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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


人魚の傷跡

オープニング


不老不死と聞いたら、まず何を想像しますか?
色々な薬草?怪しげな儀式?
多分、みんなが思いつくのは『人魚』じゃないかしら?
人魚の血、人魚の肉は万能の薬としても知られているわよね。
女性だったら永遠に若く、美しくありたいと願うのは当然だと思うわ。
男性でも今の時代、女性に負けないほどの美しさを持つ人がいるわよね?
そして、今は『不老不死』が夢で終わる時代ではなくなったわ。
私の店には人魚の妙薬があって、必要な人にお売りしております。
どう?あなたの美しさを永遠なものにしてみない?



これが今朝の朝刊に挟んであったちらし。
ちらしには妖艶な情勢が写っており、その女性が店長だという。
その容姿は時男性だけでなく女性すらも魅せられるほどの美しさだった。
人魚の妙薬の効果なのだろうか?
「綺麗な方ですね、だけど…何か怖いとすら感じます」
零がちらしを見ながら呟いた。
確かに、と草間も小さく呟く。
何もかもが整いすぎて恐怖すら感じるのだ。


視点⇒鹿沼・デルフェス

「こんにちは、お手伝いに参りました」
 デルフェスは今日は草間武彦から手伝いに来て欲しいといわれて興信所までやってきた。すると、草間武彦と零が何かを見ている。
「どうかされたんですか?」
 デルフェスが二人が座っているソファに近づきながら、二人が見入っているものを覗き込む。二人が見ていたものは一枚の広告。
「何ですか?その広告は?」
 デルフェスが不思議そうに聞くと、その問いに草間武彦が答えた。
「今朝の朝刊に挟んであった広告だよ、何でも不老不死の薬で人魚の妙薬を売る店が開店したらしい」
「不老…不死…ですか?」
 デルフェス自身はミスリルゴーレムなので不老不死に近い存在だ。だからデルフェスは『不老不死』という言葉に関してはたいした興味を持たなかったが…『人魚の妙薬』という言葉に惹かれた。
「その薬が本物だとしたら人魚を捕らえているのでしょうか?可哀想ですわ」
「そうだな…」
「わたくし、そのお店に行ってまいります。人魚に罪が無ければ助けたいですわ」



 そうして、今に至る。
 デルフェスは今、広告に載っていた店『フォーチュン』に来ていた。店は予想外にも多くの女性客がいた。
 カラン、とデルフェスもドアを開けて中に入る。ベルの音が心地よく感じた。中には二人の女性に囲まれた一人の女性、顔を見ると広告に店長として載っていた女性だった。
「あら、いらっしゃいませ」
 女性客から離れて女性店長がやってくる。
「あなたも不老不死を求めてやってきたのかしら?」
「いえ、わたくしは人魚の妙薬に興味がありまして…ちょっとよろしいでしょうか?」
 そう言って、デルフェスは来店している二人の女性客に近づく。
「不老不死になりたくてやってこられたのですか?」
 デルフェスが問うと「そうだけど?」といって少しばかり怪訝そうな顔でデルフェスを見やる。
「あなた方は一時の欲望で一生を犠牲にされても構わないのですか?回りの友人、親、兄弟、自分を知る全ての人が老いて死んでいくのですよ?天涯孤独になる悲しみ、後悔に耐える自信がおありなのでしたら止めはしませんが、もし…後悔したくないというのならお止めになったほうがいいですわ」
 デルフェスの言葉に二人の女性は顔を見合わせる。どうやら友人同士のようだ。
「ねぇ…どうする?」
「何かやめておいた方が良くない?」
 ひそひそと二人は話し合って「やっぱりやめます」といって店から出て行った。
「…どういうおつもりかしら?営業妨害で訴えるわよ?」
 その言葉を聞いてデルフェスがクスリと笑う。
「訴える、ですか?お出来になるのでしたらどうぞ?訴えて困るのはあなたの方ではないのですか?」
 訴えるとなれば店の状況などもいわねばならない、もちろん人魚の事も。下手をすれば詐欺で逆に訴えられる可能性もある。
「何が望みなの?人魚の妙薬?」
「…人魚の妙薬の効果と入手方をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「入手方?そんなの簡単だわ。人魚を捕まえればいいだけのこと。人魚なんて今の時代いくらでもいるもの」
 くすくすと笑う女性店長を見て、デルフェスは少しばかりの怒りを覚えた。
「あなたはなぜそこまでするのですか?」
「お金よ」
 女性店長は短く、そしてはっきりと答えた。
「お金以外に何があるというの?お金が無ければ何もできない。何をするにしてもお金が必要なの」
「…これ以上…お話しても無意味ですね」
 仕方がありません、とデルフェスが呟くと換石の術を使用して女性店長を石にする。
「あなたがおとなしく罪を認めてくださったらこんな手荒な事はしなかったのですけれど…」
 そう言って、デルフェスは店内を見回す。そして、地下に通じる隠し階段を見つけた。
「ここなんかが…いかにもって感じですわね」
 階段を降りて地下室までいく。独特の嫌な冷たい空気がデルフェスの頬を掠める。そして下に下りていくたびに女性の鳴き声が聞こえてくる。
「どなたか…いらっしゃるのでしょうか?」
 そんなに大きな声で言ったつもりはないのだが、地下という事で声が大きく響く。
「誰?」
 デルフェスが声のするほうにいくと鎖につながれた幼い人魚を見つけた。
「あなたは誰?」
 再度人魚の少女が問う。
「わたくしは鹿沼・デルフェスと申します。あなたを助けに来ました」
 その言葉に人魚の少女は驚いたようだ。
「助ける?私…ここから出られるの?」
 少しだけ表情を輝かせながら少女が聞いてくる。
「はい、あなたのお名前は?」
「綺羅、もう痛いことされないの?」
 デルフェスは綺羅の腕を見た。幼い少女にふさわしくない切り傷などが無数にある。
「えぇ。さぁ、一緒に帰りましょう」
 鎖を外してやると、綺羅は人間の姿に変化をする。
「先に外で待っててもらえるかしら?やるべき事が残ってますので」
「うん、綺羅お外で待ってるね」
 そう言って綺羅は階段をのぼって店の外まで走っていく。走る余裕があるのなら傷なども後遺症になることもないだろう。
「…さて、あなたが人間だったのなら術を解いてあげようと思っていたのですが…どうやら人間ではなさそうですわね。しかも反省の色が見られませんし、今後同じ事をしそうですので数十年眠っててもらいます」
 そう言ってデルフェスは店を出た。そして近くの海に足を運び綺羅を逃がしてやる。綺羅は何度もありがとうと手を振りながら海に潜っていった。
「…今後、このようなことがないようにして欲しいですわね…」

 そして、デルフェスは興信所へと足を向ける。その後行方不明の事件としてあの女性店長がニュースで報道されていたが、あと数十年は見かけることがないでしょうね、と呟くデルフェスだった。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】

2181/鹿沼・デルフェス/女性/463歳/アンティークショップの店員

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■         ライター通信          ■
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鹿沼・デルフェス様>

初めまして、瀬皇緋澄です。
今回は「人魚の傷跡」に発注をかけてくださいましてありがとうございます!
「人魚の傷跡」はいかがだったでしょうか?
少しでも面白かったと思っていただけたら幸いです^^
それでは、、またお会いできる機会がありましたらよろしくおねがいします^^


                  −瀬皇緋澄