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<東京怪談ウェブゲーム 神聖都学園>


【学園七不思議】第一の不思議を探して

+オープニング+

「…どの学校にもあるもの、なんだけれどね?」

鈴夏は、とある部室でお煎餅を齧りながら話し始める。
部室名は「散策同好会」……どうやら、部ではないらしい。

「七不思議…って探してみたくない? どうなるか、とかじゃなくて純粋に!」

純粋にかい!と何処からかツッコミが入ったが、それはまあさて置き。
七不思議、その一つ目の不思議を鈴夏と一緒に見たい方――募集中、である。


+ひそひそ話は意外と通る?+

「…散策同好会? そう言うのがあるっていう話は聞いたことがあるけど……」

友人から散策同好会での話を一通り聞くと硝月・倉菜は首を傾げつつも、やんわり微笑んだ。
微笑むと少しばかり青の色が強くなる瞳には強い興味の色を浮かべながら。

「あー……でも、どうしよう…一人で部室行ってみて、大丈夫かな?」

ちょっと、心細いなと呟くが友人らは「興味があるなら行って来るべきだよ〜」と見送って下さるばかり。
話をはじめたのはそっちなのに、お見送りなのねっ?と呆れの意味での溜息が漏れそうになるのをぐっと堪え
倉菜は、教えてもらった校舎外れの部室へと足を運んだ。

(……とは言え…ほ、本当に……どうしようかな)

部室の前を右往左往すること暫し。

が、そこに扉を突き破らんばかりに響く声――。
音階にしたらどのあたりの音かしら?と一瞬考えてしまうが、はっと倉菜は我に返ると中の様子を覗くべく窓へと身体をすり寄せた。

「やっぱり、お菓子とジュースは必須だよね! 海原さん、えらいっ♪」
「えへ、やっぱり七不思議を見に行くのでも散策と言うのなら、おやつは必需品だもん☆」

……がくり、と。
倉菜はコケそうになった。

だが、そんな倉菜を支えてくれる手があり倉菜はその手の持ち主の顔を見るべく視線を上へと移した。
茶色の髪に、あたたかな春の緑を思わせる緑の瞳の少女。
不思議な感じで切り揃えられた長い髪がさらり、と音を立てて揺れ――

「あの……、大丈夫ですか?」

と、倉菜へ心配そうな声がかかった。
倉菜は首をゆっくりと頷かせる。
貧血ではなく、内部のあまりの能天気さにコケそうになったとはとてもじゃないが言えない。

「なら、良かった……。…あら? 楽しそうなお話が聞こえてきていますね……参加させて頂こうかしら」

そう言い扉を叩こうとする少女を倉菜は止めた。

「あのね、私も入ろうと思っていたのだけれど」
「? ええ」
「もし、良ければ二人一緒に部室に入らない? 私が遅れて入ると色々二度手間だと思うし」
どう?と言う倉菜の提案に少女は微笑む。
「そうですね、では良ければご一緒に入りましょうか♪ 私、高等部二年に在籍している白里・焔寿と申します。貴女は?」
「二年? 凄い奇遇! 私も高等部の二年生。名前は倉菜。硝月・倉菜よ、宜しくね?」
はい、と焔寿は再び微笑み――彼女たち二人は一緒に散策同好会の扉を開いた。
七不思議にどう言うものがあるのか。
――自分たちの足で探すべく。


