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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


温泉と雪女とロマンスと

 それはゴーストネットの交流掲示板に書かれたひとつの文章から始まった。
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「はじめまして。わたくしは皆様がたに雪女と呼ばれる者でございます。この度ここへお邪魔致したのは、皆様に少しでもお力を貸して頂けないかと思い、そのお願いに参らせて頂きました。わたくしの娘が……お恥ずかしながら人の子に恋をし、そのお相手の行方を探しております。近年、土地が暖かくなってきているのか、都市には雪が殆ど降らず、わたくしは自由に赴くことが出来ません。その方は東京のある場所に住んでいる所まで分かっているのですが、それ以上はわたくしの力が及ばず、大変困っております。どなたでも構いません、どうかあの方に一目会いたいという、私の娘の想いを叶えて頂けませんか?」
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「……どう思う? これ」
 ディスプレイに映し出された掲示板を覗き込み、瀬名・雫は顎に手を当てた。
「うーん……いたずらという可能性もあるね……でもこの書き込み、凄い丁寧だし……何だか放ってはおけないんだよね……」
 もしこれが本当ならば、本物の雪女に会えるかもしれない。その魅力があるだけに、放っておくのは惜しいネタだ。
「うーん、投稿先は……岐阜県からか。そういえば前にオフ会を温泉地でやろうとか行ってたよね。何人か誘って、温泉オフついでに相談にのってみようか?」
 雫の提案に仲間達は大きく頷いた。
「よし、決まりっ! それじゃ早速詳しい日程決めましょ♪」

■想い人を訪ねて
 雫の情報と、オフ会メンバーの協力により、雪女の子の想い人である男性は簡単に見つけだすことが出来た。
「さて、あとはどうやって説得するか……よね」
 鉄製の扉の前に佇み、巳主神・冴那(みすがみ・さえな)はそっとベルのボタンを押した。
『はい』
「先日お電話した巳主神です。お迎えにあがりました」
 数分間の沈黙の後、ガチャリと扉が開かれる。かなり軽装な出で立ちで、手荷物らしきものは少し大きめのバックパックぐらいだ。
「……本当にただで泊まれるんだな?」
 疑い深そうに男性はじろりと冴那を見つめた。
「ええ、あなたに一目お会いしたい女性からのご招待なのよ。詳しい話が聞きたければ、途中の電車で説明するわ。彼女はあなたに会いたくてずっと待っているの……来てもらえるかしら」
「まあ、あんたみたいな美人に出迎えられちゃ行かないってのは勿体ないな」
 少し維持の悪い笑みを浮かべるのを冴那は見逃さなかった。
「さ、早くしないと電車に乗り遅れてしまうわ。急がないと向こうの駅についた後の足がなくなってしまうものね」
「分かってるって」
 男性が妙な気を起こさないよう、少し距離をおいて歩き、2人は松本へ向かう特急に乗るため駅へと向かっていった。

