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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


Border Ether & Deep Ether 〜House of The Horror〜

Opening 
灰色の靄で視界の悪い道を抜けたあなたは、目の前で、不思議な光景を見る。
文化住宅や普通のアパートが並ぶ真ん中に不思議な洋館が建っている。
如何にも不気味で何かが居るような雰囲気を漂わせている。
洋館の大きさは、小さいような大きいようなあまり判断が付きにくいが、2階建ての石造りであることは分かった。
この周りを調べたり、帰り道を探したりするが、必ず此処に行き当たる。
あなたは
「厄介な場所に来たものだ」
と呟く。
どうも多々ある界鏡線現象でも、何かを解決しない限り出ることは出来ない厄介な所のようだ。

あなたなりで色々やっていると(何か手がかりがないか調べているか、疲れて洋館近くで一服しているか)、
1人か2人、同じように調べている人影を見つけた。
黒い不思議な格好をした青年と、全身タイツだが、武装が施されている少女だ。

「ヴィルト、此処に〈穴〉がある」
「コードネーム省略しないでください、『影斬』。うん、本当だね、進入した人が居るみたい」
「其れが誰だか分かればいいのだが、ん?誰だ?」

青年がいつの間にか半透明な刀を持って、周りから青白いオーラを発して此方を警戒した。
「まって、『影斬』、此処に迷い込んだ人?自ら入って迷った人?」
少女が彼を止める。
一息おいて、オーラを静めた青年は、

「…自分の意志で入ったかどうかは良いとして。脱出する為には…ここの「現象」である「中心」を叩くしかない」
と、穏やかに言った。

「ここは、多分知っているだろうけど、異界の一種「現実世界との境にある深層精神界」だ。仮の姿であるが、この主「想像者」を説得か仕留めないと…此処から出て行けない…。
俺の名は…『影斬』と言われている」
「私は、『ヴィルトカッツェ』よ。…本当なら、一般人は関わっちゃ行けないのだけど…場所が場所だからね…」
苦笑するヴィルトカッツェ。

貴方はいきなり鉢合わせたIO2と共にこの洋館を調べるか?それとも…。



1.シュライン・エマの場合
2人の話を聞いて、シュラインは顔をしかめた。
「仕留めるって…穏やかじゃないわね」
腕を組んで考える。
「この世界では、魔法や「想像者」の知識、想像力で成り立っています。だから、彼の「気分次第」で世界が変わる危険性があるのです」
と『影斬』が説明する。
「では刺激しない方が良いんじゃないかしら?」
「確かにそうだけど、私たちは「想像者」の説得、此処に潜む虚無の境界のメンバー逮捕が任務です。『影斬』の剣の師も協力してくれていますのですが、なにぶん精神世界は広く深く、何処にいるか分からないのです」
ヴィルトカッツェが説明した。
「そう、でも先にこの館に入ってる人が居るみたいだけど?」
「探知系はほとんど役に立たないのがこの世界の特徴です。特に善悪探知、過去未来などをみるサイコメトリーは」
と、影斬はいつもこの世界を調べているかのような言い方をしていた。
色々教えてくれているし、前にこの2人にあった感じがする。しかし、彼女はIO2や虚無関係という事で判断するのはしたくない。全て人為で判断する。
「ありがとう、お二人さん。あたしは1人で、中にはいるからいいかしら?」
「危ないですよ」
「もう危ないも何も、此処からでるには彼を説得しなければならないんでしょ?なら相手を刺激しない方が良いから、じゃ」
と、シュラインは洋館に入っていた。
「大丈夫かな?」
「イヤあの人なら大丈夫だろ。あの人の性格からだと大丈夫だ」
ヴィルトカッツェはシュラインを心配していたが、影斬は安心しきった顔をしていた。


