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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


Battlefield

【OP:戦いの予兆】
「厭な雨だな…」
織田義昭は、鞄を傘代わりにして、走っていた。
あの時を思い起こされる雨。
そう、神格暴走者と戦った時のような…。
ネットカフェで同じく雨宿りしている茜と雫にあった。
「よう」
「こんちわ〜織田さん」
今は三角関係という緊張に慣れたのか、それとも少しずつ大人になったのか分からないが、仲良し3人組みたいに仲が良い。
「いきなりメールで呼び出すから…」
「ビックリしちゃ行けないよ…よしちゃん」
「どうした茜?」
「ちがうの…これ…」
と、雫はパソコンの画面を指さす。
「Wishサイトと同じレイアウト……あいつ…再開させたのか?」
義昭は過去の事件を思い起こす。
名前は知らないが…目が深紅の不気味な男。
一般人から見れば只のオカルト研究オープンサイトなのだが…能力者から見ればサブリミナルで挑戦状をネットで公開しているのだ。
「前にも似た書き込みはあったけど…ただ其れは「能力者は自分一人だけでない」っていうシグナルだったよ?」
「でも…これは…バトルロイヤル…」

サイトの真の意味は茜と雫により解読済みだった。
「せんせーが忙しいときになんて事をしやがるんだ…あいつは!」
―これを視たもの戦うが良い。この言葉読めるもの、其れは選ばれし者。我は待つ。我と戦える権利を得て嵐の中の寂れた神社にて待つ―


【心囚われし田中裕介】
電話にて織田義昭から、この事を聞いた田中裕介は、その「相手」を倒す手助けをすると約束する。しかしながら、様々な事件を解決したり、孤児院の手伝いをしていたりと心身共に疲れ果てていた。
そんな無茶な身体で、このサイトを見ることはいけなかった。
URLを引き出し、そのサイトを見た瞬間裕介は
「この内容…誰がこんな危ない事…まずい!意識が…切れる…」
と、そのまま倒れ込んだ。
そして、やおら立ち上がり、トランクと大鎌を持ち、虚ろな目で家を出て行った。

あ、路地裏で何か気配を感じる。
ああ、俺と同じように「戦う」資格を持つ相手だな。
でも殺しはしないよ。

見た限り、裕介の目の前では、女性の陰陽師と男の魔術師が術合戦をやっているようだ。暫く裕介は様子を見る。相手は彼の存在に気が付いていない。
そして勝利したのは、女性の陰陽師だった。
そして気が付いた彼女は
「あなたも?挑戦者?私が相手してあげる」
と術を仕掛けてくる。
しかし裕介の方が何倍も速く、大きな布で包まれる女性。
そして、陰陽師の悲鳴が路地裏に響き渡ったが、大雨の所為でかき消され、大通りには届かなかった。


