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TheLordOfTheSpirits〜第一部：TheFellowshipOfTheSpirits〜
■Opening：TheFellowshipOfTheSpirits
「逃げた霊を探して捕まえて欲しいんです」
そう言って、20代の女性が草間興信所を訪ねて来た。
あのけたたましい空襲警報でも発令されたかと思う程のブザー音をものともせずに、だ。
とりあえず…と、女性の話を聞く事にして草間は座った。
女性の名は『神城由紀（かみしろゆき）』式霊を使い、便利屋を営んでいる。
代々巫女の家系に生まれて物心ついた時から霊が友達だったらしい。
このご時世、家業だけではやっていけずに、一年ほど前からここ東京で便利屋をはじめたらしいのだが…。
「今朝、起きたらあの子達がいなくなってたんです！！
姿も形も見えなくて…必死で探したんです！でもどこにも見つからなくて」
由紀はそう言いながら涙を流した。
「家出したのかも…きっとそうなんだわ…
わたしが、わたしが…仕事をさせすぎたせいできっとあの子達ストレスで…」
泣き崩れる由紀に、草間は困り果てた顔をする。
「――わかりました。もう少し詳しくお聞かせ下さい」
※
「全員揃ってるな？」
草間興信所のお世辞にも広いとは言えない一室に、草間、零、依頼人の神城由紀、
そして今回呼び出された6人が全員集合していた。お陰で人口密度も高く、しかも冬場なのに暑い。
互いに失礼の無いように空間を取りつつも、自分の居場所を作るのに必死だった。
「依頼内容は予め電話で言った通りだ。今から詳細を説明する…って、後ろ聞こえてるか？」
最後尾にいた者は座る場所が無いので「はい」と立ったままで答えるしかなかった。
「神城さんの”式霊”は全部で合計12体…その全部がいなくなった…
それを探して見つけ出し”傷つけずに”封印して連れ戻してほしいとの事だ」
「神城さんは便利屋を営んでいるそうですが、具体的にはどのような仕事を…？」
ソファに腰を下ろして、由紀のちょうど斜め前に座っていたシュライン・エマが問い掛ける。
由紀は小さく頷き、頷いた時に垂れてきた長い髪を後ろに流した。
「”式霊”を使って、依頼人に頼まれた仕事をどんな事でも解決しています…
人探しをしたり、護衛をしたり、暇な方の囲碁のお相手…本当に何でもやっています」
「それがストレスになって自分から出て行ったかもしれないという事でしたね？」
次に、冠城・琉人（かぶらぎりゅうと）が問い掛ける。
「もしそうだとしたら俺はストレスになるような使い方をしているのが気に食わないがな…」
冠城の言葉を聞いて、不意に御巫・傀都（みかなぎかいと）が呟く。
自分も同じように式を使う者として思った事を口にしてしまったのだが。
「すみません！！すみません！！わたしが悪いんですっ…わたしがっ…」
「あ、いや…そういうつもりで言ったわけじゃ…」
泣き出した由紀に、御巫は戸惑い少しうろたえる。周囲の視線が少々痛かった。
そんな彼女を、倉前・沙樹（くらまえさき）が優しく声をかけて宥めた。
「何者かに連れ去られたという可能性は？」
「その”霊”達が行きそうな場所って言うか…心当たりってのはないのか？」
石神・月弥（いしがみつきや）と大神・森之介（おおがみしんのすけ）が、
場の雰囲気を変えようと発言すると、涙を流しながらも由紀はしっかりとした口調で、
「わかりません…寝ている間にいなくなっていたから…それに心当たりも今は何も…」
そう答えた。その言葉に、先ほど泣かせてしまった御巫が一つ咳払いをして。
