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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


Dear...

★Opening:PresentFrom…?

クリスマスの朝。
草間興信所の前にクリスマスカラーの包装紙に包まれた一つのプレゼントが置かれていた。
差出人の名前は、無い。ただ、『草間武彦様』とだけ書かれたメッセージカードが付けてあった。
爆弾か何かの危険物か?と思いはするものの…どうもそれらしい気配は無い。
そこで、草間は数人の思い当たる人物に声をかけることにした。
携帯ではなく手帳からリストアップして電話をかける。
しかし誰も知らないとの事だった。
「一体誰からのプレゼントだ…?
いや、そもそもプレゼントなのか…?何か裏がある物かもしれない…」
草間は目の前にあるプレゼントを睨みながら、首を傾げた。
差出人不明なものを不用意に開けるわけにもいかない。仕方なく、再び電話を手に取り、コールする。
「…仕事という仕事ではないんだが…暇なら少し手伝って欲しい…
いや、差出人不明のプレゼントの送り主を探しているだけだ…
報酬?…まあせいぜい、クリスマスケーキくらいか…?」
苦笑いを浮かべて草間は電話を切った。



草間からの連絡を受けたシュライン・エマは、
予め用意しておいたプレゼントをわからないように袋に入れて、
さらにそれを大き目の鞄に入れて…連絡からさほど時間もかからずに家を出た。
連絡がなくとも、どのみち草間と零にプレゼントを贈るために興信所へは出向くつもりだったのだ。
それにしても…と、シュラインは思う。
電話で聞いただけの話だと、現時点では危険物らしい気配はないという事だった。
日が日だけに、ただのクリスマスプレゼントかもしれない。
そう、過去に草間興信所に世話になった誰かが持ってきたものの、渡すのが照れくさくて置いて帰ったのかもしれない。
電話で聞いただけでも、不思議と悪い予感や嫌な雰囲気はしなかった。
やはり…時期が時期だけに本当に誰かが草間へ贈るために持ってきたのかもしれない。
「でも、それはそれでちょっと困るわね」
シュラインは小さく苦笑いを浮かべた。
草間に対して淡く抱いている想いというものは、おそらく自分だけではないかもしれない。
いや、自分以外にも多くの人が同じような想いを抱いているはずだ。
そんな人たちがこれを機会に…と、行動を起こすという可能性も無いとは言い切れない。
だからどうするというわけでもないのだが…。
シュラインがそう考えながら草間興信所に着き、ドアを開ける。
すると、零と草間がソファに向かい合って座り…その真ん中のテーブルに、
緑と赤のクリスマスカラーの包装紙に金の鈴付きの綺麗にラッピングされた”いかにも”なプレゼントが置かれていた。
ティッシュペーパーくらいの大きさの箱で、持ち上げてみるとそう重くは無い。
シュラインが一通りプレゼントの様子を伺うのを見終わって、草間は口を開いた。
「どう思う?」
「そうね…見た目は危険な感じもしないし…添えてあるカードに悪意は感じられないけれど…
不用意に開けてみるのも危ないと思うわ…でももしかしたらサンタクロースからの贈り物かもね?」
シュラインの言葉に、草間は笑みをもらし。
「サンタクロースを信じてるのか?」
「あら?武彦さん。世界には100人程サンタさんがいる事をご存知?」
「そう言う事を聞いてるんじゃない…」
「冗談よ。真面目な話、ここで働くようになってから…そう言う人が本当に存在していたとしても驚かなくなったわ」
もっと信じられないような人たちに出会うもの、とシュラインは肩を竦めて微笑んで見せた。
草間もその意見に同意らしく同じように笑みを浮かべて頷いた。
「話を戻すが…実はこのプレゼントに少し気になることがあるんだが…耳を近付けてみてくれ」
言われて、シュラインは箱に耳を近づける。そして耳をすますと…
「聞こえるだろ?」
「!」
何かが聞こえるという以前に、草間も同じように箱に耳を近付けていてシュラインは慌てて箱から顔をはなした。
至近距離に顔が近づくと…女性としてはかなり意識してしまう。僅かながら頬が赤くなる事に気付いて必死で落ち着かせた。
そして草間が妙に思わないように改めて耳を近付けてる。
「これは…時計の針の音…」
チッ、チッ、チッ…と規則的に発せられているその音はまさしく時計の秒針の音。
そしてなおかつこういう場合聞こえてくる時計の音といえば…
「お約束としては時限爆弾ね」
「怖いですね」
シュラインの言葉に、零が呟く。果たして本当に怖がっているのかどうかは定かでは無いが。
「武彦さん、心当たりは?」
「こういう仕事をやってると、心当たりが無い方が珍しいだろう…」
「それもそうね…でも時限爆弾だとしたら危険ね。開封しても危険、放置しておいても危険。
然るべき職業の方々に頼んで処理してもらうのが打倒な気もするけれど…」
もし本当にただのプレゼントだったとしたら、それはそれで大変である。
爆弾処理にかかる費用を負担しなければならないのだが、そんなお金の余裕はここには無かった。
「とりあえずミスリル素材配合の金庫に入れておきますね」
零はそう言うとひょいと持ち上げて奥に引っ込んで行く。
いつの間にそんな金庫があったのかしら?とシュラインは疑問に思いつつ…。
「それじゃあ…私は周辺の聞き込みに行ってきます。近所の方が何かを見ているかもしれませんし」
コートを羽織り立ち上がったシュラインに、草間はポケットからカイロを取り出し、
「宜しく。頼む」
そう呟いてそれを差し出した。
シュラインはふっと笑みを浮かべてそれを受け取ると、コートのポケットに入れる。
そして草間興信所の外に出て、改めてカイロを取り出し両手で包み込む。
「暖かい…」
そう目を細めて微笑み歩き出した。