●温泉到着
 雪の積もった長い林道を抜けて、バスは静かに木造の高い建物の前に到着した。
「さむーい……っ」
 バスから飛び下りた廣瀬・恵(ひろせ・めぐみ)はセーターに顔を埋めて震え上がった。雪の白さに思わず飛びだしたはいいものの、防寒準備を整えずに飛び出してしまったのだ。
 すかさず後から降りて来た廣瀬・秋隆(ひろせ・あきたか)が恵にコートを羽織らせた。ほのかに降りだした粉雪が恵の小さな肩に降り注ぎ、コートの温かさに一瞬にして溶けていった。
「真っ白だなぁ」
 白銀の山々を眺め、雪ノ下・正風(ゆきのした・まさかぜ)はコートを羽織り直した。風で一瞬めくれたコートの裏になにやら札らしきものが一瞬見え、問いかけようとした恵を秋隆は制した。
「えーっ、なんで?」
「他人の趣味にとやかく言っちゃ立派なレディになれないぞ」
 父親らしい微笑みを秋隆は投げかける。どうせ保温効果を向上させるなにかなのだろう、そう判断したからだ。それに詳しく教えたところで8歳の娘が理解できるかは……保証できない。
「いらっしゃいませ、どうぞおくつろぎ下さい」
 和装姿の女将らしき女性が、わざわざ門に出向いてきてまで一行を出迎えてくれた。荷物はすべて宿の従業員が運んでくれたりと、シーズン中だというのに至れり尽くせりの対応だ。
「つかぬ事をお伺いしますが……たしか6名様のご予約ではございませんでしたか?」
「ああ、1人はちょっと遅れてきます。夕食にはぎりぎり間に合うと思うので、一応お願いできますか?」
 宿の受付作業をしている雫に代わって、真名神・慶悟(まながみ・けいご)が返事をした。他のメンバーはというと、早速タオル片手に温泉めぐりの準備を進めていた。
「温泉といえば温泉まんじゅうだ。温泉につかりながら食べる温泉まんじゅうはまた格別だぞ!」
 正風は客室に置いてあったのだろうとおもわれる、紙包みのそばまんじゅうを恵に手渡す。まずは宿の温泉を攻略しようとする一行の足を止めさせ、雫はそれぞれの部屋割りを決めた。
「ええと、後から冴那さんが来るから……こっちの入り口に近い方は私達女性部屋ね。で、反対のこっち側が男性部屋。今は同じになってるけど、寝る前にふすまで仕切ってくれるそうよ」
「あたし、雫ちゃんの隣で寝るの?」
「お父さんと一緒のほうが……良いんだろうけど、ほら他の狼も一緒だし」
「狼とはなんだ狼とは」
 失礼な、と呟きながらじろりと慶悟は雫を睨みつける。
「私の娘に手を出したら容赦しないぞ」
「誰が手を出すと言ったんだ。大体まだ発展途上の平原なんか見た所で、欲なんか沸くはずがないだろう」
 怒りのこもった慶悟の言葉に、恵はレディとしてのプライドをほんのり傷つけられた。鋭く察した秋隆がすぐさまフォローの言葉をかけてやる。
「大丈夫だ恵、きちんとパパの言う事を聞いていれば、あっという間にあのお兄ちゃんを跪かせられる程の立派なレディになれるよ」
「そこ、教育方針間違ってないか……?」
「他人の家庭にとやかく口出ししないでもらいたいね」
 じろりと秋隆は慶悟を見つめた。さすがは一流のホスト経営者だけあって、子供をあやす姿すら様になる。
 
 それぞれ荷物の整理も簡単に整え、まずは温泉を楽しもうと一行はふろ場へと向かった。
「あ。ちょっと待って」
 思い出したかのように、雫は鞄から小さな鶴と梅を象った置物を取りだした。
「すみません……乗鞍岳(のりくらだけ)はどっちの窓から良く見えますか?」
 従業員に案内してもらい、雫は女性部屋の西窓にちょこんと置物を飾った。
「さて、お待たせ! 早速行きましょう!」

●林道を走るタクシー内にて
「寒いわね……」
 車の窓に叩き付けられる雪を眺めながら、冴那はぽつりと呟いた。
「暖房、もう少し入れますか?」
 タクシーの運転手はバックミラー越しに冴那を覗き見る。
「いえ、大丈夫……もうすぐなんでしょ?」
「ええ、この道を抜ければすぐに温泉が見えてきますよ。この雪じゃ……今夜は一旦閉鎖されそうですなぁ。お客さん運がいいですよ」
 松本駅から白骨温泉までは運行バスが出ているのだが、最終が14時50分発とかなり早い。冴那が駅に到着した頃にはすでに最終バスは出ていってしまっていた。仕方なく冴那は駅前に止まっていたタクシーに飛び乗ったのだった。
「それにしても、カップルで温泉ってのはうらやましいかぎりですわ。うちんとこのかみさんなんか、温泉行こうかなんて言ったら、友達と行く方が楽しいって断りやがるんですよ」
 そう……と短く返事を返し、冴那は隣にいる男性を横目で見つめた。
 どこにでもいそうな、ごく普通の大学生だ。話を聞いた所、雪女になど会ったことなど無いという。ただ、数年前まで乗鞍のスキー場に毎年インストラクターのバイトとして来てはいたらしい。
 外見の条件は満たしているし、住所の調査でも殆ど適合している(アパート暮らしのため誤差が発生しているかもしれない)後は……実際に会わせてどういう反応を示すかだ。
「運転手さん、安全運転で……お願いね」
 相づちを返す代わりに冴那はそう運転手に告げた。
 
