂浜に居た者たちは、自然と源のおでんの回りに集まっていた。見る見る間に、寸胴鍋の中の具が減ってゆく。
「やっぱりおでんを持ってきて正解だったのじゃ」
 ほくほく顔の源。海岸は寒いと踏んで来てみたら、まさにその通りであった。具の減り方が、それを証明していた。
 おでんの他には、シュラインが魔法瓶に詰めてきた野菜スープに珈琲もある。これだけあれば、身体を温もらせるには十分であった。
「ごちそうさま! それじゃ俺、ちょっと浜辺散策してくるな」
 おでんを食べ終えた北斗は、シュラインから懐中電灯を借り受け、周辺の砂浜の散策に出かけていった。何か原因となっている物がないか、調べるためである。
 何かあればそれを詳しく調べればよし、なければないで原因は他にあるのだと絞り込める。ゆえに、散策が無意味ということはない。
「なるほど、歌声を聞いて悲しい気持ちになった人は複数居る……と」
 舞はメモを手に、綾霞と皇騎から話を聞いていた。体験者本人から聞いたという話である。
「ええ。話を聞いた方はそれだけでしたそうですけれど、お連れの方は涙されたそうですよ。ひょっとしたら、個人差があるのかもしれませんわね」
「こちらも似たようなものですね。綾女さんのお姉さんがされている番組のスタッフの方にお聞きしたんですが、先月亡くなられた祖父のことを思い起こされたらしいです」
 相次いで答える綾霞と皇騎。皇騎の言葉を聞いて驚いたのは綾女である。
「え? あの話って、お姉ちゃんの番組スタッフさんからだったの? お姉ちゃん、何でそんな大事なこと黙ってるのかな〜!」
「……まあまあ、綾女さん」
 怒ったように言う綾女を、苦笑して純がなだめた。
「そうすると……噂の歌声には、感情に干渉する作用があるのは、間違いないとみていいのかしら」
 メモをまとめながら、そう推理する舞。体験者の話が出ている以上、歌声には何らかの力が込められていると考えておいた方が無難なのかもしれない。
「歌い手が」
 不意に慶悟が口を開いた。皆の視線が慶悟へと集まる。
「歌い手が何か訴えようとしているのかもしれない。歌声が聞こえるだけだというのならともかく、耳に残るというのは」
「どういうこと?」
 珈琲を飲む手を止めて、シュラインが尋ねた。
「古来より声や言葉には霊的なものや魔力が宿るとされる。呪文、言霊、西洋の海の怪異の歌声然り……人の心を揺らし、惑わし、高揚させる」
「例えば、セイレーンやローレライですね」
 慶悟の説明が一区切りした時、皇騎が口を挟んだ。
 セイレーンはギリシャ神話に登場する半身が鳥である魔女(鳥ではなく魚であるという説もある)、ローレライはドイツのライン川に住まうと言い伝えられていた魔女である。どちらも歌声で船乗りたちを魅了し、船を難破させるという伝承がある。
「サイレンという言葉は、このセイレーンが語源になってるそうですね。ちなみにフランス語だと、シレーヌと読むそうですが」
 付加知識を披露する綾霞。話はまだ続く。
「……何らかの霊的な関わりがあるとは、私も思いますね。ただ、その原因となっているのが分かりませんけれど」
 綾霞はそう言い静かに頭を振った。
「でも……どんな歌なんだろうな? 歌ってるのって」
 光夜が皆に尋ねるように言った。答えは当然出るはずがない。この場の誰しも、未だ歌声を耳にしていないのだから。
「もしオレの知ってる歌なら、一緒に歌ってみようかな。一応オレ、歌が得意なんだぜ」
 得意げに言う光夜。それは非常に楽しみである。
「アニメの曲でも歌うのか?」
 そんな光夜の後ろから、北斗の声が聞こえてきた。どうやら一回りしてきたらしい。
「何だよ、元気になるオープニングとかあるだろ? 口ずさみたくなんねー?」
「そりゃあるけどな〜。俺はほら、あの暴力描写だかで問題になった映画のエンディングかな。何気に好きなんだよ歌詞とか」
 シュラインに懐中電灯を返しながら、北斗が光夜に言った。
「お帰りなさい。何か見付かった?」
「ぜーんぜん。怪しい人も物もなし」
 溜息混じりにシュラインへ答える北斗。そして、海の方を向いてパンパンと拍手を打った。
「来年こそはいい年になりますように」
 ちと時期は早いが、来年の願掛けをしている様子。そんな北斗へ、苦笑いを浮かべた綾女が声をかけた。
「あのね。ここ……日が沈む方だよ」
「へ?」
「ここ、冬美原の一番西だもん。拝むなら、東の鈴糸山の方を向かないと」
「あ……」
 さて、北斗の願掛けは叶うのか。それは来年のお楽しみ。

