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Border Ether ＆ Deep Ether 〜House of The Horror〜
Opening
灰色の靄で視界の悪い道を抜けたあなたは、目の前で、不思議な光景を見る。
文化住宅や普通のアパートが並ぶ真ん中に不思議な洋館が建っている。
如何にも不気味で何かが居るような雰囲気を漂わせている。
この周りを調べたり、帰り道を探したりするが、必ず此処に行き当たる。
あなたは
「厄介な場所に来たものだ」
と呟く。
どうも多々ある界鏡線現象でも、何かを解決しない限り出ることは出来ない厄介な所のようだ。
あなたなりで色々やっていると（何か手がかりがないか調べているか、疲れて洋館近くで一服しているか）、
１人か２人、同じように調べている人影を見つけた。
黒い不思議な格好をした青年と、全身タイツだが、武装が施されている少女だ。
「ヴィルト、此処に〈穴〉がある」
「コードネーム省略しないでください、『影斬』。うん、本当だね、進入した人が居るみたい」
「其れが誰だか分かればいいのだが、ん？誰だ？」
青年がいつの間にか半透明な刀を持って、周りから青白いオーラを発して此方を警戒した。
「まって、『影斬』、此処に迷い込んだ人？自ら入って迷った人？」
少女が彼を止める。
一息おいて、オーラを静めた青年は、
「…自分の意志で入ったかどうかは良いとして。脱出する為には…ここの「現象」である「中心」を叩くしかない」
と、穏やかに言った。
「ここは、多分知っているだろうけど、異界の一種「現実世界との境にある深層精神界」だ。仮の姿であるが、この主「想像者」を説得か仕留めないと…此処から出て行けない…。
俺の名は…『影斬』と言われている」
「私は、『ヴィルトカッツェ』よ。…本当なら、一般人は関わっちゃ行けないのだけど…場所が場所だからね…」
苦笑するヴィルトカッツェ。
貴方はいきなり鉢合わせたＩＯ２と共にこの洋館を調べるか？それとも…。
１．迷い込んだ方々
現実世界では午後、夕刻だったのだろう。３人の女性がそれぞれの用事を済ませたあとに迷い込んだようだ。
海原みなも、中学の下校途中にこの世界に入った。しかし此処が噂の異界であることを知っているので少しは警戒している。ただ、影斬とヴィルトカッツェから色々この世界の法則を訊いている。
鹿沼デルフェスは骨董品の買い付けの帰りだという。説明を聞いた後、彼女はＩＯ２の２人に自分の正体を明かし、協力すると告げている。
もうひとりの４０後半の女性には、影斬は驚いた。前の片思いだった女子大生に似すぎるからだ。其れもそのはず、名前は天薙さくら。その女子大生の実母なのだから。温和さや雰囲気が娘に似てもおかしくはない。ヴィルトカッツェはため息を吐いている。
なぜなら彼女はこの状況に焦っておらず、
「夕ご飯少しくれちゃう」
と、夕飯の支度を気にしているわけであり。
影斬が懐かしみながらも、
「ヴィルトカッツェ、この方の一族はこういう性格な方が多い。だからあまり深く考えるな」
「影斬、あなたの「過去」はどういう人脈だったのですか？」
「任務が終わってから「現在」の俺のデータを調べることか師に訊けばいいぞ」
「あなたも不思議な人です」
と何か会話し始めた。
「すみません、漫才は其れぐらいにして中に入って想像者さん説得しに行きませんか？」
とみなもが行った。
「何が漫…！」
ヴィルトカッツェが怒鳴りそうな所を影斬が彼女の口を塞ぐ。人間の能力の通常の５０倍対３０倍、どう見ても勝てない。少女はジタバタするのが精一杯だ。
「ごめん、ごめん、行きますか皆さん」
にっこりと影斬が答えた。
２．屋敷で惚気話。
ロビーに入る一行。
「方向は説得で、帰ることでいいでしょうか？」
と３人の女性は訊いた。
影斬もヴィルトカッツェも快諾。
