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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


TheLordOfTheSpirits〜第一部:TheFellowshipOfTheSpirits〜

■Opening:TheFellowshipOfTheSpirits

「逃げた霊を探して捕まえて欲しいんです」
そう言って、20代の女性が草間興信所を訪ねて来た。
あのけたたましい空襲警報でも発令されたかと思う程のブザー音をものともせずに、だ。
とりあえず…と、女性の話を聞く事にして草間は座った。
女性の名は『神城由紀(かみしろゆき)』式霊を使い、便利屋を営んでいる。
代々巫女の家系に生まれて物心ついた時から霊が友達だったらしい。
このご時世、家業だけではやっていけずに、一年ほど前からここ東京で便利屋をはじめたらしいのだが…。
「今朝、起きたらあの子達がいなくなってたんです!!
姿も形も見えなくて…必死で探したんです!でもどこにも見つからなくて」
由紀はそう言いながら涙を流した。
「家出したのかも…きっとそうなんだわ…
わたしが、わたしが…仕事をさせすぎたせいできっとあの子達ストレスで…」
泣き崩れる由紀に、草間は困り果てた顔をする。
「――わかりました。もう少し詳しくお聞かせ下さい」



「全員揃ってるな?」
草間興信所のお世辞にも広いとは言えない一室に、草間、零、依頼人の神城由紀、
そして今回呼び出された6人が全員集合していた。お陰で人口密度も高く、しかも冬場なのに暑い。
互いに失礼の無いように空間を取りつつも、自分の居場所を作るのに必死だった。
「依頼内容は予め電話で言った通りだ。今から詳細を説明する…って、後ろ聞こえてるか?」
最後尾にいた者は座る場所が無いので「はい」と立ったままで答えるしかなかった。
「神城さんの”式霊”は全部で合計12体…その全部がいなくなった…
それを探して見つけ出し”傷つけずに”封印して連れ戻してほしいとの事だ」
「神城さんは便利屋を営んでいるそうですが、具体的にはどのような仕事を…?」
ソファに腰を下ろして、由紀のちょうど斜め前に座っていたシュライン・エマが問い掛ける。
由紀は小さく頷き、頷いた時に垂れてきた長い髪を後ろに流した。
「”式霊”を使って、依頼人に頼まれた仕事をどんな事でも解決しています…
人探しをしたり、護衛をしたり、暇な方の囲碁のお相手…本当に何でもやっています」
「それがストレスになって自分から出て行ったかもしれないという事でしたね?」
次に、冠城・琉人(かぶらぎりゅうと)が問い掛ける。
「もしそうだとしたら俺はストレスになるような使い方をしているのが気に食わないがな…」
冠城の言葉を聞いて、不意に御巫・傀都(みかなぎかいと)が呟く。
自分も同じように式を使う者として思った事を口にしてしまったのだが。
「すみません!!すみません!!わたしが悪いんですっ…わたしがっ…」
「あ、いや…そういうつもりで言ったわけじゃ…」
泣き出した由紀に、御巫は戸惑い少しうろたえる。周囲の視線が少々痛かった。
そんな彼女を、倉前・沙樹(くらまえさき)が優しく声をかけて宥めた。
「何者かに連れ去られたという可能性は?」
「その”霊”達が行きそうな場所って言うか…心当たりってのはないのか?」
石神・月弥(いしがみつきや)と大神・森之介(おおがみしんのすけ)が、
場の雰囲気を変えようと発言すると、涙を流しながらも由紀はしっかりとした口調で、
「わかりません…寝ている間にいなくなっていたから…それに心当たりも今は何も…」
そう答えた。その言葉に、先ほど泣かせてしまった御巫が一つ咳払いをして。
「同じ”式”を使う者として質問なんだが、その”式”の気配は感じないのか?」
「それが変なんです…いつもならあの子達がどこに居ても感じることが出来るのに…出来ないんです…!」
由紀は困り果てて不安でいっぱいと言う表情で御巫を見つめた。
「まあとりあえずだ…今日ここに集まってもらってるメンバーは俺が厳選したメンバーだ。
この仕事には最適と考えて選んだ…それぞれの能力を最大限に使って頑張ってくれよ」
草間が一旦その場を仕切る。そして、徐にテーブルの上に数枚の紙切れを並べた。
「これは神城さんの家に伝わる”封札(ふうさつ)”と言う札だ。12枚ある。
もしもの時の為に作られたものだそうなんだが、神城さんの”式霊”の近くに行けば探知するそうだ…
見つけたらこの札で霊の体の一部に触れれば札の中にその霊を封じる事が出来る」
”封札”は長方形の白い紙で、凡字でも漢字でも無さそうな独自の文字が墨で書かれている。
もしこれが黄色に赤なら、某・キョンシーの額に貼ってある札を思い出した事だろう。
「上手く封印できればそ赤い文字が浮かぶそうだ…一人二枚どれでも好きなものを取ってくれ」
言われるままに、12枚の”封札”を適当に二枚取って順番にまわしていく。
そして全員の手に回った事を確認して、草間が口を開いた。
「今回は二人一組で行動してもらう。組み合わせは俺が決めた組み合わせだ…いいな?」
信頼のおける関係である草間の意見に反論するまでもなく、全員が頷いた。


