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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


Dear...

★Opening:PresentFrom…?

クリスマスの朝。
草間興信所の前にクリスマスカラーの包装紙に包まれた一つのプレゼントが置かれていた。
差出人の名前は、無い。ただ、『草間武彦様』とだけ書かれたメッセージカードが付けてあった。
爆弾か何かの危険物か?と思いはするものの…どうもそれらしい気配は無い。
そこで、草間は数人の思い当たる人物に声をかけることにした。
携帯ではなく手帳からリストアップして電話をかける。
しかし誰も知らないとの事だった。
「一体誰からのプレゼントだ…?
いや、そもそもプレゼントなのか…?何か裏がある物かもしれない…」
草間は目の前にあるプレゼントを睨みながら、首を傾げた。
差出人不明なものを不用意に開けるわけにもいかない。仕方なく、再び電話を手に取り、コールする。
「…仕事という仕事ではないんだが…暇なら少し手伝って欲しい…
いや、差出人不明のプレゼントの送り主を探しているだけだ…
報酬?…まあせいぜい、クリスマスケーキくらいか…?」
苦笑いを浮かべて草間は電話を切った。



葛生・摩耶(くずう・まや)は、草間からの電話を受けてすぐに家を出た。
仕事はだいたい夜ゆえに、昼間は比較的自由に過ごせる。
まあ普通なら寝ている時間帯ではあるのだが、草間の頼みとあっては出ないわけにも行かなかった。
電話の話だとケーキを用意しているとの事。
それなら…と。
草間興信所に向かう前に、親しくしている酒屋に足を運んだ。
そして3本ほど安物のシャンパンをチョイスする。
少し高めのシャンパンも2本。最後にとっておきを1本。
さすがに手で持って移動するにはは重く、割れる心配もある。
葛生は店主に配達を依頼して店を出た。
街はさすがに見渡す限りクリスマスムード。
どこか浮かれている空気の中、葛生は苦い笑みを浮かべて街を歩きだしたのだった。


★Mission:

