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<東京怪談ウェブゲーム あやかし荘>


干支争奪戦

〜オープニング〜
ある日の新月の夜、真夜中に目が覚めた柚葉は夜の散歩に出ていた。
今日は本来の子狐の姿でのんびり人のいないアスファルトの上を歩いたり、塀の上に駆け登り熟れ過ぎの柿の匂いを嗅いでみたりと、遊びながら進んで行くと柚葉は立ち止まった。
ぽつんぽつんと外灯が照らす道路の先から、ある匂いが流れてくる。
しかも、その匂いの持ち主は複数。
(あれ?なんだろ?)
子狐柚葉は駆け出すと、ひらりと塀の上に乗り駆ける。
塀から塀に飛び、大きく伸びた枝を駆け上がり、柚葉は通りの裏にある神社の境内裏へと回った。
暗い境内の裏にはたくさんの猫たちが集まっている。
柚葉は何事かと思いながら、静かに枝から枝に飛び移り、彼らの近くへと寄ると耳を澄ませた。
「皆の者。今宵は月に一度の集会に良くぞ集まった」
境内の上に立つ深い金の目をした老猫が他の猫たちに向かって話す。
「今年も残すところ僅かとなった。実は、常々わしは思っておることがある。それは、何故わし等猫は干支に入っていないのかと言うことだ」
この言葉に周りの猫たちはそうだ、そうだと口々に騒ぎ始めるが、老猫が静かに手で制す。
「皆の不満、良く分かる。そこで、だ。これより閏の年はわし等猫の年、猫年とする!」
老猫の言葉に歓声とも動揺ともとれないざわめきが起こる。
「でも、長老。猫年にするなんて、どうやるんですにゃ?」
若い三毛猫がそう言うと、隣に居た毛の長い落ち着いた眼差しの白猫も言った。
「そうですにゃ。他の動物たちはきっと黙っていないと思うのにゃ」
口々に騒ぎ出す猫たちを見渡し、長老猫は口を開いた。
「分かっておる。だから、奪い取るのだ。来年、猿へとタスキの渡る大晦日と正月の狭間の時、それが勝負の時だ」
猫たちは歓声をあげ、お互いを鼓舞しあい始める。
「絶対勝つにゃー!!」
「来年は猫年にゃ。すばらしい響きにゃー!」
木の上でその様子を見ていた柚葉は勝負、という言葉に耳を立て背筋だけでなく尻尾も伸ばすと、どうやら勝負好きの性質が疼いてきたらしく、騒ぐ猫たちの真ん中に降り立った。
「勝負だったら柚葉も負けないよ!さぁ、かかってこーい!!」
「やや!何故、ここに狐がおる?ここは猫の場だ。お前は去れ!」
長老猫がそう言うや強い風と不思議な眩暈に柚葉は目を瞑った。

「柚葉ちゃん、起きて。朝ごはんよ」
「勝負だー!!」
突然両手の拳を振り上げた柚葉に、因幡恵美はあやうく顔を打たれそうになった。
「きゃ。もう、柚葉ちゃんったら、また誰かと勝負する夢みてたのね。ほら、顔を洗ってきて。ご飯にするから」
「ほえ?」
さっさと柊木の間から出て行く恵美の後姿をぼうっと見ていた柚葉は首をかしげた。
「あれ?猫ちゃんたちは??……あれ?」
布団の上で腕を組み、あぐらをかいて唸っていたが、あっ!と手を叩いた。
「そうそう。大晦日と正月の狭間で勝負するんだった!ねぇねぇ、みんな聞いて〜」
勝負の日と時間だけはしっかり覚えていた柚葉は元気よく部屋を飛び出していった。
……多分、いや確実にどういう理由で勝負するのかは覚えていない。

