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<東京怪談・PCゲームノベル>


出現!天下無敵の暇人娘!

1.
「暇人がそう簡単に懲りるような架空の事件では困るのなら、中々懲りずに1年ほど興信所へ入り浸るような事件に連れて行った方がよろしいのでしょうか」
草間興信所から帰ってきたメイドアンドロイドモナがそう言った。
モナが言うにはどうも草間興信所に暇人と名乗る女が仕事をさせろと居座っているらしい。
そんな女に草間はほとほと手を焼いておりどうにかしたい・・と、そんな情報をモナは持ち帰ってきた。
ササキビクミノは返答を待つモナに言った。
「否。草間は速攻叩き出したいのを我慢して皮肉っているのだ」
ネットカフェモナスの2階でクミノはしばし考えた。
そこまで困っているのなら、手を貸してやらないこともない。
暇なわけではない。
他でもない草間興信所のためである。
クミノは立ち上がった。
「草間興信所に行く。モナも来るといい」
「了解しました」
そう言って、クミノはカフェモナスを後にした。

2.
草間興信所につくと、例の女は帰った後らしく草間がソファに座ってぐったりとしていた。
「失礼する」
開いていたドアを軽くノックして、クミノは興信所の中へ入った。
「・・あぁ、おまえか。悪いが今は回せるような仕事はないぞ」
そう言って草間は少しクミノを見た後またソファでくたばった。
「・・・面白い女が来てると聞いてわざわざ赴いたのだが」
クミノがそう言うと草間はクミノを見、後ろのモナへと目をやった。
「そういや三雲が居る時に後ろのメイドが来ていたな。すっかり忘れていた」
どうやら相当その女の相手で気が滅入っているらしい。
「三雲・・というのか。その女の相手、私がしてやってもいい」
草間が怪訝な顔をした。
「おまえが?いや、それはありがたいが・・・」
草間の顔に逡巡が広がった。
人の目に見て明らかであったから、モナの目にはさらにはっきりとその逡巡ぶりがわかっただろう。
クミノは時計を見た。
時刻は夜8時を回ったあたり。
「今から2時間後。22時。新宿にある有名な廃墟を知っているだろう?そこに来るようにその女に伝えてくれ」
「あ、あぁ。あまり手荒なことはするなよ」
「保証はできない」
「・・・・」
クミノはそう言うと踵を返した。

3.
「あなたがササキビクミノさん?なんかちっちゃー・・」
三雲京子の第一声にそう言った。
事実、三雲から見たクミノは赤いリボンが印象的なただの小さな少女にしか見えなかった。
「三雲・・さんですね。あなたには私の仕事の手伝いをしていただきます」
クミノはそういうと小さなカプセルを三雲に見せた。
「なにそれ?」
「ゴキブリ」
「げーー!あなたどっかおかしいんじゃないの!?ゴキブリ持ち歩くなんて!!」
三雲は2、3歩クミノから退いた。
だが、クミノはお構いなく言葉を続けた。
「このゴキブリは三雲さんと会う1時間前に捕まえました」
「・・・だ、だから?」
「とりあえず、覚えておいてください。重要なことです」
三雲は訝しげな顔をしていたが「まぁいっか」と気持ちを切り替えたらしくクミノに仕事の内容を聞いてきた。
「今東京中に宇宙生物がカラスに姿を変えて潜伏しています。そのすべてを片付けます」
「・・・片付ける?」
「殺します」
「・・・」
「モナ、三雲さんに武器を」
「了解しました」
クミノの淡々とした物言いに、三雲は言葉が出てこなかった。
モナから渡された武器を手に受け取るとようやく「マジで?」と弱々しく聞き返した。
「もちろん。殺し終わるまで仕事は終わりません」
「それってつまり・・・」
「朝がこようが終わるまで続けます」
「うっそーーーー!!!」
三雲の叫びが廃墟にこだました・・・。

