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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


はじめての仕事(?)素行調査です。

OP:電話越しの零ちゃん
もしもし、草間零です。いつもお世話になっています。

お願いがあって電話しております。
お話しはこんな事です。
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ある日、神経質そうな眼鏡男がやってきた。
45歳の痩せている、身なりではかなりの中堅以上の会社役員ではと思う裕福さと思われる。
其れも、依頼の情報としては重要だ。
「私の妻の素行調査をして貰いたい。報酬ははずむ。相場では100万だろうがその3倍は払おう」
と、珍しく普通の依頼が来たのだ。
もし兄、武彦が居れば喜んで引き受けるだろう。
「此処の所長にそう言ってくれ。これが私の携帯番号。ここに妻の怪しい行動のメモがある」
しかし今の所長(代理)は目の前にいる妹、草間零だ。

しかし、姉のように慕っている女性から、
「私が受けますといっちゃダメよ…お客さんビックリするから」
と念を押されている。
要するにいつものように接客することが大事なのだ。
「分かりました…所長に伝えておきます」
―兄さん居ないけどこれで良いのかしら…。

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というわけです。
素行調査をしたことは(多分)全然無い私ですが、やはり所長代理としてはお仕事をしたいのです。
どうか、一緒に私とこの仕事をしてください。お願いします。

―と、半泣き状態になっている零の声が電話で聞こえるのだった。

情報
1.男は源・茂雄(45) 田中医療研(株)の役員(床ずれ防止マットなどの改良などしている会社)。
独身だったが、2年前に今の妻と結婚。
仕事一筋の彼は、妻を溺愛している。零は小一時間惚気られたと語る。
2.妻・明里(旧姓・館石) (33)2年前に源氏と結婚。
少し茶色の髪の毛で長髪、年齢にしては幼顔、赤目がかっているのが特徴。
何故か、夜になると出かける。仕事はしていない。朝帰りの痕跡もある。「友達の家に泊まった」とか。
友人との旅行が多い。しかし記念撮影などの物的証拠が無い。何故か旅館の灰皿とかお土産ペナント。
結婚指輪を発見してから浮気している可能性が高いと茂雄は判断。
性格は行動的だが、良妻である。
絶対中を見せてもらえない大きな箱があることも発見。ただ、彼女は何かを隠して結婚しているという。
子供は居ないし、彼女には身よりはない。
友人はかなり居るようだ。


1.いるときはいるけど…あのナマモノ(シュラインさん談)
御影蓮也は謎の生物、かわうそ?がよくこの草間興信所にいると聞いてやってきたときに、依頼のことを(未だに、立て付けの悪い)ドアから聞いてしまった。
「仕事を引き受けるのか…?」
足下には紅い猫と女の子が睨んで立ちふさがっている。女の子の方はどう見ても座敷童子だ。
「お仕事のお話し中!今は立ち入り禁止!」
「にゃ!」
「おいおい、待ってくれよ…あのさ…」
と言いかける蓮也だが、依頼人らしき男がドアを開けてそのまま去っていった。
「あ、一寸…いたー!」
蓮也が彼を止めようとするのだが、女の子が彼の弁慶の泣き所を思いっきり蹴ったので止められなかった。
痛みが少し治まってから蓮也は怒鳴る。
「何すんだ!おまえ!」
「依頼人に対して失礼なの!」
座敷童子はぷんぷんと怒っている。
「子供とかがしゃしゃり出て良いモノではないの」
「子供って、お前も…いや…いい」
零が電話で助けを求めていることに気が付いたので、この座敷童子と言い合いする気にはなれなかった。
一息ついたのか、一度を電話おろした零を見て、
「あの、すみません。俺、御影蓮也って言うのだけど…話聞いちゃって…お手伝いしましょうか?」
と、言う蓮也だった。

