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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


人魚の傷跡

オープニング


不老不死と聞いたら、まず何を想像しますか?
色々な薬草?怪しげな儀式?
多分、みんなが思いつくのは『人魚』じゃないかしら?
人魚の血、人魚の肉は万能の薬としても知られているわよね。
女性だったら永遠に若く、美しくありたいと願うのは当然だと思うわ。
男性でも今の時代、女性に負けないほどの美しさを持つ人がいるわよね?
そして、今は『不老不死』が夢で終わる時代ではなくなったわ。
私の店には人魚の妙薬があって、必要な人にお売りしております。
どう?あなたの美しさを永遠なものにしてみない?



視点⇒伍宮・春華


「人魚の妙薬?」
 春華は草間興信所のソファでくつろいでいた所、草間武彦が言った言葉に興味を示した。話を聞けば『フォーチュン』という店が『人魚の妙薬』を売っているらしい。
「これが朝刊に挟んであった広告だ」
 草間武彦は春華に問題の広告を手渡した。
「ふぅん、人魚、ねえ…面白そうだな。不老不死には興味ないけど、暇つぶしにはちょうど良いか」
 そう言って春華はソファから降りる。
「人魚が捕まっているって噂もあるけど、助けに行くのか?」
 草間興信所を出ようとした時に、草間武彦から呼び止められて聞かれた。その質問に春華は「まさか」と笑って答えた。あくまで春華の目的は『暇つぶし』であって『捕らえられた人魚』を助ける事でも『人魚の妙薬』を買うことでもない。簡単に言えば冷やかしとも言うが、そこは気にしないでおこう。
「じゃあ行ってくるな」
 そう言って春華は草間興信所を後にした。




「…ここか」
 暫く歩いたところに『フォーチュン』にたどり着いた。店の外装も内装もはっきり言って趣味が悪かった。永遠の美しさを売る店がこのような雰囲気でいいのか?と突っ込みたくなるほどだ。

 ―カラン

 中に入ると沢山の女性客で賑わっていた。狭い店になんでこんなに人が入れるんだと言うくらいで、その多くの女性客に囲まれている一際目立った女性がいた。
(あれって確か…)
 そう、広告で店長として紹介されていた女性だ。こんな店をしているだけあってやはり容姿はそれなりに良い。
「あら、お客様かしら?」
 その女性店長は春華に気づき近寄ってくる。
「別に、こんなのに興味ないし」
 その言葉に回りの女性客の視線が一気に冷たくなる。『だったらなんで来るのよ』とでも言いたげだ。
「残念ね、それで貴方は何をしにこの店までやってきたのかしら?」
「強いて言うなら暇つぶしかな。それに本物かどうかも知りたくて」
「……そう、もうじき休憩になるからお話でもしない?」
 女性店長は怪しげな笑みを春華に見せて言う。春華は暇つぶしできたので別に問題はなかったので首を縦に振った。
「そういうことで、皆様また時間を改めてきていただけますでしょうか?」
 女性店長の声にまだ薬を買っていない女性は「え〜」などと声をあげたが仕方なく渋々と店を出て行った。
「貴方は疑っているから人魚の妙薬を買わない、と言いたいのかしら?ならば証明してあげましょうか?」
 女性店長の言葉に春華は首を横に振って『別にいい』と答えた。
「俺からすればさ、人魚の妙薬が本物だろうと関係ないんだよ」
「あら、じゃあ人魚を助けに来た正義の味方、とでも言いたいかしら?」
「別に、俺はそんな正義感燃やすタイプじゃなし。俺以外がどうなろうと知った事じゃないんだよね。それよりさ、なんでこんな商売してんの?結構恨み買うんじゃないのか?」
 春華がそういうと女性店長はクスと笑いながら答えた。
「人の恨みなんて全然怖くないわ。一番怖いのはお金をなくすこと。食べる事も、服を買うのも、生きていくのに必要な事は全てお金が必要なのよ。恨みなんてものは負け犬の遠吠えにしか聞こえないわ」
 クスクスと笑いながら言う女性店長に春華は何も言わずに聞いていた。実際にその通りだと思うから。自分以外がどうなろうと知った事じゃない。自分にさえ危害が加わらなければこの女性を止める権利は春華にはないのだから。
「好きにすれば。俺に危害が来なきゃ人魚だろうとなんだろうと売るなり焼くなりすればいい」
「貴方って変わってるのね。普通こういうことを知ったなら許さない、とか言うものなのにね」
「だからさっきも言っただろ。俺に危害が加わらない限りは俺には関係がないって」
 店の中の売り物を見ながら春華はぶっきらぼうに答える。人魚の妙薬以外は別に変わったものは売っていなく普通の店と変わりない。
「俺、帰る」
 店の中を一通り見終わった春華は突然呟く。
「あ、さっきの言い忘れ」
「何?」
 ドアに手をかけて外に出るのを一旦止める。
「俺の友達に手ぇ出したら殺すから、覚えといて」
 春華はまるでなんでもない事のようにサラリと言ってのけた。その言葉に女性店長自身も少し驚いたらしく目を丸くした。
「あら、分からないわよ?あなた、自分以外はどうでもいいんじゃなかったの?」
「……………別に手ぇ出してもいいけどさ、そん時は覚悟しといてな」
 春華は普段隠している黒い翼を現して、風を巻き起こす。その風のせいで店の売り物が多少吹き飛び割れたり壊れたりしたが、春華はそ知らぬ顔で女性店長を見ていた。
「…手、出したらコレくらいじゃすまさないよ」
 春華はニッと悪戯っぽく笑いながら言う。だが、その瞳の奥には本気だという事が、見て取れる。
「……そうね、気をつけておくわね」
「じゃあ、多分もう二度とこないだろうけど」
 そう言って春華はフォーチュンを後にした。


「…大した暇つぶしにはならなかったな。なんか面白い事ないかな」
 春華は頭の後ろで手を組みながら草間興信所の方まで歩き出した。



 その後『フォーチュン』という店を見たものはいない。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】

1892/伍宮・春華/男性/75歳/中学生

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■         ライター通信          ■
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伍宮・春華様>

お会いするのは二回目ですね^^
今回は『人魚の傷跡』に発注をかけてくださいましてありがとうございます!
『人魚の傷跡』はいかがだったでしょうか?
少しでも面白いと思っていただけたら幸いです^^
それではまたお会いできる機会がありましたらよろしくお願いします^^

       -瀬皇緋澄