「想像者は、過去に心に壁を作りこうした世界を作り出してしまった。俺は未来からここにやってきて、「想像者」の説得を任されている。ヴィルトカッツェは此処に住まう想像者を監視、利用する虚無の境界を逮捕の任だ」
「全部喋らなくても良いじゃない、影斬」
「協力者に隠し事をしては行けないだろう？」
「其れもそうだけど…」
「ＩＯ２として業務は辛いそうですね。目的はちがえど、わたくし達が彼を説得し、心を開いて下さればいいですけど」
とデルフェスが、心配そうに言った。
「どんな過去があったのでしょうか…」
みなもが呟いた。
皆の気がしずむ。
その雰囲気を和ませるためにさくらが口を開く。
「想像者さんが、此方は敵じゃないですよと伝えればいいのですよね。みなさん、心が沈んでいたりするとその方も沈むんじゃないかしら？」
「どうしてです？」
みなもが訊ねる。
「影斬さんから訊けば精神界…つまり彼の心の中でしょう？ダイレクトにわたくしたちの声が届いて敵と勘違いしそうです」
「成る程」
みなもが頷く
「世間話をしてあの方を捜しませんか？」
「賛成ですわ」
デルフェスはにこやかに笑った。
影斬除いて、女性ばかり。そうなれば年齢層関係なく和気藹々となる。とくに迷い込んだ３人はだ。デルフェスは、具現された物体であれ、壷や絵画について説明をしていき、みなもは学校の楽しさを話していく。しかし、さくらは流石主婦というか主婦の豆知識を披露するのだが、ほとんどが自分の夫の惚気話だった。
影斬は苦笑するわけだが、みなもは共感の眼差し、デルフェスも感心持って聞いていた。ただヴィルトカッツェだけがワナワナ震えている。
洋館に変化があった。歪んでいるのだ。壁や床が布のように波打つ。
デルフェスはヴィルトカッツェを庇うように立ちはだかろうとするが、さすがに足場が悪いためムリに動けない。みなもとヴィルトカッツェ、影斬は、怪我をしないようにしゃがみ込むか伏せた。
「あー！惚気話で怒ったに違いないわ！」
「旦那様はとても素敵で…」
「さくらさん！この状況でまだ話をするんですか？！」
怒り始めるヴィルトカッツェ。
「え？…あら、ごめんなさいね」
と、さくらの一言で、歪んだままながら洋館の揺れは止まった。
「幸せな家族を嫌うわけではなく、羨ましかったのだろうな」
と、影斬が、みなも達を起こしてあげてから、先に変化がないか先に進んだ。
「幸せな家族、ですか」
みなもとデルフェスが言う。
「ママ…」
小声でヴィルトカッツェが呟いた。
３．避けられぬ戦い？
異界自体が想像者の世界なので、彼の気分次第で何でも現れる。
ウサギの群れが一行を襲ったり、壁から手が出てきて人の足を掴んだりする。
それほど大事でもないようないので、一寸したパニックハウスに感じられた。
ただ、彼の意志と異なる存在を肌で感じたとき…皆の態度が変わった。
６人ほどの草間零が怨霊武器をもち通りを阻むように立っている。
「零さん？しかし何か違う…」
「そうだよ、みなも。似せて作った虚無の境界の霊鬼兵だ。どうしても俺たちを通したくないらしい…想像者ではなくあちらがね…」
影斬は、うっすらと青白いオーラを纏い、自分の刀を召還した。ヴィルトカッツェはＮＩＮＪＡのパワーを最大限に起動させる。高周波ブレードを構えて、彼女を守ろうとするデルフェスに
「デルフェスさんは、みなもさんとさくらさんを守って下さい」
と、伝えた。
「霊鬼兵を送り込んでいるとは…あの人は大丈夫なのか？」
「大丈夫じゃない？」
とＩＯ２の２人はなにやら会話して、
「１人３体、ノルマ」
「ＯＫ」
と瞬間に飛び出した。
さすがに、人数的問題があったため、数人の霊鬼兵がデルフェスに向かう。しかし強固な堅さをもったミスリルゴーレムは、この怨霊武器を装備した者の攻撃をいとも簡単にはじく。後ろでみなもとさくらが各々の能力を生かし、皆をフォローした。
そのおかげで、ものの数分で霊鬼兵を仕留めることが出来た。
幾ら硬い体のデルフェスでも、服が破けている。影斬は神格を利用して簡単な外套をつくり彼女に渡した。