●雪ん子
「かんぱ〜いっ」
 軽快なグラスを重ねる音が響いた。
 それぞれ、思うままに酒を飲み、出された料理に舌鼓を打つ。
 初めての顔合わせもいたので、改めてそれぞれ自己紹介を交わしながら少し優雅な夕食会を楽しんでいた。
 音もなくふすまが開かれ、白い着物に真紅の帯を締めた少女が部屋に入って来た。
 漆黒の黒髪を後ろで結い上げて、梅のかんざしをさしている。かんざしに付けられている金の鎖が歩く度にシャラシャラと綺麗な音を鳴らしていた。
 一行の視線が集まる中、少女はぺたりと冴那が連れて来た男性の隣に座り、にっこりとほほ笑んだ。
「また、会えて嬉しい……」
 少女の言葉が理解できず男は眉をひそめて冴那に視線を送った。
 やれやれと肩をすくめて、冴那は車の中で説明したことをもう一度繰り返す。
「いったでしょ、会わせたい人がいるって。彼女に覚えは無いの?」
 男性を除いた、察しの良い面々達は入った時に既に彼女の正体に気付いていた。証拠に、彼女が妙な行動を起こさぬようにと、慶悟が何時でも術を放てるよう身構えている。
「俺はガキの指導はやったことないぜ。ペンションだって友達と貸しきりのものを借りてたし……」
「そうじゃなくて、遊びでスキーをしてた時に声を掛けたとか、買い物してた時に会ったとかあるだろう? 旅先の出会いはそうそう忘れないものだぜ」
 会わせれば全ては丸くおさまる。誰もがそう思っていた。だが、少女はともかく男性側は彼女にあったことすらないと言い張った。見る間に少女の瞳に涙があふれ、それと同調するかのように部屋の温度が一気に下がりはじめる。
「そんな……っ、あたしは忘れてないもん! ずっと、ずっと待ってたんだから……!」
 途端、室内だというのに強い吹雪が吹き荒れた。明かりが一斉に消えて冷たい風と雪が切れるそうなほどの痛みを肌に叩きつけた。
「吹雪よ退け!」
 力ある慶悟の声が響き渡る。途端、吹き荒れていた風がおさまり、はらはらと粉雪が名残おしむように畳へと吸い込まれていった。
 程なくして部屋の照明がともり、少女が訪れる前の状態へと部屋の姿が戻された。激しい吹雪が吹いていたにも関わらず、味噌焼きの卓上コンロの小さな炎は青い炎をあげている。
 ただ、男性の姿がなかった。座っていたはずの場所はすでに冷たく、漆塗りの箸が無造作に転がっていた。
「まさか……連れていかれた!?」
 追いかけようとふすまを開けた雫に、冴那が鋭く告げた。
「今、外に出るのは自殺行為よ」
 もうすっかり日が暮れた夜の温泉街に横殴りのような吹雪が吹いていた。そうとう雪山に熟練したものでないと、すぐに方向を見失ってしまうだろう。
「今日はひとまず休んで、明日晴れたら探しにいこうよ。長年待ち続けた想い人なら、そう易々と命を取りはしないだろうしね」
 好きな人を氷漬けにして一生傍に置いておく……雪女にまつわる有名な伝説のひとつだ。氷漬けにされた人間は既に死んでいるものと、時の流れが止められただけのものとあるが、もし凍らされているのであれば後者であることを願いたい。
「そうそう、早く食べないとご飯冷めちゃうしね」
 そそくさと席に戻り、恵は早速茶碗蒸しを口に放り込んだ。
「西の方角に式神を飛ばしておいた。一晩もあれば彼らを見つけられるだろう」
 偵察用の式神なら吹雪など物ともせずに目標を探し出せるだろう。こちらからは身動きが取れない以上、後は情報が入ってくるか状況が良くなることを待つしか無い。
「そうだ、食べ終わったら1階のゲームコーナのエアホッケーでもしよう!」
「食後はお肌と身体のためにひと休みするものだよ」
 ぷうと頬を膨らませる恵。はいはい、と肩をすくめて正風はおちょこに注いだ熱燗(あつかん)をぐいっと飲みほした。
「でも気分転換にはいいかもな。寝る前の軽い運動にも丁度いいか」
「そうね。外の露天風呂もこの分だと行けそうにないし、今夜は皆でオフ会を楽しみましょう」
 秋隆と冴那は同意するも、慶悟は術の集中力を保たせるため1人残ることになった。
「そのかわり酒とつまみの追加頼んでもいいか?」
「うん、いいよ。でも……ほどほどにね」
「分かってるって」
 品書きを開きながら慶悟は苦笑いを浮かべた。
 
