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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


骨董品幻瞑譚 ***聖獣の還る場所***



-----<オープニング レンの溜息>---------------------------------------------------

アンティークショップ・レン。
置かれている物がモノだけに、店内は妖しい雰囲気に包まれている。
そんな店の扉鈴が、微かな風と共に訪問者の存在を告げた。
「あぁ、呼び出してすまないね。」
いつもは不敵に笑みを浮かべるはずの店主、レン。
だが、今日は焦りを帯び、待ちかねたといった表情で客を迎えた。
入って来たのは、どこか似通った雰囲気の2人の少女。
白き髪のシスターは、“陰の巫術師”である夜叉彗姫。
その肩には黒梟が留まっている。
金の髪の学園生徒は、“陽の巫術師”である薬叉瑞姫。
その傍らには白狼が寄り添っている。
二人は、怪異現象に携わる者ならば、噂くらいは聞いたことのある者達である。
「…珍しいこともあるものじゃ。」
「そうね、レンさんが、私達を“お仕事”で呼ぶなんて。」
揶揄するように言うのは、あくまで無表情な彗姫。
それに続いて言った瑞姫は、無垢な微笑みを浮かべる瑞姫。
陰と陽、司る力の如く、容姿は似ていても性格の違う2人の少女。
レンはおもわず笑みをもらして、慌ててコホンと咳をして言った。
「実は、まだ鎮めていない骨董品を盗まれちまってね。」
「…ヘマをやったものじゃ。」
彗姫の無感情な言葉に、レンは苦笑を浮かべる。
「面目ない、その通りだよ。」
そうして、ふぅっと煙を吐き出すと、レンは話を続けた。
「そいつが売られた先は突き止めたんだよ。
 だが、悪しき人間の手に触れた品だからね。
 ここは、人間の手によって、その鎖を解いてやるのがスジかと思ってね。」
そう言うと、再び、レンは煙管に口を付ける。
黙って話を聞いていた瑞姫は、不思議そうな表情でレンに尋ねた。
「でも、レンさんはどうして私達を呼んだの?
 だって、私達は…。」
そこで、言葉を濁した瑞姫。
代わって口を開いたのは、彗姫。
「…用心棒じゃの?」
レンは、真面目な表情で頷くと、二人に告げた。
「仕事としての依頼はこちらでしておくよ。
 だが、もし失敗したり、人間達に危害が及びそうな場合は…。
 頼んだよ。」
こうして、約束を交わすと、二人は店を去っていった。
その数時間後、レンの店には、仕事依頼の張り紙が1枚増えた。

   ■依頼主:アンティークショップ・レン 
   ■内容:骨董品回収。必要ならば怪異調査&解決も。 
   ■場所:東北地方の老舗旅館。(宿泊&食事無料)     
   ■参加者:1〜4グループ      
   ■(もちろん1人でも参加できます。)
   ■同行者:2名


-----<第一話 風変わりな請負人達>---------------------------------------------------------

それは、ある昼下がりだった。
叢雲に時折姿を隠しながら、それでも太陽は地を照らす。
何気ない一日の、気だるい昼下がり。
賛美に囁く女性の色めいた視線に関わること無く、ゆるりと路地へ足を向ける青年が1人。
大神・総一郎は、古き面を求め、レンの骨董品店へと足を向けたのだった。
店の扉に手を遣ろうとして、ふと、ウィンドウの傍らに貼られた一枚の紙に視線を巡らせる。
そこには、骨董品の回収の依頼の日時や場所が書かれていたが、肝心の骨董品についての記述は無い。
「店主が書き忘れるとも思えぬが…、ふむ。」
考えるように頷くと、再び店の扉へ手を遣った。
鈴の音とともに不思議な香りの漂う店内に入ると、店番の少女と珍妙な訪問者が佇んでいた。
どうやら、貼紙の件で店主と話をしている様子である。
ゆっくりと歩み寄った総一郎は、微笑みの仮面を纏って口を開いた。
「俺は大神・総一郎と申す者。
 どうやら最後の参上になったようですが…。」
その挨拶に、店番の少女と珍妙な訪問者も礼を取って答えた。
「鹿沼・デルフェスです。
 大切な骨董品が盗まれてしまったのは、私の責任なのですわ…。」
「ラクス・コスミオンと申します。
 大家様の代わりに、今回のご依頼をお受けしに参りました。」
総一郎に対し面白げな笑みを浮かべる店主を一瞥すると、あくまで微笑みを纏って告げた。
「相応しくない者が盗みし物ならば、元の場へ還すのが筋でしょう。
 では、参りますか。」


-----<第二話 束の間の挨拶>--------------------------------------------------------------

「初めまして〜瑞姫と申しますの〜
 皆さんお揃いのようですねぇ〜」
「…わらわは彗姫じゃ。
 随分と、仰々しい者どもが集ったものじゃの。」
正午になったばかりだというのに、夜闇の如く影の纏わりつく古い館。
ここ数日、空は暗雲に雷鳴が轟き渡り、川は黒き土石の混じった水が渦を巻いているという。
やっとの思いで旅館に辿り着いた3名を迎えたのは、女将でも仲居でも無く、同行者のはずの二人の少女だった。
間延びした声音で挨拶をする瑞姫と、土砂降りだというのに服の裾にも汚れ一つ無い彗姫。
脱力するようにして、鹿沼・デルフェスは口を開いた。
「どうやってこちらにいらしたのですの?」
その言葉に頷きながら、大神・総一郎も尋ねる。
「こちらへの橋は落ちていたはずですが。」
その横で、ラクス・コスミオンは涙を瞳に浮かべ、必死に自分の四肢を拭いていた。
「あぁ…。こんなに汚れては飛べなくなってしまいます…。」
その胴には、くっきりと2名分の座した跡が残っている…、気の毒に。
「あらぁ、私達はモグラさんに………きゃぁっ」
「…秘密、じゃ。」
瑞姫の言葉を遮るように、彗姫は持っていた傘の柄を引っ掛けてつまずかせた。
「そんなことより、奥へと行くのじゃ。」
「あっっそうでしたねぇ。
 皆さんが来るのを待っていたら骨董品の“悪戯”が度を越してしまってぇ。」
そう言うと、二人は3人を導くように、人差し指で廊下の奥の暗がりを示した。


