コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


Border Ether & Deep Ether 〜Enchanted Fantasy Lands〜

Opening〜
広大な自然。綺麗な川に3人の人影が居る。
「東京にこんな自然あったの?」
と首を傾げる少女。神聖都学園の制服に、不可思議な黒いトランクを持っている。
その横で、シケモクを吸っているコートの男が少女の頭をくしゃくしゃにした。
「馬鹿か?すでに「ヤツ」の世界に入った証だろ」
「煙草臭い手で触らないで!ディテクター!」
「ふん」
少女は怒って、ディテクターと呼んだ黒いコートにサングラスの男に大声で叫んでいる。
川の真ん中で、呑気に洗濯している青年が居た。
「じゃれ合いは其処までで、支度の方済みましたか?」
「誰がじゃれ合っているのですか?!」
「君と、ディテクター」
「からかわないで!」
ぷいとそっぽを向く少女。
男2人は苦笑する。
「大体、今回の任務は何だ?俺まで呼びやがって。大体この小娘は俺を嫌っているだろうが」
コートの男は川にいる影斬に訊いた。
「まぁまぁ怒らずに。今回の任務はこの広大な世界の調査です。そして、ある重大な剣を探す旅にでます。決して「彼」と戦いに来たわけではないのでご注意を」
「そうか…アイツはお前には心開くくせにな」
「煙草のポイ捨て禁止ですからね」
ディテクターが川に煙草を投げ捨てようとしたとき、影斬がとめる。顰めっ面をして携帯の灰皿にシケモクを押しつぶした。
「多分IO2側から助っ人が此方に送られてくるはずです」
「えー!一般人も参加するのですか?」
トランクを持って厭な顔をしているヴィルトカッツェ。あまり関わりたくないようだ。
「3人でこの広大な自然探索なんて出来ないよ。それに君も友達を作っていた方が良いさ」
「仕事と一緒にしないで下さい」
「上からのお達しらしいよ。友達作れって」
「えー?いい加減だなぁ日本支部って…」
この2人のやりとりにディテクターは、過去のことを思い出したのか珍しく笑っていた。


1.Adventurer
川岸で、人を待つ3人の後ろに、不可思議な門が開いた。
「師が〈ゲート〉を開けた」
影斬が言う。
「他の事で忙しいと言うが、本当なのか?」
ディテクターが何の感情も無く聞いた。
「さぁ、分かりません。嘘ではない事は確かですよ、ディテクター」
肩をすくめながら影斬は答えた。
「人が…」
ヴィルトカッツェが〈ゲート〉を指さした。3名である。
1人は、中性的な顔つきの女性、もう1人は巫女姿で日本刀を一振り持っている女性、大学生ぐらいだろう。もう1人はぱっとしない高校生で傘を持っている。
影斬がメモを取り出し、確認する。
「シュライン・エマさんに天薙撫子さん、そして御影蓮也さんだね。シュラインさんには前に会いましたか」
影斬を含む3人はシュラインをよく知っていた。前の洋館異界で会ったからだ。
「久しぶり、偶然よね。気になったから、宜しく」
シュラインが影斬とヴィルトカッツェに握手を交わす。しかし、ディテクターは、彼女の握手に応じなかった。がっかりする顔をするシュライン。
「初めまして、天薙撫子と申します」
天薙撫子は深々とお辞儀で挨拶するも…
「あれ?影斬様は…どこかでお会いになったような?」
と、影斬に訊いた。
「人違いじゃないですか?」
苦笑しながら影斬は答える。
「俺、御影蓮也。宜しく…なんかさ影斬って誰かに似ているよな…。それは良いとして…宜しく。影斬、ディテクター、ヴィルトカッツェ」
と、蓮也は挨拶した。