【着せ替え魔】
ネットカフェで雫達と涼、紅麗があつまる。電話で皇騎が既に神社に待機していると連絡が入った。
紅麗は義昭にライバル視して視線を離さない。当の相手は、全く気にもとめず、今後の計画を離そうとしているのだが。
いきなり悲鳴が聞こえた。
「なんだ?」
涼が素早く立ち上がり、続いて紅麗と義昭がカフェからでる。
走って逃げているのは、メイド服の女の子。霊力がかなり活性化されているので唖然としながらも、彼女を止めて落ち着かせた。
「相手は変態よ!あいつは、あいつは!」
と流石に錯乱しているようだ。
雨水が跳ねる足音が聞こえる、それはゆっくりとしたものだ。
大雨の中視界が悪い。
「彼女を奥に」
「分かった」
と、涼が雫に頼んでメイド服の女の子をカフェに入れる。
「何者だ?」
「一寸まって!」
茜が涼を制した。
目の前に現れたのは長髪に、大きな布、そして異様に大きなトランクを持った長身の男。
「裕介さん?」
「…うぇ?あ、茜さん?」
そう、逃げてきたメイド服の女の子が言っていた「変態」はこの男、田中裕介だった。
「とうとう、悪党になっちゃったのね…」
茜はため息を吐き、ハリセンを握りしめていた。
「ど、どういうこの何だ?」
涼は状況を把握出来ない。
義昭が耳打ちして事情と推測を話すと、涼はため息を吐く。
「噂高い、メイド趣味の神室川の学生さんでしたか」
大雨の中、暫く沈黙が続く
別の意味で気分が滅入る、涼と紅麗、義昭と茜だった。
「しかし、戦い慣れしているから、強敵だよ」
茜が、制服姿のままハリセンを構える。一番効果があるのはこれだ。
義昭は無手、紅麗も涼も洗脳されている裕介を(気が引けながら)助けるために構える。
「君…危ない…もうすぐ…ああ」
裕介は布を持って襲いかかる。
涼は霊刀『正神丙霊刀・黄天』と『正神丙霊刀・黄化』の両刀を具現化し、二刀流で抑えようと試みる。
紅麗は未だ生身なので、義昭から木刀を借りて向かう。
義昭は無手のまま動かなかった。
紅麗と涼が裕介とすれ違った。
気が付けば、
紅麗と涼はパンツ一丁になってしまっている。
「なんだこれ!」
しかし、裕介の布は2人の剣で切り裂かれていた。そして裕介の顔や肩にも傷が入る。
「早着せ替えの術」が攻撃無効化するのと同時に当たってしまったようだ。
涼の剣は再召還されたが、流石にこの大雨の中でパンツ一丁では恥ずかしくて固まる。紅麗もしかりだ。
「なんて言う技だ!」
2人は身震いながら叫んだ。
全く持って理不尽極まりない。
裕介は自己防衛反応で、大鎌を取り出し、無防備になった2人に向かおうとする。
その時に、大雨の音さえもかき消すハリセンの音が響いた。
裕介の頭に茜のハリセンがクリーンヒットしたのだ。
動作を止めた裕介にパンツ一丁の2人が、渾身の蹴りを彼に食らわして、着せ替え魔を撃退した。
「さむい〜」
雫が急いで毛布を持ってきて2人に渡す。
義昭はため息を吐いて裕介を持ち上げ、カフェ内で神格を利用し、裕介を精神支配から解呪した。無理矢理起こすのは危険だろうと判断。
風邪を引かないように茜がトランクから、2人の服を見つけて、個室で着替えてくるよう言った。
もちろんメイド服で逃げてきた女の子の服らしいものも探す。
「全く、こまった人だよね」
「ああ」
そのあと、意識を取り戻した裕介は平謝りするしかなかった。


【神の剣同士の戦い?】
「バトルロイヤルだったな」
紅麗が着替えを済ましてから、義昭に言った。
「其れよりまず「あいつ」を仕留めてからだ」
「いいや前から言っていたが手合わせさせて貰う!」
「一寸!今はそれどころじゃないでしょ?」
と紅麗を止めようとする茜。
「そうですよ、無駄な戦いは止めていた方が良い」
涼が茜に賛同する。
「これは俺と義昭の問題だ。口出ししないで欲しい」
「蓮の間でからかわれていたことを根に持っているんだよ。子供だ」
「よしちゃん、煽らないの!」
「うぅ!良くも言ったなぁ」
紅麗は個室を借り、暫くした後、死神化して戻ってきた。肉体を安全な場所に置いてきたのだ。
こうしないと紅麗は真の力を発揮出来ない。
「前からの約束だ!手合わせしろ天然剣客!」
「色ボケ死神…焦るな」
「それをいうなぁ!」
「この勝負、目に見えて明らかですけど」
と、着せ替え魔、田中裕介はぽつりと呟く。
隣にいる女の子(先ほどの犠牲者)、雫と茜、涼も頷いた。
口喧嘩で負けている状態、しかも既に死神化して怒っている紅麗。
精神的にお互い子供だが、義昭は全然神格を覚醒していない。
はっきりやる気がないのだ。
「だいたい神域の力を此処で使ってみろ?核爆発同然の結果が起こるじゃないか、紅麗」
「む…」
「今は、バトルロイヤルさせるのはあいつの罠だ。それじゃ先ほどの裕介さんと変わりない」
「キツいこと言いますね…義昭君」
「事実じゃない」
「ごもっともです、茜さん。…済みません」
茜や皆に突っこまれ、ションボリする裕介。
紅麗はやり場のない怒りを、任務の獲物に向けることにした。
「義昭!今度こそ絶対に勝負しろよな!」
と、拗ねたように、紅麗は先に神社に向かおうとした。
「さて、俺たちも向かいますか…」
と涼がいうと、皆が頷いた。
メイド服の被害者と雫は危険ということで、カフェで待つことにした。


