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【クリスマス・イブ】〜ケーキに想いを込めて〜。
●オープニング
狐族の幽霊の銀狐。
彼の名は「狐族の銀」。狐族は、悪霊退治・依頼をする存在である。
確実な依頼を届けに来るとこでも有名だ。
なん度かゴーストネットで出会い、実際に会っている者たちもいる。
『おいなりさん』には相変わらず目がない。
瀬名・雫（せな・しずく）が銀に人間界を学ばせる為に渡した『料理の本』
を見るのが銀の日課である。
「クリスマス・イブ」の話題に触れている料理の本を見つけた銀が嬉しそうに
本をもって走ってくる。
「雫お姉さん、クリスマス・イブは『大切な人』と過ごす日なんだね。
ボクもケーキ作ってみたいな？？」
雫はクリスマス・イブだからといって仕事が減るわけでもないので、忙しいのが現状だ。
「銀君の頼み、叶えてあげたいんだけど、あたし忙しいからなー・・・」
雫にケーキつくりのお手伝いはしてもらえず、ひらがな程度しか読めない銀にはとても難しい作業だ。
そこでケーキ作りを教えてくれる人を探す事にしよう。
【葛城・樹編】
●歌に乗せて。
普段、見慣れた景色も今日は違って見え、何かと辺りは騒がしさを見せる。
大きなツリーや雰囲気を際立てる美しいイリュミネーション達。
12月24日は大切な人と過ごす特別な日である。
樹は恋人ではないが大切な幼馴染みと約束をしている。
「やあ、銀君、僕の事を覚えてる？」
「樹お兄さんお久しぶりだね」
樹の問いに万遍の笑みで応答する銀。
「良かった。ボクの事覚えて居てくれて・・」
美味しいチョコレートを教えてくれた事も忘れてはいないが、銀にとって歌を教わった事がとても嬉しかった。樹の作成した歌詞カードを今でも宝物として大切に持っている。
「今日はシフォンケーキを作ってみようか」
「ふわふわのケーキだね」
写真で見た事のあるシフォンケーキを思い浮かべている銀は溶けてしまいそうなほど幸せそうな顔をする。期待されて樹も悪い気はする筈もなく、幸せそうにする姿を見て優しい顔を見せる。
まずは材料を机の上に並べる。
薄力粉、ベーキングパウダー、砂糖、サラダ油、水、卵黄に卵白といった感じだ。
まずは卵黄に砂糖を半分を入れて混ぜる作業。
「銀君、これで混ぜるんですよ」
樹が取り出したのはハンドミキサー。
銀は写真で見たことはあるものの初めて生で見るミキサーに感動して目を輝かせる。
早速、スイッチを入れて混ぜ方の手本を見せる。
大きな音を立てながら回りだすミキサーに銀はびくっ、と肩を振るわせる。
それでも興味津津そうに樹の袖を掴みながら見つめる。
そんな仕草に樹は目線を落とし、軽く微笑しながら混ぜ続ける。
「わぁー・・すごく大きな音がするんだね！」
興奮気味の銀は心臓をバクバクといわせる。
「銀君も僕が手伝ってあげるから混ぜてみますか？」
「うん。樹お兄さんと一緒ならやってみたいな」
初めての体験に緊張しながらミキサーを握るその手は、上から手を重ねた樹に伝わってくる。
その手は少しだけ震えている。
「銀君、大丈夫？」
「だ・・大丈夫！樹お兄さん、絶対に手を離さないでね！！」
まだスイッチも入れていないというのに必死な銀に樹は苦笑する。
「じゃー、スイッチをいれますね・・・」
カチッとスイッチを入れるとクルクルと周り始める。樹はゆっくりと回しながら銀の手を誘導する。
少し慣れてくると銀はあっという間に変化を見せるメレンゲに気をとられて自然と手が緩む。
樹はミキサーが飛ばないように銀の手を確りと握り、空いている片手で水・サラダ油を順に手際よく入れる。
そして一度スイッチを切ると、放心状態になっていた銀が口を開く。
「樹お兄さん・・楽しいね！」
「そうですね・・」
興奮気味の銀を宥めながら、樹はてきぱきと篩った粉を再度篩う。
「銀君、今度は少しだけミキサーをかけます」
樹はもう一度手を軽く添え、混ぜるのを手伝う。銀は樹の手の動きに逆らう事無く素直に手を動かす。
むしろ、樹の繊細で丁寧な手の動きを見入るように見つめる。
続けて卵白と残りの上白糖で先程よりも硬いメレンゲを作る。
「ふぅー・・・樹お兄さん、大分出来たね」
「次にメレンゲを作った生地に塗り、メレンゲと混ぜます。あと少しだから頑張ろうね・・」
樹の方が混ぜるのを手伝ったり、銀が手順を間違えたり、へまをしない様に目を遣ったりと、大分体力を使って消耗しているだろう。それでも樹は疲れた顔を見せずに銀に受答する。