●雪山へ行こう
 翌朝。昨晩の吹雪がまるで嘘のように晴れ渡り、雲ひとつない快晴が広がった。
「雪女の所在地は三本滝を越えたこの辺り、丁度県境になる付近のようだ。夏だったら車で簡単に行ける場所だが……今は林道も閉鎖されているし大雪渓の滑走も解放されてない。行くのは結構難関だぞ」
 机に地図を広げて、慶悟は式神に探索された地域の説明を始めた。
 事前調査をしてあったおかげでこの辺り近辺の道路事情も頭に入っている。標高が高いこの近辺はスキー場として盛んな反面、雪の事故も多い。冬場になればチェーン規制されるものの、スリップ事故は毎年絶えない。
「うーん……スノーモービル借りていってみる?」
「この辺りは許可されていないはずだよ。行くなら徒歩か、スキーかな」
 ちらりと恵を見ながら正風は呟く。
「雪山は結構危険だけど、大丈夫……かい?」
「平気だよ。パパが守ってくれるもんっ」
 にっこりと小首を傾げながら恵は秋隆にほほ笑みかける。昨晩、雪山に行きたがる娘を引き止めようと説得していたが、どうやら根負けしてしまったらしい。
「それじゃ、頑張ってね」
 すでにリラックスモードに入っている冴那はマッサージチェアにもたれかけた。
「寒いのは好きじゃないの。それに露天風呂まだ入ってないし」
 確かに、せっかく温泉地に来たのにそれを充分堪能しないのは勿体ない。
「ね、雫ちゃん。一緒に下の大温泉いってみましょ」
「え……っ」
 困った表情をさせる雫に、秋隆はにっこりと笑顔を返す。
「なら雫ちゃん達は温泉でゆっくりしていくといいよ。俺達が代わりに話をしてくるから」
「……無理はしないでね……」
「大丈夫、パパが危なくなったらあたしが助けるもんっ。お夕飯までには戻ってくるね」
 天使の笑顔を見せる恵。無邪気な微笑みに少し心が軽くなったのか、ホッとした様子で雫は顔をほころばせた。
 
●雪女
「あそこだな」
 広い大雪渓のふもとに山林が広がっている。その奥に彼女らはいるらしい。
「後もう少しだが、大丈夫か?」
 息のあがりはじめている恵を秋隆は心配げに見つめた。
「少し休憩していこうか。確か……どこかに休憩出来る場所があったは……ず」
 正風はそう言いかけて眉をひそめた。快晴だった空に急に雲がわき起こり、しんしんと雪が降り始めたのだ。
「あ、あそこ……!」
 恵の視線の先に一同が注目する。同じ衣装をきた和装姿の親子が、雪を上を滑るように歩いて来たのだ。
「あんただな。掲示板に書き込みをしたのは」
 徐々に強くなる風に倒れないよう注意しつつ、正風は雪女親子の傍まで滑り降りた。
「彼をどうした?」
「……今はわたくし達の屋敷で眠っております。目を覚まされましたら、ふもとにご案内するつもりです」
「雪女は……好いた男を氷漬けにして、傍に置いておくのじゃないのか……?」
「それは昔の人間が作りだした噂話ですわ。そうそう容易に人の命を奪うなど、わたくし達には出来ません。それに……あの方にきっぱりと断られて、娘もあきらめがついたようです」
 傍らにいた少女の頬には涙の後があった。初恋が破れて、一晩泣き続けたのだろう。
「相性は良いと思っていましたが、本人にその意志がなくては仕方ありません。この子もこれでまた修行に身を費やしてくれるようになります」
 ふっと顔をあげて、雪女は冷たい表情に精いっぱいの笑みを作りだした。
「連れて来てくださって本当に有難うございました。それと、娘がご迷惑をおかけしたことを……どうぞお許し下さい……」
 ひときわ強く雪の風が吹雪いた。その一瞬にして雪女達は宙へと溶け込むように姿を消していく。
「男の人、大丈夫だったみたいだね」
「ああ、そうだな……」
 少しほっとした表情をそれぞれ浮かべ、彼らは方向を転換してふもとのスキー場へと滑り降りていった。
 
