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妖精さんいらっしゃい♪〜クリスマスVer
十二月二十五日が間近に迫った商店街。
通りは、色鮮やかなランプや装飾で彩られていた。
商店街の一角には小さな広場。その真ん中にはクリスマスツリー。
道の端にあるスピーカーから絶え間なく流れてくるのは明るく楽しいクリスマスソングだ。
賑やかな通りを歩く人々の様子も、心なしか浮かれているように見えた。
藤宮蓮は、たいした目的があるわけでもなくぶらぶらと商店街を歩いていた。
世の中クリスマス一色で、実を言えば蓮も夕方には約束があるのだが、陽も高いこの時間は特にするべき事もなく、暇だったのだ。
「ん、なんだ‥‥?」
通りすぎようとした一角でなにやら騒ぎの音を聞きつけ、蓮はふいと足を止めた。
見れば、そこには異様な光景が。
「‥‥‥」
広場のツリーのてっぺんに、サンタの帽子。まあそのくらいなら風で飛んだんだろうとも思える――星にきっちりかぶせてあるのに風でというのも納得がたいものがあるが。
しかしそこにあったのはサンタの帽子だけではなかった。よほどの突風が吹かなければ飛ばされないだろうオモチャや店先のディスプレイなんかが、ツリーの上方部に綺麗に飾り立てられていたのだ。
「なんかのイベントか?」
最初はそう思った蓮であったが、集まっている野次馬が話している内容から、どうやらそうではないらしいことが判明した。
風も吹いていないのに、品物が勝手に宙を浮いてツリーのところに行ってしまったのだという。
全長五メートルもある大きなツリーだ。取るに取れずに立ち往生している被害者もいた。
「ちょっと、待って〜っ!」
他の被害者だろうか?
しかしどこかで聞いたような声だが‥‥。
そう思って振り返った先にいたのは、桜木愛華。学校のクラスメイトだ。
「よぉ、愛華。こんな日まで店の手伝いかよ。一人身は寂しいなぁ」
「あ〜っちょうどいいところにっ! 蓮くんも捕まえるの手伝ってよぉっ。今度お店で珈琲おごるからさっ」
「は?」
愛華の指差す先を見る。
何もいない。
「妖精さんたちが、なんかいろいろイタズラしてるみたいなの。早く止めないと」
「はあ? んなめんどくせぇことできるかよ」
そこまで言って、蓮はにやりと悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「まぁ、今夜そのメイド服姿で奉仕してくれるってんなら話は別だけどよ?」
愛華が、ぎっと連を睨みつける。
「冗談だよ、んな怖い顔すんなよ。誰がお前みたいなお子ちゃま相手にするかよ。・・・まぁ、ちょっと退屈してたし手伝ってやっか」
こうして二人は、妖精を捕まえるべく商店街を駆け出したのであった。
妖精さんたちの気配を追いかけて辿り着いた先には、同じように妖精の悪戯を止めるべくやってきた者たちが集っていた。
まあ、同じ目的で同じ相手を追いかけていれば最終的に合流してしまうのは当然のことだろう。
集ったのは桜木愛華、藤宮蓮、鹿沼・デルフェス、シュライン・エマ、巽千霞の五人である。
ちなみに妖精たちは、シュラインの用意したケーキを食べつつ楽しそうに談笑している。ケーキにつられたのか、話せる相手がいたからなのか‥‥妖精たちは、あんがいあっさりと、あっけなく捕獲されてくれたのだ。
「良かったですわ。もしあんまり悪戯を繰り返すようでしたら、多少手荒でも止める方を優先させなければと思っていたんですの」
心からほっとしたように微笑んで、デルフェスが呟いた。
「それで、二人はどうしたいのかしら?」
シュラインは、前もって用意していた人形サイズの服を妖精コンビに着せてあげてから、そう問いかけた。
「くりすますなのっ!」
「パーティなのぉっ♪」
「つりぃなのっ!」
「遊ぶの〜〜〜〜〜〜っ!!」
プレゼントを貰って上機嫌の二人は、にこにこと満面の笑みで元気にくるんっと宙を踊った。
「そっかあ、なら、うちでパーティやろっか♪」
「突然お邪魔してしまって、大丈夫なんですか?」
デルフェスの問いに、愛華はにっこりと笑う。
「だいじょーぶっ。愛華のうちはお店やってるから、ちょっとくらい大人数が来てもなんとかなるよ」
そんな会話の横で、宙を舞う様子を眺めていたシュラインが、手持ちの袋からスプレー缶を一つ取り出す。
「そうそう、こんなの持って来たんだけど、どう?」
妖精たちがひゅっとシュラインの元に降りる。
じーっと見つめて、それから。
「これなあに?」
「キラキラ光るスプレーよ。これで飛んだらきっと綺麗じゃないかなって思ってつい買っちゃったのよ」
「へぇ、面白いもんがあるんだな」
女性同士の会話に入っていけなかったらしい蓮は、横目でその様子を眺めて呟いた。