〜大晦日の朝〜
「ごめんください」
「はーい」
ピリリと身の引き締まるような寒さの朝。
朝食の最中だった、恵美は朝の早い訪問客に誰だろうと首を傾げて、玄関へと出た。
「おはようございます、恵美さん」
「天薙さん、どうしたんですか? こんな朝早くから」
おっとりとした雰囲気を纏い、にっこりと微笑む天薙さくらは重そうに大きな発泡スチロールの箱を抱えている。
「娘が何かとお世話になってるから年末のご挨拶を、と思って」
他意はなさそうであるが、それが天然ボケの恐ろしさと言おうか……
「そうですか……あ、どうぞ。朝ごはん中なんですけど……」
「あ、じゃあお邪魔しますね。よいしょっと」
着物の裾を踏まないよう、器用に玄関の段差を上がったさくらはあやかし荘住人たちの朝食場である管理人室に入った。
「おはようございます、皆さん」
「あ、おはようございます、天薙さん」
にっこりと挨拶をしたさくらは発泡スチロールの箱を下ろした。
それにいち早く反応したのは嬉璃。
「なんぢゃ、それは?」
「お土産です」
そう言い、蓋を開けるとなんとまだ生きている伊勢海老が詰められている。
「おおっ!!伊勢エビじゃねーか?」
「晦日に伊勢エビか……いや、正月に汁にして食うのもいいかもしれんな」
身を乗り出し、目を輝かせたのは忌引弔爾と真名神慶悟。
あやかし荘に住んでいる訳ではないのだが、何故か一緒になって朝食を取っている。
……年末で金がない、というのでは無いだろう。多分。
「いや、やはり刺身じゃ。新鮮なものはプリプリしていて旨いのじゃ」
と、あやかし荘の薔薇の間に何故か居座っている本郷源が頷きつつ言う。
「本年中は娘がお世話になりました。どうぞ、来年も私共々娘の事もよろしくお付き合いください」
礼儀正しく正座をし、頭を下げたさくらに慌てて恵美と三下が習う。
「いえ、こちらこそ、よろしくお願いします」
「かたっくるしいやつぢゃなぁ……まぁ、その心がけは良いものぢゃ」
ただ単に伊勢エビが嬉しいから、だろうが勿体つけて嬉璃が言った。
「それに引き換え……」
じろり、と嬉璃の視線が弔爾と慶悟を向く。
「お主らも少しは見習ったらどうぢゃ?」
「何の事だ?大体、俺はお前に世話になった覚えは無い。三下を世話した事なら何度もあるがな」
「そーだ、そーだ」
味噌汁を啜りながら、慶悟に相槌を打つ弔爾。
そんな三人の様子もお構いなく、さくらはあら、と首を小さく傾けた。
「柚葉さんは何をしているのかしら?」
見れば、カレンダーの前で大きくそのふさふさの尻尾を右へ左へと振っている。
後ろからでも、柚葉が何かわくわくしているという事だけは伝わってくる。
