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<東京怪談ウェブゲーム あやかし荘>


オープン・セサミ

●始:

あやかし荘に数多あると言われる”開かずの間”。
本館にあるその開かずの間のひとつ、”護間(ごま)”で事件は起こった。
深夜、突然女性の叫び声と男性の叫び声が聞こえると言うのだ。
まあ怪奇現象など日常茶飯事。
むしろ何も無い静寂の方が恐ろしいここで、それくらい…と思うだろう。
しかし、その叫び声はあまりにもうるさかった。
本館・旧館両方に鳴り響くその叫び声は、まさに耳をつんざくという言葉がしっくりくる程だった。
しかもそれが1時間ないし2時間続く。
ある程度の騒ぎなら住人たちも慣れているのだが、ここまでうるさいとさすがに困る。
しかもこの年末の時期だ。
本館旧館問わずにクレームが舞い込み、どうしたものかと困り果てる因幡恵美。
そんな矢先…頼りになりそうな人物があやかし荘を訪ねてやってきたのだった。
因幡は恐る恐る…口を開き…。
「あのう…無理を承知でお願いがあるんですが…」

●逢:

「あの深夜の騒音はなんじゃ!
わしが朝早くまで屋台を引いておるのを知っての狼藉か!」
「おはようございます」
朝。本郷・源(ほんごうみなと)は不機嫌そうに『薔薇の間』から出てくる。
外の掃除をしていた因幡は挨拶をして、不機嫌な理由にすぐ思い当たった。
「いつもなら屋台を引いておる時間じゃったが、たまたま休んで寝ておったら…
寝られたもんではないわ!なんじゃあの叫び声は?」
「開かずの護間から聞こえてくるみたいなんですけど…」
「護間とな?」
源はそう言って首を傾げる。
あやかし荘に開かずの間は数多あれど、今まで話題に上っていない部屋がある。
それはだいたい今まで特に騒動も無く心霊現象が起こるわけでもなかった部屋で。
そのうちの一つがこの”護間”だった。
部屋の戸が開かないだけで特に何かが起こっているわけでも無い部屋だったはずなのだが。
「ふむ…いつからじゃ?」
「えっと…十日くらい前から…」
因幡の言葉に源は目を丸くする。
「なんじゃ!一週間以上も平気な顔で過ごしておるのか?!
あやかし荘の連中と言うのは実(げ)に鈍感じゃのう!!わしが行って話をつけてきてやろるのじゃ!」
源はそう言うと、朝食も取らずに護間に向かおうとする。
せめて食事だけでも…と因幡が引きとめようとした時、
「賛成ぢゃ…お供いたすぞ」
どこからともなく、あやかし荘の住人、嬉璃が姿を見せた。
椅子の上に立って不敵に微笑んでいる。
嬉璃と源はおでん屋台で出会い、意気投合してからいい交友関係を結んでいる間柄だ。
「おお!嬉璃殿!!」
「水臭いのぢゃ…わしもあの声に参っておるところぢゃった…今までは見逃してきておったのぢゃが…」
「嬉璃殿は心の広い方じゃ!」
「…いい機会ぢゃ!共に行こうではないか」
「嬉璃殿がいれば百人力じゃ!」
「うむ…わしらが二人揃えば無敵ぢゃ」
二人は朝から意気投合しそう言い合うと、並んで『護間』へ向かう。
因幡は本当に無敵な気がしてこの二人に任せていればいいような気がして笑みを浮かべた。


●展:

「何じゃ…これはまた大人数じゃ…わしらだけかと思うとったわ…のう、嬉璃殿」
「にぎやかなもんぢゃ」
護間の前の廊下で、本郷・源(ほんごうみなと)と嬉璃が座ってお茶を啜る。
その二人を囲むように、因幡に声をかけられた面々が立っていた。
芹沢・青(せりざわあお)、里谷・夜子(さとやよるこ)、鈴森・鎮(すずもりしず)の3人である。
初対面同士でとりあえずそれぞれ自己紹介を交わしたあと、改めて目の前の”護間”に目を向けた。
それは何の変哲も無いただの木製のドア。襖でも障子でもステンレスでも鉄でもなく、木の戸。
戸に板を打ち付けているわけでも、お札を貼って封印しているわけでもない。しかし…
「開きませんね」
里谷が引いても押してもびくともしなかった。
「無駄じゃ。わしらがとうに試してみたわ」
「叩いて呼んでみても無反応ぢゃ」
相変わらず二人仲良くお茶をすすりながら、源と嬉璃が言う。
しかし女子供の力だからと、芹沢が夜子に下がるようにいい…体当たりを試す。
ドン!と大きな音はして少し振動するものの…無反応だった。
にわかに賑やかになった護間の様子に、住人が何事かを顔を見せ始める。
しかしとりあえず皆毎夜毎夜のあの騒音をなんとかして欲しいと思っている者ばかりで、
護間をなんとかしようとして騒いでいる事に文句を言う者はいなかった。
「何か特殊な封印でも施してるようには見えないんですが…お心当たりは?」
夜子は首をかしげて因幡を見る。しかし因幡も首を傾げるだけだった。
このあやかし荘にはあまりにも”開かずの間”のたぐいが多すぎて、
その一つ一つを把握したりその由縁を覚えるのは至難の業だ。
覚えようと因幡は努力はしているものの、今のところ護間に関してはわからなかった。
「よし!じゃあ俺の出番だな」
「え?」
開かないドアを前に立ち尽くしている面々に、不意に鈴森が声をあげる。
どういう意味?と思っているうちに…鈴森はそれまでの少年の外見から…
体長二十センチほどの鼬(イタチ)に変化していた。驚く芹沢と里谷。
ここではそういったことは日常茶飯事なのか、因幡と嬉璃は、イタチだったんだな…と納得しただけのようだった。
源は自分もハムスターに獣化できる獣人ゆえに驚く事はないのだが…。
鈴森はイタチ。ハムハムにとって天敵とも言える。源はこの鈴森のには近づかないようにしようと決めたのだった。
「どんな建物もだいたい天井裏ってのは繋がってるんだぜ」
鈴森はイタチに獣化した後も話すことは出来るらしい。
そう言ってニッと笑う…ように見えた…と、素早い動きで廊下を駆けていく。
おそらくはどこからか入る場所を探して、天井裏から護間内に進入するつもりなのであろう。
「鈴森さんにお任せしてみるしかないですね」
因幡がそう言って、全員が一息ついた時…
「ん?嬉璃殿?」
「なんぢゃ?」
「この戸の下のコレはなんじゃと思うかの?」
「―――そうぢゃのう……これは…」
源と嬉璃の二人が、何かに気付いて顔をつき合わせる。
護間の戸の下の端。床と密着しているそこに、小さな取っ手のようなものがついていた。
小柄な二人ゆえに気付くようなその場所。不意に源はそれを触ってみる。そして…
「嬉璃殿!」
「了解ぢゃ!」
二人揃って、その取っ手のようなものに手をかけ…
『開け〜護間じ(ぢ)ゃ〜!!』
声を揃えてそれを上に持ち上げた。
すると、ガラガラガラとローラーが回るような音がして、護間の戸が天井に吸い込まれていく。
満足そうな源と嬉璃の表情とは対照的に、芹沢達は目を丸くしていた。
「そんな単純な…」
「何をしておるのじゃ皆の衆。いざ護間に参るのじゃ!」
「あ、ま、待ってください!」
先陣を切って源と嬉璃が護間に足を踏み入れる。慌てて他の者もそれに続いた。
護間の中は八畳程の和室になっていて、使われていないテレビがある他は特に何もない。
窓にはカーテンがかかっていて、因幡は恐る恐る…そのカーテンを開く。
すると、明るい光が差し込んで部屋の中を照らす。
明るくなった状態で改めて部屋を見渡して見ても…変わったところは別段無く、
ただ普通の和室といった様子だった。押入れもなければ床の間も無い。
「なんぢゃ…何も無いではないか」
「残念じゃのう…」
拍子抜けして残念がる二人。その脇で里谷が部屋の中の気配を探る。
霊的な気配はする事にはするのだが、今ここに居るというわけではなく…
残像としてそこに残っているような感じだった。
「なんだ…何も無いじゃないか…」
芹沢はぽつりと呟く。本音を言うと、何もいなくてほっとしている。
実のところあまりこういった心霊と言ったものは得意では無いのだ。
「気配はするんですけれど…あの、管理人さん…その霊障が起こるのは深夜でしたよね?」
「え、ええ。深夜の0時頃だったり1時頃だったりします…」
「もし宜しければその時間に再び来ても宜しいですか?」
「もちろんです!あ、良ければ開いているお部屋で休んでくださっていても…」
「それじゃあお願いします…芹沢さんはどうなさいますか?」
「え?お、俺…?」
何事も無く、これで無事に帰れると思っていた芹沢だったが、里谷の予想外の言葉に少し戸惑う。
しかし自分を見つめている女の子達の様子を見ていると…まさか、嫌とは言えなかった。男として。
「とりあえず残ってる仕事を片付けてからでいいかな?また夜に来るという事で…」
「はい!お願いします!」
因幡はほっとしたように微笑んで、ぺこりと頭を下げる。
そして里谷を案内して部屋を出て行く。
芹沢も苦笑いを浮かべて…微妙に重い足取りで部屋を出て行った。
「のう嬉璃殿…」
「なんぢゃ?」
「誰かを忘れておる気がするのじゃが…?」
「…気のせいぢゃろう?それよりも今宵のおでん屋台はどうするのぢゃ?
わしでよければ少し見てやっても構わぬぞ?そうぢゃ!”とまと”を入れてみてはどうぢゃ?」
「ありがたいのじゃ!持つべきは友じゃの…”とまと”と!嬉璃殿はほんに雅な感性をお持ちじゃ!」
そして最後に部屋に残っていた二人も部屋を出て行く。
しーんと静まり返った部屋。誰も居なくなった護間の天井裏では…
源と嬉璃が開き、せり上がった部屋の戸の直撃を喰らって気を失った鈴森の姿があったのだった。