「少し、疲れてきたかな？一緒に歌を歌いますか？？」
「うん。歌を歌いな〜」
樹を見上げて嬉しそうな顔を見せる。銀は何を歌うのかと気にするような仕草をとる。
「ジングルベルは知っていますか？？」
「うん。１２月に入ってからはよく聞くよ。冬の歌だからかな・・」
「定番だからだと思うよ。それでは今回は一緒にジングルベルを歌うことにしようね」
銀はコクンと縦に一回首を振る。
樹は銀が歌に入りやすいようにイントロを口ずさむ。
楽しそうに歌を歌いながら次の工程に入る。
樹はヘラを片手に持ち、生地に１／３のメレンゲを加え馴染ませる。その後に残りのメレンゲを入れざっくりと混ぜる。
２人の手付きはリズムを刻むように動く。
歌い終えるとタイミングを計ったかのように作業が終わる。
「170度に温めておいたオーブンで50分焼いて、冷ましたら出来上がりです。後で僕の入れた紅茶と一緒に食べようね」
銀の目線に合わせるために樹はしゃがみ、銀の顔に付いた粉をタオルで拭き、微笑しながら言う。
―――――５０分後。
ケーキを早速、味見をしてみることにしよう。
樹は本来の紅茶を味を損なわないように銀に合った甘めの紅茶を淹れる。
「さぁ〜、どーぞ」
「いただきます♪」
まずは紅茶を一口飲む。
樹の拘りのある紅茶の美味しい風味が口いっぱいに広がる。銀の体は温まり始め、頬を少し赤らめながら仄々と幸せそうな顔を見せる。
「樹お兄さん、美味しいね・・」
「本当だ・・おいしいです。大成功しましたね」
万遍の笑みで美味しそうに食べる銀を見て、喜んでいる銀に笑顔で返す。
「樹お兄さんは大切な人と逢う約束をしてるの？？」
美味しそうにケーキを頬張りながら銀は尋ねる。
「幼なじみの女の子と逢う約束してますよ。お互い恋人がいないから僕のアルバイトが終わった後、さびしん坊同士でカラオケする約束をしているんだ」
苦笑しながらも答える樹だが、その半面、楽しみにしている面も含めた表情を見せる。
「じゃー、このケーキはそのお姉さんにプレゼントするの？？」
「そうだね。茉莉奈にあげる事にするよ・・」
●ちょこっとブレイクタイム。
ラッピングをする為に一同が近くの調理室に集まった。
「皆さん、紅茶をお持ちしました？」
葛城・樹（かつらぎ・しげる）がお菓子作りで少しお疲れ気味の4人に美味しい紅茶を淹れる。
「前にも飲んだことがあるが樹の淹れる紅茶はとても美味いぞ」
紅茶を一口のみ、矢塚・朱姫 （やつか・あけひ）が樹に絶賛する。
「ありがとうございます」
「本当に美味しい・・寒い冬は体が温まりますよね。お出かけ前ですし・・」
内外の温度差で曇った、窓の曇り具合を見ながら海原・みなも（かいばら・みなも）が言う。
「ふぅー。ホカホカする・・。あっ、そろそろ時間だから行かないと！」
壁時計を気にしながら久々成・深赤（くぐなり・みあか）は紅茶を飲み終えて、立ち上がる。
「私も・・郵便屋が閉まる前に届けなくては。樹さん、紅茶ご馳走様。とても美味しかったわ」
硝月・倉菜（しょうつき・くらな）も紅茶を飲み終えるとすっかり体が温まる。それに疲れも取れてきたようだ。
「ボクもバイト始まってしまいますね・・」
「私も早めに行って、待ってたいしな」
樹や朱姫も時間が刻々と近づいてきているようだ。
「では、私も。今からいけば丁度、約束の時間に・・。銀君、そろそろ行きますね」
みなもが最後の一口を飲み、紅茶をテーブルに置く。
見送りをする為に銀は玄関先に立つ。
「皆、今日はありがとう。皆の想い・・届くといいね」
皆が見えなくなるまで銀は精一杯、手を振った。
●大切な人と・・。
外はイルミネーションが輝き、何処も彼処も人々で賑わいを見せる。
その一角にある樹のバイト先であるジャズ喫茶がある。
外とは違い、店内には穏やかなジャズの音楽が流れる。
今日はクリスマス・イブだけあってジャズ喫茶は何時もよりも一段と忙しい。
「お待たせしました。紅茶お二つですね。ごゆっくりどうぞ・・」
忙しいからといって手を抜く訳にもいかない。樹は珈琲や紅茶を一つ一つ風味を失わないように丁寧に注いでいく。
樹の淹れる紅茶や珈琲は格別だ。お陰で味も美味く評判がとても良い。
周りを見渡すと何処から沸いてきたのだろうかという程、恋人だらけだ。
中には年配の人もいて、変わらない愛情に浸る様に仲睦ましげに話をしている姿も見受けられる。
クリスマス・イブで心が舞いあがる恋人達にとって、落ち着いた雰囲気を見せるジャズ喫茶は心をくすぐるのだろう。