「この間からずっとああなんですよ。なんでも、決闘するんだって」
「決闘?」
「はい」
恵美はこの間柚葉が見たという夢の事を4人に話した。

「なんと、裏の世界ではその様な事になっておったのじゃな……」
むむむっ、と唸る源の横で慶悟も興味深げにあごを擦る。
「猫に干支が奪われると……どうなるんだろうな?」
「さぁ、どうなるんでしょうね? でも、何だか楽しそうじゃないですか」
と、さくらは声を弾ませている。
弔爾は頭を掻き、干支ねぇ……と呟いた。
「一度決まったもんをどうこうした所で面倒臭くなるだけだと思うが……」
まったくやる気ナシの弔爾の言葉に、彼の斜め下から声がした。
『猫が干支になれなんだのは二通りの説があるが……もし、干支を決める際に早く来た十二の獣を干支と定める日を誤って教えられた説が正しければ、気の毒な話よ』
ふぅん……と興味無さそうな声を出した弔爾の横から慶悟は頷き妖刀・弔丸に言った。
「なるほどな……それなら猫が干支を欲しがるのも頷ける」
「ふふふ……」
突然笑い出した源に三下が心配そうに皆を見る。
「源ちゃん……?」
「どうしたのぢゃ? 何かヘンな物でも食うたのか?」
「昨日から嬉璃殿と同じものしか食べないのじゃ。いや、今の話で合点がいった。道理で我がハムスター年というものがないと思うたのじゃ!」
「……はぁ?」
源の言葉の意味がまったく理解できない者たちの声がハモる。
「何言ってんだ。鼠年があるじゃねーか」
「甘い! 正月のあんころ餅やキントンよりも甘い!!」
即座に弔爾に反論した源はぐぐっと拳を握り締め、熱く語る。
「苦節六年。わしが悩みに悩んだこと、お主にはわかるまい。……そうじゃ。わしも参戦じゃ! 猫や猿には負けんのじゃ。来年こそハムスター年じゃ! わーっはっはっはっはっは!!」
在らぬ方を向き、両手を腰に当てて高笑いする源。
「……誰だ、酒飲ませた奴はー」
呆れたように慶悟は言うが、さくらは心配そうに眉を寄せた。
「折角の年越しに大変な事にならなきゃいいけど……そうね、私も見に行こう。いつやるの?」
「大晦日と正月の狭間ー!!」
そう叫んだ柚葉は待ちきれない、といった風に腕を大きく何度も回し、鼻息も荒く勝つぞ、と源と同じ方向を向いて拳を振り上げている。
そんな二人を見ていた慶悟も箸を置くと、にやりと笑んだ。
「年の瀬にひと暴れというのも悪くはない。今年最後まで残った厄を払い落とす意味も含めて、な」
どうやら楽しむ気らしい。
弔爾は面倒そうな顔で茶を啜っているが、どうせ自分にとり憑いている刀のせいで、行くんだろうなと予感していた。

