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<東京怪談ウェブゲーム 神聖都学園>


いもうとごっこ
------<オープニング>--------------------------------------
「子供が、学校に入り込んでくるのね」
「ええ」
 学園の教師である響カスミの前に立つ、高等部の女生徒2人。
「幼稚園から紛れ込んだ子じゃないの?」
 顔を見合わせる、少女2人。その視線は、躊躇いと、不安。それに…怯え?
「…、」
 1人が口を開きかけて、閉じる。
「山根さんの…妹だって言ってます」
「…それって、この間の事故のマユリさんのこと?」
「はい。…お姉ちゃんに会いに来たって…」
 何故、躊躇うのか。語尾を濁しつつ、何かを伺うように上目遣いで。
「妹なんていない筈なのに。…あたしたちのせいなのかな…全部」
 小声のつもりか、それとも聞いて欲しかったのか。それ以上は聞き出せず、2人は授業があるからと逃げるように走り去ってしまった。


「手伝ってくれない?子供が1人紛れ込んでるだけだと思うんだけど。全く、保護者は何やってるのかしらね」
 響がそう言って差し出したのは、一枚のメモ。それに、生徒から聞いた話を付け加える。
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・相談者は神聖都学園高等部2年D組女子数人。代表の2人に話を聞く。

相談内容
・高等部校舎に出没する幼児の正体を明かし、再び来ることのないよう諭すこと。

補足
・D組の生徒「山根マユリ」の妹と名乗っているらしいが、当人に姉妹はいない(名簿の家族構成で確認済み)
・名乗られた当人は現在怪我で入院中のため、直接のコンタクトは取れず。
・今までの出没時間は主に放課後。場所は、D組の教室、廊下、階段、物置等。夜間はそもそも生徒がいないので未確認。
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「それじゃあ、宜しくね」


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・病院へ
 言うだけ言って他所に行こうとしたカスミが、一緒に行動することになった不城鋼と海原みあおに引きずられていく。何か此方に助けを求めているような目で見ているような気がするが…放っておいて、柚木シリルは怪我をしたマユリがいるという病院へ向かう事にした。この学園からでも歩いていける距離なのも都合が良かった。


「始めまして、柚木といいます。響先生に頼まれて来ました…山根さん、ですね」
『山根』と名が貼られている病室を覗くと、室内にはベッドが6つ。だが、目指す年齢に当てはまる少女は1人しか見当たらず、シリルはおずおずとそう切り出した。
「――?」
 膝から下、ギブスを嵌めた足をもてあまし気味に本を読んでいた少女が声をかけられて直ぐ顔を上げる。赤い瞳が珍しいのか、じーっと見つめられシリルの体がむず痒くなった頃本をぱたんと閉じて首を傾げ、
「山根は私だけど…何ですか?先生に頼まれて来たって」
 やや茶色がかった髪を揺らしながら訊ねて来る。
「他で話でも…って訳にはいかないですね。怪我をされたって聞きましたけど」
「あ、これ?うん…階段で転んでね。打ち所が悪くて折れちゃった」
 部屋の隅だから、大声じゃなかったら話してても大丈夫、と椅子を勧められてそこに腰掛ける。恐らく暇で仕方なかったのだろう。
「で、先生何だって?…音楽の宿題とか言わないよね」
「いいええ、違いますよ。あのですね。静かに聞いて欲しいことがあるんです」
 ゆっくりと否定の意を込めて手を振り、不思議そうなマユリに周りに人がいないことを確認して語りだす。カスミから聞いた『妹』のことを。
 …次第に、マユリの顔が引きつってきた。それは…。
「や、やだ。…そんなの信じてるの?あ、あはは…」
 大声ではないものの、口から漏れる言葉は笑い。だが、目は落ち着きが無くシリルの目をまともに見ようとはしない。
「大丈夫ですか?」
「へ、平気よ…だって、別にあたしはフツーに階段で転んで落ちただけだもの」
「………」
「……あっ」
 小さな声を上げたマユリがばつの悪い顔をする。自分が何を言ったのか、言ってから気付いたのだろう。上目遣いにシリルを見上げ、それから照れ笑いを浮かべた。
「何か聞きたい事、あるんでしょ?いいよ、少しなら。何?」
「協力、ありがとう。…それじゃ、まず…妹さんは、いないんですよね?」
「うん。お父さんの隠し子でもいるんならともかくね。それに…『あの子』は」
 言いかけて、ぴたりと口をつぐむ。何かとマユリの視線の先を見ると、病室の扉が大きく開け放たれたままなのが、気になるらしい。くすっと笑い、立って戸を閉めに行く。
「ごめんね。なんか、急に怖くなっちゃって」
 戻って椅子に座りなおしたシリルに言い訳がましく言うと、再び真面目な顔に戻る。
「先程の続き…あの子は、どうしたんですか?」
「あの子は…その。呼んじゃったみたいなの」
 ――呼んだ?
「ちょっとした遊びだったのよ。最初はね…だけど、始めちゃうと止まらなくて」
「ちょ、ちょっと待ってください。何をしたんですか?…遊びって?まさか、コックリさん…とか」
 うん――とマユリが頷いて、また辺りを見回す。
「コックリさんじゃないんだけど。『いもうと』をね、いない妹をいるように見立てて遊ぶ遊びだったの」

