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<東京怪談・PCゲームノベル>


大いなる褌

 ひととは考える葦である。
 つまり考えなく場ただ芽生え伸び、枯れていくものと何ら変わりない。
 それはある意味驕りでもある。あるがままの存在としての価値を貶める言葉でもあるからだ。
 しかし、人足りえる為に人は思考する。そうして己を万物の霊長と名乗るのだ。
 人であるが故の、それは業だ。
 即ち、こんな不条理な事は認めないと私は人として思考する。
 ――その実在を認めまた受け入れた瞬間、私の人としての自我は崩壊するだろう。いや葦と呼ばれることさえ、それを受け入れることに比較すればまだ易しい。
 私は認めない断じて。認めるわけには行かないのだ。

「……武彦さん」
 麗香に台無しにされた手記をちまちまと再開しだした草間に、シュライン・エマ(しゅらいん・えま)は頭を抱えた。同じく三下もその草間を眺めてきょとんとしている。
「とりあえず三下君はそれ以上私によらないで頂戴」
「なんでですか?」
 なんでもなにも。
 言った所で無駄であるだろうことは重々自覚していたが、シュラインはとりあえず言って見た。
「普通女性の前で下着姿って言うのは頂けないと思うわよ?」
「下着って、誰がですか?」
 きょとんと三下は小首を傾げる。
「――現実とは時に無情なものであるからこそ、それに抗うことによって人は人足りえると私は信じる……」
 現実逃避は著しくとも一応耳は聞こえているらしい。草間はブツブツと呟きながらそう手記に書き加えていく。
 なんと言ったらいいのかこれは。麗香が切れるのも無理はないだろうとシュラインは思った。三下から出来うる限り距離をとり、極力その貧弱な上半身の下に撒かれているものを見ないようにしながら、シュラインは草間に言った。
「武彦さん? とりあえず私は調査にいってくるから。麗香さんの置き土産の面倒は宜しくお願いするわね?」
 麗香の置き土産とは言うまでもないが三下のことである。いいわね三下君、君の仕事は今から私がいいと言うまでこの興信所に張り付いていることよととっくりと麗香に言い聞かされている。
 ――草間が自閉している隙に。
「我思う故に我あり、ひととは考えなければならない、そして戦わなければならない。そうそれこそが聖戦であり、ジハード。ヨハネ黙示禄になど負けるな人類……」
 ――ダメだなんか色々。
 そう思い、シュラインは現状打破を目指して興信所を後にした。

 さて、シュラインの調査内容は感嘆明瞭。
 さっぱりわけが分からないと言うのが結論だった。兎に角も褌を発注するとそれが届く。己の名義で発注された褌を手にした途端、夫が息子が祖父が恋人が行き成り服を脱ぎ捨てそれを着用する。そしてその事に何の疑問も抱かない。きっぱり分かったのはそれのみであった。通販の箱に記されている住所は褌県褌郡褌村ふんどし。明らかに虚偽である。何で宅配業者がこんなものを受け付けたのかもわからない。勿論サイトに住所の記載もなく、代金はネットマネー清算。見事なばかりにわけが分からない。
 そうなってくるとまあ取れる手立ては一つである。現物を入手することだ。シュライン以外の面子は大胆にも迷わずその手段を取っていたが。
 時間差はあっても同じ日の発注。届く日は同じ。
 そしてどいつもこいつも人情ない事に勿論自分の住所では発注はしてない。総て草間興信所着@月@日。