一方、鹿沼デルフェスはまたこの世界に迷い込んだらしい。
「なんて懐かしい所でしょう」
と、感激していた。
羊飼いが羊を追う景色に、綺麗な山脈と、数マイル先には町を小高い丘から見下ろしていた。
中世に似た景色。もう見るのも叶わぬと思っていた牧歌的な雰囲気に酔っていた。
川岸に前にあった2人(影斬とヴィルトカッツェ)と他の数人を発見する。
「あの方達は…」
ゆっくりと彼らが居る所まで歩いていくデルフェス。
デルフェスの登場に驚いく2人。
「あれ?デルフェスさん…どうしたんですか?」
とヴィルトカッツェが訊いてきた。
「迷い込んでしまいまして…」
と、彼女は答えたが、ゆったりとしている。「想像者」が好戦的でない事と趣向が合うのかもと思っているからであろう。

「で、詳しい事を聞かせてくれないかしら?」
シュラインはディテクターをちらちら見ながら、影斬に今回の任務の詳細を訊く。
「異界環境調査…つまり出入り可能なのかという事。そして、此の異界内にある重要な剣を探す事です。虚無の境界がこの剣を得る前に探し出さなければなりません」
「もし剣が手に渡った場合は?」
撫子が訊く。
「現実世界において破滅的な事になる呪物でもあります。しかし、この世界では想像者の何かの「信号」なのです」
影斬は、落ち着いて答える。
「信号?」
皆は首を傾げるばかり。
既に、任務と目的をしるディテクターはその場から去る。
「何処行くんです?」
「俺は1人で動いた方が性に合っている。邪魔するな。エルハンドとのコンタクトも取れるというなら、此処への出入りはかなり自由とう言うことだ。あとは「剣」を虚無の境界より早く探すだけだ」
影斬の言葉に素っ気なく答える黒いコートの男。
「まって、幾ら何でも…いえ、気を付けて…」
シュラインが彼を止めようとしたのだが、言葉を止めたようだ。
ディテクターは皆の前から去っていった。険しい山脈に続く川の上流を目指していった。
「ではわたくしたちは、影斬様とヴィルトカッツェ様と同行して剣とこの空間を調査致しましょう」
撫子が言う。
皆はまず、町に向かうことにした。


2.Gathering Information in Town
町の中は、漆喰の木造の建造物が多く、人間の他に様々な幻想種が市場を開いて活気づいている。情報収集するには良い所だろう。
シュラインは、まず市場などで筆記道具や遊具を見ていた。
「これが『彼』が使っていたと思われるペンやダイスなのね」
と、感心している。
「どういう事ですか?」
と撫子が訊く
「前に彼にあってね。ヒョッとしたら彼の思い描いている「剣」にたどり着けるかもと思って」
「なるほど」
探知系の術が使えないと言うことで、人から聞く以外に「想像者の見たもの」から手がかりを掴もうとしているシュラインの行為はまず正解だと言えよう。
影斬は、2人を見てニコリとしていた。しかし、市場で買った焼き鳥を口にしたとき苦笑した。
「病院食並の味付けにしてるよ…」

一方では、ヴィルトカッツェとデルフェス、蓮也が、古代知識関連の学者や人の集まりやすい酒場などで剣について聞き込みしても特に得られる物はなかったようだ。
「あまり収穫無いわ…」
「全くだ」
ヴィルトカッツェと蓮也はため息をつく。
「分かったことと言えば…広大に見えて実は狭いってことですわ」
とデルフェスが言う。
「どういうこと?」
「この険しい山に囲まれた大自然以外のことは他の方々は知らないのです」
「箱庭という意味合いが強いのですか?」
ふたりの問いに頷くデルフェス。
「あと、周りを見ていると、ある一つの宝石を良きもの…聖なる物としておりますね」
町中で見かける物では、透明な緑の宝石の飾りが多いことだ。
「緑の宝石をね」
「あと、他にはかなり賢いドラゴンが山脈にいるとは聞いたけど…あの黒コートが殺してなきゃなぁ」
山脈を眺めて蓮也は言った。