電話で駆けつけたのは、シュライン・エマ、宮小路皇騎、四方峰恵だった。
シュラインは、電話を聞いてからすぐに駆けつける。皇騎は、零の半泣き声で負けたらしい。四方峰恵は、この零の初仕事にわくわくしながらやる気満々でいた。
「よしよし、零ちゃん泣かないの」
とシュラインが零を慰める。
座敷童子の五月に止められた蓮也は何か不満な顔をしている。しかし、
「いきなり、依頼主に色々聞くというのは失礼、助手としての身分を得てから、そして重要なのは、草間興信所は肝心の所長、草間武彦がいない。零はあくまで受付嬢であること」
と言われて納得するしかなかった。
焔と五月は仕事中、玄関先でいきなり来る怪奇事件を依頼する客や興信所の常連をいったん止めておく役割(?)を担っている。丁度シュラインがいれば、彼女は応接室で他の客などの対応するのだが。
蓮也がかわうそ?目当てで此処を訪ねたそうだが、
「あのナマモノ目当て…ね。確かに良く来るけど、此処で飼ってないわよ」
かわうそ?を知るシュラインは蓮也に説明した。
「あ、そうなのですか…」
とがっかりする蓮也。
「では話は、依頼についてどうするかにしましょう」
と、皇騎が、話を切り出す。
「皆さんお願いします」
「でも、最終的には零さん、あなたが全てのレポートをまとめなきゃいけませんからね」
「はい、頑張ります!」
握り拳で意気込む零。
「よしっ!あたしも全面的に手伝うよ!」
と恵は零の拳を握って励ました。


2.情報収集からですね(零ちゃん談)
「ええと、まずは基本的な情報収集面でサポートしなくちゃ」
サラサラとホワイトボードに今分かる情報を書いていくシュライン。まるで警察署捜査一課の様な雰囲気に。
「まず、馴れ初めを詳しく聞いて…ってかなり惚気られたそうだけど、もう一度しっかり聞かなきゃ。後奥様の写真も手に入れないと」
と、ペンを置いて腕を組んで考えるシュライン。その隣で必死にメモを取っている零がいた。
「あたしは一度依頼人に会ってみるわ。随時連絡入れるから」
と、シュラインは言った。
「そうですね、私は別方面で調べますね、」
皇騎は、自分の家の「力」で情報収集を試みることをいう。
「かなり秘密がいっぱいだ。私は暫く待機して、零ちゃんと交友関係調べてみるね!」
恵は元気に答える。
「俺は…依頼人に色々聞きたいけどさ…」
蓮也が手をあげて言うのだが、
「済みません…。この場合、子供が助手だと…相手も困るかもです。もちろん私が顔を出しても驚きますし。ここは大学生以上の方が相応しいです」
零が蓮也に意見を述べた。零は幾ら霊鬼兵で長寿でも、外見年齢は16〜17程度の少女なのだ。
「う…じゃあ俺も奥さんの交友関係か…」
かわうそ?には会えないし、助手でも行動が規制されるのでがっかりする蓮也だった。
確かに18歳、しかも学生だと興信所の品位に関わってしまうだろう(時既に遅いというのもあるが)。
「でも、多少年相応に見られなくても良いわ。蓮也君は何か言いたそうだし、あたしと一緒にいく?」
とシュラインが助け船。言い訳は幾らでもある。
「はい!ありがとうございます」
「今は普通の素行調査という線で調べた方が良いわね。「あの手」という危険性はあるだろうけど」
シュラインはぽつりと言う。
怪奇探偵と異名がある草間武彦、しかし今回の依頼人はその異名を知らないらしい。
「しかし、相場の3倍出すって…ホント怪しいと思っているんだ…怪しい箱とか」
と、不安げに恵が呟いた。
「紅い目…大きな箱…容姿からして夜の眷属じゃなきゃ良いけど」
蓮也もぽつりと言う。
雰囲気が少し暗くなった。

五月が気まずい雰囲気を読みとったのか、珈琲を皆に差し出してくれた。
「すぴとお留守番する。みんな頑張ってください」
と、にこやかに彼女は言った。
五月の淹れた珈琲は、皆不安を軽くし、頭をさえさせてくれるほど美味しかった。
「上手くなったね、五月ちゃん」
「えへへ〜」