★Mission:

「…あら…」
草間興信所事務員のシュライン・エマがふと立ち止まる。
「ぬしらもまさか…」
おでん屋台経営の本郷・源(ほんごうみなと)も立ち止まり、見上げる。
「なんや、俺だけちゃうかったんか」
ロックバンドのヴォーカル、佐々木・泰志(ささきたいじ)が、がくっと肩を落とし…
「いやだわ草間さん…何人に声をかけてるのかしら」
歌舞伎町の女王、藤咲・愛(ふじさきあい)は小さく息を吐いた。
草間興信所の入り口前。
偶然にも顔を合わせることになった面々は、草間から例のプレゼントに関して調査を頼まれた者たちだった。
それぞれが調査を終えて帰ってきたところ偶然にも出会ったのだが…
誰もみな、それぞれが草間が自分だけに頼ってくれていたと思っていたらしく互いに微妙な気分になりつつドアを開けた。
中では零がテーブルの上に何かを並べていて、全員が入ってくると慌ててそれを隠すように立った。
「早かったですね皆さん」
零は作り笑いを浮かべてそう言うと、困ったような顔をして視線を彷徨わせる。
「あの、今ちょっとお兄さんが出かけているのでもう少し時間を潰してきてくれますか?」
「――それは別にいいけど…」
「なんや、草間さんどこに行ったんや?」
「お仕事です」
零はしれっとした笑みを浮かべてそう答えると、微笑んだまま全員を事務所の外に押し出す。
わけもわからないながら仕方なく全員で外に出て…近くのカフェに向かった。



カフェで全員が調べた結果を照らし合わせて話を進めてみても、各自思ったような成果があげられなかった。
と言うより、日が日だけにみな自分の事ばかりでそれどころではない。
シュラインは興信所の周辺で聞き込みをしてみたが、店は店員が忙しく働いていて話を聞く耳持たずという感じで、
街を行く人々も今日ははっきりとした目的があり立ち止まる事もなく足早に去って行った。
藤咲は歌舞伎町のお店の従業員の女の子や、草間に縁のありそうなお店へ足を運んだり電話をかけて調べてみたが、
誰も心当たりは無いとの事だった。
源は経営するおでん屋台の常連に声をかけあやかし荘の住人にも数人、
それらしい荷物を持っている者を見たことが無いか聞いてみたがやはり心当たりは無かった。
佐々木は自分のバンドのファンの子達に声をかけて人海戦術で探してみたものの…
草間武彦の存在すらおぼろげにしか知らず、やはりこれも空振りに終わった。
「アカンな。お手上げや」
「これだけ揃って探してたのに手がかり無しって事は…そうね」
「やはりアレはあやつの仕業じゃ!」
「”あやつ”ってなんなんです?本郷さん」
「知らんのか?!あやつじゃ…真っ赤な血染めの服を着、白髪に長い白髭をを振り乱した恐ろしい悪鬼…
口に出すのもおぞましい彼奴の名は…”サタン苦露主”じゃ!!」
真剣な表情で言う源に、一瞬場が沈黙する。
「日本カモシカが激減してからは彼奴の動きも沈静化しておったはずじゃが…再び動き出したのじゃ!」
「――源ちゃん源ちゃん…いくらこの俺でもソレはツッコミ忘れてまうネタやで」
「何を言うか佐々木殿!ネタじゃと?!すぐ笑いに繋げるとは…これじゃから西の人間と言うのは!」
源は心外だと言う風に、カフェの椅子の上に立ち上がって力説する。
シュラインと佐々木は少し引きつった笑みを浮かべてそれを聞いていたが…藤咲は…
「血染めの赤いサンタさん…いいわぁ…素敵ね…」
うっとりするような妖しい笑みを浮かべて、店のクリスマスナイトの事を思い浮かべていた。
それからしばらく源の『今日と言う日がなんであるか』を聞いていた一同だったが、店内が混みはじめて店を出ることにする。
こういう日にあまり長居をしていると店員が良い顔をしないわけで。
勘定を済ませ、全員でぞろぞろとカフェを出た時、入れ違いに女子高生の集団が入って来た。
何事もなくすれ違う瞬間、シュラインは一人の少女の持っているものに気付き…
「ちょっと待って!」
慌てて少女を呼び止めた。
驚いて立ち止まった少女の手には…草間の元に届いたものとまったく同じ大きさで同じ包装紙に包まれたプレゼントが抱かれていた。
「ねえ、あなたそれをどこで…?」
シュラインの問いかけに、少女は口を開き…。


