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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ポケットの中には・・・

1.発端
♪ポケットの中にはビスケットがひとつ〜
 ポケットを叩くとビスケットはふたつ〜♪

「・・・割れただけだろうが・・・」
零が口ずさむ童謡に、草間武彦は大人視点で突っ込みを入れた。
「・・兄さん、それではあまりにも夢がありません・・・」
水を差された零は困った顔をして溜息をついた。
と、突然大音量のブザーが鳴った。
「はいはーい!」
零はバタバタと扉を開けにいった。
「小包です。受け取りの判子を」
「ご苦労様です」
零が手際よく配達員とやり取りをし、小包は草間の前へと運ばれた。
「『全国草間武彦ファンの会』からか・・・」
「また怪しげなものなんでしょうか・・・?」
ごそごそと草間は小包を開けた。
中からはなにやら大きな布が出てきた。
その布からひらりと紙が落ちた。零はそれを拾い読んでみた。
「兄さん・・先ほどの歌に出てきた様な不思議なポケットらしいですよ?これ。中に物を入れて叩くと2つになるって書いて・・・あぁ!?」
ざっと目を通し、草間に目を向けた零は驚いた。
「兄さん!得体の知れないポケットの中に入っちゃだめじゃないですか!!」
「出られん・・」

「・・・えぇ!?」


2.叩く
功刀渉(くぬぎあゆむ)はフムっと考え込んだが、目は興味津々といった感じで輝いていた。
「何とかしてください〜・・」
「任せておくがよい。ポケットの中に草間殿が一人・・では叩けば二人になるのじゃろう?」
ポケットの中から出られない草間の傍に屈みこんでいた本郷源(ほんごうみなと)はその愛らしい容姿からは想像できないような悪戯な笑みをこぼした。
「そ、それは・・・」
零がアワワと源を止めようとしたが、時すでに遅し。
ペシッと草間の頭らしい部分が源によって叩かれていた。
「あ!?」
その場に居合わせた三人が驚嘆の声を出した。
ポケットの大きさは変わらないが明らかに頭部と思われるでっぱりが増えている。
「お邪魔いたします」
と、その時草間興信所に誰かが入ってきた。
「まぁ、何をしておられるのですか?」
海原(うなばら)みそのは黒い毛皮のコートを羽織り、片手になにやら包みを持って不思議そうに近づいてきた。
「じ、じ・・実は・・」
「草間探偵が『叩くと増える不思議なポケット』なるものに入って出られないと零さんはおっしゃっておられます」
功刀が動揺の隠しきれない零に変わり、みそのにそう説明した。
みそのはしばし考えると「ずるいです」と一言つぶやいた。
「零様、これお土産の海草の盛り合わせです」
「あ、ありがとうございます」
「では、失礼して・・・」
と、何を思ったかみそのは着ていた黒いコートを脱いだ。
「ほぅ」「これはこれは」「きゃあ!」
みそののコートの下は黒のビキニ水着だけだった。
「わたくしもポケットの中に入らせていただきます」
「あ、ちょっと・・」
功刀が引きとめた。
「ついでにこのチケットを持って行ってくれないかな?」
「面白そうじゃのう。零殿。ビスケットはあるか?ついでに持って入ってもらおうではないか」
「えええぇぇぇ〜・・・」
中に入るみそのとそれを見守る功刀、源、零。
みそのが中に入るのを確認すると零が止める間もなく功刀と源は「手が滑った」「わ、わしの意思とは勝手に手が〜」などと言いつつ、ポケットを叩いたのであった・・・。


3.ミニ
「おーす草間、なんかいいネタねーかー・・・」
たまたま現れた佐久間啓(さくまけい)はそれ以上のことを口にできなかった。
「うぅ。佐久間さーん・・・」
泣き顔の零と功刀渉、本郷源の姿。そして・・・。
「ちくしょー!」「おまえたち、なんてことしやがる!」「腹減ったぞー!」
口々に何やら喚きたてるチビ草間武彦の群れ。
「まぁ」「どうしましょう?」「困りました・・・」
こちらも口々に何やら呟く海原みそのの姿・・・。
「ぎゃはははは!チビだっ!チビ草間だ!なんじゃこりゃ!」
佐久間は噴き出した。
『笑うな!』
チビ草間が一斉に佐久間に向かって吼え特攻していく。
佐久間はチビ草間軍団に頭をよじ登られたり、顔をつねられたり、噛み付かれたりしながらも笑うことをやめなかった。
「これは・・・何と言うか予想外でしたね。これじゃ1人持ち帰ったとしても味見もできない・・」
「あ・・味見??」
功刀の独り言に零が汗をかいた。
こやつ・・食人趣味か?源はそう思ったがまぁ、人間色々だからのぅと自分を納得させた。
「いや、冗談です。にしても、小さくなっても草間探偵の性格自体は変わっていないようですね」
「そうじゃのう。そちらのみその殿も特に小さくなった以外は変わっておられぬようだし」
「でも、やはりこのように小さく多人数になったままでは少々支障がでます・・・」
口々に事態収拾に向けての話し合いが進もうとしている後ろでは、佐久間がチビ草間が吸おうとしていたタバコを奪い小競り合いを起こしていた。
「僕にはそういった能力がないですから、せめて論理的にポケットを裏返して入れて叩いてみるというのはどうでしょう?」
「また叩くのか?今日はほんに面白い日じゃのう」
源はうきうきしてきた。
これほど大義名分をもって草間を叩く日がこようとは夢にも思っていなかった。
「では小さくなった草間様をとりあえず2人ほど入れて試してみましょう」
そういうと源と零がチビ草間軍団を取り押さえに掛かった。
そんな中、佐久間は先ほどみそのが持って入ったビスケットを密かに草間軍団に餌付けしていた・・・。