「修復などは出来ないから。ありがとう」
「いえ、此方こそありがとうございます」
「戦いの激しさで壊れた壁が元に戻っていきますわね」
さくらが戦いの後をみて言った。
「実物であり、空想、偽物でもなければ本物らしいです」
ヴィルトカッツェが言う。
「想像者は空想具現能力を持っています。並はずれた発想力と想像力、知識。空想具現がなければ普通に過ごせたのかもしれない。しかし何か目的があるため、あの能力を授かったと思う。しかし、虚無にはいると言うことではないはずだ」
まるで昔に会っていたような口ぶりの影斬だった。
「知り合いなんですか？」
みなもが訊く
「ああ、【遠い昔】のね【近い過去】かもしれないけど」
不思議な言葉で返す影斬だった。
４．書斎にいる想像者
「おそらく書斎にいると思うのですが」
とデルフェスが皆に伝える。
「そうですよね、物思い耽るには書斎か寝室ですね」
みなもが同意する。
「ではそちらに向かいましょう」
ヴィルトカッツェが頷き、影斬を先頭に立って書斎を探した。
書斎は簡単に見付かった。既に誰かが入っていた形跡がある。
「あの人だな」
影斬はぽつり呟いた。
「？」
３人は首を傾げる
「先にあった人が、自信満々で入っていったんだ。その前にも穴を開けて入っていった人がいたけどね」
と、影斬は答えた。
かなりの蔵書を収めている本棚と、かなり丁寧な作りのヨーロッパ製の書斎机、その上には羽ペンとインクや、ライトスタンドがある。天井の照明は、洋館に似合う照明ランプだ。しかし、中には誰もいない。
イスには、先ほどまで誰かが居た事を感じさせるようだ。
「本当に誰かいたみたい」
みなもとヴィルトカッツェが言う。
すると、書斎のイスが勝手に動き出し、そこにパジャマ姿の男がいきなり現れた。
「ようこそ、俺の世界に。俺が想像者だ」
と、椅子に座りながら挨拶をした。何ら警戒はしていないようだ。
「また説得なのか？織田君」
「織田？」
みなもとさくらは何かを思い出したようにビックリする。デルフェスには何のことか分からない。
「本名で言うのは止めてくれ」
影斬が苦笑する。
「ひょっとして、影斬さんは…」
「コードネーム…本名は織田義昭。しかし未来から来たんだ。あなたの娘さんにはよくお世話になりました」
さくらが訊ねると影斬は答える。
ＩＯ２ではコードネームで知られている。しかし本名を明かしてはならないのだが、この状況ではムリと判断した。
「じっくり説得はしたいけど、今回は別のことで頼みに来た。君の洋館に住まう虚無メンバーの。それと迷い込んだ３人の女性達を元の世界に戻して欲しいのです」
ヴィルトカッツェは想像者に話しかける。
パジャマ姿の男はイスから立ち上がり…うろうろ思案する。
影斬達が自分に大して敵意がないことは確かだ。問題は奥まで行ったあの男と戦う虚無メンバー。
一息吐いて、
「良いだろう。いつも口論になるのは叶わないし、俺はゆっくりしたい」
指を鳴らすと、灰色のドアが現れた。まるで此処に迷い込んできた時を思い出される色合いだった。
「流石に、俺を助けてくれる虚無を引き渡すことは出来ないな…」
「何故？」
「いずれ分かるそろそろだ。彼らは死ぬよ…「紅」によって」
想像者が言い終わると…銃声と断末魔が聞こえた。
「紅？！草間さんが此処に？」
皆もが驚きその音になる方向に走ろうとする。
「今の彼に関わらない方が良いわ！」
と、ヴィルトカッツェが止める。
「零さんが、皆も心配しているんです。なのに…」
「彼も事情があるんだ…今は彼の好きにさせた方が良い…其れに零さんには内緒にするべきだ」
影斬が答える。みなもは少し冷静になってから俯く。デルフェスが彼女を慰めるように支えていた。
「深いわけがあるみたいですね…今は何も問いません」
その言葉で、影斬も想像者も安堵のため息を吐いた。
「今は一般人の脱出が先。ヴィルトカッツェ…彼女たちの護衛を頼む」
「影斬は？」
「暫く此処にいるよ」