 ――さん、駄目じゃない。妹さん連れてきたら。
 ――え?いるわよ、そこに。
 ――何言ってるの。朝からずっと傍にいたじゃない。
 ――ほらぁ。遊んで欲しくて付いてきちゃったんだって。

 目標にされたクラスメイトは、最初は笑い、そして次第に『本当に』いるのではないかと僅かに怯えた顔をする。周りを見たり、足元を見たり、そうなるとコートの裾が足に触れただけでも悲鳴を上げるようになり…。
 わざと本当らしく真面目な顔で言う者は皆仕掛け側。
 数人が組んでこの『悪戯』を仕掛けると、終いには泣き出しそうになる者まで現れる。それを見て仕掛けた側はおかしくて笑う。決して褒められた悪戯ではないが、それは仲間内で冗談めかしてやることもあり、本人達はあまり気にも留めていなかったらしい。現に、マユリも一番最近の『的』になっていた。

 ――おねえちゃん。

 寒さで外に出られない。その暇つぶしもあり、休み時間になるとこうして遊んでいたのだが。

 ――あそんでよ。

 声が聞こえると言い出したのは誰だったか。
 仕掛け側の1人が、ある日もう辞めると言い出してから、次第に何かがおかしくなっていった。
 影が見えると騒ぎ出したのも、仲間の1人だった。誰もいない廊下で服を引張られたと泣き出したのも。

 ――おねえちゃん。

 誰ももうあの遊びをやる者はいなくなっていた。
 けれど。
 ある日、移動教室だからと急いで階段を駆け下りようとした時、

   あ  そ  ぼ?

「聞こえたの。…子供の声で、あそぼ、って…その時に、足を滑らせて…気付いたら救急車の中だった」
 その時のことを思い出したのか、ぶるっと身体を震わせて…そしてまた、病室の入り口を見る。まるで其処から何かが現れるのを恐れているみたいに。
「…『あなた』の妹だって、名乗ったらしいですよ」
「やだ…それじゃ、学校戻れないじゃない…」
 予想通り。
 その話を切り出した途端、マユリは本格的に怯え出したようだった。
 それでも――探しているのが、彼女なら。
 連れて行くべきだろうか…。
 そこまで考えて、ふと気付いた疑問をぶつけてみる。
「あの…間違っていたらごめんなさいね。…もしかして…あなたのその怪我は、その『妹』さんに突き落とされたと思っているんですか?」
「――」
 唇を噛む彼女の答えを聞くまでも無く。
 いる筈のない存在が居ることに気付いてしまった時から、ずっとこうして、怯え続けているのだろう。
 ゆっくりと、心を解きほぐすように語りかけ、ようやくマユリがその気になったのはシリルの力――治癒の力で足の怪我がかなり緩和されてからだった。

