コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


Dear...

★Opening:PresentFrom…?

クリスマスの朝。
草間興信所の前にクリスマスカラーの包装紙に包まれた一つのプレゼントが置かれていた。
差出人の名前は、無い。ただ、『草間武彦様』とだけ書かれたメッセージカードが付けてあった。
爆弾か何かの危険物か?と思いはするものの…どうもそれらしい気配は無い。
そこで、草間は数人の思い当たる人物に声をかけることにした。
携帯ではなく手帳からリストアップして電話をかける。
しかし誰も知らないとの事だった。
「一体誰からのプレゼントだ…?
いや、そもそもプレゼントなのか…?何か裏がある物かもしれない…」
草間は目の前にあるプレゼントを睨みながら、首を傾げた。
差出人不明なものを不用意に開けるわけにもいかない。仕方なく、再び電話を手に取り、コールする。
「…仕事という仕事ではないんだが…暇なら少し手伝って欲しい…
いや、差出人不明のプレゼントの送り主を探しているだけだ…
報酬?…まあせいぜい、クリスマスケーキくらいか…?」
苦笑いを浮かべて草間は電話を切った。



「邪魔するぞ。草間殿」
草間が電話を切ってからそう間が開かず、興信所のドアが開かれる。
聞き覚えのあるその声に、思わず逃げ出しそうになる草間だったが…来客が入ってくるほうが早かった。
「こんにちわ」
「うむ。零殿は今日も元気そうじゃな」
入って来たのは本郷・源(ほんごうみなと)。
6歳にして数多の店を経営している凄腕の経営者の少女である。
草間はこの源の経営しているおでん屋台【蛸忠】の常連客なのであるが…。
「草間殿、そんな格好で何をしておる」
「あ、いや…」
逃げようと立ち上がった状態で固まっているために、中腰になっている草間。
返す言葉もなく、椅子に座りなおした。
「腰でも痛めたか?おぬしはもう若うないのじゃ…労わらねばならぬぞ?」
「…気をつけます」
源は着物の裾に気をつけながら、事務所内を歩いてソファに腰を下ろす。
草間は彼女が何の用で訪ねて来たのかだいたいわかり、できれば話を反らせないものかと画策する。
「お茶でもお入れしましょうか?」
「構わずとも良いぞ零殿。貰うものを貰ったらすぐに帰るつもりじゃ」
源の言葉に、草間はやっぱり…と息を吐いた。
なるべく本題に入られないように話題を振れないものかと思っていると…
「草間殿、なんじゃそれは」
机の上に置いてある、例の差出人不明のプレゼントに源の目が止まる。
チャンスとばかりに草間が経緯を説明すると、源は額に眉を寄せて。
「何度も言っておろう…」
ふうと深い溜め息をつく。
「いいか?よく聞くのじゃ草間殿!」
真剣な顔をして語り始める源の話を、草間と零は身を乗り出して…。
「そもそも『くりすます大祭』と言うものはじゃ…”栗栖ます殿(享年87歳)”の命日を偲んで静かに過ごす日なのじゃ」
「は?」
思いっきり真顔の源に反し、草間はガクッとする。力が抜けたと言う言葉がまさにぴったりとくる様子だった。
「なんじゃその顔は!きちんと聞かぬか!良いか?まず、くりすます大祭では仏壇を白黒に飾り、
鯛のお頭付きと羊羹をお供えしてお歳暮と言う贈り物を交換するのじゃ!わかっておるのか?」
さらに言葉を続ける源。
念のために記しておくと、仏壇=ツリー、鯛の尾頭付き=チキン、羊羹=ケーキ、お歳暮=プレゼントである。
どこでどうなってそうなるのかわからないが…草間は雰囲気に押されてとりあえず頷いた。
「うむ。わかっておるなら話は早い…その”お歳暮”の送り主がわからぬのじゃな?しかも爆弾の可能性もあると言う事じゃな?」
「中から時計の音がするもんで…」
「まったく!この神聖な栗栖殿の命日にバクダン騒ぎなどと…馬鹿馬鹿しいにも程があろう!」
ソファに座りなおした源に、零が緑茶を差し出す。軽く礼をしてお茶に手を伸ばした源は、ふと”お歳暮”に目を向け。
「しかし”お歳暮”には栗栖殿への思いが篭もっておる…
もしそれが爆弾ではないとしたら送り主に対して失礼極まりないぞ草間殿」
「どうするんですか?お兄さん」
零は源の話を信じているらしく、本気で聞いてくる。
しかしどうするのかと聞かれても、どうしようかと思い、先ほど色々な者に電話をしていたのだ。
草間の無言の返事を”困り果てた様子”と受け取った源はどこか達観した者のような表情になり、
「仕方ない…わしもこの『くりすます大祭』を静かに過ごす者の一人じゃ…
送り主の意思を大事にする為にも探してやってもよいぞ」
源は徐に立ち上がると目を細めて草間を見上げた。
「おぬしも困るであろう?」
「いや、そりゃあまあ…誰からのものかは…」
「うむ。この本郷・源に任せるのじゃ!」
無邪気な笑顔…と言うべきか、笑みを浮かべると源は興信所を後にする。
とりあえず本題の事を忘れてもらえた事を幸いに思いつつ、草間は椅子に深く腰掛けた。