「同じ”式”を使う者として質問なんだが、その”式”の気配は感じないのか？」
「それが変なんです…いつもならあの子達がどこに居ても感じることが出来るのに…出来ないんです…！」
由紀は困り果てて不安でいっぱいと言う表情で御巫を見つめた。
「まあとりあえずだ…今日ここに集まってもらってるメンバーは俺が厳選したメンバーだ。
この仕事には最適と考えて選んだ…それぞれの能力を最大限に使って頑張ってくれよ」
草間が一旦その場を仕切る。そして、徐にテーブルの上に数枚の紙切れを並べた。
「これは神城さんの家に伝わる”封札（ふうさつ）”と言う札だ。12枚ある。
もしもの時の為に作られたものだそうなんだが、神城さんの”式霊”の近くに行けば探知するそうだ…
見つけたらこの札で霊の体の一部に触れれば札の中にその霊を封じる事が出来る」
”封札”は長方形の白い紙で、凡字でも漢字でも無さそうな独自の文字が墨で書かれている。
もしこれが黄色に赤なら、某・キョンシーの額に貼ってある札を思い出した事だろう。
「上手く封印できればそ赤い文字が浮かぶそうだ…一人二枚どれでも好きなものを取ってくれ」
言われるままに、12枚の”封札”を適当に二枚取って順番にまわしていく。
そして全員の手に回った事を確認して、草間が口を開いた。
「今回は二人一組で行動してもらう。組み合わせは俺が決めた組み合わせだ…いいな？」
信頼のおける関係である草間の意見に反論するまでもなく、全員が頷いた。
■Mission:MIKANAGI&ISHIGAMI
「足が遅いんだなおまえ達は」
「あのな石神…もう少し言葉を考えて…」
「いいじゃありませんか…」
草間興信所から、依頼人の神城由紀の自宅までの道程を…三人は並んで歩いた。
三人。草間から”神城神社”での調査と捜索を命じられた二人、
御巫・傀都（みかなぎ・かいと）と石神・月弥（いしがみ・つきや）である。
そして三人目は依頼人の神城由紀。
神社であっても人の家なので住人の許可無くしての調査は出来ないと草間が言い同行してもらった。
興信所で泣かせてしまった御巫としては、何か草間の別の意図を感じずにはいられなかったのだが。
ちなみに時を同じくして、シュライン・エマ、冠城・琉人（かぶらぎ・りゅうと）の二名は、
冠城の得意とする能力で人海戦術で街の捜索に当たっている頃である。
さらに倉前・沙樹（くらまえ・さき）と大神・森之介（おおがみ・しんのすけ）も、
倉前の霊視で街での探索に入っている。それぞれ、進展があれば携帯で連絡を取り合う手筈になっている。
「早くしないと日が暮れてしまうよ」
御巫は少し引きつった表情で溜め息をついた。
石神と組むと決まってから互いに自己紹介をしたのだが、石神はどうも年下のようで、
自分から見れば言わば”子供”に見えるのだが。
最初こそ普通に敬語で話していたものの、三人で歩いている間に…いつの間にか友達のような口調になっていた。
「石神、もう少し目上の者に対する言葉遣いを…」
「年齢のことを言うなら傀都も由紀さんも足元にも及ばないと思うよ？こう見えて俺は100年は生きてるから」
石神の言葉に、二人は驚いて顔を見合わせる。
仮にも”式”使いである二人が、人に在らざる者だと気付かなかったのだ。
「あの、石神さんは一体…」
「つくも神だよ」
そう言って微笑むと、石神は先頭に立って歩き始めた。
「まだ不安定なんだな」
「そうですね」
御巫と由紀の能力者同士で勝手に納得して会話する。
つくも神が人化しかけている頃は、不安定で人間と妖怪の間を彷徨うような感覚になる。
