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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


【クリスマス・イブ】〜ケーキに想いを込めて〜。


●オープニング
狐族の幽霊の銀狐。
彼の名は「狐族の銀」。狐族は、悪霊退治・依頼をする存在である。
確実な依頼を届けに来るとこでも有名だ。
なん度かゴーストネットで出会い、実際に会っている者たちもいる。
『おいなりさん』には相変わらず目がない。

瀬名・雫(せな・しずく)が銀に人間界を学ばせる為に渡した『料理の本』
を見るのが銀の日課である。
「クリスマス・イブ」の話題に触れている料理の本を見つけた銀が嬉しそうに
本をもって走ってくる。

「雫お姉さん、クリスマス・イブは『大切な人』と過ごす日なんだね。
ボクもケーキ作ってみたいな??」
雫はクリスマス・イブだからといって仕事が減るわけでもないので、忙しいのが現状だ。
「銀君の頼み、叶えてあげたいんだけど、あたし忙しいからなー・・・」

雫にケーキつくりのお手伝いはしてもらえず、ひらがな程度しか読めない銀にはとても難しい作業だ。

そこでケーキ作りを教えてくれる人を探す事にしよう。


【硝月・倉菜編】
●絆を結ぶ贈り物。
普段、見慣れた景色も今日は違って見え、何かと辺りは騒がしさを見せる。
大きなツリーや雰囲気を際立てる美しいイリュミネーション達。
12月24日は大切な人と過ごす大切な日である。
倉菜は友達と日本で過ごす約束をしている。
だが、両親はNYにいる為、逢う事が出来ない。それで手作りのケーキを贈る事を思いついたのだ。

「クリスマスのケーキ作り、私も手伝うわ。私もケーキを作って送りたい大事な人がいるの」
長く、ゆるいウェーヴがかかった綺麗な白銀色の髪をみつあみにし、一つで束ねながら言う。
「倉菜お姉さん、宜しくお願いします」
銀は初対面の倉菜に丁寧にお辞儀をして挨拶をする。
「ええ、もちろんよ。銀君よろしく・・」
倉菜と目が合い、笑顔を見せる銀。対照的に倉菜は無表情な顔を見せる。
決して嫌いとか、嫌だとかではなく、人慣れしていない為である。
銀が人かというと少し違うが話す相手には間違いない。
「ケーキはクリスマスプティングを教えるね」
倉菜は両親に送る為、長持ちするケーキを作る事に決めていた。