★Ending:MerryX'mas!?

「どういうことかしら武彦さん?」
「なんやねん!冗談やないで!!時計屋の包装紙やと?!」
「そうじゃ!ぬしは知っててわしらをからこうたのか?!」
「もう!草間さん!返答しだいじゃここで縛って窓から吊るしてアゲル!」
パーン!!
捜索隊全員が憤慨しつつ興信所に戻り、口々に怒鳴りながら戸を開けたと同時に、
軽やかな破裂音が響き…四人は固まった。見ると、零が手にクラッカーを持って笑みを浮かべている。
佐々木の頭にクラッカーから飛び出したらしい紙テープが落ちて来るのを見て…
「メリー・クリスマス!」
零がそう叫んだ。
その後ろには、テーブルの上にケーキとシャンパン、チキンとサンドウィッチが並んでいる。
「お帰りなさい。お疲れ様」
そしてソファに座っていた吉原ソープの泡姫、葛生・摩耶(くずうまや)が、
いじっていた携帯電話から顔を上げて入って来た四人に軽く手を上げた。
さらに奥の事務机には草間が腕を組んで座っている。
「さあ。どうぞ座ってください」
呆気に取られている面々を、零が促して座らせる。全員が席についたところで…四人はやっと我に返った。
「なんや…どういうこっちゃ…」
佐々木が呟いて草間に目を向ける。草間は椅子から立ち上がると…シャンパンの栓ををポン!と抜き。
「おまえ達に調べに出てもらった後…アンティーク時計店の店主から電話があってな…
先月修理に出していた時計を今朝、届けたが留守だったから置いて帰ったとの事だった。
今日がクリスマスという事でプレゼント風に包装してくれたらしいが、実は前もって電話を貰っていた事を忘れ…」
「ちょっと待てや!」
「という事はじゃ…?おぬしは修理に出していた事も届けると言われていた事も忘れておった…と?」
「つまりそういう事になるな…」
そう言って、草間は時計をテーブルの上に置く。
木製のそのアンティーク時計からはチッ、チッ、チッと規則正しい秒針の音が…
「つまり草間さんが最初っから覚えとったら探す必要なかったっちゅーことか?」
「そう言う事になるわよねぇ?ねぇ草間さん?…鞭がいいかしら?それともロ・ウ・ソ・ク?」
「のう草間殿…忘れっぽいのはツケの支払いだけにしてもらいたいもんじゃのう!」
「武彦さん。そう言う事はすぐにメモに書いて貼っておくようにとあれほど…」
四人が立ち上がり、草間に詰め寄る。草間は慌てて後方に下がり、
「いや、だから悪いと思いこうやって零と葛生君に頼んでパーティを…」
「問答無用や!!」
「うむ!そんなものでわしは誤魔化されんぞ!」
言うが早いか、佐々木はシャンパンを手に取り、指で栓をすると思いっきり振って草間に向ける。
そして指を離すと同時に勢い良くシャンパンシャワーが噴き出した。
「うわっ…やめろ!!」
「草間さ〜ん、はいこっち向いてv」
続けて、藤咲がムース状になるパーティスプレーを吹き付ける。
「いい格好じゃ!」
さらにパーティ用のクリームを源が紙皿にこれでもか!というくらいに盛り付け…
「本郷源特製パイじゃ!」
草間の顔面に向かって投げつけた。それは宙に弧を描いて見事ヒットする。
―――シャンパンにスプレーにクリームに。
さんざんな状態になっている草間を横目に、いつもならこういう場を宥める役のはずのシュラインは…。
「零ちゃん、ミルク取ってくれる?」
「はい。どうぞ」
涼しい顔で仕事の後の暖かい紅茶タイムを楽しんでいた。
「あ〜あもう…せっかくのシャンパン無駄にしないでよね…まあそれは安いからいいけどさ…」
葛生は溜め息をつきながらも楽しげにその様子を見つめていた。