+とりあえずは+

扉を叩き、参加希望者だと倉菜と焔寿の両名が告げると、
「んーと、まずは自己紹介からしよっか♪ 一緒に行くのに名前知らないと不便だし!」
明るくにっこり笑いながら、鈴夏がそう皆へと提案する。
最もだと思いながら各々、簡単な自己紹介を済ませるとテーブルの上に広げられる学園内の見取り図を見た。
やっぱり、あそこは最初に行ってみるべきだろうと、誰かが言えばあら、それならあそこにも行って見なきゃ!と会話に華が咲く。
が、校内を散策するのは出来るのなら夜の方が良いだろうという話と、ある程度場所を纏めて行動した方がわかりやすいと言う考えに全員到達し……鈴夏は、軽く唸りながら口を開いた。
「色々と回るところはあると思うのだけれど……全部が全部、一遍に回れるって訳でもないし。とりあえず全員、此処はどうしても行っておきたい!と言う所をチェックして行く事にしない?」
「そうね。探すにしても行きたい所へ行ってみて無いのなら無いと解った方が面白いし」
鈴夏の言葉に倉菜が頷き、みあおも、
「うんうん! 今回みあおが逢いたい幽霊さんに逢えなくても次回別の場所で逢える可能性もあるんだしっ。じゃあ…行きたい場所は…ここ…っと♪」
大きく頷くと、見取り図のとある場所へと真っ赤なペンで大きな花丸マークをつける。
が、ただ一人焔寿は困ったように微笑むのみ。
倉菜は焔寿の様子を窺うように、どうしたのか問いかける。
すると。
「えと、ごめんなさい…私、実は七不思議があんまりよくわかってなくて……ですから、霊視しつつ皆さんの後を着いていきたいなって思うんですが……」
――駄目でしょうか?
言葉にしなくても聞こえてくる言葉に「いや、全然問題ないよ!」と言う3人の声が微妙に重なる。
無論、その中にホンの少しでも焔寿の「霊視」と言う言葉に反応したかしないかは――推して知るべし。
不思議が見つかるかもしれないと言う確かな手ごたえの元、4人は回る時間を決め、クラブ活動であることを先生に報告をし夜の校舎内に入ることへ許可を貰うと一旦、解散することとした。

とりあえずは今回の散策ポイントは。
・音楽室
・理科室
・美術室
――の三つと、焔寿が霊視で見るであろう場所の一点。

…さて、どの場所で不思議が見つかるのか。
今は――再び集合する時間をただ、待つばかりである。


+夜になってから+

高等部の正門前。
それが、皆で決めた待ち合わせ場所だった。

夜の学校は、人がいないせいだろうか何処か寒々しさをそこかしこに漂わせている。
人がいない、と言うだけでこれだけ印象をがらりと変える建物もそうそう無いだろう。

部室へ入ろうとした時には、あんな言葉を聞いてコケかけた倉菜だが夜の散策は寒いだろうとポットにフォションのアールグレイティーを入れ、ビスケットやクッキー、パイなどを作って、バスケットに詰め、お弁当代わりに持ってきていた。
バスケットがカタカタと音を立てて微かに揺れる。

「…皆、遅いし、寒い……」

マフラーを、少しだけ口を隠すように心持ち上へともっていく。
柔らかな感触が頬に触れ、ほっとする暖かさを教えてくれた。

そこに――、数人の声。

夜目にも目立つであろう自分と同じ銀の髪が、ふたつ見えた。
すると、その銀の髪の横にいる白いコートを着ているように見えるのが焔寿だろうか。

「もー、皆遅いよ!? 何やってたわけ?」

この倉菜の問いに笑いながら答えたのは、みあお。
「ごめんね、いやちょっと早く来すぎたから、更なるおやつの買出し、のつもりがさ……」
それを引き継ぐように焔寿が、困ったように首をかしげつつ、
「どれもこれも本当に美味しそうで…選ぶのに迷ってしまいまして……」
と、告げれば更には鈴夏も照れくさそうに
「……コンビニって、この時期誘惑が多くてさ〜」
等と言っていたりする。

つまりは。
ちょっと早めに着いたので3人でコンビニに行っていたということだろうか?
…いや、きっとそうに違いない。
倉菜は大きな溜息をつくと、すたすたととある方向へ歩き始めた。
3人が戸惑うように、ら倉菜を追いかける。
その気配を感じながらも倉菜は振り返ることなくぽそりと。