■Mission:KURAMAE&O-GAMI

「大神さん、温かいコーヒーでも飲みますか?」
「あ、そうだな…」
倉前・沙樹(くらまえさき)は微笑んで、スターボックスカフェに入っていく。
その後ろ姿を見つめながら、大神・森之介(おおがみしんのすけ)はデートでもしている錯覚に陥りかけた。
慌てて首を左右に振って浮かんだ事を振り払う。
「大神さん、カフェモカでよかったですか?熱いですから気をつけて下さいね」
そう微笑みながら差し出すカップを、大神は両手で受け取った。
はたから見れば、仲のいいカップルのデートのひとコマのように見える二人であったが、
仮にも今は仕事中。そう、仕事中であって決してデートでは決してないのだ。
倉前と大神の二人は、倉前の霊能力を使って霊の捜索をするために街へ出ていた。
探索やコンタクト能力はあっても戦闘能力の無い彼女の為に、草間は大神と組ませたのだ。
大神は戦闘能力に関しては長けている。ちょうど良い組み合わせなのではあるが…
「見てください大神さん。あの服かわいいですね」
「う、うん…そうだな」
男子大学生として女子高生と二人っきりと言うのはどうも意識せずにはいられない大神だった。
のんびりと街を歩いているように見えるこの二人であるが、
倉前は歩きながら、霊を感知するレーダーのようなものを広範囲に広げて探索しているのだ。
もしそのレーダーに引っかかればそこへ向かおうと…。
「大神さんは普段は何をしてらっしゃるんですか?」
「え?俺は大学生だから…何ってわけでもないけど…倉前クンは?」
「私も高校生ですから」
そう言って倉前はやんわりと微笑んだ。
その返事を聞いて、大神は自分が見当違いの返事をしてしまった事に気づく。
大学生である事はすでに自己紹介済みであるわけで、そう言うことを聞かれたわけではなく。
「えっと、家は神想流大神家家元で…能役者をやってるんだ」
「まあ、能をやってらっしゃるんですか?凄いですね」
「そうでもないよ…倉前クンは何かやってるのかい?」
「…私は剣術を少し嗜んでいるくらいです」
「へえ!俺も剣術が得意だよ!」
「そうなんですか?」
二人は共通の話題を見つけて微笑みあう。そしてしばらく、剣術談議に花を咲かせながら歩いた。
余計にデートをしているように見えるのだが…何度も言うが、断じてデートではない。
これは仕事なのである。