「おっはよーごっざいまーす。清清しい朝ねー」
「……やっぱりきやがったか」
 最も遅れて興信所へとやってきた冴木・紫(さえき・ゆかり)の元気な声に、やっぱりかと真名神・慶悟(まながみ・けいご)はその場で頭を抱えた。その肩を片方ずつ海原・みあお(うなばら・みあお)と鬼頭・郡司(きとう・ぐんじ)が叩く。
「まあ元気だしなよ」
「なんだなんだ折角の褌日和に暗いじゃねーか!」
 誰のせいだそして褌日和って一体なんだ。
 怒鳴る気力も沸いてこない慶悟をシュラインはいっそ面白そうに眺めた。やっぱり人情ないというよりも、すっかり慣れてしまったが正しい。ついでに慶悟の心配よりも、いまやすっかり自閉も極みとなって、給湯室に閉じこもって己の手記を零相手に朗読している草間のほうが目下のシュラインの心配事であった。やばいと言うかもう突き抜けてしまている。
「さーて面子も揃った所で」
 わくわくと藤井・葛(ふじい・かずら)が興信所の入口に積まれた包みを指さした。
「開けてみっか」
「おう! 褌褌〜♪」
 実に嬉しげに包みに飛びつく郡司は兎も角、慶悟は渋い顔を崩さない。
「――おい」
 傍らでニヤニヤしている紫に問い掛ける。紫はそのたちの悪い笑顔で慶悟に向かって包みを差し出していた。
「なによ?」
「俺は一枚。白フンを発注しただけなんだが?」
 紫が差し出している包みは軽く山になっている。どう見ても5つはある按配だ。
「あーそれそいつらがすっげ楽しそうにサイト見て頼んでたぞー?」
 葛が三下に包みを渡しながらいう。そのそいつらとは言うまでもなく紫とみあおのことである。紫の足元にチョコチョコ寄ってきていたみあおは紫と顔を見合わせるとねーとタイミングをあわせて首を傾げる。
「似合うわよ絶対!」
「うん! ぜったいこういう不幸にはあいつが引っ張られてくるんだから全部あれ名議すればいいのよって紫お姉ちゃんいってたけどホントにいるんだもんなー」
 微妙に会話がかみ合っていないが何があったかだけは嫌というほど分かる。要するに紫が企んでみあおがのりまくったのだ。
「お前等な……」
 がっくりと床に懐いた慶悟に、シュラインは今度こそ気の毒そうな視線を投げた。
「ま、まあ兎に角あけてみたら?」
「あけたが最後正気をなくすんだろう?」
「んなこともねーみたいだけど」
 葛がひょいっとソファーを指さす。元々正気を失っている三下は置いておくとして。早速新しい褌を締めてしまった郡司は実にご機嫌だった。
「褌ふんどし〜♪ どーだ大人の魅力だろ?」
 両手を腰に当ててふんぞり返る郡司の股間から聳え立っているのは立派なカルシウムだった。骨ともいう。正確には、牡鹿の角である。かぶいたのが欲しいと言い張って注文したようだが。
「……ものすごく正気じゃないけど」
 シュラインは額に指をあてる。紫がそれを引き継いだ。
「ものすごーく正気じゃないけど郡司はいつもあんなもんよ」
「確かに」
 妙に納得した慶悟はごくりと唾を飲み下す。イヤだと喚いても絶対にムダなのは分かりきっているからだ。今更姿を隠しても、この場にいる総員が草の根分けても探し出すだろう。主として紫とみあお、そしてノリノリの郡司が。
「……く」
 そして、包みを開けた瞬間。慶悟の意識は遠ざかった。

 ひととは耐えがたい苦痛の前に自ら記憶を封印する事があるという。
 恐らくこれはそういう出来事だった。私の目の前にいる彼にとっては。(冴木紫のルポより抜粋)

 慶悟の名誉のために。それは省略しよう。
 有態に言うと生着替えである。省略してないとか突っ込みは却下である。描写してないだろう克明には。してもいいのだがまあ筆者にも情けはある。
「……」
「…………」
「……………………」
「…………………………」
 下りた沈黙は4人分。
「お。行けてんじゃん♪」
「ん? 何がだ?」
 慶悟はケロリとした様子で肩を叩いてくる郡司に応えている。
「……本気で正気じゃなくなるのね」
 シュラインが冷や汗を流す。さしもの紫もどこか呆気に取られたように呆然と言った。
「幼女」
「みあおだってば!」
「藤井さん」
「なんだよ?」
「とりあえず記念撮影」
 呆然としていてもそこだけは押えておくらしい。二人は顔を見合わせると嬉々としてシャッターを切った。
 郡司と、そして郡司にとても嬉しげに肩を抱かれてきょとんとしている慶悟の写真を。
「まあお約束は済んだとして、これからどーしましょうか」
「だから一体あんたらどうしたんだ?」
 慶悟が不思議そうに問い掛けてくる。葛は眉間に皺をよせた。
「いやどーしたもこーしたもなあ」
「だからどうした?」
 どうしたってどうしようもない。なんかホントにどうしようもないのである。
 何しろ本人に自覚がないのである。
「タチ悪いわねー。これは」
「そうね。……本気で正気じゃないみたいだし。随分と乱暴な話だわ」
「だよなあ」
「三下ももどらないしねー」
 女性四人がしみじみと呟いたその時、閃光が事務所を満たした。