その為に能力者であっても不安定すぎて「妖（あやし）」の気配を窺えない事がままあるのだ。
「石神さんは100歳…御巫さんはお年はおいくつですか？」
「17ですが…」
「まあ、若いですね…わたしは23歳…年が明ければ24歳になります」
由紀はそう言って微笑むと、前方を指差した。
「着きましたよ。あれが”神城神社”です」
※
神城神社はこじんまりとした、そう大きくは無い神社だった。
小高い山というか丘のような場所にあり、長い石造りの階段がありその両脇は木々で囲まれている。
階段を上ると赤い鳥居が聳え立ち、その正面に神社の社（やしろ）があった。
数人の年配の者が、お守りや札を購入している以外は人もおらず静かな雰囲気だった。
由紀に案内されて行くと、神社の裏手に一階建てのそこそこ広い家があり、
庭は神社と共有していることもあってか、石や木を植え、池もありかなり綺麗な庭園だった。
池の上にかかった橋を渡って玄関に進む。家族は誰もいないのか、由紀が鍵を開けて中に入った。
「随分と古い家だな…」
中に入ると外観以上に古い建物である事がわかる。とは言え老朽化しているわけではなく、ただ古いのだ。
由紀はスリッパを二人に出すと、そのまま自室まで案内した。
そこは離れにあり、入り口には邪な霊を浄化する為の札や石が置かれていて、
低級な悪霊くらいなら入る前に成仏・浄化させられてしまうだろうと御巫は思った。
部屋の中も23歳の一般的な女性の部屋と言う雰囲気はあまりせず、神社の延長線上と言った雰囲気だった。
「ここで寝ていて起きたらいなくなっていました…」
「神城さんに伺いたいのですが、普段は”式霊”をどういう風に扱っているんですか？」
「式達は普段”式玉（しきぎょく）”という石に宿っています。用があれば呼び出すようにしていますが…
便利屋をはじめてからは日中はほとんど出たままで…仕事が終われば式玉に戻ると言う感じでした…
わたしが寝ている時は基本的にあの子達はみんな自分から式玉に戻って休んでいるはずなんです…でも…」
「式玉に戻らずに自分達から出て行ってしまった、と？」
「そうとしか考えられません…だって、この家に誰かが入ってくる事なんてありえませんから…」
どこからその自信が来るのかはわからないが、由紀はきっぱりと答えた。
そして御巫と石神に”式玉”を見せる。それは赤茶色の球体の石でボーリングの玉のように見えた。
由紀の部屋の床の間に座布団を敷いてその上にそれを置いている。
御巫が霊の気配を探ってみても、そこには何の気配も感じられなかった。
「もし何者かが式霊狙いで進入したとしたらこの式玉を持ち去るだろう…それがあると言う事は…」
「まあとりあえず…その石に聞いてみればいいわけだね？」
石神は微笑みながらそう言うと、徐に”式玉”に手を触れた。
万物には例えそれがどんなものであっても、それを扱う者次第で魂が宿る。
年数が経っていないのでつくも神とはなっていないが、おそらくこの”式玉”自体にも魂は宿っているはず。
同じ”石のつくも神”としてその声を聞く…それが石神の能力で草間が彼をここに来させた理由だった。
石神がかざした手から、淡い光が放たれる。
そして”式玉”自体からも同じように淡い光が発せられ―――
「…十二…由紀の…二十四…昔…来年は…彼等の…この…」
ぽつり、ぽつりと呟く石神。どれも単語で何を言っているのかはよくわからないのだが…
「――十二？来年…？来年…由紀さんは二十四歳…待てよ…もしかしたら…」
御巫は不意に自分の知識の中にある、ある事柄を思い出した。
それは、”十二支式霊”と呼ばれる式霊のこと。
