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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


鏡の中の迷宮

オープニング

鏡の中に写った自分は、本当の自分だと思う?

―ドッペルゲンガー
自分と同じ姿、声を持つ人物をそう呼ぶ。
彼らは鏡の中から現れるとも言われているが
それが本当のことなのかは定かではない。

題名:鏡の中の迷宮
投稿者:レオナ
本文:夜中の零時ちょうどに鏡の中を覗き込むと鏡の中に引き込まれちゃうんだって!
それで鏡の中の自分と入れ替わっちゃうらしいの。

ゴーストネットに新しく書き込まれたのは、自分と同じ姿をもつドッペルゲンガーのことについてだった。
貴方は、その書き込みを見てふとした好奇心から鏡を覗き込んでしまい、
鏡の中に引き込まれてしまう。


視点⇒氷川・笑也


 鏡の中の迷宮、それが自分にとって何を意味するのかが全く分からなかった。…だが、彼の目の前にいるのは紛れも無く自分自身だった。
「やぁ、…何か自分に挨拶するのって変だな、そう思わないか?」
笑也は言葉を返すことも無く、ただジッと彼を見ている。そして頬に触れてみる。自分と目の前にいる自分との決定的な違い。それは…頬の傷。母親を守れなかった時についた傷、そしてそれは自分を強くしようと決意した時の傷でもあった。
「ん?あぁ、頬の傷か。俺の頬は綺麗なもんだろ?お前にとっては嫌な傷でしかないだろうけどな」
 からかう様に『笑也』は笑いながら言った。その言葉に少しだけ怒りを感じたのか拳をギュッと握り締めた。それに気づいたのか『笑也』はクスリと笑って言った。
「母さんも俺みたいに育つ事を願っていたと思うけど?俺は」
 これは自分ではありえない、そう笑也は思う。あの事件さえなければいあの自分も目の前の男のようになっていたかもしれない。『笑也』の言うとおり母さんが望んだ姿かもしれない。だけど、笑也にとって目の前の『笑也』を見て嫌悪感しか現れない。
「何か喋れよー。つまんねぇじゃんか」
 首の後ろで腕を組みながら『笑也』は笑也の顔を覗きこんでくる。
「感情ないって本当か?今みたいに言われてムカつかないわけ?俺だったらキレてるけどなぁ」
 鏡の中の自分はよく喋る男だ、と笑也は思う。まさしく鏡だ。自分とは正反対といってもいいほど、違うのだから。
「よくしゃべる男だな…」
 初めて口にしたのはその言葉だった。喋ったのが面白いのか『笑也』はニッと笑うと余計に喋り始める。
「だって俺は鏡だよ?あんたがしゃべらなきゃ俺が喋る。あんたが暗かったら俺が明るい。これは当たり前だろ?」
 いかにも楽しそうに喋る『笑也』を見て、笑也は小さく溜め息をついた。自分でも見たことがない表情で話されると、どうもこちらの調子が狂ってしょうがない。
「まぁ、とりあえず立ち話もなんだし、座れば?」
 そう言って『笑也』はどこから持ってきたのか椅子を取り出し、笑也に座るように促す。いつになったら帰れるのか、と思いながらも椅子に腰掛ける。
「…う〜ん。あ、何か飲むか?」
 またもや、どこから出したのかティーセットを取り出して紅茶を入れ始める。
「……俺をここに連れてきた理由は何だ」「うす
 簡潔に言いたいことを言い、笑也は出された紅茶を飲む。
「う〜ん。いきなりきたな。用事がないって言ったら?」
 茶化すように言うと、笑也は再度溜め息をつく。
「嘘嘘、なんて言ったらいいのかな。会って話をしてみたかった、ってのが本音かな」
 あはは、と照れたように笑いながら言う『笑也』を見て、なんとなく【羨ましい】と思った自分がいた。思った事を素直に言う、表情豊かですぐにくるくると表情を変える。それは一見、簡単そうに見えても笑也にとっては一番難しい事なのだ。
「でも、あんたってうらやましいよ」
「………?」
「だって同じ顔で同じ声で、喋るか喋らないかの違いでこうも感じが違って見えるんだぞ?あんたは他から見ればクールでかっこいいじゃんか。俺なんかお調子者でしか通らないんだぜ?」
 酷くねぇ?と本気で落ち込みながら『笑也』は話を続ける。
「さっき、言ったな、俺にとってこの傷は嫌な事でしかないと。…これは強くなる事を誓った誓いの傷でもある」
 ぶっきらぼうに言うと『笑也』は「知ってる」と答えた。
「俺はお前でもあるんだ。知らない事なんかないよ」
 ニッと笑って席を立つ。
「お前は俺ではありえない。お前はお前で生きてるのだから」
 そう笑也は言うと、少しだけ冷めた紅茶を口に運ぶ。『笑也』はというと、驚いたような表情で笑也を見ている。まさか、そんな事を言われるとは思わなかったのだろう。
「…そっか。だったらお前は大丈夫だな…」
 『笑也』が何のことを言っているのか笑也は理解できずに少しだけ首を傾げた。
「お前ってさ、鏡の中から見ててもすっごく心配なんだよなぁ」
 はぁ、と『笑也』は大げさに溜め息をついてみせる。
「でもさっきの生きてるって言葉聞いて少し安心したよ」
 『笑也』は息を大きく吸い込み、止めていた会話を続かせる。
「過去の事ばかりにとらわれすぎてないって事が分かったしな」
 ニッと先程と同じように『笑也』は笑ってみせる。
「もう、帰れよ。お前が過去の事ばかりにとらわれてるんだったら俺があっちの世界で生きようと思ったけど、それはなかったな」
 『笑也』が指差しながら言う。指をさす方向に笑也は目を向けると、そこには大きな鏡が一つあった。心なしかその鏡は光っているようにも見える。
「そこを通ればここから出る事ができる」
 笑也は無言で鏡の方に歩き出す。
「……じゃ〜な」
 振り向くと『笑也』が手を振っている。それを無視するかのように笑也は鏡を抜け出た。鏡を抜けるとそこは元いた場所。夢だったのかと時計を見れば鏡を覗き込んでから一時間ほど過ぎている。そして自分から香る紅茶の甘いにおい。全てが夢ではない事を物語っていた。
 だが、『笑也』と出会ったことはきっと無駄にはならないだろうと思う笑也だった。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】
2268/氷川・笑也/男/17歳/学生・能楽師

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■         ライター通信          ■
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氷川・笑也様>

初めまして、瀬皇緋澄です^^
今回は『鏡の中の迷宮』に発注をかけてくださいましてありがとうございます^^
『鏡の中の迷宮』はいかがだったでしょうか?
氷川・笑也様のPCはキャラを掴むのが難しかったです^^:
もしかしたら喋りすぎになったかも…とどきどきしながらこれを書いています。
何かご意見などがありましたらどうぞ^^:
それでは、またお会いできる事を祈りつつ失礼します^^
            -瀬皇緋澄