『なんじゃと無礼な!』
 突如として響いたその声に、一同は顔を見合わせた。
 光輝は未だに続いている。そしてその声はどうも天井から響いている。もしかしたら天上かも知れない。
「無礼ってなにがだよ?」
 素で答えたのは葛。それに声は更に憤懣やるかたないという口調で応える。
『性質が悪いとは何事ぞ!』
「なにごとって。まー三下はいいけど。でも他の人は一寸かわいそうな気もするよみあおは」
『なんと! 褌のどこがかわいそうなのじゃ!』
「だよなあ、やっぱ褌だぜ!」
「あんたは黙ってなさい」
 すぱんと郡司の後ろ頭を張り倒したシュラインは、その光輝に目を眇める。
 なんとなく漠然と予感はある。あるがしかし認めたくない。言葉にするのを躊躇ううちに正しくシュラインが発し様としていた質問を発したものがあった。
「で? あんた一体なんなんだ?」
 被害者である。被害者が自ら問い掛けている。被害者の自覚がいまのところはないが。
『なにと言われてものぅ。神じゃ』
「おっ? ひょっとして褌神か!?」
『おうともよ! 雷小僧は流石に察しがよいのぅ』
 声は途端に機嫌よさげになる。
 光輝の中では顔を見合わせるのは難しいが、紫とシュライン、葛とみあおは顔を見合わせた。
「……さらっと神とか言ってくれたわね」
「んなもんが出てくんのか最近は。つか褌の神ってなんだよ一体」
「だから褌のかみさまじゃないの?」
「……頭痛がしてきたわ」
『おおおぬし等かそう言えば! 残留思念を粗略にしたり、褌の霊に適当なことを吹き込んだりしたのは!』
 心当たりのある者も多い。一同はは? と問い返す。
『つまりのう。余りにも地上で褌が廃れておるのでな。ここはやはり神たるわしの出番じゃとそう思ってのぅ』
「いやだからって正気じゃなくするのはどうかと思うんだけど」
 シュラインは呆然としたまま呟く。
『仕方ないじゃろ。そうでないとだーれも締めてくれんのじゃから』
「だからって正気じゃ無くしてどーすんのよ」
 紫は慶悟の首を引っつかみ、頭上の光輝に翳す。一瞬何処を掴んでいいのか悩んだりもした。服着てないのだから当然だが。
『ふむう。気に要らんか』
「なんかわからんが正気でないというのはあまり褒められたことじゃなかろうな」
 被害者が言うなだから。
『ふむ。それなら……』
 一際光輝が強くなる。葛と紫、シュラインは蒼白になった。
 この会話の流れなら。つまり正気に戻すわけで、正気に戻っても服は着ておらず……
 そして。
 もの凄まじい絶叫が興信所に響き渡った。

 それきり光輝は消え去った。代わりに激怒する男が一人残ったがそれは兎も角。
 正気じゃなくなる、という部分を取り払われたOMFの褌はその後もぼちぼち発注があったらしい。
 ――そして悪夢の日を向かえる。