子、丑、寅、卯、辰、巳、午、羊、申、酉、戌、亥…の十二体の式霊。
ある特定の家系にだけ受け継がれていくもので代々新しく生まれた子供にそれは引き継がれ、
その子供の生まれた年の干支が十二体をまとめる頭（かしら）となる。
そして十二年に一度、いわゆる厄年になると…
「そうか…そう言う事か…！」
思い当たることがあり、御巫は携帯を取り出した。そして、草間に連絡を入れる。
それと同時に、石神が”式玉”からふっと手を離し…
「この神社の敷地内に二体は確実にいるそうだ！」
そう叫んだ。御巫は急いで草間にそのことを告げると…由紀に部屋で待機するように告げて外に飛び出す。
口元で呪文を唱え、両手で韻を組む。
すると、不意に御巫の脇に一体の男性の傀儡人形「笙乃」が現れた。
和服姿で眼鏡をかけ、落ち着いた雰囲気の笙乃はまるで生きている人間のように微笑みを浮かべたようだった。
「仕事だ…」
笙乃は黙ったままでそれに答える。笙乃は言葉を話す事はしないが、御巫には笙乃が何を思い何を言っているのか感じ取れた。
「こういう時にお前ならどうする？どこへ行く？お前なら…敷地内にいる”干支の式霊”の気配、少しでもわかるか？」
御巫の言葉に、笙乃はゆっくりと頷く。そして、御巫から離れ、霊を探しに向かおうとし…
「笙乃！」
呼び止められて、不意に動きを止める。
「いや、なんでもない…」
何かを言おうとした御巫だったが…言葉を切った。
しかし笙乃は彼が何を言いたかったのか感じることが出来、微笑みを浮かべた。
『私なら大丈夫ですよ』
その表情からは、笙乃がそう言っているように御巫には聞こえたのだった。
＊
その後、敷地内で三体の霊を見つけ…無事に”封札”に封じる事が出来た。
御巫の傀儡人形「笙乃」の探索と、石神が敷地内の石や壁に聞いてまわった成果だった。
どの霊も害のある様子はなくただ”隠れているだけ”だった。
その証拠に、由紀が声をかけるとすぐに出てくるような…そんな霊ばかりだったのだ。
三体を封じた”封札”にはそれぞれ赤い文字で『丑（うし）』『午（うま）』『亥（い）』と書かれていた。
「どうしてこんなに近くにいるのに気付かなかったの…」
三枚の札を前にして、ひたすら由紀は不思議…いや不可思議に思っているようだったが…。
「神城さん…”十二支式霊”の話をご存知ですか？」
御巫が声をかけると、由紀はきょとんとした顔で御巫を見上げた。
「…？いいえ…？それと何か関係があるんですか…？」
「皆無と言っていい程しか存在していないので知らない人がほとんどだと思うけど」
石神が付け足す。そして、御巫女は前置きを入れると、一息ついて。
「”十二支式霊”はそれぞれ十二支になぞらえた能力を持ちます…
そして、その中でもあなたの生まれた年の干支が頭（かしら）…つまりリーダー各となります。心当たりは？」
「――リーダー…確かに…”焔（えん）”と言うリーダー各の子はいます…」
「おそらくエン…猿…申の干支です。あなたの干支ですね？そして、問題はここからなんですが…
厄年になるとそれまでの十二年間の十二支分の力をその干支が一度吸収するんです。確実な力をつけるために」
「え？！吸収って…」
「あまり詳しい事はわかりませんが…はっきりと言えるのは式を操る者がその際に何らかのサポートをしなければ、
式は暴走してしまうという事です。それは吸収する際にこの世の”善と悪”をも吸収してしまうからだと聞いています。
式を操る者はその”悪”を封じる為に結界にこもり術をかける為に色々と準備すべき事があると聞きますが…」
”十二支式霊”の存在すら知らなかった由紀が準備をしているわけもなく。
