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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


君と遊ぼう

1.
   疲れたなぁ・・・

草間興信所所長・草間武彦は片付けねばならない書類の山を目の前にやる気をなくしていた。
外では学校が終わったのか、子供のはしゃぐ声が聞こえる。

  ガキはいいよなぁ・・学校さえ行ってりゃ文句は言われない

まぁ、他人の芝生は青く見える・・・ということだ。
子供には子供なりにやることがいっぱいある。
だが、今の草間にはそんなことはどうでもいいことだ。

  俺もああやって自由に遊びたいぜ・・・

草間はいつの間にかウトウトとその瞼を閉じていった。

「兄さん、書類は終わりましたか?」
草間零がやる気のなさそうな兄を見かねてコーヒーを入れてきた。
が、書類の山の前で眠っている兄の横に1人の少年が立っていた。
「お姉さん誰?」
顔・形は草間を縮小しただけで、まさに瓜二つ・・・。
「か・・隠し子?」
零がそう呟くと、少年は訳が分からないといった顔で自己紹介をした。

「俺、草間武彦っていうんだよ。遊びに行きたいんだけど・・ここどこ?」


2.
シュライン・エマはお茶の買出しの帰りに伍宮春華(いつみやはるか)と丈峯楓香(たけみねふうか)と出会い興信所に向かっていた。
が、興信所の玄関の前で落ち着きのない零の姿を見かけ駆け寄った。
「兄さんが眠ったら、子供になっちゃったみたいなんです!」
・・説明だけではよく分からないが、とにかく草間に何か起こったらしい。
4人は興信所の中に入ることにした。
階段を上る途中、興信所の方から子供の会話が断片的に聞こえてきた。
「おとなのじじょう・ボクもな・・りこん・・」
どうやら草間以外に誰かいるようだ。
「こっちです〜」
中に入ると見たことあるような、ないような顔と草間にそっくりの子供が部屋の中にいた。
「・・・草間さんとシュラインさん、いつの間に?」
楓香の第一声にエマが「まだ作ってません!」と微妙な言い回しで赤くなって否定した。
「ホントに武彦のヤツ、寝てんのか?」
伍宮がぐーすかと寝ている草間へと歩み寄ろうとするのを見てエマが「悪いけど毛布を掛けておいてくれる?」と伍宮に渡した。
「さて、もう1人の僕は・・どこかで見たような?」
「ボク、門屋将紀いいます」
「・・門屋?門屋さんの息子さん?」
「ちゃいます。甥です、甥」
「あら、それはごめんなさいね」
エマはニコリと笑うと伍宮に「武彦さんどう?」と声を掛けた。
「駄目駄目。地震が起きてもおきねーんじゃねぇの?って感じ」
「ねぇ、俺遊びに行きたいんだけどダメなの?」
子供の草間(以下・武彦)が痺れを切らしたようにブスッとした顔で誰にいうでもなく聞いた。
「・・よぉし、お姉さんが遊びに連れて行ってあげよう!」
それまで何か1人で思考を巡らせていたらしき楓香が名乗りを上げた。
「お菓子買って〜、アミューズメントパークとかどぉ?」
ニコニコと聞く楓香に武彦は首をかしげた。
「あみゅーずめんとぱーくって何?」
「・・えぇと・・ゲーセンのこと・・かな?」
まさかそう切り替えされるとは思っていなかった楓香は焦りつつも説明した。
「げーせん?ゲームセンターのこと?ダメだよ。ゲームセンターって不良が行くとこなんだぞ?」
武彦は極真面目な顔でそういった。


2.
楓香、将紀、伍宮が噴き出した。
何故笑われているか分からない武彦はただ眉間に皺を寄せる。
「・・昔はそういう認識だったのよ」
シュラインが武彦を哀れに思って、フォローを入れた。
「ゲーセンが一般の人たちでも入れるような場所になったのはここ最近で、昔は『ゲーセン=不良の溜まり場』だったの」
そうシュラインが言うと、今度は将紀と伍宮はニヤニヤとして楓香にこう言った。
「不良〜」
「不良ねぇちゃん〜」
「なななな・・なによ〜!じゃあどこだったらいいのよ!!」
不良といわれたのが相当効いたのか楓香はブーっとふくれっ面で聞いた。
「俺、公園に行きたい。公園で遊びたいんだ」
ぱぁっと顔を輝かせて武彦は言った。
「おっしゃ!俺に任せとけ!鬼ごっこでも隠れ鬼でも缶蹴りでもなんでもこいだ!」
「缶蹴りはちーとばかし古ないか?」
ガッツポーズの伍宮に将紀が冷静にツっこんだ。
「・・とにかく、俺についてこい!」
伍宮が無言で将紀のツっこみを無視し、ダッシュで興信所を飛び出そうとした。
「ど、どこ行くのよ?」
楓香は伍宮を静止しようとしたが、時すでに遅し。
将紀、武彦ともども興信所から姿を消していた。
「・・多分近くの公園ね。救急道具を用意してくるから一緒に行きましょう」
「救急道具?」
「怪我とか、万が一に備えてね」
手際よくエマは救急箱の中から怪我の手当てに必要なものを一式、袋に詰めていく。
服を汚したら・・洗濯すればいいだろう。
「シュラインさんて保母さんにもなれそう」
楓香が感心したようにポツリとそういった。
「ありがとう。でも、ここの興信所に大きな子供1人がいるから、そっちのお守のほうで手いっぱいよ」
にこりとエマは笑うと「さぁ行きましょう」と楓香と共に興信所を後にした。