深夜1時。
全員集合して因幡の用意した部屋でくつろいでいた彼らの耳に、
けたたましい…いや、騒々しい…いや、なんと言うか例えようの無い凄まじい叫び声が聞こえてくる。
立ち上がり顔を見合わせ、全員で声のする方向…護間に向かう。
他の住人達も部屋からすがたを見せて事の成り行きを見守っている。
護間の戸は閉めた覚えは無いのだが、全員が到着すると再び閉じられていた。
「開けましょう!」
里谷の声に、芹沢が戸に手をかける。本当は今にも逃げ出したい気持ちをおさえ、
芹沢は一気に戸を上に引き上げた。
「コレがそうか…!」
鈴森がその様子を見て、自分を直撃した忌々しい戸を睨みつける。
決して戸が悪いわけでもなく、強いて言うならタイミングが悪かっただけの事なのであるが。
戸が開くと、あの叫ぶ声が一層大きくなる。
耳栓をしても聞こえてきそうなその叫び声は…全員が部屋になだれ込んだと同時に、ピタリと止まった。
「何者じゃ!!神妙に縛につくのじゃ!!」
源がそう叫ぶ。
真っ暗で何も見えないその部屋で、全員が目を凝らすと…
いつの間にか閉められていたカーテンの前に…半透明の中年男女が呆然と立ち尽くしていた。
「あなた達ですね?叫び声の主は」
里谷が静かな声で言う。半透明の男女は互いに顔を見合わせあって…この事態にかなり動揺している様子だった。
「俺たちは別に敵意があるわけではないんです…落ち着いてください」
「おぬしが落ち着くのじゃ。足が揺れておる」
源の突っ込みに芹沢は顔を赤くする。そんなつもりは無かったのだが…。
「話をきかせて下さい。何故あなた達は毎晩深夜に…」
『未練があるのです…』
里谷の声に、半透明の男女の女の方が静かに答えた。
『私たち夫婦は…とってもとっても未練があるので成仏できないのです』
「…よければ話して下さいませんか?」
「そうじゃ。話せば成仏もできよう」
女性は男性と顔を見合わせると、何か目で合図をし。
『私は優子。こちらは敏男。私たちは…とてもカラオケ好きの夫婦でした』
「――カラオケ?」
『死ぬ前に一度、カラオケの採点で100点満点を出してみたかったんです…』
「採点で百点満点って…」
『ですが満点をとる前に事故で…死んでも死にきれず…こうして毎晩毎晩深夜、
我々幽霊の活動的な時間にカラオケの練習をしているのです…』
「カラオケ?!あの叫び声、歌だったのか!?」
思わず口をついて出た芹沢の言葉に、優子と敏男は悲しげな顔になる。
怒らせたらどうするの!と、里谷が芹沢に注意すると芹沢は済まなそうに頭を下げた。
『いいんです…いいんですっ…わかっているんです!!
そう…私たちは生前、自他共に認めるほどの超ド音痴だったんです…!!』
『それでもカラオケが好きで一度でいいから百点を取ってみたかった…』
二人は遠い目をしてそう言う。そして、自分達を見つめている人々に視線を移し。
『お願いします…!せめて、せめて誰かが百点を出すところが見てみたい…
どなたか私たちの成仏の為にカラオケで百点を出してはくれませんでしょうか?!』
『採点マシーンもここにあります!』
敏男が口を開くと、いつの間にどこから用意したのか、通信カラオケの本体と採点マシーンが現れる。
どういう原理なのか優子がそれをてきぱきとテレビに接続すると…
軽快なリズムに乗って某社の通信カラオケ画面が表示される。
そしてリモコンで「採点します」を選択すると…優子は全員に向き直り…。
『お願いします…どうか、どうか百点満点を見せて下さい』
そう頭を下げた。予想外の展開に、顔を見合わせる。
よもやそんなお願いをされようなどとは思ってもいなかった。
「困りましたね…歌と言えば歌姫さんがいらっしゃいますが…この時間ですし」
因幡がうーんと考え込む。
「カラオケ…ですか…わたしは小椋佳の”シクラメンのかほり”なら…」
里谷は小さく呟く。
「俺は悪いけど…楽器をやれと言われれば出来無い事もないけが…歌はどうかな…」
頭を掻きながら芹沢が言う。
「――影山ヒロノブなら俺に任せな!ドラゴンボールから幅広く歌えるぜ!」
鈴森はまんざらでもない様子で。
「わしに”からおけ”で歌えと申すのか?そうじゃのう…”あゆ”なら簡単かのう」
「本郷さんってあゆ歌えるんですか。凄いですね」
「あの程度わしにしてみれば基本じゃ」
そう言うと、源はマイクを手にして立ち上がる。
すると、再びどこでどうやって持ってきたのか…天井にミラーボールが出現する。
さらに見るとカーテン側に舞台が用意されていた。源はその舞台に飛び乗る。
「一番、本郷源…”でぃあれすと”歌うのじゃ!」
源の言葉と同時に…歌本から選曲して選んだわけでもないのに、
どこからともなく、メロディが流れ始めたのだった。