3.本当に愛しているんだ(蓮也くん談)
シュラインとれ蓮也は、源茂雄の家に向かう。詳しく馴れ初めを聞くことと何とか写真を手に入れる事であった。
大きな家ではないモノの高級感はある家だ。
シュラインがインターホンを押し、
「草間興信所のモノですが、詳しくお話しを聞きに参りました」
と言う。
「良く来てくれた。暫く待ってくれ」
男の声が聞こえる。
出てきたのは茂雄本人で、2人を見て少し驚きはしたモノの、中に入れてくれる。
妻である明里はまだ旅行中だそうだ。
「引き受けてくれてありがとう。で、何を聞きたいのかな?」
と、訊いてきた。
「まずは今の奥様との馴れ初めを詳しくお聞きしたいのですが」
とシュラインが言う。
「妻と出会ったのは2年前だ。ひき逃げを一緒に目撃し、警察や救急車を呼んでいたのが縁だよ。現場検証や事情聴取などに呼び出されたりしている事が良くあったので、最初は同じ境遇に置かれたので、今後どうするか話し合っていたのだ。事件は解決した。それからつきあい始めて、彼女の魅力に惹かれたのだ」
「その後プロポーズを」
「そうだな、彼女は喜んでくれたよ。家事も上手だし一緒に旅行も行ったし…」
と延々惚気話が続いた…。
シュラインと蓮也は話を切り替えようと思ったときに彼は気が付いて、
「おっと失礼、そう言う話ではなかった。明里のことになると…つい」
謝る。
「あの、奥様の写真はおありでしょうか?」
「ああ、あるのはあるが。明里は何故か友人との旅行に出かける時は一切写真を撮らないのだよ」
つい最近の写真はないか本棚を調べる茂雄。
「おお、あった、あった。阿蘇山に遊びにいたときのモノが」
と、アルバムを見せてくれた。
どう見ても仲むつまじい夫婦の写真だ。
彼女1人の写真が数枚あり、赤みがかった瞳に茶色の髪の毛、なにやら珍しい首飾りなどをしている。
「この首飾りは?」
「明里はどうしてもこの旅行の時、これを身につけないと言って聞かなかった事は覚えている。が…当時深くは訊かなかったな。お守りか何かではと思って気にはしなかったんだ」
「大きな箱を見つけたそうですがどれぐらいの大きさだったのですか?」
と、蓮也が訊ねる。
「旅行の時に持って行ってないが、B4程の黒いアルミ製アタッシュケースの様な物だ。訊ねるといきなり怒り出して、開けてはダメと言われてな…」
茂雄は答えた。
「結婚指輪についてですが?」
シュラインが指輪のことを訊くと、彼はいきなり悲しい表情になり
「其れなんだが…寝室にあるテーブルの引き出しに入っていて…」
とうとう、泣き始めた。
「浮気しているんだ…私より…」
「落ち着いて下さい」
落ち込み度合いが激しい男だと思う蓮也。
やっと彼が落ち着いたあと、彼女の前の仕事は何かや友人関係、いつ頃旅行から戻ってくるか等を聞き出し、写真を携帯から撮り、皆にメールで送った。
「頼む…本当に頼む」
と、茂雄は頭を下げた。
家を去るとき、蓮也がこう言った。
「最後にあなたの奥さんへの想い、何があっても忘れないでください。お願いします」
と。


4.友達100人?(恵さん談)
メールで写真とシュライン達から訊いた交友関係リストを元に、聞き出しを開始する零と恵。
「すごい量だね〜」
此処まで友人が多いとは思えない。100人前後というリスト。中には昔の仕事先の同僚や取引先もあるのだろうか?
「よーし、皆で手分けして聞き出すぞー」
「はい!」
「私はそのリストを家で調べるために戻りますね」
「了解」
皇騎は一度興信所を出て、恵とシュライン、蓮也と零は、電話確認を取り始めた。
確かに、勤め先の同僚上司のほか取引先なども含まれていたので、後の皇騎の情報と照らし合わせたあと、今でもつきあいがある友人は15人ほどに絞り込めた。ほとんど旅行仲間や昔からつきあいのある友人だった。
「うっはー、多いねぇ」
恵はそれでも驚いた。ママさんバレーなり球技クラブが出来るほどではないか。
「このうち、3人は旅行中らしく連絡が付かないですね…もう便利な時代なのに、携帯電話も持っていらっしゃらないというのも」
「持っていない人は結構いるかもよ」
色々な事情などで(機械音痴、医療機器を付けている等)携帯を持たない人はいるものだ。
シュラインの携帯が鳴る、皇騎からだ。
「もしもし、あら宮小路くん」
[少し、気になることがありました。首飾りのことです]
「どういう事?」
[おそらく、彼女は何らかの特殊な宗教に属しているのではないかと]
「カルト?」
[俗に言われるカルトではないのです。秘密結社的な魔女宗の一派のようですね。戒律が厳しいと聞きますから]
「それは困ったわね…」
[一度そちらに向かいます]
皇騎は自宅にて、首飾りに刻まれた小さな魔術文字が気になっていた。
そして、様々な手段でその特徴的な魔術文字を使う場所を突き止め驚く。
「これは魔女宗?」
たしか、魔女宗のほとんどは排他的であるが、土地神や精霊を崇拝する隠れた宗教だと聞いている。過去のキリスト教の弾圧を受け、性魔術などの黒魔術的扱いを受けるが、実は純粋なシャーマニズム精神のものである事が多い。
ただ、戒律が厳しいために夫には言えないのか、もし言うときは、その者にも信者になって貰うしかないのだろうか。
指輪との関連、箱についても今の情報では分からない。