★Mission:

「…あら…」
草間興信所事務員のシュライン・エマがふと立ち止まる。
「ぬしらもまさか…」
おでん屋台経営の本郷・源(ほんごうみなと)も立ち止まり、見上げる。
「なんや、俺だけちゃうかったんか」
ロックバンドのヴォーカル、佐々木・泰志(ささきたいじ)が、がくっと肩を落とし…
「いやだわ草間さん…何人に声をかけてるのかしら」
歌舞伎町の女王、藤咲・愛(ふじさきあい)は小さく息を吐いた。
草間興信所の入り口前。
偶然にも顔を合わせることになった面々は、草間から例のプレゼントに関して調査を頼まれた者たちだった。
それぞれが調査を終えて帰ってきたところ偶然にも出会ったのだが…
誰もみな、それぞれが草間が自分だけに頼ってくれていたと思っていたらしく互いに微妙な気分になりつつドアを開けた。
中では零がテーブルの上に何かを並べていて、全員が入ってくると慌ててそれを隠すように立った。
「早かったですね皆さん」
零は作り笑いを浮かべてそう言うと、困ったような顔をして視線を彷徨わせる。
「あの、今ちょっとお兄さんが出かけているのでもう少し時間を潰してきてくれますか?」
「――それは別にいいけど…」
「なんや、草間さんどこに行ったんや?」
「お仕事です」
零はしれっとした笑みを浮かべてそう答えると、微笑んだまま全員を事務所の外に押し出す。
わけもわからないながら仕方なく全員で外に出て…近くのカフェに向かった。



カフェで全員が調べた結果を照らし合わせて話を進めてみても、各自思ったような成果があげられなかった。
と言うより、日が日だけにみな自分の事ばかりでそれどころではない。
シュラインは興信所の周辺で聞き込みをしてみたが、店は店員が忙しく働いていて話を聞く耳持たずという感じで、
街を行く人々も今日ははっきりとした目的があり立ち止まる事もなく足早に去って行った。
藤咲は歌舞伎町のお店の従業員の女の子や、草間に縁のありそうなお店へ足を運んだり電話をかけて調べてみたが、
誰も心当たりは無いとの事だった。
源は経営するおでん屋台の常連に声をかけあやかし荘の住人にも数人、
それらしい荷物を持っている者を見たことが無いか聞いてみたがやはり心当たりは無かった。
佐々木は自分のバンドのファンの子達に声をかけて人海戦術で探してみたものの…
草間武彦の存在すらおぼろげにしか知らず、やはりこれも空振りに終わった。
「アカンな。お手上げや」
「これだけ揃って探してたのに手がかり無しって事は…そうね」
「やはりアレはあやつの仕業じゃ!」
「”あやつ”ってなんなんです?本郷さん」
「知らんのか?!あやつじゃ…真っ赤な血染めの服を着、白髪に長い白髭をを振り乱した恐ろしい悪鬼…
口に出すのもおぞましい彼奴の名は…”サタン苦露主”じゃ!!」
真剣な表情で言う源に、一瞬場が沈黙する。
「日本カモシカが激減してからは彼奴の動きも沈静化しておったはずじゃが…再び動き出したのじゃ!」
「――源ちゃん源ちゃん…いくらこの俺でもソレはツッコミ忘れてまうネタやで」
「何を言うか佐々木殿!ネタじゃと?!すぐ笑いに繋げるとは…これじゃから西の人間と言うのは!」
源は心外だと言う風に、カフェの椅子の上に立ち上がって力説する。
シュラインと佐々木は少し引きつった笑みを浮かべてそれを聞いていたが…藤咲は…
「血染めの赤いサンタさん…いいわぁ…素敵ね…」
うっとりするような妖しい笑みを浮かべて、店のクリスマスナイトの事を思い浮かべていた。
それからしばらく源の『今日と言う日がなんであるか』を聞いていた一同だったが、店内が混みはじめて店を出ることにする。
こういう日にあまり長居をしていると店員が良い顔をしないわけで。
勘定を済ませ、全員でぞろぞろとカフェを出た時、入れ違いに女子高生の集団が入って来た。
何事もなくすれ違う瞬間、シュラインは一人の少女の持っているものに気付き…
「ちょっと待って!」
慌てて少女を呼び止めた。
驚いて立ち止まった少女の手には…草間の元に届いたものとまったく同じ大きさで同じ包装紙に包まれたプレゼントが抱かれていた。
「ねえ、あなたそれをどこで…?」
シュラインの問いかけに、少女は口を開き…。