4.元通り?
裏返されたポケットにチビ草間が2人ほど放りこまれた。
「さて、やるかのう。これも草間殿のためじゃ」
にやりと源の目が笑った。
「微力ながら協力します」
功刀があたかも興味のなさそうにしつつ腕まくりをした。
「俺も協力するぜ〜」
佐久間が指をぽきぽきと鳴らす。
「あの・・あの・・手加減してくださいね・・・?」
零がオロオロと手を祈りの形にして懇願した。
「わかっておる」「できる限り」「努力はするけどな」
三人の言葉が零にはどうにも空々しく聞こえる。
「ではやるぞ!」
ぺしぺしぺし!ばしばしばし!!がすがすがすっ!!!
「ああ・・・」零は目を覆った。
「さて、見てみましょうか」
功刀がポケットをめくった。
中には文字通り袋叩きに遭いノックアウトされ伸びきったチビ草間が2人・・。
「失敗みてぇだな・・・」
「やはり無理でしたか・・・」
「むむむ・・そうすると・・・」
伸びたチビ草間を取り囲み、3人が顔を見合わせる。
「本当に困りましたね・・」
三人の後ろからみそのの声が聞こえた。
源が違和感を覚え、後ろを振り向く。
すると、そこには一番最初に見たあの黒のビキニの等身大みそのが1人立っていた。
「・・・」
「・・・」
「最近の子は大胆だねぇ・・・」
1人ずれた発言をした者もいたが問題はそこではなく、みそのがどうやって元の姿に戻ったかである。
「どうやって元に戻ったんですか!?」
零がみそのにキラキラと希望の光を向けた。


5.大団円
「時間の流れを少し元に戻しました」とみそのは言った。
つまりそれを使えば草間も元に戻るわけである。
「お願いします、みそのさん!」
零がキラキラとした瞳をみそのに向け哀願した。
「他ならぬ零様の頼みですから。ですが、草間様を全部集めていただかないことには・・・」
みそのがそう言うと源と佐久間の目が光った。
「よぉし!どんな手を使ってもひっとらえるのじゃ!」
「おっしゃ!!」
逃げ惑うチビ草間軍団は意外にすばしっこく逃げ回る。
机の下、ソファの中、果ては書類の中にまで入り込む。
まるでゴキブリ並だ。
だが、源と佐久間の連係プレイによって捕獲してはポケットへと放り込んでいった。
「ぜ、全部捕まえたぞ・・・」
「チョロチョロとしよって・・少々息が切れたわ」
佐久間と源がぜぃぜぃと息をついてそう言った。
「ご苦労様です。では、草間様の時間の流れを少し元に戻します」
みそのが目を瞑り精神を集中させた。
ポケットに詰められたチビ草間軍団が何やら騒いでいたが、次第にその頭数が減っていき最後にはひとつになった。
「・・戻ったのでしょうか?」
零が息を呑んだ。
功刀がポケットをめくった。
「大丈夫、気を失ってはいますが元に戻っていますよ」
「すごいのぅ、みその殿は」
源が心底感心したようにみそのを見た。
「大したことはしておりません」
みそのは特に謙遜した風でもなく、さらりと言った。
「さーて、草間が目覚めないうちに俺はとっとと退散するか」
佐久間がそう言うと功刀と源も後に続くように立ち上がった。
「僕もそろそろ引き上げましょう。僕のするべきことはもうないでしょうし」
「わしもそろそろおでん屋を開かねばならんのでな。おいとまさせていただこうかの」
草間が目覚めたとき、袋叩きの目にあわせたことをどう問い詰められるかを考えるよりも逃げたほうが早い。
それにおでん屋の開店時間も確かに押し迫ってきていた。
今日はお客にいい話の種ができた。
源はホクホクと草間興信所を後にした。

かくして、草間興信所で起こった草間武彦分裂事件は解決した。
だが、実は問題を起こしたポケットはまだ草間興信所に存在している・・・。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

2346  / 功刀・渉  / 男 / 29 / 建築家:交渉屋

1108 / 本郷・源 / 女 / 6 / オーナー 小学生 獣人

1643 / 佐久間・啓 / 男 / 32 / スポーツ新聞記者

1388 / 海原・みその / 女 / 13 / 深淵の巫女

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■         ライター通信          ■
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本郷源様

初めまして、とーいと申します。
この度は『ポケットの中には・・・』へのご参加ありがとうございました。
今回ご参加いただいた皆様全員が遊び倒すことをご所望しておられ、こちらとしても大変楽しく書かせていただきました。
ほのぼの系・・というかコメディ!?といった感じになりました。
源様のプレイング、できれば全部再現したかった・・・と思うほど強烈でした。
いえ、私的にものすごく好みの性格をしておられましたので動きまくっていただきました。
書いていてものすごく楽しかったので、源様に気に入っていただければいいなと思います。
それでは、またお会いできる日を夢見て。