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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


鏡の中の迷宮

オープニング


鏡の中に写った自分は、本当の自分だと思う?

―ドッペルゲンガー
自分と同じ姿、声を持つ人物をそう呼ぶ。
彼らは鏡の中から現れるとも言われているが
それが本当のことなのかは定かではない。

題名:鏡の中の迷宮
投稿者:レオナ
本文:夜中の零時ちょうどに鏡の中を覗き込むと鏡の中に引き込まれちゃうんだって!
それで鏡の中の自分と入れ替わっちゃうらしいの。

ゴーストネットに新しく書き込まれたのは、自分と同じ姿をもつドッペルゲンガーのことについてだった。
貴方は、その書き込みを見てふとした好奇心から鏡を覗き込んでしまい、
鏡の中に引き込まれてしまう。


視点⇒奉丈・遮那

 夜中の零時に鏡を覗き込むと、鏡に映ったもう一人の自分に鏡の中に引き込まれてしまう。
 これが遮那が見た、ゴーストネットの新しい書き込み。普通はここで『怖いながらも見て見たい』と思うのかもしれないが、遮那はその時間は鏡を避けようと決意していた。理由は簡単、戻れなくなったら嫌だから。入るのは簡単かもしれないが出るときの事を考えれば行くことを躊躇った。
「ふぁ…、そろそろ寝ようかな」
 う〜ん、と伸びをして自分の部屋に戻る。
 だがこの時、遮那は鏡を見てしまったのだ。不幸にも時間は零時ちょうど。
「…うぁっ!」
 鏡に映ったドッペルゲンガーはニヤと不適に笑うと遮那の頭を掴んで一気に鏡の中に引きずり込んできた。勢いよく引きずり込まれたため、遮那は地面らしき場所に頭を強くぶつけてしまう。
「…いたた……え?え?」
 頭を擦りながら今いる場所を確認してみる。一面鏡に覆われた小さな世界。明らかに今までいた自分の部屋とは異なる場所。
「…僕、もしかしなくても…鏡…見た?」
 聞いたところで返事が返ってくるわけではないが…。目の前にある大きな鏡にはドッペルゲンガーの遮那が映っている。
「…入れ替わられたんだ…」
 ショックに浸っているとこちらとあちらの世界では時間の感覚が違うのか、現実世界ではもう朝になっている。
「…学校に行く気だ…」
 嫌な予感がするなぁ、と遮那は呟きながら鏡から目を離さずにいる。だが、この後、遮那の期待を裏切ることなく、ドッペルゲンガーは問題を起こしてくれた。

「おはよう、遮那君」
 クラスの女子生徒が遮那(ドッペルゲンガー)の肩をポンと叩きながら挨拶を交わしてくる。その女子生徒は遮那の隣の席で結構仲は良いほうだ。
「遮那君?」
 何も返事をしない遮那(ドッペルゲンガー)を心配して顔を覗きこんでくる。
 だが…覗き込んだ二秒後に女子生徒の悲鳴が学校中に響いた。
「きゃあぁぁぁぁ!!!」
 その女子生徒の悲鳴に慌てて他の生徒もやってくる。
「どうしたの?」
 別の女子生徒が話しかけると「遮那君がキスしたぁ!」と泣きながら叫ぶ。
 その言葉に聞かされた生徒は怪訝そうに遮那(ドッペルゲンガー)の方に振り返る。
「遮那君、本当?」
 遮那(ドッペルゲンガー)は返事をせずに、にっこりと笑って聞いてきた女子生徒に抱きついた。
「しゃ、遮那君!!?」
 もちろん、その女子生徒も悲鳴をあげる。その様子を遮那は鏡の中で見ていた。もちろん、嘆きながら…。
「…なんて事をするんだ!明日から学校に行けなくなるじゃないか!」
 最初はこんな場所にずっといたのか…としんみりした気持ちがあったが、遮那(ドッペルゲンガー)の女の子に対する行動を見ていると沸々と沸いてくる怒りがおさまらない。だが、怒ってみてもどうしようもない。遮那は鏡の中から出る事はできないのだから。
「…一生ここにいることになったらどうしよう…」
 そんな考えが遮那の頭に浮かんできて、少し弱気になる。鏡を見れば、さっきと同じで遮那(ドッペルゲンガー)はませた子供もようにやたらと女子生徒の身体にべたべたと触っている。
「あぁ、もうやめてよ〜…」
 今度は泣きそうな声になる。鏡を軽く叩きながら遮那が言う。鏡の中の世界とは一見、自分と一番近いのかもしれないが、一番遠いとも言える。
「あはは」
 遮那(ドッペルゲンガー)は楽しそうに次々に女子生徒にちょっかいを出している。
「あぁ…先生にまで…しかも生活指導の先生だよ…」
 本気で頭が痛くなるのを遮那は感じた。
「…帰ることのほうが怖かったりして…」
 ふぅ、と溜め息をついて鏡を見ると遮那(ドッペルゲンガー)がこちらを見ている。しかも意地の悪い笑みを浮かべながら。その笑みを見たとき、遮那は『何かまた嫌な事がおきそうな気がする』と思った。もちろん、この嫌な予感も期待り起きる事となる。
その瞬間、遮那は現実に戻ってきた。
「…あれ?」
 前を見れば、怒りに狂っている女子生徒、その後ろには何人もの女子生徒がいる。
「僕、もどってきたの!?」
 大声で叫び、喜んでいると…。
「遮那君、覚悟はできているでしょうねぇ…」
 嫌な笑みを浮かべ、手をポキポキと鳴らす女子生徒の姿がある。
「え?あ、あ、あ、いや、これには深い事情が……」
 あはは、と笑いながら後ずさる。説明を聞いてくれる状況ではないらしい。
「問答無用よ!女の敵め!」
 手には宗司の時に使うほうきなどを持ちながら数名の女子生徒が追いかけてくる。
「だ〜か〜ら〜…違うんだってばぁ…」
 遮那は逃げながら弁解をするが、誰一人として聞くものはいなかった。
 それから数週間、この事件は引きずり、男子生徒からは『勇気ある愚か者』として呼ばれ、女子生徒からは『女の敵』と呼ばれ、避けられる始末。
 この事件以降、遮那は部屋から鏡を取り除き、決して夜に鏡を覗き込むような事はしないようにしよう、と決意したのだった。


 −その後のドッペルゲンガー。
「本当はもう少し遊びたかったけど、仕方ないよね。でも…」
 ドッペルゲンガーは一呼吸置いてから言葉を言う。
「あぁ、楽しかった」



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】
0506/奉丈・遮那/男性/17歳/占い師

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■         ライター通信          ■
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奉丈・遮那様>

初めまして、瀬皇緋澄です。
今回は『鏡の中の迷宮』に発注をかけてくださいまして、ありがとうございます!
今回の話はギャグ風味になっておりますが、いかがだったでしょうか?
実は『鏡の中の迷宮』でギャグになったのは初めてでして、かなりどきどきしながら書いてました。
少しでも面白いと思っていただければ幸いです^^
それでは、またお会いする機会がありましたらよろしくお願いします。


                     −瀬皇緋澄