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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


Dear...

★Opening:PresentFrom…?

クリスマスの朝。
草間興信所の前にクリスマスカラーの包装紙に包まれた一つのプレゼントが置かれていた。
差出人の名前は、無い。ただ、『草間武彦様』とだけ書かれたメッセージカードが付けてあった。
爆弾か何かの危険物か?と思いはするものの…どうもそれらしい気配は無い。
そこで、草間は数人の思い当たる人物に声をかけることにした。
携帯ではなく手帳からリストアップして電話をかける。
しかし誰も知らないとの事だった。
「一体誰からのプレゼントだ…?
いや、そもそもプレゼントなのか…?何か裏がある物かもしれない…」
草間は目の前にあるプレゼントを睨みながら、首を傾げた。
差出人不明なものを不用意に開けるわけにもいかない。仕方なく、再び電話を手に取り、コールする。
「…仕事という仕事ではないんだが…暇なら少し手伝って欲しい…
いや、差出人不明のプレゼントの送り主を探しているだけだ…
報酬?…まあせいぜい、クリスマスケーキくらいか…?」
苦笑いを浮かべて草間は電話を切った。



「こんにちわ。いらっしゃるかしら?草間さん」
「ああ、よく来てくれたな」
「当たり前じゃない…他でもない草間さんの頼みだもの」
ふふっと艶っぽい笑みを浮かべて、藤咲・愛(ふじさき・あい)は興信所のソファに腰を下ろした。
夜は歌舞伎町のSMクラブの女王として活躍している彼女であるが今日は控えめな服装でどこか楚々とした雰囲気だった。
と言っても、その豊満な胸元の谷間はしっかりと見えているのだが。
「それで?電話、途中で切れちゃったから改めて聞きたいんだけど?」
「そうだったな…どこまで話した?」
「差出人の書いてないプレゼントが届いた…ってところまでよ」
「そうか…まあこれを見てくれ」
草間はそう言って、藤咲の前にプレゼントの包み紙を置く。
緑と赤のクリスマスカラーの包装紙に金の鈴付きの綺麗にラッピングされた”いかにも”なプレゼント。
ティッシュペーパーくらいの大きさの箱で、持ち上げてみるとそう重くは無いものだった。
「これがそう?」
「その反応って事は藤咲君じゃないって事だな」
「当たり前じゃない。あたしがそんな奥ゆかしい女に見えて?」
「まあ…そりゃあ…確かに…」
「でしょ?あたしだったらちゃ〜んと名前書いて届けるし…その前に面と向かって渡しに来るわ」
藤咲はそう言って微笑むと、腕を組んでその豊満な胸を強調させる。
胸元から見える深い谷に、草間は慌てて視線を反らせた。
「差出人わからないんでしょ?開けてみたらいいじゃない?」
「しかし不用意に開けるのも躊躇われるからな…」
「何か思い当たる事でもあるの?」
「こういう仕事をやってると、心当たりが無い方が珍しいだろう…」
「それもそうね」
納得して藤咲はそれを手に取った。上から見たり、下から見たりしてみても特に変わった様子は無い。
透けて見えはしないかと顔に近付けてみて…。
「あら…?ねえ草間さん」
「ん?」
「これ、何の音かしら?」
藤咲に言われて草間は耳を近付ける。
聞こえてきたのはチッ、チッ、という時計の秒針の音のようだった。
「時限爆弾かしら?まさかね」
笑いながら言う藤咲ではあるが、草間は微妙に真剣な表情で眉を寄せていた。
少しシリアスになってしまった空気を和まそうと、藤咲はプレゼントを手に持ち。
「まあでも草間さんがいいコにしてたからサンタさんがプレゼントくれたのかも?」
「いいコ…っておまえ…サンタクロースを信じてるのか?」
草間の言葉に、藤咲は一瞬きょとんとした表情をして。
そしてプレゼントをテーブルの上にそっと置き。
「ええ、勿論信じてたわ。昔は、ね…今も信じたいとは思うけど実際会ったことがないから信じようにもね?
でもね…あたしサンタさんは好きよ?何歳の時だったかなあ…父親がサンタだったとわかった時、
いつも仕事が忙しくてあまり家にいなかった父親がプレゼントを…って思ったらクリスマスが有難く思えたもの♪」
「なるほどな…」
昔を懐かしみながらも、どこか弾んだ声で話す藤咲に、草間は笑みを浮かべて頷く。
その笑みに藤咲も微笑み返し。
「まあとりあえず調べてみてあげる。交友範囲は広いから…仕事関係だけど」
「ああ、悪いな」
「さっきも言ったでしょ?草間さんの為だもの」
チュッと投げキッスを送って、藤咲は興信所を後にした。