★Ending:MerryX'mas!?

「どういうことかしら武彦さん?」
「なんやねん!冗談やないで!!時計屋の包装紙やと?!」
「そうじゃ!ぬしは知っててわしらをからこうたのか?!」
「もう!草間さん!返答しだいじゃここで縛って窓から吊るしてアゲル!」
パーン!!
捜索隊全員が憤慨しつつ興信所に戻り、口々に怒鳴りながら戸を開けたと同時に、
軽やかな破裂音が響き…四人は固まった。見ると、零が手にクラッカーを持って笑みを浮かべている。
佐々木の頭にクラッカーから飛び出したらしい紙テープが落ちて来るのを見て…
「メリー・クリスマス!」
零がそう叫んだ。
その後ろには、テーブルの上にケーキとシャンパン、チキンとサンドウィッチが並んでいる。
「お帰りなさい。お疲れ様」
そしてソファに座っていた吉原ソープの泡姫、葛生・摩耶(くずうまや)が、
いじっていた携帯電話から顔を上げて入って来た四人に軽く手を上げた。
さらに奥の事務机には草間が腕を組んで座っている。
「さあ。どうぞ座ってください」
呆気に取られている面々を、零が促して座らせる。全員が席についたところで…四人はやっと我に返った。
「なんや…どういうこっちゃ…」
佐々木が呟いて草間に目を向ける。草間は椅子から立ち上がると…シャンパンの栓ををポン!と抜き。
「おまえ達に調べに出てもらった後…アンティーク時計店の店主から電話があってな…
先月修理に出していた時計を今朝、届けたが留守だったから置いて帰ったとの事だった。
今日がクリスマスという事でプレゼント風に包装してくれたらしいが、実は前もって電話を貰っていた事を忘れ…」
「ちょっと待てや!」
「という事はじゃ…?おぬしは修理に出していた事も届けると言われていた事も忘れておった…と?」
「つまりそういう事になるな…」
そう言って、草間は時計をテーブルの上に置く。
木製のそのアンティーク時計からはチッ、チッ、チッと規則正しい秒針の音が…
「つまり草間さんが最初っから覚えとったら探す必要なかったっちゅーことか?」
「そう言う事になるわよねぇ?ねぇ草間さん?…鞭がいいかしら?それともロ・ウ・ソ・ク?」
「のう草間殿…忘れっぽいのはツケの支払いだけにしてもらいたいもんじゃのう!」
「武彦さん。そう言う事はすぐにメモに書いて貼っておくようにとあれほど…」
四人が立ち上がり、草間に詰め寄る。草間は慌てて後方に下がり、
「いや、だから悪いと思いこうやって零と葛生君に頼んでパーティを…」
「問答無用や!!」
「うむ!そんなものでわしは誤魔化されんぞ!」
言うが早いか、佐々木はシャンパンを手に取り、指で栓をすると思いっきり振って草間に向ける。
そして指を離すと同時に勢い良くシャンパンシャワーが噴き出した。
「うわっ…やめろ!!」
「草間さ〜ん、はいこっち向いてv」
続けて、藤咲がムース状になるパーティスプレーを吹き付ける。
「いい格好じゃ!」
さらにパーティ用のクリームを源が紙皿にこれでもか!というくらいに盛り付け…
「本郷源特製パイじゃ!」
草間の顔面に向かって投げつけた。それは宙に弧を描いて見事ヒットする。
―――シャンパンにスプレーにクリームに。
さんざんな状態になっている草間を横目に、いつもならこういう場を宥める役のはずのシュラインは…。
「零ちゃん、ミルク取ってくれる?」
「はい。どうぞ」
涼しい顔で仕事の後の暖かい紅茶タイムを楽しんでいた。
「あ〜あもう…せっかくのシャンパン無駄にしないでよね…まあそれは安いからいいけどさ…」
葛生は溜め息をつきながらも楽しげにその様子を見つめていた。

