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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ラーメン道中記

オープニング

「うちのラーメンは最高なんです」
いきなり興信所に現れた男はそういった。
最近できたラーメン屋の店長らしい。草間も何度か足を運んだことはあるが不味くはなかった記憶がある。
「…はぁ…」
わざわざラーメンを語りに興信所までやってきたのか、と思いきや。
「うちのラーメン屋が繁盛するようにしてください!」
「は!?」
いきなりの依頼に草間は間抜けな声を出してしまう。
「うちにラーメンは最高なのにお客が来ないのはおかしいでしょ?このままじゃ、うちは一家心中しかない!」
おいおい、と心の中で思いつつも男の話を聞く。
「ここは何でもしてくれると聞きました。どうかうちのラーメン屋が繁盛するようにしてください!」
「…………」
草間は何と言っていいか分からずに返答に困る。
「いや、うちは怪奇現象とか―」
「うちのラーメンをねたんだ奴の仕業かもしれない!」
もはや、男は草間の話など聞いてはいない。
「じゃあ、よろしくおねがいします!」
そう言って男は勝手に興信所に入ってきて勝手に興信所から出て行った。
「…お兄様、どうされるんですか?」
笑いを堪えるようにして零が草間の元にやってくる。
「はぁ…どうしたものかな…」
そう呟く草間は頭痛がより激しくなるのを感じていた。



「これが上手いじゃと!?」
 源の叫び声と共に、ハリセンの音が響く。エマとみあおはまだラーメンを食べながらその光景を見ていた。
 事の始まりはこのラーメン屋の店長が店を繁盛させて欲しいと草間に依頼に来た事から始まった。不幸にも今回の仕事を与えられた(押し付けられたとも言う)のは本郷・源、海原・みあお、そしてシュライン・エマの三人だった。
「不味いとは思わないんだけど…」
「不味くないと感じるのはバランスが取れているからじゃ、しかし!そのバランスはかな〜り低いところで取れておるのじゃ!スープは旨味が薄い!麺はこしがない!湯きりはいい加減!」
エマのその言葉に源がハリセンをエマに向けて言う。
「あら、これは…」
 みあおが見つけたのは市販のタレとトッピングの使いかけの袋。
「何じゃ!市販のものを使って美味いといっておるのか!このばかもんが!」
 源はハリセンを振り下ろしながら叫ぶ。
「ラーメン悪の結社じゃないの?」
「…そうみたいね、味以前に店長に問題があると思うわ」
 エマとみあおは食べ終わって、源の方を見ながら呟く。
「悪の結社じゃと!おぬしが悪そのものじゃ!覚悟せぃ、わしらが特訓あんどリニューアルしてやるのじゃ!」
 店長は頭を擦りながら『依頼なんか行くんじゃなかった』と早くも後悔をしていた。
「確かにこのラーメンは魂の味がしないもんね!みあお達がおじさんを鍛えてあげるから!」
「このラーメンが一杯千円は高すぎるわよ、店の雰囲気も暗いし、一気に繁盛より地道にした方がいいんじゃないかしら?」
 それぞれの意見を言い終わると店長の方を見る。奥からは奥さんらしき人と、子供達が震えながらこちらを見ている。
(地道にやってたらこの人たちが飢え死にするわね…)
 はぁ、と溜め息をつきながらエマは頭をおさえる。みあおは何か知らないが異様なほどの張り切りようを見せている。
「まずは店を一週間ほど閉めるのじゃ!」
「そんな!そんな事になったら…」
「おぬしには一週間でも時間が足りないくらいなのじゃ!家族の生活のためにわしらが人肌脱いでやろうと言っておるのじゃぞ!」
 源の言葉を理解したのか、気迫に押されたのか店長は渋々ながら店を閉める事を了承した。
「まずはスープじゃ!強火でがんがん煮込むのじゃぁ!!」
 店長は源と共に調理場に行く。
「親父殿!本気で繁盛させたいとかんがえておるならまじめにするのかじゃ!」
 またもや、ばしんとハリセンの音が響く。店長は泣きそうにもなりながら源の口&手攻撃に耐えていた。
「麺のこしがない!作り直すのじゃ!」
「は、はい!」
「何じゃ!この味は!いい加減に火の加減を覚えるのじゃ!」
「は、はい〜〜」
 それらは三時間も続いた。