情報をまとめるため合流した皆は、酒場の食事(病院食味)を食べて話をまとめてみた。
剣についての情報は皆無。しかし、エメラルドがこの世界で重要な役割を果たしている事。大体の見た物は想像者の見たもの感じたもの、想像したものを具現化されたという事だ。世界を囲んでいる山脈の先は別の世界に繋がっていると数人の賢者は考えているそうだ。つまり別の想像異界、もしくは現実世界に戻ることが出来るのだろう。
「あと、この世界法則は彼、つまり想像者の物だと言うことだから気を付けてね。あたし達が知らない物を『出して』、虚無の境界が其れを利用するという可能性があるから」
「想像者様は好戦的ではないから大丈夫ですわ。あの方を信じます」
シュラインの言葉にデルフェスはそう答えた。シュラインも頷く。
「虚無の境界に入ったことは悲しいことだけど…まだ望みがあるわ」
と、シュラインは呟いた。


3.Talk in the Night
撫子は影斬の事が気になるらしく、じっと彼を見ていた。
IO2エージェントの服装でよく分からないが霊の性質はどう見ても現実世界でよく遊んだり、仕事を共にしていたりした少年なのだ。
しかも、エルハンド以外に神格を保持して居る者はIO2には少ない。もしかすると、と思い撫子は影斬に訊ねる。
「影斬様…」
「なんですか?天薙さん」
「ヒョッとしてですが…貴方は…」
彼女の言葉を手で制止する影斬。
「聞かない方が良いですよ、天薙さん。時間矛盾は起こらなくても、何かが変動します。仕事のことだけを考えて下さい」
「…分かりました」
撫子はお辞儀をして、その場を去った。
影斬自身の威圧感はあの時の少年のモノではない。エルハンド並と言えるだろう。彼の性格は、あの少年に近いが何かが異なった。
「影斬様は…やはり…あの義昭君ですわ」
と、遠くから何かを『超越』した者の哀しみを感じた撫子であった。

蓮也とデルフェスは、ヴィルトカッツェと一緒に雑談しようと集まっている。
「仕事があるんですけど〜」
「ずっと仕事じゃ疲れますわ。気を楽にした方が良いですよ」
と、デルフェスは彼女を諭す。
「友達を作るというのが君の任務らしいよ」
と、蓮也は悪戯っぽく笑った。
「其れとこれとは別です!」
「まぁまぁ、ヴィルトカッツェ様、もうこの世界でも夜も来ますから少し遊んでいても大丈夫ですよ」
「色々あるんですって!プライベートのことまで…」
あわてふためくヴィルトカッツェ。
「なんならトランプで遊ぼうぜ」
蓮也は笑う。
(うー、影斬のばかー)
ヴィルトカッツェは影斬を心の中で恨み、初対面で馴れ馴れしい高校生に呆れ返っていた。


4.Dragon of the Wise
まず、賢者の竜に剣の在処を尋ねる事、そして単独行動をしたディテクターと合流する事となった。
町から数マイル先にある大きな山にその賢者の竜は叡智を蓄え眠っているという。
「剣の在処を聞き出すためだけですし、道中気を付けた方が良いでしょう」
と撫子が言った。
各々が、長時間歩けるようこの世界の旅人の装備を調える。
女性の宿泊部屋にて。
何故かヴィルトカッツェはNINJAを着ない。
「どうしたの?」
日焼け止めクリームなど塗る、シュラインが訊く。
「えっとこれ(NINJA)少しおかしくて」
どうも、NINJAのパワードプロテクターの調子がおかしいらしい。
「エネルギー不足?故障?」
「異界進入のために改良を施しているバージョンなので大丈夫なはずなのですが…少し影斬に訊いてみます」
と行った先、ドアが開いて、
「どうした早く…」
と男の声がした。御影蓮也である…。
ノックぐらいするものだ。
当然、女性陣からのお仕置きで彼が階段から転げ落ちる様を、影斬が苦笑して観ていた。
影斬はNINJAを調べると
「…この世界が微妙に干渉しているね」
と、言って神格力を付与する。
「1日に1回は付与しないと、通常のNINJAの機動性は保証されないから気を付けて」
「わかった」
とまず一安心だ。
ただ…ボロボロなのは約1名。怪我を治すこともなく皆は旅立つ。
「頼む…俺が悪かったからさ…」
と、蓮也はいっても、女性陣は何も言わなかった。