★Mission:

「…あら…」
草間興信所事務員のシュライン・エマがふと立ち止まる。
「ぬしらもまさか…」
おでん屋台経営の本郷・源(ほんごうみなと)も立ち止まり、見上げる。
「なんや、俺だけちゃうかったんか」
ロックバンドのヴォーカル、佐々木・泰志(ささきたいじ)が、がくっと肩を落とし…
「いやだわ草間さん…何人に声をかけてるのかしら」
歌舞伎町の女王、藤咲・愛(ふじさきあい)は小さく息を吐いた。
草間興信所の入り口前。
偶然にも顔を合わせることになった面々は、草間から例のプレゼントに関して調査を頼まれた者たちだった。
それぞれが調査を終えて帰ってきたところ偶然にも出会ったのだが…
誰もみな、それぞれが草間が自分だけに頼ってくれていたと思っていたらしく互いに微妙な気分になりつつドアを開けた。
中では零がテーブルの上に何かを並べていて、全員が入ってくると慌ててそれを隠すように立った。
「早かったですね皆さん」
零は作り笑いを浮かべてそう言うと、困ったような顔をして視線を彷徨わせる。
「あの、今ちょっとお兄さんが出かけているのでもう少し時間を潰してきてくれますか?」
「――それは別にいいけど…」
「なんや、草間さんどこに行ったんや?」
「お仕事です」
零はしれっとした笑みを浮かべてそう答えると、微笑んだまま全員を事務所の外に押し出す。
わけもわからないながら仕方なく全員で外に出て…近くのカフェに向かった。



カフェで全員が調べた結果を照らし合わせて話を進めてみても、各自思ったような成果があげられなかった。
と言うより、日が日だけにみな自分の事ばかりでそれどころではない。
シュラインは興信所の周辺で聞き込みをしてみたが、店は店員が忙しく働いていて話を聞く耳持たずという感じで、
街を行く人々も今日ははっきりとした目的があり立ち止まる事もなく足早に去って行った。
藤咲は歌舞伎町のお店の従業員の女の子や、草間に縁のありそうなお店へ足を運んだり電話をかけて調べてみたが、
誰も心当たりは無いとの事だった。
源は経営するおでん屋台の常連に声をかけあやかし荘の住人にも数人、
それらしい荷物を持っている者を見たことが無いか聞いてみたがやはり心当たりは無かった。
佐々木は自分のバンドのファンの子達に声をかけて人海戦術で探してみたものの…
草間武彦の存在すらおぼろげにしか知らず、やはりこれも空振りに終わった。
「アカンな。お手上げや」
「これだけ揃って探してたのに手がかり無しって事は…そうね」
「やはりアレはあやつの仕業じゃ!」
「”あやつ”ってなんなんです?本郷さん」
「知らんのか?!あやつじゃ…真っ赤な血染めの服を着、白髪に長い白髭をを振り乱した恐ろしい悪鬼…
口に出すのもおぞましい彼奴の名は…”サタン苦露主”じゃ!!」
真剣な表情で言う源に、一瞬場が沈黙する。
「日本カモシカが激減してからは彼奴の動きも沈静化しておったはずじゃが…再び動き出したのじゃ!」
「――源ちゃん源ちゃん…いくらこの俺でもソレはツッコミ忘れてまうネタやで」
「何を言うか佐々木殿!ネタじゃと?!すぐ笑いに繋げるとは…これじゃから西の人間と言うのは!」
源は心外だと言う風に、カフェの椅子の上に立ち上がって力説する。
シュラインと佐々木は少し引きつった笑みを浮かべてそれを聞いていたが…藤咲は…
「血染めの赤いサンタさん…いいわぁ…素敵ね…」
うっとりするような妖しい笑みを浮かべて、店のクリスマスナイトの事を思い浮かべていた。
それからしばらく源の『今日と言う日がなんであるか』を聞いていた一同だったが、店内が混みはじめて店を出ることにする。
こういう日にあまり長居をしていると店員が良い顔をしないわけで。
勘定を済ませ、全員でぞろぞろとカフェを出た時、入れ違いに女子高生の集団が入って来た。
何事もなくすれ違う瞬間、シュラインは一人の少女の持っているものに気付き…
「ちょっと待って!」
慌てて少女を呼び止めた。
驚いて立ち止まった少女の手には…草間の元に届いたものとまったく同じ大きさで同じ包装紙に包まれたプレゼントが抱かれていた。
「ねえ、あなたそれをどこで…?」
シュラインの問いかけに、少女は口を開き…。


★Ending:MerryX'mas!?