【Battlefield】
廃墟に着いたとき皆は驚いた。
気絶している皇騎を見つけたのだ。
急いで茜と義昭が治癒にはいる。
「先に戦いがあったようだ」
と涼が辺りを見渡して言った。
「確かにそうだ。死の臭いがプンプンする」
紅麗も、感知力を数倍にして確認する。
気が付いた皇騎は、
「間に合いましたか良かった」
「どうしたんです?」
義昭が訊ねた。
「他にも能力者が居て、彼らと戦っていたのですよ何とか撃退したのですが、かなり手強かったです」
(TIのことは触れない方が良いですね、戦って気絶させた者が居ない…始末されたか)
「しかし皇騎さん強いですね、30人は倒しているんでは」
「心身とも疲れているか弱い者はかなりコントロールされるようですね、虚無ととを組んでいますあのサイトの主は」
「そうですか、たてますか?皇騎さん」
義昭が央軌に尋ねる。
「え、時間治癒と君の疑似魔法で元気を取り戻しました」
すっと立ち上がり、皆を式神パペットの結界内に招いた。
「おそらく、義昭君や死神の少年が来たことで現れるでしょう…あの主が」
と、皇騎が呟いた。
それぞれが、得意の武器を持ち、辺りを見渡す。
藪の中にはTIのデータ収集機と電磁能力抑制器を持った特殊班が待機していた。

雨は未だ降り続ける。
神社の廃屋から、音も立てずに何者かが来た。見たところ、黒いコートを羽織り、深々と帽子を被った男のようだ。中は闇で見えないが、目の奥からは紅く光る目が印象的である。
「待っていたよ、宮小路君、死神、退魔師、霊刀使い。そして神の子織田義昭」
「宮小路さんと義昭だけ名前呼びか」
紅麗が、文句を言った。
「お前は何者なんだ?」
涼が、霊刀2本を召還し構える。
「しがない魔法使いさ。現代魔術も使うけどね」
彼の声は、奈落から聞こえてくるほどおぞましかった。目は深紅のように紅く、気を抜けば恐怖で身体が動かなくなる。
「さて、貴公たちの戦いを今まで視てきて楽しかった。今度は私と戦うかな?」
「…人を…しかしお前から人の臭いがしない」
紅麗が言った。
「流石死神、よく分かっている。もう何度も名前を聞く定命者がいるから名乗るか…」
どこからともなく、杖をだした男は、
「我は三滝尚恭。魔術師にして忌屍者の大魔技、死を超越し今度は存在を超越する!偉大なる不死の王であり、「虚無者」だ!」
そう叫ぶと同時に、彼には何重もの結界が張られ、少し宙に浮いた。
TIの調査班は彼の姿とオーラにより恐怖でデータ収集出来る状態ではなくなった。
既に固まっている紅麗や裕介達にはこの恐怖のオーラは効いていない。
「忌屍者なら、破壊のみだ」
涼は今までおとなしい雰囲気の青年から、鬼神のような形相とかわる。そして三滝に向かっていった。
紅麗も、仮面を外し死神副隊長に完全覚醒し、『氷魔閻』を抜刀し涼の対角線上に走る。裕介も大鎌を取り出し、辺りを注意する。涼の剣捌きの範囲が大きいので、三滝と戦うのは2人がやっとだ。
茜は神格保持者の神格暴走が神社外に漏れない結界を展開し、その後皇騎の陰陽道のサポートに回る。
義昭だけは、水晶を召還したまま動かないで居た。
何か先が見えたのだろうか。
「仕掛けてきますね」
「ええ、そうですね裕介さん」
裕介が鎌を持ち上げる。
水晶を片手だけで持ち、腕を上げる義昭。
3人の周りから、今まで眠っていたかのような怨霊達が沸いて出来ていたのだ。全員が突っこむことは避けていた事が功を奏した。
しかし予想していた、裕介と義昭が一気に浄化する。残った怨霊は、茜や皇騎の術によって倒された。
三滝と戦っている2人は、この男の杖捌きで全て受け流されている。また、当たったとしても鉄が石に当たったような高い音を発している。なおかつ、周りはどんどん熱くなる。
「馬鹿な!神並の力を持っているのかこの男!」
紅麗が叫ぶ。
紅麗も今の涼も剣捌きも能力者の力も神域だ(紅麗は神格保持者扱いだが)。それを完全にガードしている障壁、そして軽く杖で紅麗を突いたとたん、紅麗は吹っ飛んだ。
「ぐはぁ」
神の力を得てしても三滝に叶わないというのだろうか?
死神の身体になっている紅麗の腹は、完全な闇となっている。其れが侵食してくる。まるで生気を吸い取るかのように。
「そんな…ばかな…」
紅麗はその場で気を失いかけるが、義昭が駆け寄ってきた。
「いきなり飛び出すからだ」
「お前には言われたくない台詞だな」
「死にかけの死神が何を言うか…完全に命吸われているぞ」
「そうみたい、だな…感覚が無くなっている…くそっ!」
「あの人を泣かしたらいけないだろ…」
義昭が悲しそうに言った。しかし怒気は篭もっている
「…そうだな…あの杖、あの杖だ。アレがあいつの力を増幅している」
「分かった。後はゆっくりしていろ。其れまで死ぬな」
義昭はそのまま彼を置いて、神格を最大限まで覚醒させた。