「――此処まで待たせたんだから先に私が行きたい探索場所、行くからね? 駄目ってのは聞かないから」

そう、言うと3人は是も非も無く、ただ、ひたすらにこくこくと頷いた。
いいや、もう――頷くしか出来なかったのである。

そして4人はゆっくりと倉菜の希望である、それぞれで使われている初等部、中等部、高等部の音楽室へと向かった。

まずは初等部の音楽室。

懐中電灯で照らされた室内は――何もない、静かなものだ。
綺麗に片付けられ、初等部らしい明るい色合いの紙が所々に見やすく張ってある。
……音楽室には定番であるとも言える、肖像画もホンの少ししかない。
……あえて落書きされる危険性を考慮しているのだろうか、それは定かではないが。

それらを見て懐中電灯で肖像画を照らして見ていた、みあおが残念そうに一言呟いた。

「やっぱさあ、定番物は外しちゃいけないよねえ? 初等部にだって、肖像画はずらーーっと、あった方がいいと思うんだけどなあ」

――ある意味、ごもっともだ。

さ、じゃあ次は中等部!と、気合も新たに向かう。
が。
やはり、音楽室には何も無かった。
肖像画の瞳が夜になると違う方向向いてたり、ピアノが急に自動演奏始めだす、という事も無く――いやいや、準備室に何かあるとか!と、鈴夏が言うも「それは理科の準備室でしょう、理科の」と言う倉菜とみあおの冷たいツッコミが入り鈴夏はひたすら、言葉を詰まらせた。
へこたれる鈴夏の様子を見て焔寿が少しでも慰めようと言葉をかける。
「あの…私には良くわかりませんけど、大丈夫! そう言う微妙な間違いは良くあることですよ?」
穏やかな微笑と共に、焔寿にそう言われ鈴夏が更に地面にめりこむようにへこんでゆく。
「…あ、あら?」
「……うーん、ちょっとホームラン級だったかも」
みあおの苦笑が漏れた。
倉菜もそれに同意するように頷く。
「そうね……ちょっと、きつかったかも? でも、そんなことでへこたれてる場合じゃないでしょ! 高等部が残ってるんだから!」

引きずるように鈴夏を掴むと倉菜は再び歩き出した。
鈴夏も「はぁい」と漸く小さな返事を返す。

「…けどさあ、音楽室の探索が終わったらお茶にしようね? 気力を別の意味で養うためにも、絶対に!」

――そう、付け加えることも忘れずに。



+ちょっと、休憩+

「フォションの紅茶ってやっぱ美味しいよね♪ みあお、今度この紅茶も買ってみようっと☆」
「硝月さんお手製のクッキーもとても美味しいですね。あ、硝月さん良ければ先ほど私たちが買ってきたお菓子も食べてみてくださいね?」
「うん、食べてるから大丈夫…に、しても高等部の音楽室まで、外れだったとは…意外だったな」
机の上においてあるお菓子を食べながら、倉菜はじっと辺りを見渡す。
絶対にいると思っていただけに、そして此処で一つ目の不思議を見れると思っていただけに、かなり残念ではある。
それに頷きながら、みあおも倉菜の言葉をついだ。
「本当に意外だったよね! 定番中の定番なんだから、あってもおかしくないのにさ。あ、焔寿ちゃん、そのお菓子……」
言うのも遅く、焔寿は美味しそうにそれを食べた。
が。
突如として激しくむせ返り、鈴夏に背中をさすってもらいつつ、みあおを見た。
「な、なんですか? これ……」
「えっと、お約束中のお約束! 激辛煎餅……なんだけど。もしかして、食べるの初めてだった?」
「…わ、私、こう言うのは食べたこと無くって……あら?」
焔寿は不思議な表情を一瞬浮かべ、此処ではない何処か遠くを見始めた。
探るように、きょろきょろと瞳が、動き出す。
「ねぇ……何か、視えるの?」
不安げに、倉菜はひらひらと焔寿の前、手を翳す。
ゆっくりと、しかし確実に焔寿は倉菜の手の動きには答えずに、視えることにのみ同意を示すかのように頷く。
「見えます…多分…これは…食堂…かと。そこに……?」
「ゑ? 食堂? 何で食堂かなあ?」
みあおは不思議そうに大きな瞳をくるくる動かす。
その動作があまりに可愛らしかったのか、倉菜と鈴夏は笑いあいながらも、
「じゃあ、お菓子片付けて…行ってみようか。食堂だけに面白いのが見れるかもしれない」
「そうね。食堂だけに…ふふ、もったいないお化けかも?」
と、言い合う。
もったいないお化けだったら、かなり面白いよね!とみあおも頷きながら。
先頭を切って歩き出したのは焔寿。
懐中電灯の明かりしかない暗闇の中にもかかわらず、彼女はまるで見えているかのようにしっかりとした歩調で歩いてゆく。