「っと・・そろそろ８時・・」
約束の時間が刻々と近づいている。樹は今日は少し早めにあがろうと思い、用意を始める。
ふと、緊張の糸が解け窓の外を気にすると・・・・
「ホワイトクリスマスですか・・」
すっかり暗くなった夜空から白い雪が舞い落ちる。
何時もと違って見える雪。
クリスマス・イブという特別な日だからだろうか。
特別な日に、大切な幼なじみと過ごす。そしてホワイトクリスマス。
こういうシチュエーションも悪くない。
窓の外を少しの間眺める。少しして手元の時計をゆっくりと見下ろすともうすぐ８時を誘うとしている。
「時間になる・・いかなくては・・」
樹は綺麗にラッピングしたケーキを持ち上げ、店を後にする事を仕事仲間に告げる。
そして、出口の方へと脚を運ぶ。
ドアを開くと、冷たい空気と風が樹の体温を下げる。
「寒いっ・・・」
つけていたマフラーを握りしめ、身を縮ませて寒さを凌ぐ。
温かい店内との温度差に樹の体は自然と身震いが起きる。
そして、白い息を吐きながら下げていた視線を前へと向けると、人々が行きかう中、向こう側で待つ少女の姿が見える。
そこにいるのは樹の約束相手。
発見した彼女の方へ脚をゆっくりと運ぶ。
「こんばんは。待った？」
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■ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ■
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【整理番号 ／ ＰＣ名 ／ 性別 ／ 年齢 ／ 職業】
１２５２／海原・みなも（うなばら・みなも）／女／１３／中学生
０５５０／矢塚・朱姫（やつか・あけひ）／女／１７／高校生
１９８５／葛城・樹（かつらぎ・しげる）／男／１８／音大予備校生
２１９４/硝月・倉菜（しょうつき・くらな）／１７／女／
女子高生兼楽器職人（神聖都学園生徒）
１３７０/久々成・深赤 （くぐなり・みあか）／１６／女／高校生
申込み順。
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■ ライター通信 ■
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こんにちは。葵桜です。
みなもさん、朱姫さん、樹さん、チョコ依頼に続きクリスマスイベントの
ご参加ありがとうございます。
倉菜さん、深赤さん、初めまして。
今回、依頼を受けていただきありがとうございます。
元々、形式を変えると告げて出した依頼ですが当初は個人性重視には
するつもりだったんですが、皆様のプレイングを読んでいたら
今回は特別な日だけあって、個人性の方が個々の想いが伝えやすいのでは？
っと思い個人性重視にしました。
みなも様へ。
いつもお世話になっています。
何時もと違う形となりましたが気に入っていただけたでしょうか？
みなもさんはお父さんの事をお好きなんですね。
きっと大人っぽく素敵なお父さんなんでしょうね。
家族という絆は一生モノですからその気持ち大切にしてくださいね。
朱姫様へ。
プレイングからも朱姫さんが恋人の事を本当に好きなのがとても
伝わてきました。
いつも可愛らしいケーキを教えてくださってありがとうございます。
そんな素敵な恋心をこれからも大切にしてください。
一生懸命作ったチョコの気持ちも伝わるといいですね。
樹様へ。
素敵な歌、ありがとうございます。
銀も少しは歌が上手になる（？）・・・かな（汗）
今回は幼なじみに作られたと言う事で・・。
私も幼なじみをとても大切に思っています。
カラオケで素敵な歌を是非、披露してくださいね。
倉菜様へ。
初めまして。
倉菜さんのプレイングからとても倉菜さんはとても優しい方だと
伝わってきました。
両親へ気持ちを込めて作ったケーキの気持ち伝わるといいですね。
これからもお祖父さん大切にしてくださいね。
深赤様へ。
初めまして。
素敵なプレイングを拝見してドキドキしながら書かせていただきました。
大切な想いを相手にしっかり伝わっているといいのですが・・。
深赤さんと結ばれる相手はきっと素晴らしい方でしょうね。
恋路が上手く行く事を願ってます。
最後に皆さんへ。
Merry Christmas
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