山賊などを蹴散らしてやっと山にたどり着く。
そして、賢者の竜が眠るという洞窟を発見した。
現実世界で此処まで大きい洞窟は存在しないであろう。
天然の洞窟で綺麗な水晶群に光ゴケの光が反射し、幻想的な雰囲気を満たしている。
先に進むと、情報通り齢を重ね、叡智を蓄えた巨大な竜が眠っていた。艶やかな金色の鱗に全てを見透かされそうな瞳が、一行を眺めている。
「この世界の者ではないな…小さきものよ」
と、竜は語りかける。
デルフェスが歩み寄り、
「賢者の竜様、お聞きしたいことがあります」
「…何かな?知性あるミスリルゴーレムよ」
竜の声は威圧感を感じるため、ヴィルトカッツェや蓮也、シュラインは気圧される。まるで神のような威圧感だ。此処まで具現出来るという「想像者」の力は驚くべきである。
デルフェスは「剣」について話し始めると、竜は…殺気の篭もった目で睨む。
「愚かな魔技やフレッシュゴーレム共のようにあのエメラルドの剣をどうするつもりなのだ!」
「待って下さいませ。私達はあの剣を安全な場所に移したいだけです」
「怒りを静めて下さい、賢者の竜」
デルフェスと撫子がなんとか彼を宥める。
「賢者の竜さん…。実はこの世界を構築している想像者さんを助けるために、どうしても必要なのです」
とシュラインも説得に加わった。
「…良かろう。本来この世界の心臓である剣…しかし、其れを守る真の主の為なら教えよう…」
哀しそうな目をする竜は…納得したようだ。
「この世界の峡谷…つまりは川の上流に3つの奈落の門がある。その一つに剣が隠されている」
「上流…武彦さんが1人で向かった所だわ!」
竜の言葉に焦り気味のシュラインの声。
「あの剣が、世界の心臓であると同時に、お主らの世界では恐ろしき怨霊器だ。壊す事は考えてはならぬ、私は又眠りにつく。3つの門の中は私とて知らぬ」
と竜は言う。
「我が世界の主を救ってくれ…我は…只の…」
と、彼はまるで死んだかのように眠る…。
「急いだ方が良いな」
蓮也はペンと紙を確認して言った。


5.Emerald Sword
急ぐ、一行は勝手に動く馬車を使って。
蓮也が「4WD自動車」と書いた紙を貼り付けている馬車だ。
「問題はこれが何時まで持つか…乗り物酔いを我慢出来るかだな」
と、蓮也は呟くと周りは苦笑する。
元が揺れる4輪馬車なだけに概念操者の能力を付け足したのみだ。
「空を飛べる方法もない以上、これが最良の手段ですわ」
デルフェスがヴィルトカッツェを庇いながら言う。
現在120kph。普通の馬より速く、どんな道も乗り越えることが出来る。
シュラインと撫子は必死に何かに捕まってこの強行軍に耐えている。
影斬は、この揺れに対して微動だにしない。
そして上流辺りまで無事馬車はたどり着いた。

周りには虚無の境界らしき存在の死体が散乱している。
「既にディテクターが道をあけてくれているのか?」
と、呟く蓮也。
「彼は『紅』に導かれているのみかもしれない…呪物が怨霊器に共鳴しているというのだろうか」
「…」
影斬は、女性を馬車から降りるのを手伝い、車酔いを治していく。反面何か考え込んでいるヴィルトカッツェ。
「どうしたのですか」
「ううん…何でもない…只酔いすぎただけよ」
デルフェスが心配そうにヴィルトカッツェに訊ねるが首を振る。
しかし、『紅』と聞いたときのあの反応はどうしても車酔いではない表情だった。
「この先に…3つの門とかあるわけね、急ぎましょう」
シュラインは固くなった身体を解して言った。