倉前の行く方へ大神はただ着いていくだけでしばらく時間は過ぎた。
そして海沿いにある公園までやってきた時…不意に倉前が立ち止まった。
「かわいい子犬ですね」
見ると、視線の先の芝生の上に犬が一匹寝転んでいるのが目に入った。
日向ぼっこでもしているのだろう。
のん気なものだなあ…と、大神が苦笑していると…倉前はまっすぐにそちらに歩いていく。
その後を追った大神は、突然倉前が犬の前でしゃがみ込み…足を止めた。
「こんにちわ」
そして、倉前は子犬に声をかける。
白い日本犬のように見える子犬は、チラリと倉前に目を向けたが再び寝に入った。
「気持ちいいですか?」
それでも声をかける倉前を、大神は「かわいい子だな」と思いつつ見る。
動物や植物に話し掛ける女の子と言うものは得てして男心をくすぐるものがあるのだが…
「探してますよ?帰らないんですか?」
どうも倉前は本気で話し掛けているように見える。
もしや…と大神が子犬を覗き込んだ時、子犬はスッと立ち上がり。
『由紀に頼まれて探しに来たんですね?』
子犬の外見からは想像も出来ないような、成人男性の低い声が聞こえてきた。
「はい」
倉前は平然と話を続ける。大神は声のイメージが違った事に多少戸惑ったりしたのだが。
『申し訳ありませんが、僕は帰りませんから』
子犬はそう言ってその場から去ろうとする。慌てて大神はその子犬の前に立ち、それを制止した。
「まあそう慌てないで…話だけでも聞いてもらえないですか?」
『悪いがどんな話を聞いても僕は…』
「由紀さん泣いてらっしゃいましたよ?式霊がいなくなったのは自分が便利屋をさせたストレスのせいだって…
ご自分をとても責めていらして…随分と泣いてらっしゃいました」
『あの由紀が…泣く…?』
子犬は倉前の言葉に戸惑ったのか、その場に座り込んだ。話をする気にはなったのだろう。
倉前と大神も芝生の上に腰を下ろし子犬の両脇に並んだ。
正面には東京の海が見える。しばらく誰も何も言わずに黙ったままで時間が流れた。
まず口を開いたのは、子犬だった。
『僕は太郎(タロウ)。由紀がつけた名前です。僕は最後から二番目に式になりました』
「太郎さんですか…私は倉前沙樹といいます」
「俺は大神森太郎。太郎繋がりだな」
大神のその発言には太郎はノーコメントでさらりと流す。
見た目はかわいい子犬であるが、性格はあまりかわいくないなと思った。
『お二人は恋人ですか?』
「な、何をいきなり言って…」
「違いますよ。一緒にお仕事をしています」
慌てる大神に対し、倉前は冷静にあっさりと答える。
少々寂しい気もしながら大神は「そうだ」と同意して付け加えた。
『…ならば大好きな人はいますか?』
太郎の聞きたいことの心意がわからないが、二人は「はい」と答える。
その答えに太郎はフッと息を吐いて。
『ではもし自分がその人の近くに居る事でその大好きな人を悲しませたり傷つけたり…
殺してしまうかもしれないとしたらあなた達はどうしますか?』
「…!それはもしや…あなた方の事を仰っているんですか?」
『そう言う事にしておきましょう』
太郎は立ち上がって歩き始めた。その後を二人も追いかける。
『僕達だって本当は由紀から離れたくは無いんです。ですが離れなければ彼女の命を奪いかねない…
辛いんです。僕たちだって。ですが…これは皆で話して出した結論なんです』
「理由がわからないので何も言えませんが…でもその結論で結局は由紀さんを悲しませていらっしゃるんですよ?」
『少しの辛抱です…すぐに慣れます…命を奪う事に比べたら…』
「ちょっと待てよ」
黙って太郎と倉前のやり取りを聞いていた大神が不意に口を開く。
どうも納得の行かないといった表情で…少しの怒りも滲み出ていた。
「悪いがそれはお前達の勝手な言い分じゃないのか?自分達だけで勝手に話し合って決めて姿を消して…
辛いって言ったけどな…全てを納得して出て行った奴の辛さと、
わけもわからず置いていかれた奴の辛さを一緒にするってのはどうも俺は納得行かない」
『あなたにはわからないんです。我々の苦しみや悲しみ…そして辛さが!』
「お前にとってあの由紀って人は辛いだけの人間か?」
『何を馬鹿な!!』
「だってそうだろ?辛いから逃げたんじゃないのか?自分たちだけで」
『何も知らない奴が偉そうな事を…!』
太郎は立ち止まり大神を見つめると、牙を剥いて威嚇する。
それまで子犬だったその外見がみるみる大きくなり、やがて中学生くらいの大きさまでになる。
突然の出来事に一瞬ひるんだ大神だったが、倉前を自分の背中側にかばうように立ちじっと太郎を見つめた。
『おまえ達を食い殺すなど僕には造作も無い事!!』
「その言葉を借りるなら、お前を倒すのは俺には造作も無い事だと思うがね」
『貴様ッ!!!』
「だが俺はそれが出来ない…何故なら、彼女はそんな事を望んでいないからな」
『!』
「由紀さんは”無傷で”を条件にしてるんだ。だから、俺は傷つけるつもりは無い」
「そうです…どうかわかってください由紀さんの気持ちを…理由があるならそれをきちんとお話するべきだと思うんです…
その上で一緒に解決策を見出す事が一番良いと思います」
『それが…それが出来ればこんな…』
「やってみてないクセに偉そうに言うなよ!」
「お、大神さん!」
わざと怒らせるような発言をする大神に、倉前は慌てて宥める。