それから。
草間興信所での即席クリスマスパーティは…テンション覚めやらぬままで夜遅くまで続いたのだった。



「武彦さん」
パーティも終わり、全員で室内の片付けも済ませ…それぞれが帰途につく。
シュラインは用意していたプレゼントを渡す為に草間の元に向かう。
草間は洗面台でベトベトになった髪を洗い流している最中だったがシュラインの気配に顔を上げた。
すかさずタオルを手渡す。それを受け取り、草間は頭にかけた。
「今日は済まなかった」
「物忘れはなんとかして欲しいわね…でも、パーティは楽しかったわ」
「そう言って貰えるとやった甲斐があったよ」
苦笑混じりに草間は言う。シュラインは微笑んで一呼吸置き。
「これ…武彦さんと零ちゃんにと思って」
紙袋を差し出した。少し驚いた顔をしつつ、しかし草間はそれを受け取る。
「ありがとう…これこそクリスマスプレゼントだな…」
「ええ。本当に。時計屋さんからじゃない事は確かよ」
冗談混じりに言うシュラインに、草間は微妙な笑みを浮かべて。開けてみてもいいか?と聞く。
あまり見ている前で開封されると恥ずかしい気もするのだが…。
「手袋か…暖かそうだな」
外回りの仕事の際に必需品となるであろう品物をシュラインはチョイスしていた。
ちなみに、零にはエプロンやマフラーを用意している。
「それじゃあ。遅いですから私はこの辺で」
「ああ、気をつけて」
軽く頭を下げて事務所を出るシュライン。事務所のドアが閉まる寸前、
「サンタクロースは居るかもな」
そう背後から声が聞こえてきた。不思議に思いながらも特に気にせずに帰途につく。

帰宅して。
郵便ポストを見たシュラインは、赤い包装紙にリボンのついたものが入っている事に気付く。
取り出して見ると…「DEAR:E・SYURAIN〜FROM:KUSAMA」の文字。
急いで部屋に入り。包みを開いた中から現れたのは…雪の結晶を模ったシルバーのチョーカー。
そして「MerryX'Mas」と書かれたクリスマスカード。
事務所を出る時に聞こえた草間の言葉が思い出され、シュラインは微笑む。
そしていつもつけているチョーカーを外し、鏡の前で雪の結晶のチョーカーに付け替える。
この季節に似合うデザインで…シュラインは鏡に映ったチョーカーに、小さく呟いた。
「MerryX'mas」



〜fin〜


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0086/シュライン・エマ/女性/26歳/翻訳家・幽霊作家+草間興信所事務員】
【0830/藤咲・愛(ふじさき・あい)/女性/26歳/歌舞伎町の女王】
【1108/本郷・源(ほんごう・みなと)/女性/6歳/オーナー・小学生・獣人】
【1979/葛生・摩耶(くずう・まや)/女性/20歳/泡姫】
【2443/佐々木・泰志(ささき・たいじ)/男性/23歳/ロックバンドのボーカリスト】

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■         ライター通信          ■
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こんにちわ。
この度は草間興信所クリスマスイベントに参加いただきありがとうございました。
短期間での受注・納品という事でしたが予定人数以上の方に参加していただけて嬉しかったです。
今回はEndingが全員共通で、Missionがシュライン様、藤咲様、本郷さま、佐々木様が共通、
パーティ準備に関する内容の都合上、葛生様が少し違った内容になっております。
宜しければ他の皆様の行動もご覧になって下さいませ。(^^)
こういったイベントが好きなので、今回は参加していただけて嬉しかったです。
皆さんと楽しいクリスマスを過ごさせていただいた気持ちです。

またいつかどこかで皆さんに会えるのを心から楽しみにしております。

:::::安曇あずみ:::::

>シュライン・エマ様
こんにちわ。再びお会い出来て嬉しく思います。
当初の予定と違い微妙な恋愛風味な内容になってしまいましたが楽しんでいただけていたら嬉しいです。
シュライン様と草間さんの微妙な関係は本当に書かせていただいていて楽しいので、
クリスマスというイベントに参加していただけて嬉しかったです。
またお会い出来るのを楽しみにしております。

※誤字脱字の無いよう細心の注意をしておりますが、もしありましたら申し訳ありません。