おそらく、今回”式霊”たちが居なくなったのは由紀を慕っているが為に…
その時が来て暴走してしまう前に、自分達が遠く離れてどこかに姿を消してしまおうと思ったのだろう。
気配を自ら殺し由紀の呼び声を聞こうとせず…。
しかしそうは言っても心配でそう遠くに離れられなかった者が三体、敷地内にいたのだ。
お陰であまり動かずに無事に三体も見つけられたのは良かったのだが…。
「どうして？！だったらあの子達が言ってくれれば…！！」
「言えなかったんですよ…多分ね」
御巫は笙乃の事を思いながらそう呟いた。
もし、そのことを話してしまえば…由紀が暴走してしまう事を恐れて自分達を捨ててしまうんじゃないか…
式霊たちはそう思ったのだろう。それならいっそ自分からいなくなった方がいい…と。
「あなたはもっと勉強すべきだったんです…”式霊”は友達でも家族でもペットでもない…
ましてや仕事の道具なんかじゃない…」
由紀に諭すと同時に、自分にも言い聞かせるかのように御巫は言った。
黙ったままで由紀は俯いていた。
彼女とて、”式霊”をペットや仕事の道具だと思っているわけでもない。
けれど、御巫のように家族でも友達でも無いとは思えなかった。生まれた時からずっと一緒だったのだ。
御巫は御巫なりに家族や友達でもない、同じにすることも比べる事もできない、
”式”としての関係というものを考えて欲しかったのだが…。
果たして彼女にその気持ちが伝わっているのかどうかはわからなかった。
それよりも、御巫は気になることがあり…口を開いた。
「だがもし十二支式霊だとしたら一つ疑問が残る…
十二年前の…十二歳の時はどうやって乗り切ったのか…」
「それには俺が答えよう」
石神が徐に立ち上がり。そして部屋の壁に手を添えて…
「色々と聞いてまわってわかったよ。この家も庭の石達も記憶していた…悲しい事だけど聞いた方がいい。
十二年前、由紀さんは両親を亡くした…幼くてまだ式霊の事すらよくわかっていなかった頃…
最初の”それ”を由紀さんの祖父と祖母、そして両親は抑えようとして…」
石神の言葉に由紀が弾かれたように顔を上げる。
「まさか…？！だって両親は事故で亡くなった…って…」
「違う。由紀さんの両親は、十二年前の式霊の暴走を止めたその代償に…命を奪われたんだ…
だからそれを知っている”式霊”達は余計に言えなかった…自分達が由紀さんの両親を殺したようなものだから。
それに十二支式霊の事を話せば、必然的にその事も話さなくてはならなくなる…
本当の事を知ったあなたを悲しませたくないから…きっと”式霊”たちは出て行ったんだと思うよ」
「そんな…そんな…！！祖父も祖母もそんな事一言も言わなかったし…」
由紀は驚愕に目を見開いて、目の前に並んだ封印したばかりの三体の”式霊”を見つめた。
両親が死んだのは事故ではなく式霊の、いや、自分の無知と幼さ…自分の所為である…その事実が悲しかった。
どうして祖父や祖母、両親は自分に言ってくれなかったのだろうというやるせなさも込み上げてくる。
けれどそれ以上に、何も知らず、気持ちをわかってやれなかった自分が…情けなくて悔しかった。涙がとめどなく流れて。
「――あなたも子供じゃないんだ。現実を受け止めて、しっかりしなくちゃいけない。
そして早く全ての式霊を集めて…厄年が来る前にあなたは式について勉強をしなくてはいけないよ」
石神はそう言うと、ゆっくりと歩き…由紀の部屋の襖を空けた。
すでに日は落ちて…月がその姿を見せていた。満月になる、少し前の月が。
「今夜も月が綺麗だよ…」
石神はそう呟いて目を細めたのだった。
■Ending：Seeyouagain...?