+一つ目の、不思議+


4人が高等部の音楽室から、暗闇の中を歩いて漸くたどり着いた途端に見たのは――
――もったいないお化け、ではなくて。

…では、なくて。
その、逆だった。

逆――即ち。

「料理が買えなかった怨念様」である。

この学園の食堂には。
様々な人気メニューがある。

安くて美味しいうどんから、絶品だと言われるデザートやら、本当なら購買部で買う筈の焼きそばパンまでもあったりするのだ。
が、無論人気メニューゆえ売り切れるのも早い。
中には、食堂のおばさん方へ自分の分だけでも作ってもらおうと頼み込もうとするつわものもいる位だ。

そんなこんなの買えなかった怨念様が……食堂で。

――皿に擦り寄るように、おいおい泣いていた。
それらを見た4人の反応は。

「……皿に擦り寄る…一枚足らない、なら番町皿屋敷…なのにぃっ!!」
は、みあお。
「私、あまり食堂って利用しないのだけれど…そう、こんなに泣きたいくらい美味しいものが……」
は、倉菜。
「…私も知らなかったわ……なんと…言えばいいのか…」
と、困惑気味に戸惑いの表情を浮かべているのは焔寿である。
鈴夏は――何と言うか、固まってしまっていた。
不思議と言えば不思議だが「一つ目の不思議:食堂―夜になるとお皿へとすすり泣く怨念様」……奇妙すぎる。

「……何て言うかさ、意外だったね」

漸く、それだけ口にして、笑った。

皆も、気が抜けたように笑う。

「ま、これもこの学園ぽくって良いんじゃないかな。定番にならない辺りが♪」
「そうですね…ちょっと、面白くて…でも七不思議全てがこう言うものって訳じゃないのですよね?」

みあおの言葉に、不思議そうに問い掛ける焔寿。

「勿論、違うよ? ただ定番と呼ばれてるものが多くあることも事実ってだけ☆」

さてと、と息を吸い込みながら、みあおは言う。

「今回は探す前に見つけられたけど次こそは、みあおが行きたかった場所にも行こうね♪」
「うん、勿論。私が探索したかった場所も今回行けなかったし♪」

鈴夏もその言葉に頷き、次は何が見つけられるだろうと言葉を締めくくる。

倉菜がそれに応える様に鈴夏へと、微笑む。

「多分――また、少しだけ他と違う何かがきっと」

見つけられるのだろう。
きっと。
一つ一つ、自分たちで探してゆく七不思議――だからこそ。


第一の不思議を探して―End―

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【2194 / 硝月・倉菜 / 女 / 17 
/ 女子高生兼楽器職人(神聖都学園生徒)】
【1305 / 白里・焔寿 / 女 / 17 /
 神聖都学園生徒/天翼の神子】
【1415 / 海原・みあお / 女 / 13 / 小学生】
【NPC / 弓弦・鈴夏 / 女 / 16 / 高校生/式神使い】
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■         ライター通信          ■
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初めまして。ライターの秋月 奏です。
今回は、こちらの依頼にご参加、本当にありがとうございました!
一個一個ずつ、自分たちで探して見つける…と言うタイプの
話なのですが、これから色々と使える本当に楽しいプレイングを
読ませて頂きました(^^)
尚、最初の部分のみ個別だったりしますので、もしご興味があれば
他の参加者の方のも見てみると、少し違うかもしれません。

それでは、今回はこの辺で。
また何処かでお逢い出来ますよう祈りつつ。