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・再び、学校
「――やっぱり、怖いなぁ」
 松葉杖で片方の身体を支えながら、校舎前でマユリが呟く。パジャマから制服に着替え、一本の杖だけで急いで此処まで来たのだ。普通なら医者にも止められるだろう所を非常階段を使って抜けて。
「大丈夫って言うだけはあるよね。…こんなに足が楽になれるなんて思わなかった」
 今は湿布を貼り、軽く包帯を巻いてはあるがギブスは外してある。シリルが特効薬と言い、こっそりと傷つけた自分の血をギブスを外して塗ったところ、相性が良かったらしくみるみる回復してしまったのだった。
「明日検査なのに、先生驚くねきっと」
 その薬の出所が何処であるのか、気付かないままやたらと感心するマユリ。
「……」
 微かに苦いものを飲み込みながら笑みを浮かべた。自分では隠す必要はない…ごく当たり前のことなのだが、だからと言ってそれが周りに通用するとは限らないからで。今の治療のことも、知られてしまったら気味悪がられるかもしれないと思い、そっと口をつぐむことにする。

「あ…あれ…」
「どうかしたの?」
 校舎に入った途端感じる妙な気。それは、何か肌に障る不自然なもの。
 顔をしかめたシリルに気付いたか、マユリが顔を強張らせて辺りを見回す。
 ――と。
「待てーっ」
 奥からぱたぱたと複数の足音と…それに声だろうか。それらが聞こえて来る。
 そこに。
「――きゃはっ」
 突然、前触れもなく目の前に『現れた』少年。これは目的の少女とは違うが…だが。
「――くすくすくす」
 いかにも楽しげに笑うその少年は、何処から現れたのか。
 そして、走ってくる音に気付くとシリルたちをちら、っと見てにっこりと天使の如き笑みを浮かべ、
「あ、おねえちゃんだ。きょうしつに、おいでよ」
 そのまま壁に向かって駆け出し――するりと壁の向こうへと消えてしまう。
「消えたか――全く、何なんだあれは」
 ちぃっ、と鋼が舌打ちして、そしてマユリに気付きシリルにどうして?と目で問い掛ける。
「彼女が呼ばれてるんでしょう?」
 それに対するは、明確な答え。

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・いもうと
 D組の前で足を止め、躊躇いを見せるマユリ。
「大丈夫だよ。みあおたちもついてるし」
 とん、と自分の胸を叩く少女。
「あ――でも、ひとつ忘れないで。気をしっかり持つことが大事だからね。決して、同情したりしないで…マユリが、 呼んだんだから、ちゃんと帰してあげて」
「うん」
 相手が小学生位に見えるせいか…いや、だからこそ、みあおの姿が異質なものと見えるのか。素直に頷いて、中に入る。
 そこに、
 嬉しそうに開けた教室内でかけまわる少女の姿があった。他に人影は、見当たらない。
『もーいーよ』
 高々と積み上げ、組み合わせた机の影に隠れ、くすくすと笑う少女の…半透明な少女の影。みあおが後ろで何かやっている音が聞こえたが、それを確かめる前に少女が此方に気付いて動きを止める。

『――おねえちゃん?』
 一歩。マユリが、きっと表情を固くして踏み出す。
「違うよ…あたしには、妹なんていないの」
『…でも…呼んだよ?』
「あれはっ」
 シリルがマユリの傍で、しっかりと応援するように見守っている。それをちらっと見て安心したか、マユリがすうっと息を吸い込んで、
「…あれは、遊びだったの。本当は、いないの…あの場に、妹なんていないの。何処にも」

『――いない…の?』

 ゆら、と少女の影がゆらめく。
 先程まではあれだけしっかりと皆の目に映っていた輪郭が、じわりと室内に溶けて行く。

「そう。いないのよ。いないの――だから、だから!お願い…消えて…っ!!」

『――――』
 影は、黙っていた。ただじっとマユリの顔を見つめ、そしてゆっくりと…ゆっくりと、頷き。
『うん』
 顔も、もう表情の判別がつかない。
 それなのに、その影は…確かに笑い。
『呼ばれたけど、いらないなら帰るね』
「――っ」
 マユリが小さく、息を呑む。それは、恐怖とは違う、別の感情が表に出てこようとしたためか…だが、その場にいる者達の視線に、きゅっと唇を噛んで頷いた。
 少女が、くるりと周りを見渡す。もやのようにしか見えない今でも、そのくらいの動きなら分かる。何か思うことがあるのか、しみじみとした様子でゆっくりと教室を見てから一人一人の顔を見るように位置を変えながら止まり。