2.礼儀から
大きなロビーに立ったシュラインは、
「まず、寝室や書斎を調べるのが良いわね」
と、洋館の作りを考えて2階に向かう。
階段のきしむ音はさながらうち捨てられた洋館を思い起こすものだが、無事に上にたどり着く。
廊下などに飾られている絵画や壷の精密さをみると本物と思わせるほどだ。
「すごいわぁ」
感心するシュライン。
まず、書斎に向かう。
ノックをして
「失礼します」
と、ドアを開けた。
かなりの蔵書を収めている本棚と、かなり丁寧な作りのヨーロッパ製の書斎机、その上には羽ペンとインクや、ライトスタンドがある。天井の照明は、洋館に似合う照明ランプだ。しかし、中には誰もいない。
イスには、先ほどまで誰かが居た事を感じさせるようだ。
「すれ違っちゃったかしら?でも、全体をみていると思うし…」
と、シュラインは思った。
まずは本を調べようとする。歴史書や魔導書、ファンタジー小説や外国ゲームの本、コミックの数々と様々だ。年代的に20代以降のゲームデザイナーの家を思わせる。
その前に、シュラインは少し大声で、
「…想像者さん、嫌なら本を消して下さいね」
と、言ってみる。
すると、かなりの数の本が本棚から音も立てずに消えていく。そして、1冊の本が彼女に差し出された感じでやってきた。
「あ、ありがとう」
本の題名は『空想具現者』
みたことのない書物。
ページをめくったとたんに、彼の能力、そして今までの過去に思った事が脳裏に伝わってくる。

「物を作り出したら、どこかで万引きしたに違いないと疑われた」
「異常な頭の良さは褒め称えられたが其れは結局見せかけだ、妬み無視が子供の時代多かった」
「皆が自分中心で動いている。友人なんか関係ない。ならば俺の世界を作ろう」
「俺の能力を感心してくれる人はほとんどいない…居るのは…神か能力者だけだ…。そんな俺を虚無は受け入れてくれた…「世界を変えよう」と…」

後はノイズや怒気で巧く伝わってこない。

全て伝わったのか、本はひとりでに閉じる。
頭痛を我慢しながらシュラインは彼の辿った人生をしった。
これは日記だったのだ。約30年分の。
「かなり考え込んでいた、悩んでいたのね。でもどうしよう」
と、シュラインは本を本棚にしまって、考える。
理解者を欲しているのは確か、しかし今の状態では自分が説得出来ることはムリだろう。
今は、戻ることが優先だ。30年分の彼の過去を頭で整頓するには時間がない。

過去にシュラインは精神的な病に冒されたが、其れを乗り切った。
動機はなんであれ、かなりの資格を取っている。
いまでは、彼女はいつも草間興信所で所長の仕事をこなしてきたのだ。
楽しいことも辛いこともあそこにいっぱいあるのだ。

今することは決まっている。
「寝室かしら」
シュラインはそのまま書斎を出て行った。


3.再会
書斎から寝室まではヤケに遠い。
「寝室と言うより、瞑想室なのかしらね」
紅い絨毯の廊下を歩いていくと…
銃声
何かの叫び声
断末魔

「何?」
シュラインは駆けていった。

その先は、無意味に大きい十字路。
そして、いつも一緒にいた男の姿が、幻想生物を撃ち殺していた所だった。
「た、武彦さん?」
シュラインは驚く。
黒いコートに、特殊な服装、黒いサングラス。そして裏社会では有名な伝説のリボルバー「紅」。
「だれだ?」
相手は覚えていないらしい。いや、忘れたふりをしている。
「あたしよ、シュラインよ!」
「…ああ、迷い込んだのか…シュライン…」
まるで昔を思い出したかの様に反応する男。
「零ちゃんが寂しがっているわ、戻ってきて」
「其れはムリな相談だ…お前は俺から離れろ「想像者」から敵と見なされるぞ」
「武彦さん…変わってしまったの?」
「そうだ、お前の知っている昔の俺じゃない」
シュラインとの会話中一切彼女の目を見なかった、草間。
しかし、いきなりシュラインに「紅」を向け発砲した。
銃声が鳴り響いた。
シュラインの耳には弾が飛ぶ音…彼女の耳をすれすれで弾は通っていき、真後ろから襲いかかってくる化け物の急所を貫いたのだ。
化け物は人の形をしていたが狼…人狼だった。
「はやく行け…」
男は素早く弾を取り替え、左手で寝室がある廊下を指さした。
「武彦さんも…」
「俺は敵と見なされているようだ。もしくは「コイツ」に過敏反応している。死にたくなければ…他人同士がいい。それに、俺は別の用事でここに来ただけだ」
男は、自分の銃を見せる。伝説の銃である「紅」。これを所持している以上、戦いに身を投じるしかない運命らしい。
そして、男は…別の廊下を歩いていった。