まずは型に薄くバターを塗っておく。その後は小鍋にキャラメル用の砂糖と水を入れ全体に馴染ませる。
「私、両親の元を離れて祖父の元で楽器作りの職人になる為に日本に来てるんだけど、クリスマスは両親がNYの自宅に帰ってきなさいって言ってくれたの・・」
全体にゆっくりと馴染ませながら倉菜が銀に話しかける。
「じゃー、倉菜お姉さんは海外に行くの??」
「ううん。でも私が帰ったら祖父は寂しいクリスマスになってしまうし、私も学校の友達とこっちで初めてのクリスマスを一緒に過ごしたいから・・」
首を軽く横に振って答える倉菜を銀は真剣に見つめる。
気付いた倉菜は首を少し傾げて不思議そうに銀を見返す。
「どうしたの??」
「倉菜お姉さんは優しい人なんだね。お祖父さんの事を大切に思ってるんだよね」
真剣な銀の顔が緩むとまた笑顔が戻る。そして嬉しそうにかき混ぜる手は軽やかにリズムを刻む。
倉菜も少し、銀の醸し出す雰囲気に和む。
その間にも砂糖が溶け、良い感じのキャラメル色になった所で火を止める。
「それに、両親には年末年始に帰るって言ってあるの。年末年始なら祖父の所に叔父や従弟達が帰省してくるから祖父も寂しくないだろうし・・だから代わりに両親にクリスマスケーキと贈り物を贈っておきたいなって」
熱湯を注ぎ、木ベラで全体をかき混ぜムラをなくする作業をしながら話を続ける。
両親の事も確りと思いながら話をする倉菜に銀は感心する。
倉菜自身は気付いていないだろうが、両親の話をする優しい雰囲気を見せる倉菜が銀は好きなのだ。
「熱っっ!」
「銀君、大丈夫?!!」
「大丈夫・・少し熱湯が跳ねただけだよ」
倉菜は冷静に少し放心状態気味である銀の手をとり水で急いで冷やす。
「こうすれば痛みもひくから・・」
倉菜の冷静な判断により、大事には至らず痛みもきちんとひいた。
落ち着いた所で作業に戻るとしよう。
「銀君はバナナをフォークの背で粗く潰してね」
銀に危なっかしくない作業を選び、フォークを渡す。倉菜はその間にチョコレートを手際よく刻む。予め時間のかかるドライフルーツは持参してきた為、時間をかけずに、すんなりと作業は進む。
「倉菜お姉さん、出来たよ!!」
「うん。その調子よ。次は、鍋に牛乳とオートミールを入れて火にかけ、かき混ぜながら煮えたら火から下ろすのよ。その後は刻んだチョコを入れて余熱で混ぜるの。後は生クリームを加え、ムラなく混ぜあわせるのよ」
倉菜の説明を受けると理解したのか銀はコクンと首を縦に振る。
まずは牛乳とオートミールを入れ、火を止める。
ここまでは順調に進む。
「えっと・・」
先に入れるのがチョコか生クリームかを忘れたらしく、手は左右に迷ったように動く。
見かねた倉菜は自分が手本になるようにチョコを取り、鍋に入れる。
「銀君、チョコを余熱で混ぜるのよ」
「あっ、そっか・・」
物覚えは悪くない方だが、なれない作業に手惑い、焦ってしまっているようだ。
それに加え危なっかしい手付きを見せる。
内面はハラハラする部分もあるが、倉菜は冷静に銀を見守りながら作業を続ける。
ムラなく混ぜ合わせた後は別のボウルに卵黄、卵、砂糖を入れ、ホイッパーで良く混ぜあわせる。
混ぜる作業がやたら多い。
今までは体力のいる作業をしてきたがここまでくれば大分楽になる。
「後は切った材料に少しだけお酒を加えて、粗熱の取れたオートミールを加えて混ぜるのよ」
先ほど銀の潰したバナナと倉菜が切ったドライフルーツにナッツを加える。
「銀くんは誰にあげるの?」
「大切な沢山の友達にだよ・・」
「沢山の大事な気持ちが伝わるといいわね」
「うん。倉菜お姉さんも大事な想いが伝わるといいね」
仄々と話をしている内に作業は順調に進んでいく。
「よっし・・出来た。この後に1時間生地を休ませて型を流して焼くだけよ・・」
180℃のオーブンで約90分焼き、飾り付けにマーブルチョコと柊の葉を添えれば完成だ。

―――90分後。
ケーキは美味しそうに出来上がり、早速オーブンから取り出す。
可愛らしくマーブルチョコと柊の葉を乗せる。
「倉菜お姉さん、美味しそうだね!」
「ええ・・早速、味見をしてみましょうか」
予備用のケーキを取り出し、温かいケーキを口にする。
本来は冷やしてからであるが、時間がないので味見は温かいままでいただく事にした。
それでも甘くて美味しい味が口いっぱいに広がる。
「美味しいですね」
「うん!とても美味しい♪」
ケーキを口に頬張りながら突然、銀が思い出したように尋ねる。
「あっ・・倉菜お姉さんは楽器作りの職人になる為に日本に来てるんだよね??」
「ええ・・もちろん」
「そしたら演奏も出来るの??」
目を輝かせながら銀は倉菜を見上げると弾いて欲しいと言わんばかりの眼差しを無意識の内に見せる。
苦笑しながら銀を見返す倉菜。
「良かったら弾いてあげようか?何がいいかな??」
「うん!!ボク、ギターを聴いてみたいな♪」
丁度、持ってきていたギターを鞄の中から取り出す。傷もなく、光沢がある。持ち主に大切に扱われているのが素人でも見て取れる程美しいギター。
倉菜の得意な曲を一曲・・・。


●ちょこっとブレイクタイム。
ラッピングをする為に一同が近くの調理室に集まった。
「皆さん、紅茶をお持ちしました?」
葛城・樹(かつらぎ・しげる)がお菓子作りで少しお疲れ気味の4人に美味しい紅茶を淹れる。
「前にも飲んだことがあるが樹の淹れる紅茶はとても美味いぞ」
紅茶を一口のみ、矢塚・朱姫 (やつか・あけひ)が樹に絶賛する。
「ありがとうございます」
「本当に美味しい・・寒い冬は体が温まりますよね。お出かけ前ですし・・」
内外の温度差で曇った、窓の曇り具合を見ながら海原・みなも(かいばら・みなも)が言う。
「ふぅー。ホカホカする・・。あっ、そろそろ時間だから行かないと!」
壁時計を気にしながら久々成・深赤(くぐなり・みあか)は紅茶を飲み終えて、立ち上がる。
「私も・・郵便屋が閉まる前に届けなくては。樹さん、紅茶ご馳走様。とても美味しかったわ」
硝月・倉菜(しょうつき・くらな)も紅茶を飲み終えるとすっかり体が温まる。それに疲れも取れてきたようだ。
「ボクもバイト始まってしまいますね・・」
「私も早めに行って、待ってたいしな」
樹や朱姫も時間が刻々と近づいてきているようだ。
「では、私も。今からいけば丁度、約束の時間に・・。銀君、そろそろ行きますね」
みなもが最後の一口を飲み、紅茶をテーブルに置く。
見送りをする為に銀は玄関先に立つ。

