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巫女服がいっぱい…
OP：また零ちゃんから電話です
もしもし、零です。
少し嬉しいのか恥ずかしいのか分かりませんが…とんでも無いことが起こってしまいました。
いま、五月ちゃんと一緒に沢山の巫女服をたたんでいるのですが…２人では手に負えないのです。
この巫女服は謎の箱からでもいきなりでも無いです。
私が珈琲など買い出しに行っていたとき、福引き所がありまして、そこで当てた懸賞が…山ほどの巫女服だったのです。
断ろうにも、既に福引き所は無く、商店街の人にも「そんなイベントはしてない」と言われました。
サイズは色々、ただ何も印も紋章もないので、神社関係の方に寄付するという方法も良いかもしれません。
欲しい人やこの仕分け作業を手伝ってくれる方をお願いします。
五月「でも零おねえちゃん、巫女服気に入って着ているじゃない」
（何を言っているか分からない零の声が聞こえる。多分五月の突っ込みにあたふたしているのだろう）
１．いったい何のために…
「シュラインさんこれでよろしいのでしょうか？」
「そうね、皆が来るまで３人だけで…って零ちゃん…コスプレに目覚めたの？」
「いえ、その…」
と、シュライン・エマと巫女姿で紅く頬を染める零との沢山の巫女服仕分けとの会話。
「今度は福引きって変わった手で来たわね。何のために」
と悩むシュライン。しかし、慣れた手つきで仕分け作業を始める辺り、もうこの事件には慣れている事をうかがわせる。零はスタンダードな赤と白の巫女服を着ている。
今回の規模はやっぱりいっぱい。はい、そこ数が数えられないという突っ込みはしない（カメラ目線）。
幸い、段ボール箱にいきなり届いている事が奇妙だ。愉快犯の仕業か？
そして、電話で呼び出された鹿沼デルフェスと海原みなも、鈴代ゆゆ、大曽根千春がやってきた
「巫女装束ですか……実物を見た事はありませんが、神社という神殿に仕える巫女という女神官の方が着る日本の着物と並ぶ正装、と存じておりますわ。…出来れば巫女装束を着てみたいですわ」
「沢山ありますね…。ああ！何故か手に妹のデジカメ（業務用）とお姉様の儀式道具一式が紙袋の中に！」
「精霊種でも着れる、服って有るってホント？」
「実は、あたしも巫女さんって言うのに憧れていたんですよぉ☆やっぱり、髪は下ろした方が良いですよねぇ」
と、それぞれの意見。
はっきり言って皆は「巫女服を着たい」という目的がはっきりしている。
その前に仕分け作業なのだが。
五月が興信所のドアに臨時休業の看板を掛けて、まずは皆で仕分け作業に参加するのであった。
「これが終わったら、着てみたいです」
と楽しそうに言うみなも。
「何かバイトでも？」
「いいえ、着てみたいんです」
とシュラインの言葉に答えるみなも。
「ええ、そうしましょうね、みなもちゃん」
「はい」
にっこり微笑むみなもであるが…
―お姉様に感化してなのか…それともこれが私の本質なのか（涙）
と心の中で思っていた。複雑な心境の海原みなも１３歳である。
２．仕分けより、コスプレ大会
デルフェスが霊視で呪われた物はないか調べるも、何もない。危険な物は一切無いが、幽霊や精霊種など実態のない者が着る事の出来る巫女服も存在している。
―どうやって此処まで集めたのかしら（シュラインさん心の声）
「これ…お姉様の巫女服…」
みなもは、黒い見慣れた巫女服を見て驚いた。世間一般でみる巫女服とはかなり違う深淵の巫女の巫女装束。
「謎だわ」
頭を抱えるシュラインさん。
「色々な色の巫女服があって、戦隊物が組めますわね」
と、微笑みながらデルフェスが言った。
「で、どこから戦隊者という言葉がでるのよ？」
シュラインはデルフェスに突っこんだ。
「現代の知識を知る上で色々見識を深めておりますので。なにぶん約４００年は眠っておりましたから」
と、答えるデルフェスであった。
確かに色も様々、形も様々なのだ。
女性ばかりの構成なのか、チームワークは大変良く、仕分けはさほど時間がかからなかったし、段ボールも用意されている。
そして、早く巫女服を着たい４人がじっとシュラインを見つめていた。
「分かったわ…試着して、デジカメをとって資料にするから…」
そう、巫女さんコスパーティが始まる許可を与えた。
「シュラインさんもどうぞ」
みなもはスタンダードな赤と白の巫女服（何故かシュラインにぴったり合う）を渡す。
「あたしも？」
流石に前にメイド姿になった物の、未だ抵抗感がある。
幸い今回は草間武彦が居ないので、羽目を外すには問題はないが…恥ずかしいものだ。
「皆さんで神楽もどきや巫女もどきで記念撮影とりましょう」
と、みなもの提案。其れに反対する者はいなかった。