3.
近くの公園ではすでに鬼ごっこが始まっていた。
「に、兄ちゃん、足速すぎや〜!!」
どうやら鬼になったらしい将紀の声が公園中に響いていた。
「やってるやってる」
「まだ怪我はしてないみたいね」
ワイワイと公園にいた子供たちも巻き込み、大所帯の鬼ごっこが展開されている。
「こっちこっち〜」
伍宮がベーっと舌を出し、将紀を挑発する。
将紀がそれに気を取られ、伍宮を見ると今度は将紀の後ろを武彦や他の子供たちがすり抜けていく。
連係プレー・・というか単にいじめに見えなくもない風景ではあるが、将紀はそんなことでへこたれる様な子供ではない。
すかさず後ろを通り抜けようとした少年にタッチし、鬼の役を返上した。
「・・あたしも行ってこようかなぁ・・」
ポツリと、楓香が言った。
「行ってきたら?丈峯さんなら彼らも入れてくれるんじゃない?・・さすがに私は無理かもしれないわね」
エマは無邪気に走り回る武彦を見ながら、苦笑いした。
「じゃ、ちょっと行ってきます!・・いーれーてー!!」
元気に駆け出していく楓香をみながらエマは近くにあったベンチに腰掛けた。
本当は自分も一緒に遊ぶ覚悟があったのだが、少年達が走り回る姿を目の前にして少々溜息が出た。
子供たちだけの世界。いつから自分は大人になったのだろう?
いつもはポーカーフェイスの草間も子供の頃はこんなにも無邪気で表情が豊かだったのだ。
エマの心情は子供の成長を肌で感じた親のようだった。
「春華〜!覚悟!」
参加してすぐに鬼になった楓香がそう叫んだ。
「なにをー!ぜってー捕まんねーからな!」
小学生の子供の足では伍宮は速すぎるらしく、それゆえ楓香は敵を討つべく伍宮をターゲットにした。
「ねぇちゃん気張りや!」
「ガンバレー!」
将紀と武彦が楓香を応援する。
「あー!おまえらもこいつの味方かよ!」
走っていた方向をクルリと変え、伍宮は将紀と武彦の方へ突進する。
「わわ!な、なにす・・!?」
「逃げろ!!」
逃げようとした2人だが、あえなく伍宮の手に捕まり大格闘戦へと発展した。
「・・・帰ったらシャワー決定ね」
見ていたエマは苦笑いをしながら、それでも楽しそうだった。


4.
公園でエマに応急手当をされた後、日が翳ってきた事もあり子供たちは次々に去っていった。
「私達も戻りましょうか」
エマがそういうと「そやな」と将紀が頷いた。
「おっちゃんもそろそろ帰らんと心配するかもしれんしな」
「俺はもうちょっと遊んでてもいいけどな」
「春華〜、お子ちゃまはもう帰らないといけない時間なのよ〜?」
「なんだとー!おまえだってお子ちゃまじゃないかよ!」
そんな他愛もない会話の中、武彦が言った。

「今日は楽しかったよ。俺、もう帰らないと」

『え?』
そう聞き返す一同の前で、武彦は夕日に紛れ込むようにその姿を消した。
「武彦さんの体に戻ったのかもしれないわね」
エマがそう呟いたのをきっかけに、伍宮を先頭に全員が走り出した。草間興信所に向かい・・。


「あ!皆さん!兄さんが目を覚ましました!」
草間興信所に戻ってきた4人を零が嬉々として迎え入れた。
「・・おう。どうした?そんなに息せき切って。なんかあったのか?」
書類に向かっていた草間は顔を上げて不思議そうに声を上げた。
そんな草間を見て4人はホッと溜息をついた。
「そうそう、俺おまえらの夢見てたぞ。どっかの公園で鬼ごっこやっててさぁ。伍宮に苛められた気が・・」
「よく眠れました?」
エマがそう聞くと草間は「あぁ」とめったに見せたことのない笑顔を見せた。
「・・武彦くんにそっくりや・・あんたが武彦くんの親か!?『おとなのじじょう』っちゅーても『りこん』は子供の為にならへんのやで?わかっとるか?」
「・・なにを言ってんだ?この子・・」
突然説教を始めた将紀に、わけが分からないと草間が呟く。
「とりあえず、お腹も空いたしお茶でも飲みながら話しましょう」
エマがそういうと「賛成!」と伍宮と楓香が勢いよく手を挙げた。

お茶が終わったら書類の山を片付けるのを手伝いましょう。
それにしても、この書類の山みたいに子供時代は宿題ためてたのかしら?
エマはそんな想像をしながら今日の出来事を思い返していた・・・。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

2371 / 門屋・将紀 / 男 / 8 / 小学生

2152 / 丈峯・楓香 / 女 / 15 / 高校生

1892 / 伍宮・春華 / 男 / 75 / 中学生

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■         ライター通信          ■
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シュライン・エマ様

この度は「君と遊ぼう」へのご参加ありがとうございます。
今回は他の方が全力で遊べる低年齢な方が多かった為、エマ様には保護者役をやっていただきました。
さすがに現役学生さんと大人の女性が同レベルで遊んでいては少々まずいかな、と思いましたので。
また機会があれば、草間の子供時代逆行は書けたらなぁ・・と密かに思っております。
それでは、またお会いできるのを楽しみにしております。
とーいでした。