「どういうことかしら武彦さん?」
「なんやねん!冗談やないで!!時計屋の包装紙やと?!」
「そうじゃ!ぬしは知っててわしらをからこうたのか?!」
「もう!草間さん!返答しだいじゃここで縛って窓から吊るしてアゲル!」
パーン!!
捜索隊全員が憤慨しつつ興信所に戻り、口々に怒鳴りながら戸を開けたと同時に、
軽やかな破裂音が響き…四人は固まった。見ると、零が手にクラッカーを持って笑みを浮かべている。
佐々木の頭にクラッカーから飛び出したらしい紙テープが落ちて来るのを見て…
「メリー・クリスマス!」
零がそう叫んだ。
その後ろには、テーブルの上にケーキとシャンパン、チキンとサンドウィッチが並んでいる。
「お帰りなさい。お疲れ様」
そしてソファに座っていた吉原ソープの泡姫、葛生・摩耶(くずうまや)が、
いじっていた携帯電話から顔を上げて入って来た四人に軽く手を上げた。
さらに奥の事務机には草間が腕を組んで座っている。
「さあ。どうぞ座ってください」
呆気に取られている面々を、零が促して座らせる。全員が席についたところで…四人はやっと我に返った。
「なんや…どういうこっちゃ…」
佐々木が呟いて草間に目を向ける。草間は椅子から立ち上がると…シャンパンの栓ををポン!と抜き。
「おまえ達に調べに出てもらった後…アンティーク時計店の店主から電話があってな…
先月修理に出していた時計を今朝、届けたが留守だったから置いて帰ったとの事だった。
今日がクリスマスという事でプレゼント風に包装してくれたらしいが、実は前もって電話を貰っていた事を忘れ…」
「ちょっと待てや!」
「という事はじゃ…?おぬしは修理に出していた事も届けると言われていた事も忘れておった…と?」
「つまりそういう事になるな…」
そう言って、草間は時計をテーブルの上に置く。
木製のそのアンティーク時計からはチッ、チッ、チッと規則正しい秒針の音が…
「つまり草間さんが最初っから覚えとったら探す必要なかったっちゅーことか?」
「そう言う事になるわよねぇ?ねぇ草間さん?…鞭がいいかしら?それともロ・ウ・ソ・ク?」
「のう草間殿…忘れっぽいのはツケの支払いだけにしてもらいたいもんじゃのう!」
「武彦さん。そう言う事はすぐにメモに書いて貼っておくようにとあれほど…」
四人が立ち上がり、草間に詰め寄る。草間は慌てて後方に下がり、
「いや、だから悪いと思いこうやって零と葛生君に頼んでパーティを…」
「問答無用や!!」
「うむ!そんなものでわしは誤魔化されんぞ!」
言うが早いか、佐々木はシャンパンを手に取り、指で栓をすると思いっきり振って草間に向ける。
そして指を離すと同時に勢い良くシャンパンシャワーが噴き出した。
「うわっ…やめろ!!」
「草間さ〜ん、はいこっち向いてv」
続けて、藤咲がムース状になるパーティスプレーを吹き付ける。
「いい格好じゃ!」
さらにパーティ用のクリームを源が紙皿にこれでもか!というくらいに盛り付け…
「本郷源特製パイじゃ!」
草間の顔面に向かって投げつけた。それは宙に弧を描いて見事ヒットする。
―――シャンパンにスプレーにクリームに。
さんざんな状態になっている草間を横目に、いつもならこういう場を宥める役のはずのシュラインは…。
「零ちゃん、ミルク取ってくれる?」
「はい。どうぞ」
涼しい顔で仕事の後の暖かい紅茶タイムを楽しんでいた。
「あ〜あもう…せっかくのシャンパン無駄にしないでよね…まあそれは安いからいいけどさ…」
葛生は溜め息をつきながらも楽しげにその様子を見つめていた。