「皆、今日はありがとう。皆の想い・・届くといいね」
皆が見えなくなるまで銀は精一杯、手を振った。


●大切な想いを込めて。
冬の肌寒い中、宅配便屋に荷物を持って行く。
「これ、お願いします」
両親への贈り物に、祖父にもプレゼントとして贈る倉菜の手作りショールと手袋。
もちろん作りたてのケーキも忘れずに。
崩れやすいケーキは気をつけて扱うように告げ、メッセージカードを添えてもらうように頼む。
まずは住所を記入する。
それから名前。
「これでいいわ・・・速達でお願いします!」

最後にメッセージカードに記入する。

外へ出ると室内との温度差が激しく、風が冷たく頬にあたり身震いが起きる。
だが、それと同時に倉菜はあるものを目にした。
「雪・・?あっ・・ホワイトクリスマスね」
空から舞い落ちる白い雪。
手を前に差し出すと冷たい雪が倉菜の手に乗り、体温で溶ける。
思えばNYの今頃は大雪が降る季節だ。倉菜にとって雪は決して珍しくはないが、クリスマス・イブなだけあって、なんだか不思議な気分になる。
まるで普段降る雪とは違う特別な雪のように。

ふと、宅急便屋の玄関先に在る時計を見る。
「あっ、そろそろ行かないと・・友達との約束の時間に遅れるわ・・」
寒い中をゆっくりと自分のペースで歩き始める。


今宵はクリスマス・イブ。
大切な人へ特別な贈り物を。
倉菜が宛てた言葉と想いを両親へ。


メッセージカード。
「メリークリスマス」



後はNYに帰ってからゆっくりと話すとしよう・・・・。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
1252/海原・みなも(うなばら・みなも)/女/13/中学生
0550/矢塚・朱姫(やつか・あけひ)/女/17/高校生
1985/葛城・樹(かつらぎ・しげる)/男/18/音大予備校生
2194/硝月・倉菜(しょうつき・くらな)/17/女/
女子高生兼楽器職人(神聖都学園生徒)
1370/久々成・深赤 (くぐなり・みあか)/16/女/高校生
                      申込み順。

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■         ライター通信          ■
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こんにちは。葵桜です。
みなもさん、朱姫さん、樹さん、チョコ依頼に続きクリスマスイベントの
ご参加ありがとうございます。
倉菜さん、深赤さん、初めまして。
今回、依頼を受けていただきありがとうございます。

元々、形式を変えると告げて出した依頼ですが当初は個人性重視には
するつもりだったんですが、皆様のプレイングを読んでいたら
今回は特別な日だけあって、個人性の方が個々の想いが伝えやすいのでは?
っと思い個人性重視にしました。


みなも様へ。
いつもお世話になっています。
何時もと違う形となりましたが気に入っていただけたでしょうか?
みなもさんはお父さんの事をお好きなんですね。
きっと大人っぽく素敵なお父さんなんでしょうね。
家族という絆は一生モノですからその気持ち大切にしてくださいね。

朱姫様へ。
プレイングからも朱姫さんが恋人の事を本当に好きなのがとても
伝わてきました。
いつも可愛らしいケーキを教えてくださってありがとうございます。
そんな素敵な恋心をこれからも大切にしてください。
一生懸命作ったチョコの気持ちも伝わるといいですね。

樹様へ。
素敵な歌、ありがとうございます。
銀も少しは歌が上手になる(?)・・・かな(汗)
今回は幼なじみに作られたと言う事で・・。
私も幼なじみをとても大切に思っています。
カラオケで素敵な歌を是非、披露してくださいね。

倉菜様へ。
初めまして。
倉菜さんのプレイングからとても倉菜さんはとても優しい方だと
伝わってきました。
両親へ気持ちを込めて作ったケーキの気持ち伝わるといいですね。
これからもお祖父さん大切にしてくださいね。

深赤様へ。
初めまして。
素敵なプレイングを拝見してドキドキしながら書かせていただきました。
大切な想いを相手にしっかり伝わっているといいのですが・・。
深赤さんと結ばれる相手はきっと素晴らしい方でしょうね。
恋路が上手く行く事を願ってます。



最後に皆さんへ。
Merry Christmas