雨は其れに呼応するかのように激しくなる。

「おおおおお」
三滝は涼の剣を受け流しながらも、義昭の神格に感激していた。
「我が求めている力だ!ははは!現世の神の子の神格を得れば我は真の力を手に入れられる!」
「今戦っているのは俺だ!」
「黙れ!定命の者が!」
三滝は、涼に掌をむけ爆炎の魔法を発動させた。そのまま涼は吹き飛ばされる。
運良く、その先には裕介が飛び込み、涼を支えることが出来たがしかし火傷が酷い。そのまま裕介は、師エルハンドから貰っていた軟膏を彼に塗る。

「さぁ、貴公よ!私の糧になるがよい!」
「断る!三滝!離れて下さい、裕介さん!」
一気に「縮地」で間合いを詰める義昭。
そして、三滝の妖気と、義昭の神格がぶつかった。白と黒の対極する光はやがて灰色になって拡散する。
その間に、裕介は茜の元に戻り、時間治癒を頼んだ。皇騎は神剣『天蠅斫劔』と不動明王の『羂索』を喚びだし、光の拡散がおさまるのを待つ。
死に近づいている紅麗は渾身の力で立ち上がり、自分の愛刀を構えなおした。

光がおさまったとき…義昭は血みどろの状態で三滝の後ろに数十メートル飛ばされて落ちる。
しかし、三滝の肉体は、究極奥義天魔断絶を受けた傷が2つあり、杖を持っていた腕がない。
その杖は宙に浮いていた。
「今だ!」
と紅麗と義昭が同時に叫んだ。
「ちっぃ!」
三滝は舌打ちする。皇騎と、裕介、そして紅麗の最強奥義が三滝に向けられた。
「ふははは……」
と、忌屍者は何故か不気味な笑いと共に灰になった。
その場所には、折れた杖があった。そこから紅麗の生気が漏れている。
「勝ったのか…?」
皆は疑心暗鬼だった。
「いや、魂を捕獲していない…逃げられた」
傷が癒えていく紅麗が言う。
火傷が完治したが、疲労が酷い涼は茜に肩を貸して貰い…
「未だ続くのか…あのふざけた行為が…」
と呟いた。
「虚無者…ヒョッとして虚無の境界の一員と言うオカルトテロ集団?」
皆が、そう言って、灰になる三滝を眺めていた。

雨は、戦いの後を洗い流すかのように未だ激しく降り続けている。


【その後】
紅麗はすぐに回復したが、涼や皇騎は暫く入院することになった。それは定命者に有害な忌屍者特有の毒素を吸っていたためである。天空剣門下生の裕介はその毒素を抜く方法を伝授して貰っていたが、着せ替え魔の容疑で逮捕され、暫く取調室でカツ丼を食べているそうだ。後々、退魔組織の神室川が手を施して無罪放免となるだろう。
問題は義昭である。2回の究極奥義の連打、そして光の中では三滝の時間停止によりかなりの攻撃魔法を受けていたのだ。神格治癒も時間治癒も追いつかない状態であり、集中治療室で今もなお眠っている。
医者が言うには、「死んでいるはずなのに脳波が異常に活発」というのだ。もちろん宮小路直属の医療チームなので其れが何を意味しているか知っている。

茜は、義昭を集中治療室の窓からずっと眺めていた。紅麗が心配そうに恋人と共に見舞いに来ている。
「エルハンド…エルハンド戻ってきて…よしちゃんが…」
その場で泣き崩れる茜だった。

雨は未だに降り続ける。茜の涙と同じように。



End

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0461 宮小路・皇騎 20 男 大学生(財閥御曹司・陰陽師)】
【1098 田中・祐介 18 男 高校生兼何でも屋】
【1703 御柳・紅麗 16 男 不良高校生&死神【護魂十三隊一番隊副長】】
【1831 御影・涼 19 男 大学生兼探偵助手?】
【1865 貴城・竜太郎 34 男 テクニカルインターフェイス・ジャパン社長】

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■         ライター通信          ■
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滝照直樹です。

『Battlefield』に参加して頂きありがとうございます。
かなり激戦になりましたが、やっと敵の名前が分かりました。
既にクリエーターショップ異空間書斎〜東京怪談にリストアップされている、『三滝尚恭』です。
如何様臭い強さですが、彼は今後どう動くか謎です。
人として違う存在になった者の思考は、通常考えられないからです。

田中裕介様プレイング爆笑させて頂きました。暫くカツ丼の味を楽しんで下さい(結構すぐ出られますから大丈夫ですけど)

では、又の機会があればお会いしましょう。
滝照直樹拝