それから。
草間興信所での即席クリスマスパーティは…テンション覚めやらぬままで夜遅くまで続いたのだった。



「草間さんっ♪」
パーティも終わり、全員で室内の片付けも済ませ…それぞれが帰途につく。
藤咲はあらかたの片付けを終えて、どこかに行こうとする草間を捕まえて声をかけた。
「今日は済まなかった」
「いいのよ。だって楽しかったから」
「そう言って貰えるとやった甲斐があったよ」
草間は髪の毛についたクリームやスプレーを取りながら苦笑する。
藤咲も笑みを浮かべて肩口についたゴミを掃い落とした。
「悪いな…」
「色男が台無しね…いえ、そういうあなたも素敵よ」
艶っぽい笑みでそう言うと、藤咲は鞄の中から小さ目の紙袋を取り出した。
「はい。クリスマスプレゼントよ」
「俺に?」
「そうvうちのお店の招待券よ」
言われて草間は一瞬固まる。
藤咲の店と言われても、SMクラブにまさか行くわけにも…。
そう思いながら固まったままででいると、藤咲はぷっと小さく吹き出して。
「嘘よウ・ソ!開けてみてのお楽しみだから…それじゃ、仕事があるから帰るわね」
笑みを浮かべると、草間に手を振って事務所を出る。事務所のドアが閉まる寸前、
「サンタクロースは居るかもな」
そう背後から声が聞こえてきた。不思議に思いながらも特に気にせずに帰途につく。

仕事に行く前に一度帰宅して。
郵便ポストを見た藤咲は、赤い包装紙にツリーのシールが貼ってあるものが入っている事に気付く。
取り出して見ると…「DEAR:A・FUJISAKI〜FROM:KUSAMA」の文字。
急いで部屋に入り。包みを開いた中から現れたのは…藤咲の好きなカラーのネイルが3色。
そして「MerryX'Mas」と書かれたクリスマスカード。
事務所を出る時に聞こえた草間の言葉が思い出され、藤咲は微笑む。
せっかくだからすぐにでも塗りたいけれど…勿体無いからそれを化粧箱に大事に仕舞う。
そしてドレッサーの鏡に映る自分を見つめながら小さく呟いた。
「そうね…久々にサンタさんが来てくれたみたい…MerryX'mas」



〜fin〜


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0086/シュライン・エマ/女性/26歳/翻訳家・幽霊作家+草間興信所事務員】
【0830/藤咲・愛(ふじさき・あい)/女性/26歳/歌舞伎町の女王】
【1108/本郷・源(ほんごう・みなと)/女性/6歳/オーナー・小学生・獣人】
【1979/葛生・摩耶(くずう・まや)/女性/20歳/泡姫】
【2443/佐々木・泰志(ささき・たいじ)/男性/23歳/ロックバンドのボーカリスト】

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■         ライター通信          ■
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こんにちわ。
この度は草間興信所クリスマスイベントに参加いただきありがとうございました。
短期間での受注・納品という事でしたが予定人数以上の方に参加していただけて嬉しかったです。
今回はEndingが全員共通で、Missionがシュライン様、藤咲様、本郷さま、佐々木様が共通、
パーティ準備に関する内容の都合上、葛生様が少し違った内容になっております。
宜しければ他の皆様の行動もご覧になって下さいませ。(^^)
こういったイベントが好きなので、今回は参加していただけて嬉しかったです。
皆さんと楽しいクリスマスを過ごさせていただいた気持ちです。

またいつかどこかで皆さんに会えるのを心から楽しみにしております。

:::::安曇あずみ:::::

>藤咲・愛様
はじめまして。このたびはご参加ありがとうございました。
藤咲様の艶やかで妖しい雰囲気を出したく頑張ってみたのですがあまり出せなかった事が悔やまれます。
設定等個人的に魅力を感じたのですが、それも生かす事が出来ませんでした。<(_ _)>
夜の世界の知識に疎いのでその点、嘘が多いかもしれませんが楽しんでいただけていたら幸いです。
いつかどこかでまたお会い出来るのを楽しみにしています。

※誤字脱字の無いよう細心の注意をしておりますが、もしありましたら申し訳ありません。