皇騎が興信所に戻ってきた後、どうするか話を始めた。
「魔女宗…結婚前の近所を当たりましょうか?ヒョッとするとその地域で何か分かるかも」
「二手に分かれるわけですか?」
シュラインの言葉に零が訊く。シュラインはコクリと頷く。
「私は館石家の家系を調べます」
「あたしが結婚前の近辺を当たってみるけど零ちゃんも来る?」
「はい」
零の言葉に零は頷いた。
「私たちはもう少し交友関係を調べてみる!」
恵は、再度、勤め先などに聞き込みするそうだ
「夜の眷属じゃなく、宗教問題…複雑だな」
蓮也は少し安堵したが、別の問題で悩む。其れは他の協力者もそうだろう。
全般的に信心深くない日本人にとって、宗教というのは敬遠するものだ。下手をすれば狂信カルトや金儲けだけの集団に捕まるし、人間関係にもヒビが入りやすい事柄だからだ。


5.悪い人では無いようですね(皇騎くん談)
皇騎とシュラインが向かった先は、長屋だった。
「私も聞き込みをします!」
と零が言う。もちろん握り拳であった。
まず零が聞き込みを開始する。
シュラインはじっくり彼女にアドバイスするように
「ああ、明里ちゃんのことかい。良い娘だよ」
近所付き合いのあった老婆が答えてくれた。
「此処に彼女が住んでおられたとき、外出など多かったですか?」
「ええ、そりゃ昼普通に事務員をして、夕方には良く出かけたよ。私も旅行に呼ばれたこともあったさ」
「呼ばれた?」
「でも、断ってしまった。残念がっていたねぇ」
「そうですか」
あまり手がかりはなかったように見えた。
皇騎は、近辺を霊視する。かなり昔のことだから何とも言えないが僅かな手がかりが必要だった。
「これは凄い…」
何と、普通なら霊の混沌した区域が出来るはずなのに、何かの術が施されており霊脈、地脈などの力の流れが安定している。もちろん自爆霊などの悪意ある存在もいない。
「シュラインさん、零さん、この区域は魔術によって霊的な安定性を保ってますよ」
「では明里さんが夜に出かけるというのは…」
「結界を定期的に見ていることではないでしょうか?」
丁度その時皇騎の電話が鳴る。
「はい、もしもし え?そうですか!ありがとうございます」
「どうしたの?」
「館石家を調べて貰ってたんですけど、館石家は実は昔イギリスに1世代ほど住んでいたことがあります。そこで何かの組織に入ったと言うことも分かりました」
「かなり魔女宗との繋がりが濃くなってきたわね」
「難しい問題ですよね…」
「ですね…秘密ごとにしなきゃ行けないなんて…」
3人は結界の印を見つけて考えていた。

一方恵と蓮也は、元勤め先の元同僚と話をしていた。
「え?良く旅行行く所って、イギリスなの?」
驚く2人。
「何でも、両親の墓が其処にあるからって」
「墓参りも兼ねての旅行…」
「他にも何かやっているけど、私には分からないことだったし彼女も何も言わなかったからね。それ以外なら楽しくやっていたわ。だって有名小説の舞台に直に足を踏み込むのってわくわくしない?」
「確かにそうだよね」
同意する恵。
「それに、彼女と一緒にいたら予定通りに旅行出来るし、一寸したトラブルもすぐに解決するし、大きな事故に遭わないの。ラッキーガールなのよ」
―術を使っているのかな(蓮也の心の声)


6.尾行
茂雄から明里が戻って来たとの連絡が入る。
「夜に出かけたら尾行開始ですね!」
「おー」
意気込む零と恵。
蓮也が短冊に何かを書いて皆に渡す。
「何これ?」
「穏業の札っていうんだ。それを身体に貼れば隠れ身の術が出来るよ」
「便利〜」
「ありがとうございます」
零がぺこりと頭を下げる。
「じゃ、明里さんが出かけたと連絡が入れば行動開始よ。既に皇騎君と五月ちゃん、焔ちゃんが向こうにいるみたいだけど」
シュラインが言うと蓮也がビックリした。
「いつの間にか助手だったのですか?あの座敷童子と猫?」
と、訊く。
「そうよ、(一応)立派な興信所の助手なの」
苦笑するシュラインさんだった。

明里が出かけたと言う連絡が入り、まず皇騎チームが動く。そして、残る全員がある地点で合流する事にした。
明里は大きな箱をキャリーに乗せ、其れを引きながら夜道を歩いている。
こう言うときに野良猫のフリをして近寄っている焔。
五月は妖気で分かるので皇騎にくっついている。