源、芹沢、里谷、鈴森の順番で歌い続けること2時間。
しかし採点はそれぞれ最高で96という惜しいところまではいったのだが…
百点には遠く、それどころか時間と共に点数もどんどん下がりはじめている状態だった。
長時間カラオケにはつきもので仕方の無い事なのだが。
「ちくしょー!アニソン系なら絶対満点狙えると思ったのになあ!!じゃあ次はGGGのOPで…」
「もう最新ヒットソングは全部歌いきったぞ…」
「私ももう残りのレパートリーは…あまり…」
「さすがのわしもそろそろ限界じゃ」
全員に確実に疲れの色が見え初めていた。
そもそもカラオケをしに来たわけではなく、霊を成仏させるつもりで来たのだ。
それが結局はカラオケ大会。心の準備も出来ていない状態で始めると、少し疲れる。
なんと言っても喉が痛い。少しでも何か喉を潤すもは無いかと思うのだが…
因幡は皆に飲み物でも用意してくると部屋を出て行ったきりなのだ。
あれから随分経つがまだ帰ってきていなかった。
「因幡さん遅いですね…」
「どこに寄り道しておるのじゃ!わしは冷たい緑茶が飲みたいのじゃ」
「寝ちゃってたりして」
「まさか…」
『敷地内にはいますよ』
「そうなんですか?」
『ええ。それにもう1人別の方の気配も…』
優子の言葉に、全員が顔を見合わせる。こんな時間に近所から苦情でも来たのだろうか?と、
少し不安に思いつつも…せっかく始めた事をやめるわけにはいかない。
「じゃあ次は順番変えてみようぜ!」
「そうですね」
「じゃあジャンケンで」
『ジャーンケン…』
ほい!と、出した結果…今度は里谷、源、鈴森、芹沢の順番で巡る事になった。
今度こそ…と、全員が固く心に誓い合い…これこそは!と思う選曲を考える。
しかしそれでも満点が出せずに、一巡し、里谷が歌い、源が歌い、
そして鈴森が歌い始めようとしたその時―――
「皆さん!助っ人です!!」
ガタン!と、大きな音をたてて護間の戸が上に押し上げられる。
『助っ人?!』
因幡のはずんだ声に、全員がそちらを見ると…
どこから連れてきたのか…一人のスーツを着た男性が立っていた。
男性の名は相澤・蓮(あいざわれん)。製菓会社で営業をしているサラリーマンである。
相澤は部屋の中の様子を見て苦笑いをすると…ひとつ咳払いをして。
「お疲れのようですね」
「あなたは…」
「相澤蓮と申します。どうぞ」
相澤はポケットから取り出した名刺を差し出して、とりあえず自己紹介をする。
他の面々も名刺は無いもののそれぞれが一通り自己紹介をし合い、さらに優子と敏男も挨拶をする。
相澤は丁寧にその幽霊夫婦にも挨拶をすると、徐にマイクを手にステージに上がった。
全員が視線を集中させる中、一つ咳払いをして。
「それじゃあまずは…THE BLUE HEARTSで…『夢』いってみようか」
相澤の言葉と同時に、ビートのきいた音楽が流れ始める。
そしてまるで人が変わったかのようにスーツを脱ぎ捨てると…
思いっきりノリにのって身体を動かしながら歌い始めたのだった。