「分かった、皆さんこちらに」
と、３人を呼び、扉に入る。
デルフェスが扉に入る前に
「想像者さん」
「何でしょうか？」
「わたくし達みたいに理解者が居ます。そのことだけ覚えて下さい」
と、言って扉をくぐった。
「理解者か。俺と君の環境は正反対だったな」
影斬は、書斎の机に座り、携帯しているペットボトルを２本出した。
「飲むか？」
「久々に貰うか…」
影斬はペットボトルを想像者に投げた。巧くキャッチする想像者。
「閉じこもっていても、良いことはない。其れを分かってくれる人は俺以外に沢山いる。分かるだろ？佐山」
「理屈では理解しても、感情がムリだね。特にこの呪わしい能力が。君が封印してくれればこれにこしたこと無いのに」
「そうそう出来るものかよ。その力が君を生かしている。「命」なのだから」
その後、２人は沈黙していた。ある足音が聞こえる。
ドアから入ってきた男は一言、
「マルボロあるか？」
と、２人に訊いてきた。
灰色の靄から出口にたどり着いたみなも、デルフェス、さくら。そしてＮＩＮＪＡスーツからいつの間にか神聖都学園制服（その２）に着替えているヴィルトカッツェがいた。
丁度、草間興信所近くにドアが通じていたのだ。
「今回は何とか助かりましたね」
とヴィルトカッツェがいう。
厳ついＮＩＮＪＡの姿から想像出来ない可愛さだ。
「いえいえ、此方こそご迷惑を」
と３人は言った。
「気を付けて下さいね。想像者自身には悪意はないですが、能力から危険な人物です。しかし、あなた達のような方なら彼を止めることが出来るかもしれない…しかし、今回のことは他言無用でお願いします」
「はい、ヴィルトカッツェさんはこれから…」
みなもが訊ねようとすると同時に、黒い車がやってきた。
「報告ですね。今回の事件について。ではさようなら」
「はい、さようなら」
彼女が黒い車に乗り、車が走り去るまで３人は見送った。
「丁度、興信所だからどうしよう…」
みなもが考える。時間的にはそれほど経っていないようだ。
「夕ご飯の支度をしなくちゃいけませんわ。では私はこれで失礼しますね。」
と、さくらはのほほんとしながらしっかりお辞儀をしていそいそと天薙家の家に帰る。
「ではわたくしも」
「はい、さようなら」
異界から脱出出来た事は良かったが、各々何か心に引っかかりを残し、その場で別れた。
End
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■ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ■
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【1252 海原・みなも 13 女 中学生】
【2181 鹿沼・デルフェス 463 女 アンティークショップの店員】
【2336 天薙・さくら 46 女 主婦／神霊治癒師兼退魔師】
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■ ライター通信 ■
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滝照直樹です。
『Border Ether & Deep Ether 〜House of The Horror〜』に参加して頂きありがとうございます。
みなも様いつも、丁寧なプレイングありがとうございます。
鹿沼様、天薙さくら様、初参加ありがとうございます。
想像者について、大きな問題を抱えております。彼の心を開かせることが出来るのは誰なのか、またこの異界に潜むという虚無メンバーたち。
次に灰色の通路は現れるまで…あの２人の安息はないでしょう…。
そしてあなたも…。
では、機会が有ればお会いしましょう。
滝照直樹拝
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