無事合流し、そのまま彼女を尾行する。
明里は、あの長屋に近い地区に建っている小さな洋館に入っていった。
「目立つ感じがしないですね」
「やはり術で違和感なくしているのかしら」
「にゃー」
零の頭に乗っている猫が鳴く。
「中に入る?」
蓮也が皆に訊くが、
「待っていた方が良いと思います。そして出てきたときに話し合った方が良いと」
零はそう答えた。
中に入り込んで、儀式を邪魔し最悪な状態になるより良き選択である。


7.話し合い
集会が終わったらしく、洋館から人々が去っていく。
「お疲れ様」
など、和気藹々とした別れ方をしている。
皇騎が、明里を見つけると彼女の元に駆け寄った。
「あ、皇騎さん!」
零の制止も間に合わなかった。
「源明里さんですね」
「はい…なにか?」
「込み入った話をしたいので、出来れば…」
と、話をしているときに、洋館の玄関から老婆が出てきた。
「何事じゃ?明里様」
「司祭様…」
「あ、あなたは!」
「あ…あんたは」
老婆はあの、長屋に住んでいる老婆だったのだ。
「んー困ったわね」
様子を見て不安になっているシュラインだった。

結局、洋館内に全員が集まり、事情を話す零。
其れで明里も老婆が項垂れた。
「はやり、早く言うべきでした…しかし、戒律で」
魔女宗でも精霊崇拝の信仰団体であり、予知術、厄除けなどの儀式を行い、土地神、先祖精霊を敬うのだという。ただ、元がイギリスの失われた宗教でもあるため、その大きな戒律、宗派を知られてはならないという事なのだ。黒い箱はその儀式用具(アサメイやキャンドル、テーブル、水晶球、儀式衣装)なのだという。
「うーん困ったものですね」
皇騎が頭を悩ます。
「指輪を外したことは?」
とシュラインは訊ねると、明里は、
「このしばらくの儀式期間は結婚指輪などをはめることを禁じられているのです。あの方が其れで傷ついてしまったのなら…本当に…」
と、ぽつりと訳を話した。
結局の所、この平和的な信仰団体でありながら、悲しい歴史のため隠れて行動しなければならない事だけが露わになるだけだった。
暫く沈黙する。
その沈黙を破ったのは蓮也だった。
「考えてみたら、秘密裏にする事って昔弾圧が受けた時期の事と思う。再起するために付け足された事と思うんだけどさ。変な言い方だけど、悪い事していないのに、この事で分かれるなんて悲しいし、両方が納得いく方法で収めたいと思う。ウソはいつかバレ、隠した時間が長いほどどちらも傷つくものだから」
「確かにそうだと思うな〜私も」
恵も蓮也に同意した。
「一度ゆっくり話し合ってみたらどうでしょうか?」
零が、明里に訊く。
彼女は黙したままだが、シュラインが
「明里さん、この際旦那様に正直におはなしした方が良いわよ」
という。
「そうですね…ご迷惑かけて済みませんでした」
彼女は深々と頭を下げた。


8.その後
事の事情を彼女が夫に話すと、隠し事をしていたことで怒りはしたが、彼女を許したという。出かけるときはその旨を伝えるか、どんなものか理解したいと言うらしい。また、皇騎が茂雄に神経質になり過ぎだと厳重注意したそうだ。皇騎の性格の表れである。
皆が懸念していた、離婚などになら無かったことと、報酬も約束通り払ってくれた。

しかし、零は、この経緯を書き記すレポートに追われ、頑張りすぎたのか周りの霊気が枯渇して大事になるというトラブルもあったが何とか出来上がったそうだ。
とシュライン達が純真の霊木の所まで連れて彼女を暫く休憩させた。
「レポート書くことで頑張りすぎよ…零ちゃん」
「すみません、兄さん頑張っていたのですね」
「そうかしら…結構ずぼらと思うけど…」
苦笑するシュラインだった。


―ともあれお疲れ様、零ちゃん。


End

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0086 シュライン・エマ 26 女 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【0461 宮小路・皇騎 20 男 大学生(財閥御曹司・陰陽師)】
【2170 四方峰・恵 22 女 大学生】
【2276 御影・蓮也 18 男 高校生 概念操者】

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■         ライター通信          ■
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滝照直樹です。

『はじめての仕事(?)素行調査です。』に参加して下さりありがとうございます。
秘密結社のように活動するしかなかった、宗教団体のメンバーでした。

四方峰様初参加ありがとうございます。

では、機会があれば宜しくお願いします。

滝照直樹拝