「いいですわね」
「やった〜」
と喜ぶデルフェスとゆゆ。ただ、千春だけは不安な顔をしていた。
（あの夢のオチが再現されたら…困っちゃいますよぅ…）
３．ゆゆちゃん飛び出る
「あたし着たかったんだ♪」
と、極普通のデザインである巫女服：精霊種用を着る。サイズも彼女に合わせて微調整された。
「これで神社の御神木さんに会いに行こうと思ってたの♪」
と、うきうきと語っていくゆゆ。
「どうしてですかぁ？」
千春は首を傾げながらゆゆに訊いた。
「別にいつもの格好でもいいんだけど…それに外見も自由に変えられるんだけど…やっぱり私は鈴蘭の精だから【自分の服】っていうのがないの。全部私の想像の服で、本当の着心地なんて全然知らない。着物は苦しい、ってみんな言うけど、どんなだかもわからない。本来なら服なんて着れないから…でもこの服は違うんでしょ？巫女さんの衣装だけど…。実際に私でも着れるのなら【私の服】っていう感じがする♪だから貰った〜って自慢しに行こうかなって。神社の御神木や花達に新年の挨拶もあるし♪」
と、ニコニコと答えるゆゆ。
「それは嬉しい事ですよね」
「其れできたのね…ゆゆさんは」
シュラインと千春は納得した。
「はい、ゆゆさんチーズ！」
とみなもがデジカメのシャッターを押す。
ゆゆは巫女らしい（と自分で思っている）ポーズで写真に収められた。
「では、神社に行って来ます。やっぱり巫女さんは赤と白だよね〜♪」
と、うきうきしながら興信所を飛び出してしまった。
「ゆゆちゃん！」
五月が止めようにも彼女の姿は瞬く間に居なくなったのだ。
「あらら…」
もう呆れるしかないシュラインである。
４．神楽舞で一騒ぎ
残る零を含むと５人赤白と他様々な色で、デルフェスの言ったおとりに戦隊者になってしまった興信所の女性。基本の巫女服スタイルで一応揃っているが、零が橙、シュラインは赤、デルフェスが紫、みなもが青、千春が橙だった。妙な取り合わせもあったものだ。
そして、所長デスクからもぞもぞと何かかが出てきた。小麦色の毛皮の生物だ。
「かわうそ？」
「そう、かわうそ？ 久しぶり（？）」
既に、このナマモノがいきなり出てきても何ら不思議ではないので、シュラインも零もそして此処の常連も驚かない。しかし、千春に至っては流石に
「かわうそ？ちゃんどこから来たのでしょう？」
と、驚く事はないが考える。
「記念撮影手伝う。みなも、カメラ」
「はい、お願いします」
とみなもは、かわうそ？にデジカメを手渡す。
ナマモノは器用にデジカメのを調整し、
「OK、並んで、並んで」
と皆に指示する。
「はいチーズ」
と、巫女姿になった女性（一部強制的に着せられた人）を撮す、かわうそ？だった。
「神楽舞しましょう。小道具はいっぱいありますから♪」
みなもが率先して皆に勧める。
「ごっこ遊びみたい〜」
と五月が巫女道具の一つを振って遊んでいる。
シュライン除く皆はやる気満々らしく、丁度ゆゆも戻ってきたので更に盛り上がる。
払いの儀式のまねをしたり、本当に踊ったり、今までの巫女さんらしくおとなしく写真を撮って貰う。
しかし、誰もハリセンをとる事はなかった。
―当たり前だが、ハリセンを使う巫女なんてたった１人だ。
「みなも、みなも」
「なに？かわうそ？さん」
かわうそ？に呼ばれたみなも。ナマモノは何かの巻物を渡す。
「これ、詩？」
「うん」
「これで神楽舞を？」
「そうそう」
千春が加わって、
「面白そうですねぇ☆」
と、わいわい話している。
デルフェスは、のんびりとこう言った。
「日本の伝統に直に触れるというのは嬉しい事ですわ」
「そうだけど…別の意味合いでの日本伝統かもしれないわ」
シュラインは、ため息を吐いて突っこんだ。
有志で集まる神楽舞の真似。千春とみなも、ゆゆが踊り、かわうそ？が歌う。
皆素人だが、様になっているようだ。
シュラインが、この場面をデジカメで収めていく。
終わった後、いきなりデルフェスが立ち上がった。
「どうしたの？」
「何かが起きてきます」
「え？」
「まさか…」
辺りを見渡して…警戒する霊力の有るものたち。
大体神楽舞は、神を奉るためから出来たと言われている。おそらく、前から存在していた土地神が起きてしまったのかもしれない。それか、興味本位でやった舞のために「何か」を呼び出してしまったのかもしれないのだ。
「きゃー！」
「千春さん！」
千春に「なにか」が襲ってきた。彼女は壁ぶち当たり、巫女服はボロボロに破れてしまう。
みなもが彼女を助け、他は「なにか」を目で追い続けた。
「なにか」をよく見ると…。
普通の猫より一回り大きい猫だった。
いや、猫又だ。
態度からして、何かご機嫌斜めのようだ。
デルフェスが猫又の側に近より、
「どうされました？」
「にゃー！下手な神楽舞を踊るんじゃにゃい！」