「おっはよーごっざいまーす。清清しい朝ねー」
「……やっぱりきやがったか」
 最も遅れて興信所へとやってきた冴木・紫(さえき・ゆかり)の元気な声に、やっぱりかと真名神・慶悟(まながみ・けいご)はその場で頭を抱えた。その肩を片方ずつ海原・みあお(うなばら・みあお)と鬼頭・郡司(きとう・ぐんじ)が叩く。
「まあ元気だしなよ」
「なんだなんだ折角の褌日和に暗いじゃねーか!」
 誰のせいだそして褌日和って一体なんだ。
 怒鳴る気力も沸いてこない慶悟をシュラインはいっそ面白そうに眺めた。やっぱり人情ないというよりも、すっかり慣れてしまったが正しい。ついでに慶悟の心配よりも、いまやすっかり自閉も極みとなって、給湯室に閉じこもって己の手記を零相手に朗読している草間のほうが目下のシュラインの心配事であった。やばいと言うかもう突き抜けてしまている。
「さーて面子も揃った所で」
 わくわくと藤井・葛(ふじい・かずら)が興信所の入口に積まれた包みを指さした。
「開けてみっか」
「おう! 褌褌〜♪」
 実に嬉しげに包みに飛びつく郡司は兎も角、慶悟は渋い顔を崩さない。
「――おい」
 傍らでニヤニヤしている紫に問い掛ける。紫はそのたちの悪い笑顔で慶悟に向かって包みを差し出していた。
「なによ?」
「俺は一枚。白フンを発注しただけなんだが?」
 紫が差し出している包みは軽く山になっている。どう見ても5つはある按配だ。
「あーそれそいつらがすっげ楽しそうにサイト見て頼んでたぞー?」
 葛が三下に包みを渡しながらいう。そのそいつらとは言うまでもなく紫とみあおのことである。紫の足元にチョコチョコ寄ってきていたみあおは紫と顔を見合わせるとねーとタイミングをあわせて首を傾げる。
「似合うわよ絶対!」
「うん! ぜったいこういう不幸にはあいつが引っ張られてくるんだから全部あれ名議すればいいのよって紫お姉ちゃんいってたけどホントにいるんだもんなー」
 微妙に会話がかみ合っていないが何があったかだけは嫌というほど分かる。要するに紫が企んでみあおがのりまくったのだ。
「お前等な……」
 がっくりと床に懐いた慶悟に、シュラインは今度こそ気の毒そうな視線を投げた。
「ま、まあ兎に角あけてみたら?」
「あけたが最後正気をなくすんだろう?」
「んなこともねーみたいだけど」
 葛がひょいっとソファーを指さす。元々正気を失っている三下は置いておくとして。早速新しい褌を締めてしまった郡司は実にご機嫌だった。
「褌ふんどし〜♪ どーだ大人の魅力だろ?」
 両手を腰に当ててふんぞり返る郡司の股間から聳え立っているのは立派なカルシウムだった。骨ともいう。正確には、牡鹿の角である。かぶいたのが欲しいと言い張って注文したようだが。
「……ものすごく正気じゃないけど」
 シュラインは額に指をあてる。紫がそれを引き継いだ。
「ものすごーく正気じゃないけど郡司はいつもあんなもんよ」
「確かに」
 妙に納得した慶悟はごくりと唾を飲み下す。イヤだと喚いても絶対にムダなのは分かりきっているからだ。今更姿を隠しても、この場にいる総員が草の根分けても探し出すだろう。主として紫とみあお、そしてノリノリの郡司が。
「……く」
 そして、包みを開けた瞬間。慶悟の意識は遠ざかった。

 ひととは耐えがたい苦痛の前に自ら記憶を封印する事があるという。
 恐らくこれはそういう出来事だった。私の目の前にいる彼にとっては。(冴木紫のルポより抜粋)

 慶悟の名誉のために。それは省略しよう。
 有態に言うと生着替えである。省略してないとか突っ込みは却下である。描写してないだろう克明には。してもいいのだがまあ筆者にも情けはある。
「……」
「…………」
「……………………」
「…………………………」
 下りた沈黙は4人分。
「お。行けてんじゃん♪」
「ん? 何がだ?」
 慶悟はケロリとした様子で肩を叩いてくる郡司に応えている。
「……本気で正気じゃなくなるのね」
 シュラインが冷や汗を流す。さしもの紫もどこか呆気に取られたように呆然と言った。
「幼女」
「みあおだってば!」
「藤井さん」
「なんだよ?」
「とりあえず記念撮影」
 呆然としていてもそこだけは押えておくらしい。二人は顔を見合わせると嬉々としてシャッターを切った。
 郡司と、そして郡司にとても嬉しげに肩を抱かれてきょとんとしている慶悟の写真を。
「まあお約束は済んだとして、これからどーしましょうか」
「だから一体あんたらどうしたんだ?」
 慶悟が不思議そうに問い掛けてくる。葛は眉間に皺をよせた。
「いやどーしたもこーしたもなあ」
「だからどうした?」
 どうしたってどうしようもない。なんかホントにどうしようもないのである。
 何しろ本人に自覚がないのである。
「タチ悪いわねー。これは」
「そうね。……本気で正気じゃないみたいだし。随分と乱暴な話だわ」
「だよなあ」
「三下ももどらないしねー」
 女性四人がしみじみと呟いたその時、閃光が事務所を満たした。