〜大晦日の夜〜
ぼんやりと明るい不思議な空間の中、一匹の不思議なまんまるい生き物が泳いでいる。
水色のまあるい体についた小さなヒレを動かし、泳いでいた宇宙魚という種族のピューイ・ディモンはいつもと違う夢世界の変化に目を瞬かせた。
「なんだぴゅ?」
何がどう違うと言われれば幼い彼に説明は出来ないが、それでも何だかオカシイ事に興味を持ったようだ。
「良くわかんないけど、行ってみるぴゅ〜」
まあるい魚らしきものは泳いでゆらゆら揺らめく光の幕のようなものへと泳いでいった。

「さ、戸締り良し。じゃ、出かけましょうか」
「早く、早くー!」
ゆっくり戸締り確認を終えた恵美を急かし、柚葉が走り出す。
「おいおい、お前が一人で先に行ったら俺たちが分からなくなるだろうが」
そこをすかさず止めた慶悟の後ろから大きな今度は風呂敷包みを下げ、さくらは微笑みながら歩き出す。
「まだ時間はありますから、大丈夫よ」
「でも〜」
「大晦日と正月の狭間っつってんだから、きっと年が変わる瞬間なんだろうよ。今はまだ11時前だぜ……そんなに今から焦ってると後で疲れるぞ」
まだ、何か言いたそうな顔の柚葉だが、しぶしぶ大人しくなる。
「何を言うおるのじゃ。勝負は先手必勝。場所取りも大事なことなのじゃ。さ、さっさと出発じゃ!」
袴の袖をふりふり、歩く源に気分が戻ったのか、柚葉も彼女の隣まで駆け寄ると、二人そろってえいえいおーと掛け声合わせて拳を挙げた。
「……元気なガキどもだねぇ」
一番最後尾をダラダラと歩く弔爾はもう一つの風呂敷包みを肩に担ぐように持ちながら、その風呂敷の中の物に内心頬が緩んでいた。
風呂敷の中身は酒。しかも、包む前に弔爾は見たのだが、かなりの良い酒なのだ。
さくらと恵美は年越しそばを持っているし、外で良い酒飲んで蕎麦を食うのも悪くねぇな、とまったく決闘の事はどこかに忘れている。
ま、それはそれで弔丸にとっては好都合なのだが……
「で、場所はどこなんだ?」
慶悟の問いに柚葉は歩きながら、多分あっちと道の先を指差した。
「多分とはなんぢゃ。多分とは」
「だって〜……でも、きっと猫ちゃんたちの所に行けば分かるよ」
楽観的な言葉に一同呆れながらも、しかしやはり柚葉について行くしか、今のところ方法はない。
初詣に行く人々の流れと別の方向へ歩きながら、一同はあの日柚葉が辿り着いた古い神社へと着いた。
元気良く裏へと駆けて行く柚葉を見ながら、ゆっくり堂を見る。
随分古ぼけていて、もうあと何分もしないうちに正月を迎えるというのに、注連縄も何も見当たらない。
賽銭箱も賽銭という字が薄くぼやけ、何とか読み取れるほどで、長い間雨風にさらされて来たのが容易に想像できた。
「ここは、管理者はいないらしいな……」
『まったく、何と言う不信心か』
慶悟の言葉に不機嫌さを隠す事無く、妖刀は言った。
「そろそろ時間みたいだけど、でも、何の気配もしないわねぇ?」
裏へと回ったさくらは誰もいない空き地に首を傾げた。
「本当に……決闘はあんのか?」
弔爾の言葉にはありありと、不審の色。
「あるよ! ボクが勝ーつ!!」
だが、柚葉は自信たっぷりで答えた。
「んーハムスター年の夢が……ついえてしまうのか?」
渋い顔をする源。
そんな彼女の頭にぽよんと何かやわらかいものが当たり、はねる。
「ん?」
「あいたたた……失敗でぴゅ」
声の方を向いた源は固まる。
「……魚、か?」
唖然とした慶悟の言葉にピューイ・ディモンは目をぱちくりさせる。
「ここはどこでぴゅ? 僕、道間違えたみたいでぴゅ」
「どこだと言われてもな。まずはお主の名を名乗ってもらわないと言えないのぢゃ」
「僕はピューイ・ディモンでぴゅ」
素直に名前を名乗ったピューイ。
「ここで何かあるんでぴゅか?」
ピューイの質問に恵美は朝あやかし荘でしたように、柚葉が見た夢のことを話した。
話を聞き終わったピューイはくるりと恵美のまわりをひと泳ぎした。
「夢の話なのぴゅ? じゃあ僕の出番なのぴゅ!」
と、自信満々に言ったが、突然現れたまんまる魚に嬉璃は胡散臭げな目を向ける。
「ふん。止めぢゃ。決闘なんぞどうでも良いのぢゃ。恵美、蕎麦の準備ぢゃ」
やる気なくした嬉璃がここで年越し蕎麦を食べようと指示し始めた時、境内左手の林が動いた。
「ほら、しっかりしてくださいにゃ〜長老〜」
「まったく……昨日はお酒は控えてくださいと言ったにょに、若いふりして飲むから……」
「にゃんだとーわしは〜まだまだ若いのにゃ〜〜!!」
「はいはい。今から決戦にゃんですからね。しゃんとしてくだにゃいよ」
林の暗影に消えていく三匹の猫。
しばらく無言で見送っていたが、柚葉が駆け出した。
「決闘だー!」
「待つのじゃ。わしも行くのじゃー!」
慌てて源も駆け出し、林の中へと飛び込む。
「……本当だったな」
「ま、行ってみるか」
弔爾と慶悟も歩き出し、他の皆も林へ入った。
「猫年争奪戦……僕も魚年をかけて戦うぴゅ〜!」
やる気満々な参加者がここにまた一人(?)増えた。

