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調査コードネーム:少女の真心は狼を守る
執筆ライター :小椋みほ
調査組織名 :ゴーストネットOFF
募集予定人数 :1〜8人
------<オープニング>--------------------------------------
いつもと変わらない、日常風景。
苦手な数学の授業を受けながら、桜木愛華は唇を尖らせていた。先生が言っていることが日本語なのはわかるのだが、黒板に書かれた数式の意味がまったくわからない。
「もぉ、やだ。数学なんてやらなくていいのにぃ」
愛華は、ちっちゃく呟く。
その華奢な肩を、隣の席の女子生徒がシャーペンでつついた。
「ねねね、愛華、聞いた? 噂、噂!」
早口で言う姿は、よく遊びに行くゴーストネットOFFにいる女友達──瀬名雫──を思い出させる。
「噂ってなぁに?」
のんびりと聞き返す愛華に、隣の女子生徒はピッとシャーペンで愛華を指す。
「愛華の超苦手な幽霊が、出るんだな。最近、超話題なのに、知らないのー?」
ピシッと愛華は凍りつく。
幽霊のゆの字でも、苦手なのだ。ゴキブリと同じくらい苦手だと言っても過言ではない。
「幽霊だって!」
噂好きの別な生徒が振り返る。
「えー?」
「なんか、黒い影がって……」
勝手に進んでいく噂話に、愛華は気が遠くなりそうなほど想像力をふくらませてしまう。
ものすっごく怖い何かが、巨大な建物の中で待ってるような、そんなイメージが頭の中を勝手によぎっていく。しかも、その隣には──。
「怖い話はやめてよぉ!」
ハッとして、周囲の噂話をさえぎる。
そう、怖い話といえば、愛華の前には、愛華を怖がらせるのが大好きな、藤宮蓮が座っているのだ。
そっと見ると、耳がピクンと反応している気がした。絶対、噂の場所に愛華を連れて行く気になっているに違いない。
どうやって断るかを考えてて頭を抱えている愛華の耳に、「ここはテストに出るからな」という数学の教師の声と終業のチャイムが聞こえた。
愛華の数学ノートは、真っ白だった。
思ったとおり、蓮は愛華を連れて噂の廃病院に連れて行こうとしていた。
「いーやーだーよぉ!」
両手で耳をふさいで、愛華はきっぱりと拒否する。
ぶんぶんと首を横に振ると、ツインテールにした長い髪が揺れる。右側のシッポをつかんで、蓮は無情に告げた。
「次から、数学のノート、見せてやらないぞ?」
「…………うぅ」
それは、困る。とても困る。
上目遣いに見つめてみても、蓮は知らん顔だ。
「いいから行くぞ。別に幽霊が出るって決まったわけじゃないんだから」
蓮は、シッポでも引っ張るように、髪の毛をひっぱる。
「はわわわ。やめてよぉ!」
思わずよろけるて、愛華は唇を尖らせる。
視線と視線が合う。
しばしの沈黙。
ぱっと蓮は愛華の髪から手を離した。
「……で、行くのか?」
蓮が質問する。
「……」
唇を思いっきり尖らせて、愛華は無言のまま頷いた。
「ちゃんと、返事はしろって小学校で習っただろ」
満足げに言って、蓮はさっさと帰り支度を始める。
じーっと不満げに愛華は見つめてみるが、気づく様子もなく蓮は口笛なんて吹いている。
愛華は、大きくハァッとため息をついた。
「なんかあったら、守ってくれる?」
ちっちゃく、愛華が言うのを聞いて、蓮はさすがに苦笑いする。
「お前に幽霊を憑かせようって話じゃねえんだからさ。なに怖がってんだよ」
へらへら笑って、蓮が肩をすくめる。
「じゃ、夜8時に駅前な」
「なんでわざわざそんな遅く!?」
愛華は、飛び上がりばかりの勢いで聞き返してくる。
ぴょこんとツインテールが跳ねる。
「そりゃ、幽霊見物は夜のがいいだろ?」
肩をすくめてこたえると、愛華は教室の床にしゃがみこむ。
頭の中で、ぶつぶつと不満を呟く。
──蓮くん、顔はいいし、頭もそこそこいいし、運動神経も抜群、そりゃ女の子達から人気の的だけど性格ひん曲がってるのよねっ! それに女関係の噂も耐えないし。愛華そういう不誠実な人やなんだよねぇ。せめて、もっと性格まともだったらいいのに……。
だんだん不満が溜ってきて、愛華は立ち上がった。
「蓮くんのバカァ!」
それだけ言って、愛華はプイと横を向く。
「おまえ、動いてると、面白いよなあ」
わかってるんだかわかってないんだか、蓮はにやにや笑って、口笛を吹く。
翠さんみたいな人がいてくれたらいいのに。
肩を落として、愛華も帰り支度をする。
夜8時の約束が、自分の日常を変えてしまうような、そんな予感を胸に、愛華は蓮と一緒に学校を後にした。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
2155 /桜木・愛華 / 女性 / 17歳 / 高校生・ウェイトレス
2359 / 藤宮・蓮 / 男性 / 17歳 / 高校生
お名前の並びは、整理番号順です。
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■ ライター通信 ■
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桜木さま
はじめまして。今回の担当ライターの小椋です。
愛華ちゃん、可愛いですねー。ラヴです。
OMCはひさしぶりなので、なにかと足りない部分もあるかと思いますが、
これからも愛華ちゃんを書けたらいいなあと思ってます。
まだまだ可愛さを書き切れなくて残念です。
ぜひ、もっと可愛い愛華ちゃんを書かせてください。
メイド服、着せてないし!
そんなわけで、これからも、ぜひよろしくです。
小椋みほ拝
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