『なんじゃと無礼な!』
 突如として響いたその声に、一同は顔を見合わせた。
 光輝は未だに続いている。そしてその声はどうも天井から響いている。もしかしたら天上かも知れない。
「無礼ってなにがだよ?」
 素で答えたのは葛。それに声は更に憤懣やるかたないという口調で応える。
『性質が悪いとは何事ぞ!』
「なにごとって。まー三下はいいけど。でも他の人は一寸かわいそうな気もするよみあおは」
『なんと! 褌のどこがかわいそうなのじゃ!』
「だよなあ、やっぱ褌だぜ!」
「あんたは黙ってなさい」
 すぱんと郡司の後ろ頭を張り倒したシュラインは、その光輝に目を眇める。
 なんとなく漠然と予感はある。あるがしかし認めたくない。言葉にするのを躊躇ううちに正しくシュラインが発し様としていた質問を発したものがあった。
「で? あんた一体なんなんだ?」
 被害者である。被害者が自ら問い掛けている。被害者の自覚がいまのところはないが。
『なにと言われてものぅ。神じゃ』
「おっ? ひょっとして褌神か!?」
『おうともよ! 雷小僧は流石に察しがよいのぅ』
 声は途端に機嫌よさげになる。
 光輝の中では顔を見合わせるのは難しいが、紫とシュライン、葛とみあおは顔を見合わせた。
「……さらっと神とか言ってくれたわね」
「んなもんが出てくんのか最近は。つか褌の神ってなんだよ一体」
「だから褌のかみさまじゃないの?」
「……頭痛がしてきたわ」
『おおおぬし等かそう言えば! 残留思念を粗略にしたり、褌の霊に適当なことを吹き込んだりしたのは!』
 心当たりのある者も多い。一同はは? と問い返す。
『つまりのう。余りにも地上で褌が廃れておるのでな。ここはやはり神たるわしの出番じゃとそう思ってのぅ』
「いやだからって正気じゃなくするのはどうかと思うんだけど」
 シュラインは呆然としたまま呟く。
『仕方ないじゃろ。そうでないとだーれも締めてくれんのじゃから』
「だからって正気じゃ無くしてどーすんのよ」
 紫は慶悟の首を引っつかみ、頭上の光輝に翳す。一瞬何処を掴んでいいのか悩んだりもした。服着てないのだから当然だが。
『ふむう。気に要らんか』
「なんかわからんが正気でないというのはあまり褒められたことじゃなかろうな」
 被害者が言うなだから。
『ふむ。それなら……』
 一際光輝が強くなる。葛と紫、シュラインは蒼白になった。
 この会話の流れなら。つまり正気に戻すわけで、正気に戻っても服は着ておらず……
 そして。
 もの凄まじい絶叫が興信所に響き渡った。

 それきり光輝は消え去った。代わりに激怒する男が一人残ったがそれは兎も角。
 正気じゃなくなる、という部分を取り払われたOMFの褌はその後もぼちぼち発注があったらしい。

「ねーねーシュラインおねえちゃん」
「なあに?」
 光輝が去った後の大騒動の後に、みあおがシュラインに尋ねる。
「草間にも褌注文したんだけど、これどうしよっか?」
「……捨ててらっしゃい」
「えー」
 あくまでみあおは不満そうであるが捨ててもらうしかない。
 給湯室から響いてくるお経のような手記の朗読に、シュラインは最早溜息をつく以外なかった。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト】
【1021 / 冴木・紫 / 女 / 21 / フリーライター】
【1415 / 海原・みあお / 女 / 13 / 小学生】
【0389 / 真名神・慶悟 / 男 / 20 / 陰陽師】
【1312 / 藤井・葛 / 女 / 22 / 学生】
【1838 / 鬼頭・郡司 / 男 / 15 / 高校生・雷鬼】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、里子です。今回は参加ありがとうございました。

 褌三連作、これにて終了でございます。私が出すゲームノベルの褌はこの大いなる褌が最後となります。
 トリに相応しく、神です神様。ええ褌の神様です!<止まれお前は

 今回はありがとうございました。また機会がありましたら宜しくお願いいたします。