妖精たちはといえば、思いきり、ノリ気である。
「やるやるーっ」
「可愛いの、綺麗なの」
「好き〜♪」
きゃらきゃらと笑いながら、スプレーを持ち出して、押す。
「うわあっ!?」
‥‥確かに目標である妖精コンビもスプレーを浴びたが、その直線上にいた蓮までも。運悪くというか、スプレーを浴びてキラキラになってしまった。
「蓮くんも可愛いよっ♪」
「そういう問題じゃねぇだろ」
「‥‥いつまでも外で話していると風邪をひいてしまいますし、そろそろ移動しませんか?」
ツリー用のミニサイズの木を抱えた千霞が、おっとりと提案する。
「あ、そうだった。うん」
愛華の案内で、一行は喫茶店CureCafeへと移動したのであった。
CureCafeの一角は花が咲いたようという言葉がぴったりの、賑やかな雰囲気に彩られていた。
その中心となってるのは妖精コンビ。
千霞が持って来たツリーに飾りをつけるのが楽しくて仕方がないようなのだ。
「でも、妖精さんたちも飾りみたいですよね」
キラキラと光る身体であっちにこっちに飛びまわる様は、デルフェスの言う通り。まるで妖精たち自身がツリーの飾りのようであった。
「楽しんでくれたみたいで、よかったです」
千霞がにっこりと笑ったその時。
「お待たせしました〜っ」
全員分――どころか少し余るんじゃないかというホールケーキを持って、愛華がテーブルにやってきた。
「はい、蓮くんもどうぞ♪」
やはり女性の中に男性一人――同年齢の女子相手ならともかく、年上ばかりの中では多少の居心地の悪さも感じていたらしい。
愛華が声をかけると、なんとなくほっとした様子で愛華が差し出した珈琲を受け取った。
「ったく、なんであんな騒ぎ起こしたんだ、おまえら」
不機嫌そうに妖精たちに聞くと、妖精コンビはむすっと頬を膨らませた。
「話しかけたの〜」
「遊ぼうって行ったの〜」
「気付いて貰えなかったのっ!」
最後の一言は二人ぴったり同じタイミングで。ムーっと答えた二人に、一行は苦笑した。
「まあ、その気持ちもわからなくはねぇけど‥‥」
「そっか、寂しかったね。でもだからって悪戯なんかしちゃだめだよ」
「そうね。広場のツリーは皆の物だし、ある意味ウェルとテクスの物でもあるんだから、あんまり暴れて混乱させないでね」
蓮、愛華、シュラインの言葉を妖精は真剣な表情で聞いて、
「はいなの〜っ★」
明るく言って頷いた。
が、本当にわかってくれたのかどうかはなんとも謎である。
そして。
陽もとっぷり暮れた夜に、妖精たちのためのクリスマスパーティは終わりをむかえた。
一行が帰ったのち、CureCafeには愛華と蓮の二人が残っていた。
「蓮くん、帰らなくて良いの?」
愛華の問いに、連はわざとらしいため息をついた。
「‥‥俺は綺麗なおねえちゃんとデートの約束があったんだけどな」
そう言いながらも、蓮は本気でそんなことを思っていたわけではない。
「ふふ♪ こんなクリスマスパーティーも、悪くないでしょ。ねっ蓮くん」
愛華もそれに気付いてのか、言って可愛らしい微笑を浮かべて見せた。
「そうだなあ‥‥別に、本命の恋人じゃねぇしな」
そこまで言って、連はニッと不敵な笑みを浮かべた。
愛華はからかいがいがあって面白い――その愛華をからかう時に、よく見せる笑みである。
「その代わり、手伝った褒美にこれくらいはさせろよ」
すっと愛華を引き寄せた連は、愛華の頬に軽いキスをした。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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整理番号|PC名|性別|年齢|職業
2155|桜木愛華|女|17|高校生・ウェイトレス
2359|藤宮蓮 |男|17|高校生
2181|鹿沼・デルフェス|女|463|アンティークショップ・レンの店員
0086|シュライン・エマ|女|26|翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
2086|巽千霞 |女|21|大学生
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■ ライター通信 ■
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こんにちは、日向 葵です。
さて、クリスマスはいかがお過ごしでしょうか?
妖精さんたちのクリスマスも一緒に楽しんで頂けていれば幸いです。
>蓮さん
はじめまして、こんにちわ。
この度はご参加ありがとうございました。
女性の中に男性一人‥‥お疲れさまでした(笑)
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