4.
三雲はその日無断欠席をした。
家に帰ることはおろか、休む暇も与えられず電話する暇すらなかったのだ。
「まだ終わんないのーーー!?」
「殺さなきゃ終わりません」
「うぅ・・疲れたよう・・・」
カラスを殺すことに最初こそ戸惑いはしたが、殺した後そのカラスはなぞの物体に姿を変えて消えていく。
クミノの言ったことは本当だったのだ。
だが、東京は広い。
たった一日徹夜した程度で回りきれるものでもない。
まして、日中使ってカラスに化けた宇宙生物をしらみつぶしに殺してくことは並大抵のことではない。
クミノに泣き言を言いつつ、それでも三雲はなんとか昼を越え夜を迎えた。
だが、精神的にも肉体的にもぼろぼろになっていた。
もちろんそれはクミノにも言えた事だった。
ど素人の三雲に比べればまだまだ傷は浅いが、宇宙生物は稀に攻撃をしてきた。
だからそれなりに疲れる仕事ではある。
仕事を始めほぼ一日たとうかという時、クミノは三雲に話があるといった。
三雲は疲弊していた。
だが、クミノがあまりにも真剣だったので何とか自分の意識を保ちつつクミノの話を聞くことにした。
「昨日初めて会ったときにゴキブリを見せたの、覚えてますか?」
「・・あ。なに?まだ持ってるの?って言うか、それがどうしたの??」
三雲にはさっぱり話が見えない。
クミノは昨日三雲に見せたゴキブリが入っていた小さなカプセルを再び三雲に見せた。
「死んでる・・」
「私の周りには見えない障壁があるのです。その障壁は半径20mの範囲があります」
クミノがなにやら突然訳のわからない説明を始めた。
「な、何の話を・・・」
「その障壁の中に私以外の生命体が24時間以上居た場合即死します」
「・・な、なに・・」
「このゴキブリの命は私が捕獲した昨日の21時から24時間後、今日の21時に息絶えました」
「・・・・」
三雲の顔から完全に血の気が引いた。
「つまり、1時間後の22時に三雲さんも同じ運命になるということです。これでもう暇を感じることもありません・・・」

5.
「・・・それで?」
「泣いて逃げだした」
クミノはそう言って零の入れた紅茶を一口飲んだ。
草間は溜息をついたが「まぁ、これでここに来ようとは思わないだろ」と目を瞑った。
「そういうことね」

三雲はあの後、すぐにクミノから離れて逃げ出した。
捨て台詞を残して。
「あんた嫌いーーー!!あのおじさんも嫌いーーー!!もうぜーったいあんたらなんかには会いたくないんだからーーー!!」
おじさん・・・間違いなく草間のことだろう。
クミノはそれを思い出すと何だかちょっと可笑しな気分だった。
その台詞を草間に言うべきか・・・クミノは少し迷ったが言わないことに決めた。
これはこれで面白い経験だったと、胸にしまっておこうと思った・・・。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

1166 / ササキビ・クミノ / 女 / 13 / 殺し屋じゃない、殺し屋では断じてない。

NPC/三雲京子/女/16/女子高生

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■         ライター通信          ■
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ササキビ・クミノ様

初めまして、とーいと申します。
この度は「出現!天下無敵の暇人娘!」にご参加いただきありがとうございました。
なかなか面白いプレイングでした。
が、全部を採用してしまうと少々詰め込みすぎになり読みにくいと判断しましたので少々削減及び融合の末このような形になりました。
また、命ある実在の物を殺すことは少々抵抗がありましたので「カラスの形をした宇宙生物」という設定となりました。
アンドロイドのモナ様がどのような口調で話すのかよくわかりませんでしたので、普通に日本語にさせていただきました。
・・言い訳ばかり並べるのは潔くないのですが、クミノ様は少々難しい設定だったので試行錯誤の結果が多く申し訳ない限りです。
ですが、ゲームとしての結果は撃退成功です。お見事でした。
三雲も二度と草間興信所には近づかないでしょうね・・。
それでは、またお会いできる日を夢見て。