暫く立ちすくむシュラインだった。今は彼を止めることは出来ないと。
「零ちゃん…ゴメンね…」


4.交渉
長い回廊を進むと、確かに寝室にたどり着いた。
【ノックされたし】と看板が掛かっている。
しっかりノックするシュライン。
静かにドアが開いた。
その部屋は、いきなり薬臭く、全てが白い。
窓には鉄格子があり、人が飛び降りることは出来ないようになっている。真ん中に、小さなテーブルとイスが数台あり、右手奥に、病院でよく使われるベッドが置いてあった。
いきなり洋館から病院に変わったことがシュラインを驚かせる。
落ち着いて、過去の日記の断片を思い起こせば、想像者が一番想像しやすいのはこの部屋なのだろう。
かなり改変されているが紛れもなく閉鎖病棟でも独房タイプの精神病院病室なのだ。
どこからともなく、パジャマ姿の30歳の男が現れた。
「いらっしゃい」
と、一言。
「あなたが想像者?」
と、シュラインが訊く。男は頷いた。
「苦労していたのは何となく分かるけど、いまはあたしが何か出来るわけでもない…ゴメンね」
とシュラインが言う。
男は、苦笑した。
「いきなり圧縮した記録を送りつけて済まなかったです。あなたの態度、姿勢は素敵でした。あとあの男と知り合いだったことには驚きましたが」
と、想像者は言う。「あの男」とは草間武彦のことだろう。
「ま、俺にとってあの男は今のところ敵、どれだけ俺を知っているのは織田君達だ。でも帰る気はない…」
独り言のように彼は呟いた。
「失礼、お客が居ながら独り言を…、あなたの表情からすれば、大体ここに来た理由は察しが付きますが、どうしました?」
彼は謝り、そして訊いてきた。
「そうね…単に迷い込んだだけなので、出してもらえないかしら?」
とシュラインが言う。
想像者は、ニコリと笑って空間にドアを出した。ただそのドアは灰色で、此処に迷い込んだ時を思い起こさせる。
暫くこじれるかなと思っていたシュラインだが、すんなり外に出してくれることに驚く。
「あ、あのコートの男についてももう干渉しないよ。あなたとの会話で俺をどうするかと言うわけでないことが分かった。此処に潜む何かを捜しているんだろう」
「わかるの?」
「其れは知らない方が良いよ…。さ、早くこの扉からいつもの世界にでられるから…」
「そう…ありがとう」
扉をあけ、この世界から出ようとするときいったんシュラインは止まる。
「あんたの名前は?」
「佐山宗治…でもこの世界では「想像者」、だ。それだけは忘れないで欲しい」
「わかったわ…さようなら」
「お気を付けて…」
簡単な別れだった。
しかし何かが違う、そう感じたシュラインと「想像者」だった。


灰色の靄を抜けたシュラインは、現実世界の地面を踏みしめ帰って来られたことを実感する。灰色のドアはいつの間にか無くなっている。
近くに、いつもいる草間興信所が見えていた。
ドアを開けると、
「おかえりなさい」
零がにこやかに笑って出迎えてくれた。

しかし、シュラインの気持ちは複雑だった

―武彦さんは何故あそこにいるのだろう。

End?

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0086 シュライン・エマ 26 女 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】

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■         ライター通信          ■
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滝照直樹です。
『Border Ether & Deep Ether 〜House of The Horror〜』に参加して頂きありがとうございます。
いつも、丁寧なプレイングありがとうございます。
今回は都合上、単独行動となりました。如何でしたでしょうか?
Horrorと銘打っておきながら、あまり怖くない結果になりました。これも、シュライン様の冷静、適切な行動判断に寄るものです。

又の機会が有れば、お会い致しましょう。

滝照直樹拝