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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


インタビューという名を借りての診断

碇は医療関係の雑誌や資料をみていた。
そして、興味を持つ記事を発見する。
『癒しの女神か?加登脇美雪』
「へぇ〜、彼女はかなり凄腕なのね…」
写真を見るととても優しい笑顔が印象的な女性精神科医で、かなりの患者を治癒している。
また、ネットなど調べていくと彼女は超常現象等で被害に遭った人物、能力者を中心にみていることに碇は興味を覚えた。
「かなりネタになりそう…彼女と接触するのも悪くはないわ」
そして彼女は、通称〈癒しの手〉と言われる総合病院精神科にいる加登脇に会うため電話を入れる。

許可を取れた物の、嘘を書かれたくない加登脇美雪はこういう条件を出してきた。
「悩みを持つ人や能力者方も連れてきて欲しい、その方とお話しをしたいので」
と。
「まぁ興味深い条件ね…」
早速、碇は悩める三下とほか今悩む人をこっそり募集することにした。


1.御影涼
碇の話しに思いっきり飛びついたのは御影涼だった。
「はい!絶対参加します」
[どうしたの?いつもの君らしくないわね。よっぽどの悩みがあるわけね]
「え、はいそうです…なので是非とも」
[構わないわよ、詳細は此方(アトラス編集部)に来てからの方が良いわね]
「分かりました」
と、急いで電話を切って、涼はアトラスに急いで向かう。
いきなり電話を切られた碇は、
「あのほんわかクールな御影君が…。何かあったのかしら?」
と、不思議がっていた。
近くで、榊船亜真知がお茶をすすって待っている。
「やはり人には色々悩みがありますわ」

参加するのは、三下忠と榊船亜真知、御影涼と言うことになった。
忠にしても、涼にしても、悩みのオーラがくっきりと見える。
「重度の相談者様がお二人も」
「三下君はいつものことだけど、まさか御影君がね…」
と、少し驚いてみる碇と相変わらずニコリと微笑んでいる亜真知だった。


2.効果の程は?
早速、〈癒しの手〉事、正式名井ヶ田総合病院に向かう。
「どうもこんにちは」
加登脇自身が出迎えてきて挨拶をする。とても笑顔が印象的な20代後半の女性だ。
「取材許可ありがとう。早速だけど3名相談に乗って欲しいという子を連れてきたわ」
「はい、分かりました。でもカウンセリングは1対1で行いますのでマイクロテープでお願いします」
「ええ」
三下忠と御影涼は、早く心の悩みを聞いて欲しいようでいっぱいのようだ。
「まずは、さんした君からね」
「みのしたですよ〜」
相変わらず、碇のいぢめにあっている三下から。
「今はこんななりだけど私の部下だから、一緒にいても良いかしら?」
「はい、分かりました」
加登脇は認証する。
その時一時も亜真知は挨拶以外喋ることはせず、加登脇をじっと見ていた。

診察室から、三下の泣き声と共に今までの鬱憤が言葉となって廊下まで聞こえる。
それはかれこれ10分は経つのだろう。
そのあと、暫く沈黙が続いた。
診察室のドアが開く。
今まで見たことのない爽やかな美少年と、少し疲れているが、感心した碇が出てきた。
「人の愚痴や悩み聞くのって辛いって本当に分かったわ。加登脇美雪さん、三下君の泣き言全て聞いて、彼を諭したのよ…?しかも、私は注意されたわ…」
と、苦笑する碇。滅多に見ることの出来ない彼女の姿。彼女曰く加登脇の前では、癒される感覚を覚えるのは確かなようだ。ただ、昔の平社員時代の苦労した時代を思い出したようだ。
「頑張って生きていきます!ありがとうございます先生!」
三下はハキハキとした声で加登脇に礼を述べていた。
待っていた、涼も亜真知も其れはビックリする。
「こ、今度は俺が!」
と涼が、診察室に入っていった。