『あそんでくれて…ありがとう』

 ぺこり、と。
 頭を下げて挨拶する様子だけはかろうじて目に入った。
『おにいちゃんも』
 その言葉は誰に対してなのか…あらぬ方向を向いたまま。
 そのまま、空気に溶けて行く。まるで何もなかったかのように。

「あれー?さっきの子はー?」
 突如。
 現れた少年が、机の上にちょこんと座ってきょろきょろと辺りを見回した。
「消えたよ。…それはいい。お前誰だ?」
 訝しげな鋼の言葉にも警戒することなく、机の上で足をぶらぶらさせながら楽しそうににっこりと笑いかけ、
「かーくんは、かーくんだよ。お兄ちゃんたちは、だーれ?」
 見た目に合わない幼さに、皆が戸惑いを見せながら何を言おうかと顔を見合わせる。その様子を上から眺めていた少年が、「ん〜?」と言いながらゆっくりと首を傾け、そして外を見て、
「あ。かーくん、帰らないと。じゃーねー」
「え?あ、ちょっと待って…」
 みあおの言葉が届く前に、少年は机からぴょこんと飛び降り…そして、すぅっと宙に溶けて消える。先程までの動きと全く同じだった。
「………」
 唖然。
 何も言えないまま、数分が過ぎた。
 ようやく気を取り直したシリルが、現在の時間を確かめて声を上げるまで。

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・呑気なのは…
「ありがとう…その…」
 マユリが3人を前にして困ったような、泣きそうな…そして、小さな笑みを見せる。
「ごめんね…」
 最後の言葉は、皆に…そして、何もいなくなった場所に。
「ま、コレに懲りたら変な遊びはしない事だな。アレみたいなのがまた寄って来たら厭だろ?」
「…うん」
「ほらほら。山根はまだ入院中なんだから帰った帰った」
 重い空気を払拭するように、鋼がことさら明るい声を出す。それを聞いてみあおが顔を思い切りしかめ。
「ええっ、この机の山どうすんのよ。あたしたちだけでやれっての?」
 みあおの抗議に鋼が肩を竦め、其れを睨む。
「当たり前だろ」
 見事なまでに絡み合った机の団子。それが、教室のど真ん中に鎮座している。
「さっきの子じゃないでしょ?」
「違うだろうな。『まだ』あれは力も何も無かったし。せいぜいが声で人の気を引いたり少し服を引張ったりってところだ。いくらなんでも…相手を突き落としたりは出来ねえよ。まあ…もう1人のやつ、だな」

 病院の検診時間が来る前に、心残りのありそうなマユリと別れ、シリル達がため息を付きながらせっせと机玉の解体を始める。病院を抜け出した事が知れたら怒られるのもそうだが、此方も朝までになんとかしておかなければこの場に居る3人が…特に高等部に所属している鋼が怒られる。だからこそ、真剣に急いでやっているわけで。
「おわらね―――っ」
 時々泣きを入れながら。

 くすくすくす。
 どこかで、少年の笑い声が聞こえたような、気がした。

「――あいつ…今度見かけたら只じゃおかねえぞ。保護者呼んで直談判してやる」
「…存在すればいいけどねえ」
 みあおのツッコミに、シリルがくすっと笑ってがたんと机の一つを引っ張り出した。幸いというか、椅子は微動だにしていなかったので机の配置に困る事もなく、ただ中身が違うのだけは勘弁してもらおうと適当に椅子のある場所に机を並べていく。
 全て終わった頃には辺りは夕暮れを通り越して夜の域に入っていた。