大きな門が3つある建物を見つける。しかも周りに巧妙に隠されたように作られている。
しかし、門は全て開けられている。周りには死体の山。
これだけあると…剣を誰かが手に入れている可能性が高い。
ディテクターが持っているなら問題ないが、もしもという可能性がある。
自然に皆は、3つの門のうち一つに入って駆けていった。
何故3つ門があるのかは分からなかったが、守護者の瓦礫やトラップの凶悪さを見ていくうちにこの先に『剣』があると分かる。
ついた先は、大きなホールになっており、剣が刺さっている祭壇のしたに…
ディテクターが大けがをして気を失っていた。
「た、武彦さん!」
シュラインが急いで駆け寄る。
「武彦って?ディテクターは?」
蓮也は驚く。
しかし、影斬もヴィルトカッツェも何も言わなかった。只無言でシュラインの後を追う。
撫子とデルフェスも注意深く周りを見てトラップの有無、何者かの気配を注意している。
「武彦さん!武彦さん!」
シュラインは大けがで気を失っているディテクターを呼び続ける。
刀傷や、術による火傷などが酷い。
影斬と撫子が駆け寄って、治癒術を試み何とか怪我は治ったが、昏睡状態は続いたままだ。
「大丈夫です。彼は只寝ているだけです」
「影斬?」
「全く彼らしいと言うか…此処で何かあったかは分からないけど…剣を守っていたのかもしれない」
不思議な雰囲気のこの男はディテクターを安全な場所に連れて行く。
「シュラインさん、後は貴方が彼を看てて下さい」
と、言って又剣の所に向かった。

「エメラルドの宝石がはめ込まれている剣ですわ」
デルフェスは、祭壇に突き刺さっている大きな剣をみて言う。
うかつに手が出せない。何か危険を感じさせるモノが其処にあった。
ガーディアンなのかどうかは分からない。
この剣が世界の心臓と言うだけあり、このホール内で一番防御を施されているのはこの区画だろう。
「落ち着いてみれば、此処には大けがしたディテクターしか居なかったな」
蓮也はヴィルトカッツェに言う。
「不思議よね…彼のことだから不用意に剣に触ることはないし…」
頷くヴィルトカッツェ。
謎が多い。ただ信じたくないのは、一つあった
―想像者が、彼と戦ったと言うこと。
空想具現者である想像者は仮にも虚無の境界のメンバー、IO2である彼と真っ向から戦う事はあり得る。しかし、どう戦ったのかは判らない。

「想像者…出てこい」
影斬は剣に向かって言う。
暫くすると、空間から彼が出てきた。
「…俺はこれを守るために此処にいる。彼が勝手に手に取ろうとするから、法則を適用したまでだ」
と、前にあった彼とは違う印象…まるで別人な想像者だ。
「想像者さま、貴方とは…戦う為に来たわけではないのです」
デルフェスが説得を始める。
「前にも言いましたよね?…」
と、何かを言うデルフェスの身体を…何かが突き刺さった。
「?…ミスリルの…身体が」
「真の銀と言われているミスリルでも…ミスリルを越える硬度で且つ鋭利なモノを具現化出来れば、貴方の身体を貫通することぐらい容易いことなのだ。」
ミスリルより固い物質…アダマンタイトの槍が彼女の腹を貫いていたのだ。
デルフェスは、後ずさる。
「どうしたのですか…前にあった貴方では…」
「剣に支配されているのか…それとも…」
撫子が神斬を抜刀し、ヴィルトカッツェがNINJAの高周波ブレードを構え他の武器いつでも出せるように構える。
影斬は何も行動を起こさない。
「…エメラルドの剣は俺が守る」
この言葉が、想像者の戦闘に入る合図だった。

傷を負ったデルフェスがヴィルトカッツェの盾となり、撫子、蓮也、ヴィルトカッツェが、想像者を攻撃する。しかし、この空間内で彼を戦うのは無謀といえた。妖斬鋼糸で捕縛しても、札による防御も、銃撃も何かの力に遮られ、無効化される。
影斬は一行に動かない
「何してんだ!」
蓮也は影斬に文句を言うが、
「影相手に何をしても無駄だ」
返事はそれだけだった。
「影?だと?」
皆は攻撃を止める。すると想像者の空想具現攻撃をまともに受けてしまった。
「意志を強く持て!」
その一括で、皆は強く意志を持ち、耐える。影斬の言う通り、幻だった。怪我一つ無い。
不思議がる撫子たち。
沈黙が続く。
「さすが…、影を斬る男だね…」
想像者は苦笑する。
「では…最初っから知っていたのか?影斬」
蓮也は、文句を言う。
「さあ?」
影斬の素っ気ない答え。
「試させて貰った…済まない」
想像者は、皆に謝罪の意を示した…。