●日暮れの温泉地にて
 雪女の言葉通り、登山に出かけた一行が帰る頃には男性は旅館のロビーにいた。気が付いたらその場所に運ばれていたらしく、半日程度の記憶がないという。
「そういえば、どこで出会ったとか分かったのか?」
 冷えた身体を暖めるため、一旦温泉につかろうとしていた廣瀬親子に慶悟は問いかけた。
「ああ、去年の春スキーで大雪渓を滑ってる時に一目惚れしたらしい。あの頃はまだ娘のほうは実体化する力が低かったみたいで、彼の目には見えてなかったそうだ」
「なるほど、初恋で一目惚れか……でも氷漬けにされなくてよかったな」
「そうするまでの力は……今の雪女達にはないからな。山がずいぶんと荒らされ、山の神聖さがずいぶんとなくなって来ている。でもこれからは観光客も気軽にのぼれなくなるみたいだし、そのうち力を貯えてむりやりでも氷漬けにしに来るかもしれないな」
 そう言って秋隆は苦笑いを浮かべた。
「準備できたかー? 先にいくぞー」
 すでに浴衣姿に着替えていた正風が一向に声をかける。まってー、と元気な声をあげて恵は彼の後を追いかけた。
「でも、彼もまんざらじゃなかったみたいだけどね」
 親子達が脱衣所へ向かう後ろ姿を眺めながら、ぽつりと冴那が言った。
「あの子が大きくなったらまた滑りにくるそうよ、彼」
「……確か雪女は人間と寿命がかなり違ったんじゃないか……?」
「そうね、彼女が立派な成人女性になるころには……もうおじいさんになっているんじゃないかしら」
 それも一興だと冴那は目を細める。
「待っている人がいるという楽しみは、旅のなによりの楽しみになるからな」
 西の御岳に真っ赤な夕焼けが広がりはじめていた。
 炎のように染め上がる雪山と朱から紫、そして紺へ色を変える空。小さく輝く一番星のまたたきを温泉の湯煙がぼんやりとにじませている。
 外界から切り離され、全ての音が吸収された山岳の温泉地に、静かに夜の帳が降りようとしていた。
 
 おわり
 
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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/  PC名 /性別/ 年齢/  職業  】
 0376/巳主神・冴那/女性/600/ペットショップオーナー
 0389/真名神・慶悟/男性/ 20/陰陽師
 0391/雪ノ下・正風/男性/ 22/オカルト作家
 2073/ 廣瀬・秋隆/男性/ 33/ホストクラブ経営者
 2177/ 廣瀬・ 恵/女性/ 8 /小学生
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■         ライター通信          ■
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 お待たせしました。「温泉と雪女とロマンスと」をお届けいたします。

 今回の舞台は東京都を飛び出して、長野と岐阜の県境である乗鞍岳近辺が舞台となっております。
 この辺りは観光地としても大変良い場所で、今回のお話で興味を持ってくださるとちょっぴり嬉しかったりします。
 
巳主神様:ご参加有り難うございました。蛇というか……殆どの生き物にとって今の季節はかなり辛いですね。温泉でゆっくりと日頃の疲れと冷えを癒してもらえたかと思います。

 乗鞍岳はふもとにも温泉があったりするのですが、情緒溢れる白骨温泉をオフ会の会場にいたしました。春スキーのお話をつくる機会がありましたら、またこの辺りを舞台にしようかと企んでいたりもします。
 
 それではまた別の物語にてお会いしましょう。
 
 谷口舞拝