葛生が草間興信所の前に差し掛かると、誰かが興信所から出てきたところだった。
姿がよく見えずに誰なのかはわからなかったが、依頼人かあるいは…と思いつつ事務所に入る。
その人物とほとんど入れ違いになった事もあってかドアを開けると零がすぐそこに立っていた。
「あ。こんにちわ、葛生さん」
「さっきのは依頼人?」
「いえ。草間さんが呼んだ人です」
零はそう言うと、葛生にソファに座るように促す。
「例のプレゼント探しの人員ってわけね…」
「そう言う事だ」
ふと呟いた葛生の言葉に、どこからともなく草間がやってきて答えた。
「あら。おトイレでも行って来たの?」
「書類を取ってきただけだ」
ふふっと笑みを浮かべる葛生に、草間は苦笑いを浮かべながら答えた。
葛生はテーブルの上に置いてある灰皿を手前に引いて、鞄から煙草を取り出して火をつける。
そしてふぅ…と一息、煙を吐き出して。
「それで?プレゼントの事だけど現物はどこかしら?」
「実はちょっと気になる事があって、零が金庫に仕舞ってるよ」
「気になる事?」
「時限爆弾ですって」
しれっとした表情でさらりと言う零に、葛生は一瞬固まる。聞き流してしまいそうになるくらいの軽い話し方だったが…
「時限爆弾って…そんな危険物…置いといていいの?」
「ミスリル素材の金庫ですから」
「なによそれ…」
どんなに頑丈でも爆弾に耐えられるわけないじゃない…と、葛生は表情を引きつらせる。
しかし零はよほど金庫に自信があるのか、あまり気にしていない様子だった。
「もしもの時の事を考えて保管してるだけだ…調べてみてわからなければ然るべき連中に取りに来てもらうつもりだ」
「そりゃそうでしょう…」
いつ爆発するかわからないような品物を呑気にずっと室内に置いておく方がおかしい。
なんとなく火気厳禁という言葉が脳裏を過り、葛生はまだ吸い始めたばかりの煙草を灰皿に押し付けて火を消した。
「ま、まあとにかく。私はどうすればいい?」
組んでいた足を組みかえて、草間に顔を向けた。手にしていた書類から、彼も視線を葛生に向けた時…
ジャリリリリン!ジャリリリリン!…と、レトロな音色の電話の音が鳴り響く。
とりあえず二人は会話を打ち切り、草間が書類を机の上に置き電話を取った。
「はい。こちら草間興信所…ええ…は?…ええ…確かにそうですが…え?それじゃあもしかして…」
仕事関係でなにかトラブルでもあったのかしら?と、葛生はもすそうならそちらの手伝いをしてもいいわね…と思う。
何も興信所の手伝いをしなければ生活して行けないと言うわけでは決してないのだが、
草間の人望の成せる業か、困っているなら手助けをしてあげたいと思わせる何かがあった。
「――ええ、わかりました…じゃあ代金は後日…はい」
草間は電話に向かい頭を下げる。誰も見てないわよ…と、心の中でツッコミを入れる葛生。
「それで?私は何をすればいい?」
草間が電話を切ると同時に、改めて聞く。草間は口元に手を添えて少し考える仕種を見せ。
「予想外だったな…」
「なにが?」
「いや…今の電話なんだが…」
苦笑いを浮かべたまま、草間は今の電話の内容を葛生に話した。
電話の相手は隣の地区にあるアンティーク時計店の店主。
その内容は…草間が先月修理に出していたアンティークの時計が治ったので今朝、届けましたという事だった。
さらにクリスマスという事でサービスでクリスマスラッピングをしてお届けしたとの事で。
留守だったがどうせすぐに来るだろうとそのまま興信所の前に置いて帰ったらしく。
「その時計屋さんのラッピングの特徴は?」
「緑と赤で金の鈴がついているティッシュペーパーの箱くらいの大きさの…」
「まあ!それはアレじゃないですか」
零がそれを聞いて、どこかに向かう。
そしてすぐに戻ってきた彼女の手には…緑と赤のクリスマスカラーに金の鈴のついた…
「ちょっと?それもしかして…」
「ああ…差出人不明の例のプレゼントだったんだが…」
草間は零から包みを受け取ると、テーブルの上に置く。
そしてしばらくじっと見つめた後…包装紙を丁寧に開き始めた。
「そう言えばお兄さん。この前、時計屋から電話があったって言ってましたね」
「ああ…俺もさっき思い出した」
「ちょっと待って…じゃあ要するにそれ…」
がさがさと音をたてて、クリスマスカラーのラッピングが綺麗に剥がされる。
壊れないようにビニールで梱包された中から…木製のアンティーク時計がその姿を表した。
チッ、チッ…という規則正しい秒針の音が刻まれている。
その時計を目の前に…三人はしばらく沈黙した。
「……確かにお兄さんの時計ですね」
沈黙を破ったのは零の呟き。草間は黙ったままで頷いた。
「何?じゃあ差出人不明のプレゼントは時計屋からの届け物だったって事?」
「そう言う事になるな…」
「良かったじゃない。差出人がわかって…もしかしたらサンタかもしれないとまで思ったわ」
笑いながら言う葛生に、草間は顔を上げて。
「危険物ではなかった事は良かったな…なんだ、サンタクロースを信じているのか?」
「そんなわけないでしょ…でもまあ、いないとは言い切れないから否定はしてないわ」
肩を竦めながら答えた葛生に、草間は笑みを浮かべるだけで何も答えなかった。
「でもお兄さん、どうするんです?探してくれている皆さんの事」
「なあに?皆さんって事は…一人二人じゃないわけ?」
葛生は髪の毛をサラっとかきあげて溜め息をつく。
自分と草間だけか、あるいはもう一人くらいかと思っていた故に、来る前に注文しておいたシャンパンの量が少し気になった。
「何人いるの?連絡を入れてもう戻ってきてもらったら?」
「他に四人いる。そうだな…だがその前にやっておきたい事があるんだが…」
「私の手が必要なら貸すわよ?」
「そうか…なら零と二人で買ってきて欲しいものがある…」
買い物?と、葛生は首を傾げる。そう言えば、電話でケーキを用意しておくと言っていたが…。
「まさかケーキとか買って来いって?」
「よくわかったな」
そんな事だろうと思ったわ、と葛生は小さく息を吐いて立ち上がった。
零もすぐに出かける仕度をする。草間が財布からいくらか取り出して、そのまま葛生に手渡した。
「ケーキとか言われても俺はよくわからないからな…そういうのはおまえ達の方が詳しいだろ」
「そうね…好きなもの買っていいって言うなら」
任せるよ、と苦笑混じりに言うと、草間は徐にペンを取ってメモ帳に何かを書く。
葛生がそれを受け取り見ると、そこに書かれていたのは”軽い食べ物、飲み物、クラッカー等”の文字。
「パーティでもするつもり?」
「その通りだが…」
冗談混じりで聞いた葛生だったが草間からの意外な答えを聞いて少し目を丸くした。
ハードボイルドを目指している彼だけに、ケーキを用意する事はしてもパーティを開こうと考えるとは思っていなかったのだが…。
しかしそれも悪くない。
「了解。確かに受けたわ。それじゃあ零ちゃん、行きましょう」
「はい」
「あ。草間さん、酒屋から届け物があると思いますから宜しく」
葛生はそう言って微笑むと、零と並んで草間興信所を後にする。
家を出た時はよもやクリスマスパーティ用の品々を買いに行く事になるとは思っていなかったが、
それはそれで少し楽しいような気もする。
普段、どこか本当の自分の人生よりも先の世界を見ている葛生が…
年齢相応の今の女性のクリスマスを過ごしているような、そんな気分になれた。
「零ちゃんはどこかお店知ってる?」
「いいえ…お任せしようかと」
「それじゃあ任せてもらいましょうか」
そう言って微笑み、葛生はクリスマスカラー一色の街へ歩き出したのだった。