●訪れし瞬間【5】
 そうこうしているうちに時間は刻々と過ぎてゆき、間もなく日付が変わろうとしていた。そんな時――。
「みゃあみゃあ!」
「にゃあにゃあ!」
 源の防寒具の中から、黒と茶トラの仔猫たちがぴょこんと顔を出した。仔猫たちはしきりに興奮したように鳴き続けていた。
「ど、どうしたのじゃ、にゃんこ丸?」
 突然鳴き出した仔猫たちに問いかける源。今の今まで中でおとなしくしていたのに、どうしていきなり興奮しているのか?
 その瞬間――一同は明らかな異変を感じていた。耳に聞こえてきたのだ、歌声が。
 それは噂通りに綺麗な歌声。女性、いや少女のものであろうか。確かに歌声であり、敵意は全く感じられない。けれども、それがどこの誰の何の曲であるのか、本当に分からなかった。
「誰が歌ってるんだ……?」
 北斗が警戒しながら、ぐるっと辺りを見回した。だが、自分たち以外には誰の姿もない。
「あ……やべ、涙が……」
 目元を押さえる光夜。瞳の端に涙がうっすらと滲んでいた。しかしそれ以上に酷いのは綾女だった。
「うっ……ううっ……うあ……」
「あ、綾女さん!? どうしたのっ!」
 何ということか、綾女がぼろぼろと涙をこぼしているのである。純はハンカチを取り出すと、綾女の目元をそれで押さえていた。
 他の皆も口には出していないが、各々に何かしら感じていることはその表情で推し量ることが出来た。恐らくは、悲しい気持ちを――。
「これ……夢じゃなかったら、間違いなく沖の方から聞こえてきているんだけど……」
 少し息を吸ってから、シュラインが言った。歌声を辿ると、確かに沖の方を向いてしまうのだ。
「……少し弱々しさを感じるのは気のせいか……?」
「それに、何か助けを求めているような気も」
 口々に言う慶悟と綾霞。その時、はっとしたように舞が叫んだ。
「気がするんじゃない! 本当に助けを求めてる……!」
 それを聞いた皇騎は上空を向いて、何やら手で指示をした。すると上空を旋回していた2匹の大梟が、沖へ向かって一目散に飛んでいった。
 しばらくし、沖合いで大梟たちが旋回を始めた。その下に、何かがあるらしい。
 正体を確かめるべく一同はヨットハーバーに移動し、船を借り受けることにした。そこにはちょうど真夜中のクルージングに出ようとしていたクルーザーが居たので、事情を話して何とか乗せてもらうことに成功した。
 そして皇騎が方向を指示することにより、ただちに現場へと向かっていった。