●終:

「良かったですね。優子さんと敏男さんも成仏できて」
「これで騒音も気にせずに過ごせます…ありがとうございました」
あやかし荘の空き部屋にて。
カラオケを歌いきって疲れ果てた面々が揃って休憩をしていた。
あれから後、結局すぐに満点は出ずに…何回も何回も何回も歌いつづけて、
一時はそれぞれが最高で98点、99点という所まで上り詰めたのだが結局満点にはならず。
皆が少し休憩している間に場つなぎで因幡が歌った「ふるさと」で満点が出たのだった。
これには皆一斉に力が抜けて座り込んでしまったのだが…。
何はともあれそのお陰で、優子と敏男の二人は成仏できたのだ。
「おぬし達、腹が空いておろう?わしの屋台の残り物じゃが…どうじゃ?」
いつの間にかいなくなっていた源が、ひょこっと部屋にやってくる。
そして疲れている面々の前に、”おでん”を差し出したのだった。
「本郷さん…」
「これ、食べていいのか?」
「水臭いのう…一緒に”おーる”した仲ではないか…」
にっこりと微笑むと、源は全員に割り箸を渡してテーブルの上におでん入りの鍋を置く。
すでに朝食と言っても良い時間帯であるが、おでんの香りが全員の微香をくすぐった。
「それじゃあ遠慮なく…」
「いただきま〜す!」
「美味しそうですね」
「徹夜でカラオケでシメにおでんか…いいねえ!」
全員が笑顔になりながら鍋のおでんをつつく。
微笑ましげに見つめる因幡の横で、別の思惑を抱いている源の姿が合った。
源は皆が美味しそうにおでんを食べているのを満足そうに見つめながら…
「無料で、とは言ってないがのう…」
そう不敵な笑みを浮かべたのだった。





<終>


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1108/本郷・源(ほんごう・みなと)/女性/6歳/オーナー・小学生・獣人】
【2259/芹沢・青(せりざわ・あお)/男性/16歳/高校生・半鬼・便利屋のバイト】
【2291/里谷・夜子(さとや・よるこ)/女性/17歳/高校生兼封魔師】
【2295/相澤・蓮(あいざわ・れん)/男性/29歳/しがないサラリーマン】
【2320/鈴森・鎮(すずもり・しず)/男性/497歳/鎌鼬参番手】

※数字順に掲載しています。

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■         ライター通信          ■
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こんにちわ。
この度はあやかし荘にの護間を開けてくださりありがとうございました。
皆さんに参加していただいたお陰で、無事に解決出来ました。
”逢”は個々に、それ以外は同じ作りになっておりますが、
都合上、相澤様だけ全体通して個別になっております。
助っ人に来る経緯を書いておりますので良ければご覧下さい。(^^)

あやかし荘での開かずの間はまだまだあると思います。(笑)
今後またあかずの間で何か起こりましたら…お助けしていただけると幸いです。

またいつかどこかで皆さんに会えるのを心から楽しみにしております。

:::::安曇あずみ:::::

>本郷・源様
はじめまして。この度はありがとうございました。
嬉璃さんとの関係が好きで書かせていただけて嬉しかったです。
もう少し二人を活躍させたかったのですができなくて少し心残りでした。(^^;
もし機会があれば次こそライダーキックをお願いいたします。
作中で”あゆ”を勝手に歌わせてしまいスミマセンでした。m(__)m
また源様と嬉璃さんに出会えるのを楽しみにしております。

※誤字脱字の無いよう細心の注意をしておりますが、もしありましたら申し訳ありません。