日が落ち一般家庭では夕食を終えてくつろぎ始めたであろう頃。
草間に全員集合をかけられた面々が草間興信所に再び集う。
「ご苦労だった…と言ってもまだ残ってるんだが…」
草間はそう言うと、とりあえず全員から残っている”封札”を回収した。
シュラインと冠城の二人が四体。御巫と石神が三体。倉前と大神が二体の合計九体。
『子』『丑』『寅』『卯』『辰』『午』『未』『戌』『亥』と書かれた封札。
由紀はそれらを大事そうに抱きしめながら、目には涙を浮かべていた。
「一晩中かけての捜索は負担が大きい…とりあえず今日の仕事はここで終了とする。
神城さんには理解してもらった。明け次第再び仕事にかかってもらいたいと思うが強制ではない。
今回の捜索でだいたいの場所や動向はわかった…俺と零だけでなんとかなる事はなるだろう…」
草間はそう言って一呼吸起き。
「しかし、明日もこの件に関わってくれるというなら、朝８時に集合して欲しい。
何度も言うが強制では無い…明日は平日という事もあり学生は学校に行ってもいい…
他に仕事のある奴はそっちに行ってくれればいい…」
草間はそう告げて椅子に腰を下ろした。
「それじゃあ…一時解散、という事ね」
シュラインが立ち上がり服の裾を整える。
「そうですね」
倉前も同じようにスカートについたシワを整えながら立ち上がった。
「明日か明後日あたり…満月になりそうだね…」
石神が窓の外を見て、伸びをしながら言う。
「お疲れさん！まあ明日会うかどうかはわからないけど会うとしたらまた宜しくな」
大神がそう言って手を挙げる。
「明日の予定は明日になってみないとわかりませんからね…」
冠城はそう呟いて零の入れた緑茶をゆっくりとすする。
「ゆっくり休めよ…」
御巫が誰に言うともなくそう呟いて扉に向かう。
「あのっ…皆さん！！今日は本当にありがとうございました…」
由紀はそう言って、深々と頭を下げたのだった。
そして、草間興信所から再び人が消える。
冬場なのに暑さすら感じた一室が、冬場本来の寒さを取り戻していた。
＜END＞
第二部〜TheTwoSpirits〜に続く
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■ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ■
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チーム１：
【0086／シュライン・エマ／女性／26歳／翻訳家・幽霊作家＋草間興信所事務員】
【2209／冠城・琉人（かぶらぎ・りゅうと）／男性／84歳（外見20代前半）／神父（悪魔狩り）】
チーム２：
【1953／御巫・傀都（みかなぎ・かいと）／男性／17歳／傀儡師】
【2269／石神・月弥（いしがみ・つきや）／男性／100歳／つくも神】
チーム３：
【2182／倉前・沙樹（くらまえ・さき）／女性／17歳／高校生】
【2235／大神・森之介（おおがみ・しんのすけ）／男性／19歳／大学生・能役者】
NPC
【***／神城由紀（かみしろゆき）／女性／23歳／心霊便利屋・巫女】
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■ ライター通信 ■
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この度は依頼をお受けくださりありがとうございました。
すぐに満員になった事に驚きと嬉しさが入り混じった感じです。（＾＾）
全３話の第１話という事なので完結には至っておりませんが、
１話だけでも楽しんでいただけたら幸いです。
今回はNPCの設定がややこしく説明ばかりで文章が長くなってしまいました。
ちなみに、Missionはチームごとに書かせていただきました。
宜しければ他の方のMissionもご覧になって戴けるとより楽しめるかもしれませんし、
余計にややこしくなってしまうかもしれません。（それはどうかと…／笑）
次回は戦闘になると思いますが宜しければご参加下さいませ。
皆さんとても素敵な方々で大好きです。
お別れが名残惜しいですが、またお会いできる日を楽しみにしております。
：：：：：安曇あずみ：：：：：
＞御巫・傀都様
はじめまして。この度は参加して下さりありがとうございます。
チーム分けの理由作りとして泣かせてしまうエピソードを入れたので、
前半で少し嫌な感じの登場のさせ方をしてしまい申し訳ありません。
後半は御巫様のお陰で十二支式霊の説明を入れることが出来ました。
ありがとうございます。またお会いできるのを楽しみにしています。
＞石神・月弥様
喋り方を個人的に作ってしまいましたが宜しかったでしょうか？（汗）
100年生きたイメージで、最初はお爺さんのような話し方のイメージが浮かんだのですが、
さすがに中世的な容姿と合わないだろうと思い、（笑）
その真ん中のような話し方になってしまい、統一性が無い感じがしてしまいました。
またお会いできるのを楽しみにしております。
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