ディテクターの傷は、虚無との戦いで負ったモノであり、気を失うまでこの剣を守っていたのだ。
「どうして…一緒に探そうとしないの?ねぇ?」
「……」
シュラインの文句を聞いているが、何も答えないディテクター。
一方、想像者と話をしている撫子たちは。
「話が見えません…のですが」
「…この剣は呪物であり、怨霊器であります。破壊しても大きな災いが起こるものです。俺がこの人になら渡しても良いという人物を待っていました」
「しかし攻撃してくるのは感心しないな」
と、蓮也が言う。
「此処までの世界を構築している以上、公平でないと行けないのでね」
と、答える想像者。そして続ける。
「此処まで来たことの課程と、あなた方の言いたいことはわかっています。剣はしっかり封印して持って帰って下さい。しかし、ムリに俺の能力を理解しようというのは止めて下さい」
「どうしてだ?」
「その気になれば人を滅ぼせます…こうして殻に閉じこもっている方が良いのです」
蓮也の言葉に答える想像者。
「其れは違いと思います…」
槍に刺された傷がないデルフェスが言う。
「前にも、いいました。わたくしみたいな人がいると」
撫子たちの説得には全く応じない想像者。首を横に振るのみだ。
結局、彼を自分の異界を解除させる説得はムリだった。
シュラインは皆に珈琲を渡していく。ディテクターは影斬が看てくれていた。
「ゆっくり考えて、それから答えを出せばいいわ…。でも、武彦さんをこの場で助けてくれていたのね…ありがとう」
「…」
無言の想像者は珈琲を飲む。
「美味しい」
「其れはそうよ、興信所の珈琲は美味しくて評判なんだから」
驚く想像者に、笑顔で答えるシュラインだった。


6.異界を後に…
想像者に空間を開けて貰い、現実世界に戻る一行。
「それじゃ」
と簡単な挨拶で別れる。

一仕事が終わったが…。肝心の想像者の説得が失敗だった。
「ムリもない」
影斬は只其れを繰り返すばかりだ。エメラルドの剣は彼の能力で封印されている。
ディテクターはそのままIO2の病院に運ばれる。協力者は此処で解散となるのだ。
シュラインは、その車を心配そうに見ている。

デルフェスは、ヴィルトカッツェと別れを惜しむように抱きしめる。
「デルフェスさん…」
しかし、いつもの女性パートナーの包容ではなく、本当に優しさに満ちあふれているモノだった。
「いつかお会いしましょうね。友達として」
「はい…」
「わたくしもよ。機会が有れば又ね」
撫子が手をさしのべる。
デルフェスが包容を解いて、困った顔をするヴィルトカッツェであるが、照れながら握手をした。
「ところで…蓮也さん」
「なに?」
「あの時想像者の猛攻撃を庇ってくれて…ありがとう」
と、恥ずかしながら礼を言うヴィルトカッツェ。
「友達は助け合うもんだ。今回は仲間って感じだけどな」
と、ニコリと笑う蓮也だった。

―独りでは生きていられないからね。
影斬は、表情豊かな14歳のNINJAを見て微笑んでいた。
「後はこれを完全封印することか」
と、時代をさかのぼってきたIO2エージェントは誰も聞こえないように呟き。他の黒服に後始末の方を頼み、姿を消した。


End

□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【0086 シュライン・エマ 26 女 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【0328 天薙・撫子 18 女 大学生】
【2181 鹿沼・デルフェス 463 女 アンティークショップの店員】
【2276 御影・蓮也 18 男 高校生 概念操者】

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
滝照直樹です。
『Border Ether & Deep Ether 〜Enchanted Fantasy Lands〜』に参加して頂きありがとうございます。
今回は想像者の強さ辺りを強調してみました。
又様々なプレイングを描いて下さりありがとうございます。


では、機会が有ればお会いしましょう。

滝照直樹拝