しかし大神にも何か考えでもあるのか倉前に振り返りニッと不敵な笑みを浮かべて再び太郎と対峙した。
「お前達はやる前から『どうせ何も出来ない』と決め付けてる…そんな事じゃあ出来るものも出来なくて当然だろ」
『くっ…』
「本当に彼女の事を思うなら彼女を交えて話すのが当然の事だろ!
自分の居ないところでこそこそ勝手に話進められてる方が、よっぽど辛いぜ…」
『おのれ…我々の気持ちも…由紀の気持ちも知らぬやからがッ…!!』
「大神さん!!」
太郎は身体をぐっと起こすと、長く伸びた爪を振り上げる。
慌てる倉前を他所に、大神は涼しい顔で彼女の前に全身で立ちはだかった。そして…
『消えてしまえッ!!』
叫び声とともに、太郎の腕が振り下ろされる!
大神は逃げる気配もそれを受ける気配も無く、思わず目を閉じた倉前だったが…
「――これは…?」
肌に触れた柔らかい感触に目を開く。すると目の前に、真っ白な綿のようなものが見えた。
顔を上げると、周囲を白い綿が雪のように待っている。
そして自分をかばうようにして立つ大神の向こう側に一人の女性が立っていた。
その女性は子犬状態に戻った太郎を腕に抱いて微笑んでいる。
綿のような服を着てその服と同じくらいの真っ白な肌をしていた。
『太郎は少し感情の起伏が激しいのです』
「あなただったんですね…やり取りを見ていたのは」
『申し訳ありません。早く出て行こうと思っていたのですがもう少し様子を見ていたかったのです』
『姉さん!僕はまだ…』
『黙っていなさい。もういいのです。あなたもわかっているはずでしょう…わたしたちの選んだ道は間違いだったのだと』
『けれど…っ…』
女性は太郎の頭を数回撫でると、やわらかく微笑んで大神に差し出した。
『根は優しいいい子なんです。本当は由紀ちゃんに会いたがっているんですよ』
「え…」
『連れて帰ってください。由紀ちゃんのもとへ』
『ね、姉さん…!!』
『わたしも帰りますから』
『………』
太郎は観念したのか、それ以上は何も言わずに黙り込んだ。
大神は自分のポケットから”封札”を取り出すと…その太郎の額に貼ろうとし…
「さっきは言い過ぎたかもしれない…悪かった」
『僕も大人気なかった。気にしないで』
子犬ゆえに表情をはっきりと読み取る事は出来ないが、太郎はそう言って微笑んだような気がした。
大神はその額に封殺を貼る。すると、太郎の身体は煙となり…吸い込まれるようにして封札の中に消えていくと、
白い紙に黒い文字が書かれていただけの封札に、赤い『戌(いぬ)』と言う文字が浮かび上がってきた。
大神は大事にそれを内ポケットに入れ…もう一人の女性に目を向けた。
『わたしは未来(みらい)。八番目の式。由紀ちゃんの事は主人であり…妹のように思っています』
「未来さん…」
『お手数をおかけします…わかっているのですわたし達も本当は…
黙って姿を消してしまう事がどれほど由紀ちゃんにとってつらいことか…
それでも、そうせざるを得ない理由があった事も…わかってくださいね』
「お聞かせ願えませんか…?もし良ければ」
『すぐにあなた達の仲間から連絡が入りますよ。その時にお聞き下さい』
未来はそう言って微笑んだ。
その言葉の裏には自分の口からは話したくない…そんな気持ちが感じられた。
「未来さん…他の式霊達の居場所はご存知ありませんか?」
倉前が訪ねる。知っているのなら、話は早いのだが。
『ごめんなさい。わたしも偶然、太郎を見つけたくらいで…
子々(ねね)という一番最初の式ならわかるかもしれないけれど、わたしには…わからないんです』
「そうですか…」
『お願いがあります。再び、わたしたち全員を由紀ちゃんに会わせてください。
自分達から離れておきながらおかしな話だとは思うんです…ですが…』
「わかっています。私たちだけじゃなく他の仲間も必ず全員を見つけますから」
「あなた達のためにも由紀さんのためにも、ね」
『ありがとうございます』
未来はやわらかく微笑むと、ゆっくりと眠るように目を閉じる。
一瞬、その表情にドキリとした大神だったが、倉前がその意味を察し”封札”で彼女の額に触れた。
すると太郎の時と同じく、煙となり吸い込まれていく。
そしてやはり封札には赤い文字で『未(ひつじ)』と文字が浮かび上がった。
「戌(いぬ)に未(ひつじ)なんて干支みたいだな…」
大神が不意に呟く。倉前も言われてみて…ふと気付く。
「全部で十二って言いましたよね?もしかしたら…」
「十二支が関係してるのか?」
「かもしれませんね…それにしても大神さん。あまり無茶をしないで下さいね。心配してしまいました」
「あ、ああごめん。ああしないと隠れてるもう一人が出てこないかと思って…それでなくても、
あの太郎って奴は本気で人を襲ったりはしないと思うしね」
「はい。私もそう思います」
倉前はそう言ってどこか嬉しそうに微笑んだ。
二人がそう話していると、不意に倉前の携帯の着信音が鳴る。
すぐに電話を取ると、それは草間からの連絡だった。
他のチームで動きが合ったらしい。とりあえず先にこちらの報告をした後、
草間から他のチームでの情報を聞き、二人は手に持った”戌”と”未”の封札を見つめた。
「なんて言うか…切ないよな」
「そうですね…」
二人は互いにそう呟き合うと、黙ったままで…日の暮れはじめた海を見つめながら…
その場を後にしたのだった。