それから。
草間興信所での即席クリスマスパーティは…テンション覚めやらぬままで夜遅くまで続いたのだった。



「どこじゃ草間殿!姿を見せぬか!」
パーティも終わり、全員で室内の片付けも済ませ…それぞれが帰途につく。
源はそもそも今日ここに来た本題を草間に告げる為に彼の姿を探す。
しかしどこに隠れているのか見つからず、事務所内を歩き回った。
そして、ひょいと覗いた洗面台。
濡れた髪をタオルで拭きながら、鏡に向かっている草間の後姿が見えた。
「く・さ・ま・ど・の」
ふうっとその背中を指でついっとなぞり声をかける。
背筋にぞくぞくっとしたものが駆け抜けて、草間は後ろに仰け反った。
「こんな所に逃げておったのか。探したぞ」
「あ、いやその…逃げたわけでは…」
「まあ良いわ。他の者はみなもう帰った…これでおぬしとゆっくり話ができる」
不敵な笑みを浮かべる源に、草間は引きつり笑いを浮かべる。
しかし源はさらに笑みを深くして。
「わしからの”お歳暮”じゃ…ぬしからは何を貰えるのかのう?」
そう言って、一枚の紙を差し出した。
それは、草間の思っていた通り、できれば忘れていてくれれば…と密かに願っていた、
源の経営するおでん屋台【蛸忠】の…今年一年間分の草間のツケの請求書だった。
「さあ、”お歳暮”の交換じゃ草間殿…」
腕を組んで見上げている源だが、草間はまるで高みから見下ろされているような感覚にさえなる。
「さあ!」
「あ、いや…」
「さあ!!」
「今はその…」
「さあ!!!」
洗面台で二人が熾烈な攻防を繰り広げている頃、
零は草間の用意していたプレゼントをこっそり源の巾着に忍ばせていた。
なんだかんだ言いつつ、きちんと支払いのお金は用意していたのだ。
ただ、素直に支払うのが照れくさいらしい。
零は封筒に入ったお金をきちんと巾着に入れると、元の場所に戻す。
そして手を合わせ。
「栗栖マスさん…あの世では幸せに」
そう小さく呟いたのだった。



〜fin〜


□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

【0086/シュライン・エマ/女性/26歳/翻訳家・幽霊作家+草間興信所事務員】
【0830/藤咲・愛(ふじさき・あい)/女性/26歳/歌舞伎町の女王】
【1108/本郷・源(ほんごう・みなと)/女性/6歳/オーナー・小学生・獣人】
【1979/葛生・摩耶(くずう・まや)/女性/20歳/泡姫】
【2443/佐々木・泰志(ささき・たいじ)/男性/23歳/ロックバンドのボーカリスト】

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
こんにちわ。
この度は草間興信所クリスマスイベントに参加いただきありがとうございました。
短期間での受注・納品という事でしたが予定人数以上の方に参加していただけて嬉しかったです。
今回はEndingが全員共通で、Missionがシュライン様、藤咲様、本郷さま、佐々木様が共通、
パーティ準備に関する内容の都合上、葛生様が少し違った内容になっております。
宜しければ他の皆様の行動もご覧になって下さいませ。(^^)
こういったイベントが好きなので、今回は参加していただけて嬉しかったです。
皆さんと楽しいクリスマスを過ごさせていただいた気持ちです。

またいつかどこかで皆さんに会えるのを心から楽しみにしております。

:::::安曇あずみ:::::

>本郷・源様
あやかし荘に続いてのご参加ありがとうございます。
プレイングを拝見させていただいて、
あまりにも素敵なその内容にしばらく笑い続けさせていただきました。(笑)
美味くあのプレイングを生かせていたら良いな…と思っております。
源様は本当に書いていて楽しい方なのでまたいつかお会いできるのを楽しみにしております。

※誤字脱字の無いよう細心の注意をしておりますが、もしありましたら申し訳ありません。