●歌声の真実【6】
 現場に着いたのは、歌声を耳にしてから1時間ちょっと経った頃である。ヨットハーバーに移動した時には聞こえなくなっていた歌声が、現場に近付くにつれてまた聞こえるようになっていた。
「あそこに何か沈んでるぞ?」
 海中を指差す北斗。そして一同が海の中に目の当たりにしたのは――壊れた1隻のヨット。その下に、何かの姿が見えていた。
「うみゃあー!」
「うにゃあー!」
「こら、にゃんこ丸! 勘違いするでないのじゃ! あれは魚ではないのじゃ!!」
 もぞもぞと防寒具の中から這い出ようとする仔猫たちを、源が必死で押さえる。そう、見えていたのは魚などではない。
「人魚か……」
 ぼそっとつぶやく慶悟。上半身は人間の、下半身は魚の姿である生物――人魚がヨットの下敷きとなっていた。
「手が動いてる……生きてるわ。助けないと」
 様子を窺っていた舞が、皆の方へ振り返って言った。
 そこで慶悟が式神たちを放ち、障害物となっていたヨットを持ち上げて、下敷きになっていた人魚を引っ張り出そうとした。
「歌声って……助けを求めてのものだったのね」
 作業を見守りながら、シュラインが言う。今となっては分かる。何故歌声が聞こえたのが先週からだったのか、そして何故悲しい気持ちにさせたのかも。
「夜中に聞こえたのは、魔力が増幅されるからだったのかもしれませんわね……これによって」
 すっと上空を指差す綾霞。そこには銀色の月が丸く輝いていた。
 しかし引っ張り出された人魚は1人ではなく、2人。少女の人魚を守るような形で、少年の人魚が覆い被さっていたのである。おかげで少女の人魚の方には、目立った外傷は見られなかった。
 けれども残念ながら、少年の人魚がすでにその生命の光を失っていたのは誰の目にも明らかだった。何故なら、少年の人魚の身体はもう腐敗が始まりつつあったから……。
 浮かび上がってきた少女の人魚は、少年の人魚を強く強く抱き締めて、声もなく涙を海中にこぼした。何粒も、何粒も、止まることを知らず。
 やがて少女の人魚は、涙を流したまま一同の顔を見回し、頭を下げた。まるで助けてもらった礼を言うかのように。
「……あのさ……」
 少女の人魚の様子を見かねたのか、光夜が声をかけた。だが、その後の言葉が続かない。伝えたいことはあるというのに。
 しかし、少女の人魚はそんな光夜の気持ちを察したのか、笑顔を浮かべてこくんと頷いた。涙を流しながらのその笑顔が、また痛々しさを感じさせる。
 そして――少女の人魚は、少年の人魚を抱いて寄り添いながら、少しずつ少しずつ一同の前から離れてゆく。
 水平線に向かってゆき、次第に小さくなる2人の姿。一同の耳に、またあの歌声が聞こえてきた。少女の人魚が、歌って聞かせてくれているのだろう。
 ところが、聞こえてくるのは少女の人魚の歌声だけではない。それにハモるように、少年の声が微かに聞こえているのだ。考えられるのは少年の人魚であるが……間違いなく死んでいたのだ。生き返るはずもない。
「……きっとあたしたちにお礼を言ってるんだと思うな……あの男の子の人魚が……」
 綾女がぽつりとつぶやいた。
「だってさ……あたしたちが気付かなかったら、あの娘も死んじゃってたんでしょう……? だとしたら……だとしたら、それって悲しいよね。とっても……」
 大粒の涙を浮かべ、綾女が皆に言った。そんな綾女の震える肩を、純がそっと抱いた。
 一同は2人の姿が見えなくなるまで、その場に留まっていた。
 月明かりに照らされる穏やかな海。波の音に混じり、いつまでも、いつまでも……リフレインが叫んでいた。

【リフレインが叫んでる 了】


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 整理番号 / PC名(読み) 
                   / 性別 / 年齢 / 職業 】
【 0086 / シュライン・エマ(しゅらいん・えま)
     / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員 】
【 0389 / 真名神・慶悟(まながみ・けいご)
                   / 男 / 20 / 陰陽師 】
【 0461 / 宮小路・皇騎(みやこうじ・こうき)
        / 男 / 20 / 大学生(財閥御曹司・陰陽師) 】
【 0568 / 守崎・北斗(もりさき・ほくと)
                   / 男 / 17 / 高校生 】
【 1108 / 本郷・源(ほんごう・みなと)
            / 女 / 6 / オーナー 小学生 獣人 】
【 1270 / 御崎・光夜(みさき・こうや)
              / 男 / 12 / 小学生(陰陽師) 】
【 1548 / イヴ・ソマリア(いヴ・そまりあ)
        / 女 / 美少女 / アイドル歌手兼異世界調査員 】
【 2335 / 宮小路・綾霞(みやこうじ・あやか)
   / 女 / 43 / 財閥副総帥(陰陽師一族宗家当主)/主婦 】


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■         ライター通信          ■
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・冬美原へようこそ。
・『東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜(界鏡線・冬美原)』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全11場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通す機会がありましたら、本依頼の全体像がより見えてくるかもしれません。
・今回の参加者一覧は整理番号順で固定しています。
・大変お待たせいたしました、『東京怪談SR』に移行してから初の冬美原でのお話をお届けいたします。旧『界鏡線・冬美原』は、『界鏡現象〜異界〜』に場所を移して継続することとなりましたので、今後ともよろしくお願いいたします。
・アンケートなどは旧『界鏡線・冬美原』の名残なのですが、PCさんのイメージなどの参考とさせていただくために実施させていただいております。現時点では、今後も継続予定です。また、旧『界鏡線・冬美原』で得られた情報やアイテムなどは今後とも有効です。
・さて、今回のお話ですが……タイトルがほぼ全て物語っている気がしないでもありません。一応誤解ないように補足しておきますが、歌声が聞こえてきていた時点で少年の人魚はすでに亡くなっていました。なので、救えるものが救えなかった、ということではありませんので。ただ、歌声の真意に誰も気付かなかったなら……それこそ悲しい結末になっていたことでしょう。それこそ、救えるものが救えなかったことになる訳ですから。
・シュライン・エマさん、66度目のご参加ありがとうございます。はい、あの曲です。気象情報に着目したのはよかったと思いますよ。今回の事件の原因を挙げろと言われたら、間違いなく低気圧の通過になるでしょうから。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。
・それでは、また別の依頼でお会いできることを願って。