■Ending:Seeyouagain...?

日が落ち一般家庭では夕食を終えてくつろぎ始めたであろう頃。
草間に全員集合をかけられた面々が草間興信所に再び集う。
「ご苦労だった…と言ってもまだ残ってるんだが…」
草間はそう言うと、とりあえず全員から残っている”封札”を回収した。
シュラインと冠城の二人が四体。御巫と石神が三体。倉前と大神が二体の合計九体。
『子』『丑』『寅』『卯』『辰』『午』『未』『戌』『亥』と書かれた封札。
由紀はそれらを大事そうに抱きしめながら、目には涙を浮かべていた。
「一晩中かけての捜索は負担が大きい…とりあえず今日の仕事はここで終了とする。
神城さんには理解してもらった。明け次第再び仕事にかかってもらいたいと思うが強制ではない。
今回の捜索でだいたいの場所や動向はわかった…俺と零だけでなんとかなる事はなるだろう…」
草間はそう言って一呼吸起き。
「しかし、明日もこの件に関わってくれるというなら、朝8時に集合して欲しい。
何度も言うが強制では無い…明日は平日という事もあり学生は学校に行ってもいい…
他に仕事のある奴はそっちに行ってくれればいい…」
草間はそう告げて椅子に腰を下ろした。
「それじゃあ…一時解散、という事ね」
シュラインが立ち上がり服の裾を整える。
「そうですね」
倉前も同じようにスカートについたシワを整えながら立ち上がった。
「明日か明後日あたり…満月になりそうだね…」
石神が窓の外を見て、伸びをしながら言う。
「お疲れさん!まあ明日会うかどうかはわからないけど会うとしたらまた宜しくな」
大神がそう言って手を挙げる。
「明日の予定は明日になってみないとわかりませんからね…」
冠城はそう呟いて零の入れた緑茶をゆっくりとすする。
「ゆっくり休めよ…」
御巫が誰に言うともなくそう呟いて扉に向かう。
「あのっ…皆さん!!今日は本当にありがとうございました…」
由紀はそう言って、深々と頭を下げたのだった。