「さて、私達は店の内装を考えようか」
「そうですね!みあお的にはこんなのがいいと思います!」
 そういってみあおは、いつの間にかいたのか、『店のないそう』と書かれた紙を差し出した。
「どうでしょうか!?」
 エマ的には『どうでしょうか?』といわれても困った。なぜなら紙に書かれたのはどこぞのメルヘン王国に現れそうな森の中にある城にしか見えないからだ。
「…これは何?」
「ここに森を置いて、可愛くするんですよ!」
「…可愛くねぇ…。っていうか、どう考えても無理でしょ?森なんかここらにあるわけないし…」
 エマがそういうと、みおあは『残念です』といって紙を直した。
「内装が悪いってのもお客が入らない原因のひとつだと思うのね、だから明るい雰囲気にすればいいんじゃないかしら?」
 エマが店を見渡しながら言うとみあおもそうですね、と答えた。
「清掃会社頼んじゃいましょうか。あと、店の塗り替えもしちゃいましょう」
「みあおは桃色がいいと思います」
「…桃色ねぇ、ま、人の目をひくかもしれないからいいアイデアかも」
 そう言ってエマは携帯から電話をかけ工事を頼んだ。
「店長の方はどうかしら」
 みあおとエマが調理場を覗くとハリセンで叩かれながら特訓していた。さすがおでん屋をしているだけあって味にはうるさいらしい。
「ねぇ、明日から工事が入るからねー」
 エマが少し大きな声で言うと『了解したのじゃ』という声と店長の悲鳴にも近い声が聞こえた,。
「あっちは大変そうねー…」
「そうですねー」
 エマとみあおは奥さんから出されたお茶を飲みながらのほほんと店長の悲鳴を聞いていた。
「あのぅ、本当に繁盛するようになるんでしょうか?」
 奥さんが少し遠慮がちに言ってくる。
「大丈夫よ、味は源に任せておけばいいわ。工事が終わったら私とみあおで色んな人に口きいてあげるから(それでも繁盛しないかもしれないけど)」
「え?今、最後に何か言いました?」
「え?全然言ってないわ(おたくの旦那が変人過ぎるのよ)」
 みあおは笑いを堪えている。
「みあおはネットでいろんなところに書き込みしてみるね」
 ネットでの口コミは意外と侮れない。だから、任せて!という。
「私も知己の出版関係者にそれとなく言っておくから」
 そのとき、休憩に入ってきた源と店長がこちらへやってくる。
「お疲れ様、どう?」
 エマが言うと、源は『上々じゃな』と答えた。店長はといえばげっそりと何かに取り憑かれたかのようにやつれている。


その次の日から店の改装工事が入り、休めると嬉しくなった店長も源の『工事が入るなら草間殿の所で特訓するのじゃ!』という言葉に倒れたくなったとか…。


そして、一週間後…。
 みあおやエマの口コミでお客は入り、大繁盛を迎えた。それの半分が『変わった店長さんがいるのよ』というエマの言葉につられた人々だったのだが…。
 ある意味カリスマ性を持つ店長はこのあと、弟子を取るほどに店を大きくしたのだとか…。
 しかし、雑誌の取材で『ここまで大きくなられたきっかけとは!?』という言葉を聞いて一時、店長が錯乱したとかしないとか…。
 とにかく店長の『店を繁盛させたい』という依頼は達成させられた。
 店にとっては『運を運んできた天使』、店長にとっては『悪魔』という、三人の女性によって…。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】
1108/本郷・源/女性/6歳/オーナー 小学生 獣人
1415/海原・みあお/女性/13歳/小学生
0086/シュライン・エマ/女性 /26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

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■         ライター通信          ■
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本郷・源様、海原・みあお様、シュライン・エマ様>

本郷・源様、海原・、みあお様、初めまして。
シュライン・エマ様、お久しぶりです。

瀬皇緋澄です。
今回は『ラーメン道中記』に発注をかけてくださいましてありがとうございます!
『ラーメン道中記』はいかがだったでしょうか?
もともとはもっと長かったのですが、文字数を削っていたらこんな感じに仕上がりました^^:


シュライン・エマ様>

今回の発注をかけてくだしましてありがとうございます!
エマ様は毒舌が少し入ってます^^:
こんなこと言わせて言いのかな、と思いながら書いたものです^^;
少しでも面白いと思っていただけたら幸いです。
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくおねがいします^^
          
                  −瀬皇緋澄