-----<第三話 悪戯の代償>--------------------------------------------------------------

廊下を進んでは曲がり、また進む…。
迷宮にでも迷い込んだかのような錯覚を与えられた3名の耳に、高く鋭い獣の鳴き声が響いてきた。
歩みを速めながら、大神・総一郎はその手に青白い靄を纏った刃の幻影を握り締める。
「近いな…。あれは何です?」
その後方には、鹿沼・デルフェスが小走りに従いながら、緊張した面持ちで口を開く。
「私も人より少し長く生きて参りましたけれど、あのような声は存じ上げませんわ。」
さらに後方で、ラクス・コスミオンが翼に風を纏いながら答えた。
「あの声は、鹿の発情期の声に似ているようです。
 けれど、濃く強い聖気と陰湿な邪気の混じったものを感じます。
 これは…。」
そういって話を続けようとしていたラクスは、突然止まった二人に思いっきりぶつかってしまった。
「きゃぁっ何ということを…!」
衝撃に一瞬の眩暈を覚えたラクスの前で、デルフェスは手で口を覆いながら悲鳴を漏らした。
総一郎は刃の靄を確かな刀影に導きながら、後方をに声をかけた。
「これは思ったよりも険悪な“悪戯”のようですね。
 皆さん、足手まといにはならないで下さいよ。」
3名の凝視する先にあった光景。
それは、体液が全て失せたように干からびて積み重なった人や動物の亡骸。
そして、未だ満たされぬ飢えに苦しみ、生臭い息を吐きながら、血走った眼でさらなる糧を求める異様な獣の姿。
「これは…麒麟です!!
 東方の聖獣のはずなのに、どうして…。」
その問いに、総一郎は何処よりか現れた天狼の額に手を当てて答えた。
「どうやら、餓鬼が憑いているようですよ。
 低級な妖怪だが全てを喰らい尽くしても飢えている、厄介なものを抱えたものですね。」
その時、邪の宿媒にされた獣が、血走った瞳を3人に向けると、甲高い鳴き声を響かせた。
今にもこちらに向かって来るかの如き様相である。
「あの額の痣痕を見て下さい!邪は、あそこを宿口としているようです。」
獣の額に焼印のような痣を見つけて叫んだラクス。
総一郎は、あくまでも冷静に、だが俊敏な動きで身構える。
「判りました。どんな方法でも良い、ラクスさんは獣の視界を封じて下さい。」
その言葉に、ラクスは頷くと、異国の音の無い語を唇にのせて唱え始める。
「それから、デルフェスさんは…。
 デルフェスさん!正気を保って下さい、獣の身体を動けなくできますか?」
口を覆ったまま驚愕に震えていたデルフェスは、総一郎の言葉にハッとしたように頷くと、口を開いた。
「は、はい、換石の術を使いますわ。
 けれど、邪の宿る頭部は封じれませんわ…、よろしいですの?」
その言葉に、総一郎は不敵な微笑みを浮かべて答えた。
「フッ私に任せて下さい。」
そうして、ラクスによって視界を砂嵐に覆われ、デルフェスによって石化させられた自らの身体に縛す麒麟。
その額で悲鳴を上げる餓鬼へと、総一郎は刀身に一際蒼白き光を宿らせて斬りつけたのだった。


-----<エピローグ 叢雲の消えた月夜>--------------------------------------------------------------

「厄介事に関わってしまったものだ。」
露天風呂に身を浸し、杯を傾けながら、溜息をついて総一郎は呟く。
あの後、餓鬼を霧散させた3人の前に、2人の少女達が現れると麒麟を小さな幼獣へと戻した。
あくまで冷静に事の成り行きを見つめる総一郎に、麒麟は神々しい微笑みを向けると、ふぅっと息を吐き、その息は旅館の全てに再生の導きを与えたのだった。
目覚めた女将達の記憶は消されていたものの、レンの配慮から温泉旅館でのしばしの休息を与えられたのだった。
「時にはこういった趣向も一興か…。」
湯気の纏わりに酔気の心地よさ。
総一郎は、叢雲の消えた月を杯の酒に溶かして飲むのだった。


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参加者一覧
【2181 / 鹿沼・デルフェス / 女性 / 463歳 / アンティークショップ・レンの店員】
【1963 / ラクス・コスミオン / 女性 / 240歳 / スフィンクス】
【2236 / 大神・総一郎 / 男性 / 25歳 / 能役者】

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OMC Writer 儀間春花より

>>大神・総一郎様へ
『骨董品幻瞑譚 ***聖獣の還る場所***』へのご参加、どうもありがとうございます。
東洋の聖獣である麒麟を題材にしたものでしたが、お楽しみいただけましたでしょうか?
また、機会がありましたら、ご一緒下さると嬉しいです。

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