〜大晦日と正月の狭間〜
『一年間ご苦労じゃったな』
『次の一年御頼みしますメェ』
都心とは思えないほど青々とした下草が生えた広大な広場の真ん中で老猿に老羊が古い金糸と紫地のたすきを渡そうとしていた。
二匹の周りにはたくさんの羊と猿。
今まさに猿がたすきを手にしようとした時、黄色のつむじ風が二匹の間を走り抜けた。
「よっし、取った〜!!」
高々とたすきを突き上げる柚葉に一呼吸遅れ、空気を震わすような唸りがやって来た。
「あー長老。取られちゃいましたにゃ!長老〜」
「んにゃ〜……取られたものは〜取り返すのにゃー!!」
酔っ払い猫長老の掛け声に猫たちは戸惑いながらも、たすきを取り返そうと走り出す。
「我らは積年の願いを果たす為に来た。今年より、閏の年は我らが猫年にゃー!」
長老を支えていた長毛の白猫が高々に宣言する。
『うぬぬ……おのれ、猫どもめ。たすきを取り返すのだ!』
長老猿の命令に猿たちは一斉に猫に飛び掛る。
猫は四肢の爪と口を使い、ご自慢の身のこなしで猿たちを攻撃。
猿は猿で長い尻尾と強い腕力で猫を殴る。
「これは……なんと壮絶な」
あまりの激しさに尻してしまう源。
羊たちはもう既に逃げ去っている。
柚葉は、というと……
「へっへ〜んだ」
ぴょんぴょんと、高く跳躍しながら楽しそうに猫と猿の攻撃を避けている。
が、数の多さに敵うはずがない。
毛を逆立てた猫の爪が柚葉を捉えようとした、その時――
「ぐにゃっ!?」
真横に変な形で吹っ飛ぶ猫。
「まさかここまで数が多いとは……此処は全力で仕留める」
チャキっと刀を構え、弔爾を操っている弔丸が言った。
更に、何時の間にか現われたのか、柚葉があちらにもこちらにもたくさんいる。
慶悟の出した式神なのだが、動きは空を飛んだり小刻みに動いたりと奇天烈で無表情で少々おかしい。
が、猫と猿たちに動揺を与えるのには十分だったようだ。
「にゃ!?人間まで現われたにゃー。どうするんにゃ、長老〜!」
『うぬぅ……変な技を使いおって……』
そして、ここにまた混乱(?)を引き起こす元が一匹。
「にゃ!魚だ。魚だ。まるまる太ってて美味そうだにゃ〜」
どうしたら良いか分からずとりあえず、適当に泳いでいたピューイだが、食欲旺盛な猫たちに見つかり標的にされる。
「ぴゅ? な、なんだぴゅ?! 僕は食べてもおいしくないぴゅ〜」
素早く泳ぎ逃げ回るピューイ。
決戦の中を泳ぐピューイは良くも悪くも戦いの流れを乱している。
「う〜〜しつこいぴゅ!」
どうしたものかと遠くから傍観していた源やさくらの側まで逃げて来たピューイはそこで自分の特性に気づく。
「そうだぴゅ。人間になればいいんだぴゅ」
魚から人間の男の子に変化したピューイは恵美の後ろに隠れると、べーっと猫たちに舌を出した。
「それにしても……これはヒドイわね」
さくらは眉を寄せて、今や三つ巴戦になっている戦場を見た。
「しかたないわね……」
「どうする気じゃ?」
源の問いに、にっこりと訳アリな笑顔を見せると、さくらは袖から何かを取り出す。
野球ボールサイズの巾着袋が二個。
「そーれ!」
それを戦いの中心に向かって投げる。
パンっと破裂した袋から、黄色い水が弾け散る。
「なんだ?」
「む? 水……?」
弔爾と慶悟は不意に振ってきた雫に天を仰ぐ。
「何を投げたのじゃ?」
「うふふ……特製調合のマタタビ粉よ。見ていて」
さくらの言葉に源が再び視線を戦場に向けると、様子がおかしかった。
皆、力が入らないようでへなへなと地面に倒れ、尻尾をピクピクさせている。
「うふふ、皆痺れちゃうのよ」
「うわーすごいでぴゅ」
「ぢゃ、蕎麦でも食うかの」
「お蕎麦ぴゅ? 年越し蕎麦ぴゅ? 僕も食べたいぴゅ!」
「はいはい、わかりました。じゃ、天薙さん準備しましょうか」
「そうですね」
と、折り重なるように痺れているのをかるーく無視し、年越し蕎麦を食べる準備を始める。
「おっ……これは、漁夫の利というやつではないか?」
きらりと源の目が光る。

果たして、たすきは猿に渡ったのか、猫に渡ったのか、狐に渡ったのか、ハムスターに渡ったのか。
もしかしたら、貴方が気づいていないだけで、本当は申年ではないのかも……

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0845/忌引・弔爾/男/25歳/無職】
【0389/真名神・慶悟/男/20歳/陰陽師】
【2336/天薙・さくら/女/43歳/主婦・神霊治癒師兼退魔師】
【1108/本郷・源/女/6歳/オーナー 小学生 獣人】
【2043/ピューイ・ディモン/男/10歳/夢の管理人・ペット・小学生(神聖都学園)】

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■         ライター通信          ■
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明けましておめでとう御座います。
旧年中は依頼にご参加頂きありがとう御座います。
どうぞ、今年も宜しくお願いいたします。

そして、新年早々遅くなり申し訳ありません!
今年の目標は
期限より早く皆さんにお届けする!!
ですので、どうぞ見捨てないで下さい(汗)

では、今年が皆様にとって笑顔と幸多き年でありますように。