★Ending:MerryX'mas!?

「どういうことかしら武彦さん?」
「なんやねん!冗談やないで!!」
「そうじゃ!ぬしは知っててわしらをからこうたのか?!」
「もう!草間さん!返答しだいじゃここで縛って窓から吊るしてアゲル!」
パーン!!
捜索隊全員が憤慨しつつ興信所に戻り、口々に怒鳴りながら戸を開けたと同時に、
軽やかな破裂音が響き…四人は固まった。見ると、零が手にクラッカーを持って笑みを浮かべている。
佐々木の頭にクラッカーから飛び出したらしい紙テープが落ちて来るのを見て…
「メリー・クリスマス!」
零がそう叫んだ。
その後ろには、テーブルの上にケーキとシャンパン、チキンとサンドウィッチが並んでいる。
「お帰りなさい。お疲れ様」
そしてソファに座っていた吉原ソープの泡姫、葛生・摩耶(くずうまや)が、
いじっていた携帯電話から顔を上げて入って来た四人に軽く手を上げた。
さらに奥の事務机には草間が腕を組んで座っている。
「さあ。どうぞ座ってください」
呆気に取られている面々を、零が促して座らせる。全員が席についたところで…四人はやっと我に返った。
「なんや…どういうこっちゃ…」
佐々木が呟いて草間に目を向ける。草間は椅子から立ち上がると…シャンパンの栓ををポン!と抜き。
「おまえ達に調べに出てもらった後…アンティーク時計店の店主から電話があってな…
先月修理に出していた時計を今朝、届けたが留守だったから置いて帰ったとの事だった。
今日がクリスマスという事でプレゼント風に包装してくれたらしいが、実は前もって電話を貰っていた事を忘れ…」
「ちょっと待てや!」
「という事はじゃ…?おぬしは修理に出していた事も届けると言われていた事も忘れておった…と?」
「つまりそういう事になるな…」
そう言って、草間は時計をテーブルの上に置く。
木製のそのアンティーク時計からはチッ、チッ、チッと規則正しい秒針の音が…
「つまり草間さんが最初っから覚えとったら探す必要なかったっちゅーことか?」
「そう言う事になるわよねぇ?ねぇ草間さん?…鞭がいいかしら?それともロ・ウ・ソ・ク?」
「のう草間殿…忘れっぽいのはツケの支払いだけにしてもらいたいもんじゃのう!」
「武彦さん。そう言う事はすぐにメモに書いて貼っておくようにとあれほど…」
四人が立ち上がり、草間に詰め寄る。草間は慌てて後方に下がり、
「いや、だから悪いと思いこうやって零と葛生君に頼んでパーティを…」
「問答無用や!!」
「うむ!そんなものでわしは誤魔化されんぞ!」
言うが早いか、佐々木はシャンパンを手に取り、指で栓をすると思いっきり振って草間に向ける。
そして指を離すと同時に勢い良くシャンパンシャワーが噴き出した。
「うわっ…やめろ!!」
「草間さ〜ん、はいこっち向いてv」
続けて、藤咲がムース状になるパーティスプレーを吹き付ける。
「いい格好じゃ!」
さらにパーティ用のクリームを源が紙皿にこれでもか!というくらいに盛り付け…
「本郷源特製パイじゃ!」
草間の顔面に向かって投げつけた。それは宙に弧を描いて見事ヒットする。
―――シャンパンにスプレーにクリームに。
さんざんな状態になっている草間を横目に、いつもならこういう場を宥める役のはずのシュラインは…。
「零ちゃん、ミルク取ってくれる?」
「はい。どうぞ」
涼しい顔で仕事の後の暖かい紅茶タイムを楽しんでいた。
「あ〜あもう…せっかくのシャンパン無駄にしないでよね…まあそれは安いからいいけどさ…」
葛生は溜め息をつきながらも楽しげにその様子を見つめていた。