3.悩める医学生
涼は、診察室に入って
「御影涼くんね?こんにちは」
「はい、こんにちは宜しくお願いします」
と、涼は椅子に座って加登脇に挨拶した。すこし緊張しているように見える。
「どういったことで悩みがあるのかしら?」
と加登脇が涼に話しかける。
彼女の声を聞いた涼は、心なしか緊張も解けていき、徐々にリラックスしていく
「一寸…最近おかしいんです。絶対何かがおかしいんです」
と、やはり恥ずかしい為に俯いて話し始める涼。
加登脇は、彼の言葉を待っている。
「俺、医学生です。剣術も其れなりに自信はあるし、此れまでも真面目にやってきました。けっこう頑張ってるって思います。なのに……どうも最近、『ぽややん』なようなんです、俺。然もメイド服着たり、惚れ薬でソファに恋したり、絶対おかしいと思いませんか?俺は……俺は……真面目一直線の筈だったんです!」
思わず机を拳で叩いてしまう涼。その音は彼の苦悩の重さ(客観的に見ても)物語っている。
「……あ、すみません、つい興奮してしまって。……此れは一体、どういうことなんでしょうか。俺、何かに取り憑かれていませんか?其れとも他の原因があるんでしょうか?」
目頭が熱くなっている涼。
実際大きな悩み事、思いの丈を口にするには勇気が要る。その時に感情が出るのだ。悲しいことや辛いことは大抵泣いてしまう事が多いらしい。
加登脇は、真剣な表情になって、彼の話を聞いていた。彼女の頭では既に彼の過去を「読んで」いて色々答えが出ているのだが、質問をする。
「メイド服を着たんですか?其れはいつ頃?」
「つい最近草間さんの手伝いで…ある(悪名で)有名な枢機卿のクリスマスパーティで…」
「そう…」
彼女は、サラサラとカルテに状況を書いていく。
「惚れ薬(ラブフィルター)はどのような状態で効果を為したかなど覚えているかしら?」
「えっと…揮発性だったとおもいます…」
「成る程…」
加登脇はサラサラと、なにやら計算式にも似た不可思議な文字を別の紙に書いている。
其れはモノの5秒だったが、診断報告を受ける涼にとって長く感じた。
加登脇が彼に向かってほほえみかける。
「あのね、涼くん」
「はい」
「あなたが悩むことはないわ。今までの行動で適切な判断を下していた自信はあるから悩む。でもね、今回の悩みの要因は全て外的からよ。流石にメイド服を着たりソファに恋したりする事に恥ずかしくなるわね。でも、其れで自分がおかしくなったというのは考え過ぎなの。あなたは鬱病や統合失調症、偏妄症でもないわ。全部事故なのよ。思い詰める必要はないの」
「え?そうなんですか?」
「ええ」
印象的な微笑みで涼に診断結果を告げた。
「かなり参っているようだから、少し休んだ方が良いわね。又悩み事があったら電話してね」
「はい!ありがとうございます」
涼は、彼女の言葉で今までの苦しさから解放され、お辞儀をし、すがすがしい気分で診断室を後にした。


4.アトラス記事掲載
アトラスに加登脇美雪の記事が公開されていたが、募った相談相手の名前は全員イニシャル扱いだったが、三下だけしっかり記載されていた。
相談内容は言わずとしれたものだ。
『ボクはいつも不幸です…どうしたら幸運になれるのですか?』
加登脇は、それでもじっくり彼の悩みを聞いてあげて最後にこういったそうだ。
「あなたは、よく頑張っているわ。だから、休むことも大事。でも、若いうちは苦労を思いっきりしなさい。何時来るか分からない『幸せ』を求めるのではなく、今を、命の限り生きていきましょう」
と、優しく彼を諭したのだ。
もちろん、碇に過労の危険性があると指摘し、長期休職をさせるようにと言った。
オフレコであるが彼の若返りの怪現象は、今のところ原因不明だが調査を開始したそうだ。
暫く彼はどんなにいぢめられてもドジをしても、必死に生きている。


5.その後の涼くん
御影涼は事あるたびに加登脇美雪に相談することになる。
近頃人間関係によるものだが…それは草間興信所など怪奇現象を請け負うけったいな所でバイトしている以上回避出来ないことだろう。

加登脇はふと思った。
「一度行ってみたいモノね…草間興信所に」

End


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1831 御影・涼 19 男 大学生兼探偵助手?】

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■         ライター通信          ■
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滝照直樹です。
『インタビューという名を借りての診断』に参加して下さりありがとうございます。
カウンセリングというモノはなかなか難しいもので、様々な方法があります。認知療法では一般的な方法かと思われます。加登脇は能力を使って(ほとんど自動発動している【声】と人柄に依るものです)治療を行ってます。
他の方のノベルはほとんど異なっています。どんな悩み事を加登脇にしているか読んでみるのも良いでしょう。実際の医療現場では守秘義務や信頼関係で成り立つので公開などあまり出来ないですけどね。

では、機会が有れば又お会いしましょう。

滝照直樹拝