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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


鏡の中の迷宮

オープニング

鏡の中に写った自分は、本当の自分だと思う?

―ドッペルゲンガー
自分と同じ姿、声を持つ人物をそう呼ぶ。
彼らは鏡の中から現れるとも言われているが
それが本当のことなのかは定かではない。

題名:鏡の中の迷宮
投稿者:レオナ
本文:夜中の零時ちょうどに鏡の中を覗き込むと鏡の中に引き込まれちゃうんだって!
それで鏡の中の自分と入れ替わっちゃうらしいの。

ゴーストネットに新しく書き込まれたのは、自分と同じ姿をもつドッペルゲンガーのことについてだった。
貴方は、その書き込みを見てふとした好奇心から鏡を覗き込んでしまい、
鏡の中に引き込まれてしまう。


視点⇒海原・みなも

「えっと…ここは…どこでしょうか…?」
 みなもはパジャマのまま呟く。目の前にはみなもそっくりのもう一人の『みなも』がいた。
「ここは鏡の中の世界、自分で来たのよ?あなたは」
 そこでようやくみなもは現在の状況を理解した。え〜と、などと言って今朝見たゴーストネットの書き込みのことを記憶の中から引っ張り出す。

―鏡の中にはもう一人の自分がいて午前零時に鏡を覗き込むともう一人の自分に鏡の中に引き込まれるという。

「ここが鏡の中の世界…ですか…。ということは貴方はあたしのドッペルゲンガーなのですね」
 みなもは目の前にいる自分そっくりの自分に問う。
「そうよ、あたしは貴方のドッペルゲンガー」
 にっこりと笑みを見せながらみなもに答えを返す。いくら『自分自身』とはいえ、目の前の『みなも』は本来のみなもとは少しばかり性格が異なるようだ。
「あたしがここにきたのは…」
「人としての将来も、人としての常識も、人の姿かたち、心さえも、解放されて自由になったらどうなると思います?」
 『みなも』は髪をかきあげながらみなもに聞いてくる。それはみなも自身が心の隅で持っていたことなのかもしれない。将来のことなどに考え疲れている自分がいることに、みなもはだいぶ前から気づいていた。人魚として生きた方がずっと楽なのではないか?人魚として生きればこんな将来のことなどに考え疲れることもないのでは?と考える時間が最近増えた気がする。
「あたしはどうなるのか見てみたい気もするけれど…」
 『みなも』は歯切れの悪い答え方をして、みなもは首を傾げる。
「でも全てから解放されたら…もうこの生活に戻れないのも分かってる」
 その言葉にみなもも下を俯く。今までこんなことを考えるきっかけなどなかった。
「…あなたはどうしたい?あなたもあたしなんだから…」
「あた…しは…」
 みなもは言葉に詰まる。一度決断したら「やっぱりやめた」などと取り消す事ができないのだから。
「わから…ない…」
「分からない?自分のことなのに?」
「自分の事だから分からないんです」
「そう、あたしも分からない、どうしたらいいのかも…。このまま普通の人間として生きる事が正しいのか、それとも人魚として生きた方がいいのか…」
 そう答える『みなも』の手や体は震えている。
「……もしかしたら…」
 みなもは考えていた。自分の不安定な心がそのまま鏡の中の『みなも』にうつったのではないのかと…。もし、そうだとしたら目の前にいる『みなも』を不安にさせているのは紛れもなく自分自身なのだ。
「所詮あたしは鏡の中の住人、外の世界のあなたのことを考える筋合いはないのかもしれないけれど…ここからあなたを見ていて不安でしょうがない」
「違う」
 みなもは『みなも』の言葉に即答で答えた。それは自分で驚くほどの静かな声だった。
「筋合いがない、とかそんなの違います。あなたはあたしなんですもの。心配になるもは当たり前です」
 心配にさせているのはあたしですけど…と苦笑いをしながらみなもは答える。
「…あたしはまだがんばってみようと思います。人魚として生きた方が楽なのかもしれませんけど…色々な事に躓くからこそ生きているんだと思います」
 みなもは目の前にいる『みなも』から目を逸らさずにシャンとした口調で淡々と言う。きっと他の人が聞いたなら『クサイ台詞』としてとられるかもしれないけれど、不思議とみなもに恥ずかしいという感情は無かった。それが本心だったからだ。
「……だから…見ていてください、あたしが自分で決めた道を」
 ね?と言いながら座り込んでいる『みなも』に手を差し伸べる。
「……だったら見せてください。あなたの生き様を…後悔しないような生き様を」
 『みなも』は差し出された手を掴み、立ち上がる。
「もちろんです」
 掴まれた手をグッと握り返す。
「…じゃあ、そろそろ帰って。ここは外の人間がいる場所じゃないから」
 『みなも』はそう小さく、そして淋しげに呟くと手を離した。
「あの鏡を抜ければ、あなたの部屋に戻れるから」
 『みなも』が指差すのは他の鏡より大きな鏡。
「じゃあ、帰ります。あたし……貴方とお話ができてよかったと思います」
 みなもはにっこりと笑みを見せながら鏡の中に消えた。

「…午前一時半…。明日…いえ、もう今日ですね。学校に寝坊しなければいいですけれど…」
 ふぁ…とみなもはアクビを噛み殺す。
 みなもはそれから台所まで足を運び、水を一杯飲んでから寝る事にした。

 だが…このとき、まだ、みなもは自分がした大変な事に気がついていない。
「……あぁぁ…遅刻だ……」
 翌朝、八時半起床、遅刻は免れない状態で学校へと急ぎ、生活指導の先生にたっぷりとお説教を食らう事となる。そして…今日提出の課題にまだ手がつけられていない状態でみなものカバンの中にあるのを、まだみなもは気がついていない。
 これは余談だが、課題の事に気づいたとき、みなもははじめて、鏡にうつる自分を呪ったとか……。





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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】

1252/海原・みなも /女/13歳/中学生

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■         ライター通信          ■
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海原・みなも様>

お久しぶりです。
今回も発注をかけてくださいましてありがとうございます^^!
今回の『鏡の中の迷宮』はいかがだったでしょうか??
ご意見などがあったらぜひどうぞ^^
では、またお会いできる事を祈っております^^
             -瀬皇緋澄