「はぁ？」
いきなりやってきた珍客に驚く一同だった。
５．猫又と神楽舞
「この地域の土地神なのですか？」
「そうにゃ。久しぶりに神楽舞を見たのでどんなものかと見てきたら…」
と茶菓子でのんびり会話する猫又とシュライン達。
千春は、普通の服に着替える。
（男の人がいなくて良かった）
「しかし全然見かけなかったけど」
ゆゆは訊ねる。
「猫は気まぐれにゃ。楽しい歌に綺麗な踊りが楽しみなのニャ。大抵は眠っておる」
いい加減な土地神が居たものだ。
「ヒョッとすると…かわうそ？が持ってきたのが…」
「儂を奉る神楽舞の歌にゃ！すっかり消えていたと思っていたのだがにゃ！」
と、土地神の猫又。
「あのナマモノは…」
呆れて怒る気にもならない方々。
アレに怒っても、何も特にならない。ただ、ずっと奉られていなかった神を呼び起こした事で問題が起こり、どうすれば良いかが優先だ。ありがた迷惑この上ない。
「どうすればいいのでしょうか？お手伝いしたいのですが」
と、みなもが猫又に訊く。
「社を建ててくれたら良い。これだけ巫女服があるなら、此処も神社だろう問題ない」
「ここ…神社ではないのですが」
「にゃぬ！？」
驚く猫又。
猫又でも土地神。猫神と言っても良いだろうか？彼が場所を離れる事は出来ないだろうから、仕方ないので、心当たりのある神社の巫女と宮司を呼び、社建築をして貰うしかなさそうだ。
長谷神社の長谷親子と幼なじみの剣客が興信所下に社を造り、しっかり儀式を済ましたおかげか、猫又の怒りは収まったようだ。
「こんかいの教訓：怪奇探偵の事務所であの神楽舞をしては行けない」
と、かわうそ？がいつの間にか現れ、皆に突っこまれるより速く逃げていった。
「かわうそ？さん！先にあの歌の事教えてから…っていなくなるしぃ！」
みなも、千春が叫ぶも既に居ないナマモノ。逃げるのも速かった。
６．巫女服の行方
ネットオークション用とお世話になっている神社への寄贈品用、そして各自で好みの巫女服を沢山貰って一段落を終える。
「地域ごとに違う巫女服があるのね」
と感心しながら、リストチェックするシュラインと、
「お姉様喜ぶだろうなぁ」
と悦に入っているみなも。なにせ、姉がとてもお気に入りだと言っていた黒巫女装束が沢山あったからだ。
当然日本文化に触れたデルフェスも気分上々だ。
ただ、千里は予知夢が全て当たってしまったのでがっくりとしている。五月が彼女を慰めている。
ゆゆは未だ巫女のまま、長谷神社に向かって行った。純真の霊木にまたおしゃべりしに行くためだろう。
自分の服を手に入れたのがとても嬉しいと自慢するために。
一寸トラブルはあった物の、あとは何の問題もなくこの巫女服処理は片が付いた、かに見えた。
しかし、興信所下の社では猫土地神と焔が、マタタビ酒で宴会する事となり、少し頭が痛いシュラインと零だった。
「兄さん嬉しがるかなぁ…？土地神奉っている事しったら…」
「複雑な顔をすると思うわよ…」
又これで、「怪奇探偵」と名をはせる事間違いないのだ、所長の草間がこの事を知れば嬉しいはずがない。
End
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■ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ■
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【0086 シュライン・エマ 26 女 翻訳家＆幽霊作家＋草間興信所事務員】
【0170 大曽根・千春 17 女 高校生】
【0428 鈴代・ゆゆ 10 女 鈴蘭の精】
【1252 海原・みなも 13 女 中学生】
【2181 鹿沼・デルフェス 463 女 アンティークショップの店員】
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■ ライター通信 ■
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滝照です。
『巫女服がいっぱい…』に参加していただきありがとうございます。
この土地神である、猫又…。しっかり奉ってれば良い事が起こるのでしょうか其れは分かりません。
また、巫女服をお持ち帰りしたい方は、ご自由にどうぞ。
みなも様の所持しているデジカメに写真が沢山収まっていますから、有効利用して下されば幸いです。
大曽根千春様参加ありがとうございます。予知夢が全て当たってしまいましたね…。
では又機会がありましたらお会いしましょう。
滝照直樹拝
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