そして、草間興信所から再び人が消える。
冬場なのに暑さすら感じた一室が、冬場本来の寒さを取り戻していた。



<END>

第二部〜TheTwoSpirits〜に続く

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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チーム1:
【0086/シュライン・エマ/女性/26歳/翻訳家・幽霊作家+草間興信所事務員】
【2209/冠城・琉人(かぶらぎ・りゅうと)/男性/84歳(外見20代前半)/神父(悪魔狩り)】
チーム2:
【1953/御巫・傀都(みかなぎ・かいと)/男性/17歳/傀儡師】
【2269/石神・月弥(いしがみ・つきや)/男性/100歳/つくも神】
チーム3:
【2182/倉前・沙樹(くらまえ・さき)/女性/17歳/高校生】
【2235/大神・森之介(おおがみ・しんのすけ)/男性/19歳/大学生・能役者】

NPC
【***/神城由紀(かみしろゆき)/女性/23歳/心霊便利屋・巫女】

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■         ライター通信          ■
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この度は依頼をお受けくださりありがとうございました。
すぐに満員になった事に驚きと嬉しさが入り混じった感じです。(^^)
全3話の第1話という事なので完結には至っておりませんが、
1話だけでも楽しんでいただけたら幸いです。
今回はNPCの設定がややこしく説明ばかりで文章が長くなってしまいました。
ちなみに、Missionはチームごとに書かせていただきました。
宜しければ他の方のMissionもご覧になって戴けるとより楽しめるかもしれませんし、
余計にややこしくなってしまうかもしれません。(それはどうかと…/笑)
次回は戦闘になると思いますが宜しければご参加下さいませ。

皆さんとても素敵な方々で大好きです。
お別れが名残惜しいですが、またお会いできる日を楽しみにしております。

:::::安曇あずみ:::::


>倉前・沙樹様
はじめまして。この度は参加して下さりありがとうございます。
剣術のエピソードを入れられなかったのが心残りです。
ほのぼのとした雰囲気をどこかのチームに入れたかったので、
倉前様のお陰で思ったような展開を書く事が出来ました。
ありがとうございます。またお会いできるのを楽しみにしています。

>大神・森之介様
はじめまして。この度は参加して下さりありがとうございます。
女子高生を意識してしまう男子大学生という感じで書いてしまいましたが、
倉前様とのやりとりを書いていて実に楽しかったです。(^^)
せっかくの設定をあまり生かせずなかったのが心残りです。
またお会いできるのを楽しみにしています。