 ちなみに。
 途中で気を失ったカスミは何をしていたかと言うと。

「――先生。起きろって」
「ん〜…あと五分〜」

 ――ようやく帰り際に思い出した鋼たちが迎えに行くまで、しっかりと眠っていた。
 途中寒さで目を覚ましたのか、毛布を何枚も体の上に追加して。

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・エピローグ
「えええええ!?集団ヒステリー!?」
 鋼の大声になんだなんだと視線が集まってくる。しぃ、とカスミが咎める様な顔で唇に指を当て、
「そうよ。だって結局見つからなかったんでしょ?私の場所に連れて来なかったってことはそうよね?」
「いや、だってそれは…」
 見る前に気絶したの先生だし。
「何か言った?…まあいいわ。結局ね、あれは只の幻覚だったのよ。その証拠に、『妹さん』に会った事のある子って 例の悪戯に加わった子だけだったんでしょ?」
 軽く睨みを聞かせたカスミの言葉には、確かに一理ある。――あくまで、『生徒』としての理屈なら。
「でもみあおも見えてたよ?」
「だからっ、あなたは当事者達の話を聞いたでしょ?その子たちの感情を受けたんでしょ?…見えたっておかしくないわよ。ほら。何の不思議もないじゃない」
 どうやら、理屈だけでどうにか結論付けようとしているようで。
「…センセー、もしかして幽霊は信じなくても超能力は信じるタイプ?」
「っ、と、とにかくっ。そういうことで、ほら、もう出なくなったんだし、ねっ!?解決ってことで、ねっねっ!?」
 どうにかして解決した事にしたいらしい。3人が目を見合わせ、肩を竦める。

「それじゃ、コレは見せなくてよかったのかもね」
 カスミと別れ、校舎を出た3人。みあおがプリントアウトした写真をひらひらと手の中で振る。
「…いやー、これだって観たってシミだって言い張るよ。あの調子じゃ。でも絶対保管しようとしないし、今晩寝れないだろ。今だって本心から納得してるとは思えねえもん」
「あははっ、ホント」
 みあおが可愛らしい笑い声を立てる。その手に握る、『証拠』を見ながら。シリルもくすっと笑いながら、写真を覗きこむ。

 ぼぅ、と…かろうじて人の姿に見えなくもない、酷く歪んだ影が。
 放課後の教室…机の影に隠れるようにして、こっちを見ている小さな影が、写っていた。
「一番良く撮れたのでコレだもんなぁ。んー、もっと枚数撮っておけば良かった」

「…で、こっちは誰よ?」
「そんなの聞かれたって分かんないよ。かーくんだっけ?そう言ってたけど…」
「みあおと同じ位の歳に見えたのになぁ」
 むー、とみあおが膨れた顔をして鋼を見上げ、ぷい、と横を向く。
「みあお、全国の小学生と知り合いじゃないもん。いくら歳が近く見えるからって」
「あーあー、悪かったって。拗ねるなよ」
 別の場所で写した影。それは、少年の姿。現れたところを写したのか消えるところだったのか、身体の線が奇妙なブレを見せて所々透けている。もう1人の『妹』とは全く異質な写り方をしている。
「笑ってたよね。それだけは覚えてる」
「――そうだな…楽しそうだった」
 鋼の言葉を聞いてシリルがゆっくりと頷いた。彼女の前に突如現れた少年は、全く罪のない顔をしながら、あれだけの事をしてのけたのだから。
「あ、そう言えばマユリどうしてる?」
「大人しく寝てますよ。本当ならもう退院しててもおかしくない筈だったんですけど…」
 あの後、急いで帰ろうと焦ったお陰で、途中で階段から滑り落ちたのだとか。言いながらシリルが顔を曇らせる。
「完治していない状態の山根さんを1人で帰してしまって…後悔してます」
 今日もこれから見舞いに行くのだと言うシリル。それじゃ、一緒に行こうかと同じ方向に歩き始める2人。

 …ちらちらと、吐く息よりも白いものが音もなく舞い降りて、地面に触れ、やがて消えた。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【1415/海原・みあお/女性/13/小学生          】
【2036/御崎・神楽 /男性/12/小学生          】
【2239/不城・鋼  /男性/17/元総番(現在普通の高校生)】
【2409/柚木・シリル/女性/15/高校生          】

NPC
山根マユリ

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■         ライター通信          ■
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お待たせしました。「いもうとごっこ」をお届けします。
今回は時間の関係もあり、4人で締め切らせていただきました。

そして、参加してくださった皆様ありがとうございました。
今回のお話では、行動をほぼ共にしている海原さんと不城さんの2人がほぼ共通の内容になっており、柚木さんは途中から、御崎さんに到ってはほとんど独立した話になっています。
参考にさせて頂いた各プレイングから、この様な作りになりましたが、どうでしたでしょうか。
楽しんでいただければ幸いです。

それでは、ご縁があればまた別の場所、別の時間でお会いしましょう。