それから。
草間興信所での即席クリスマスパーティは…テンション覚めやらぬままで夜遅くまで続いたのだった。



「草間さん」
藤咲はパーティの片付けがあらかた終わった頃、ゴミをまとめて外に持って出た草間に声をかけた。
室内ではまだ他の面々が掃除を続けているのだが…。
「仕事があるから帰るわね」
「ああ、そうか…今日は済まなかったな」
「いいわよ。楽しかったから」
「そう言ってもらえると甲斐があったよ」
草間は苦笑混じりにそう言うと、ゴミの入った袋を置いて腰を伸ばした。
「嫌ね、もうそんな年?」
「まだ若い…」
「わかってるわよ。それより、遅くなったけどこれ…クリスマスプレゼントよ」
「俺に?」
葛生が差し出したのは…綺麗にラッピングはされているものの、
それが何であるかわかるようになっている品物だった。
「ドンペリか…」
「ドン・ペリニョン・ロゼ1993…ま、そんな高価なものじゃないけど…」
「充分だよ」
ニッと笑みを浮かべて、草間は瓶を掲げた。
「それじゃあ帰るわね。他のみんなにも宜しく」
「ああ、気をつけてな」
軽く頭を下げる葛生。歩き始めた瞬間、
「サンタクロースは居るかもな」
そう背後から声が聞こえてきた。不思議に思いながらも特に気にせずに帰途につく。

仕事場に行くと、すでに数人の仕事仲間が集まっていた。
その中で店では客を案内している男性が葛生に届けられている花とプレゼントを運んできた。
日が日だけに、店に来る事のできない常連客が届けてきたのだろうが…
その中の白い包装紙に赤と緑のリボンがついたものに目が止まる。
取り出して見ると…「DEAR:M・KUZUU〜FROM:KUSAMA」の文字。
包みを開いた中から現れたのは…。
そして「MerryX'Mas」と書かれたクリスマスカード。
帰り際に聞こえた草間の言葉が思い出され、葛生は微笑み、小さく呟いた。
「MerryX'mas…」



〜fin〜


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0086/シュライン・エマ/女性/26歳/翻訳家・幽霊作家+草間興信所事務員】
【0830/藤咲・愛(ふじさき・あい)/女性/26歳/歌舞伎町の女王】
【1108/本郷・源(ほんごう・みなと)/女性/6歳/オーナー・小学生・獣人】
【1979/葛生・摩耶(くずう・まや)/女性/20歳/泡姫】
【2443/佐々木・泰志(ささき・たいじ)/男性/23歳/ロックバンドのボーカリスト】

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■         ライター通信          ■
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こんにちわ。
この度は草間興信所クリスマスイベントに参加いただきありがとうございました。
短期間での受注・納品という事でしたが予定人数以上の方に参加していただけて嬉しかったです。
今回はEndingが全員共通で、Missionがシュライン様、藤咲様、本郷さま、佐々木様が共通、
パーティ準備に関する内容の都合上、葛生様が少し違った内容になっております。
宜しければ他の皆様の行動もご覧になって下さいませ。(^^)
こういったイベントが好きなので、今回は参加していただけて嬉しかったです。
皆さんと楽しいクリスマスを過ごさせていただいた気持ちです。

またいつかどこかで皆さんに会えるのを心から楽しみにしております。

:::::安曇あずみ:::::

>葛生・摩耶様
はじめまして。このたびはご参加ありがとうございました。
今回、葛生様には興信所待機という形にさせていただきました。
零とのパーティの準備と言う事で、差出人探しには参加しておりませんが申し訳ありません。
夜の世界の知識に疎いのでその点、嘘が多いかもしれませんが楽しんでいただけていたら幸いです。
いつかどこかでまたお会い出来るのを楽しみにしています。

※誤字脱字の無いよう細心の注意をしておりますが、もしありましたら申し訳ありません。