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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


君と遊ぼう

1.
   疲れたなぁ・・・

草間興信所所長・草間武彦は片付けねばならない書類の山を目の前にやる気をなくしていた。
外では学校が終わったのか、子供のはしゃぐ声が聞こえる。

  ガキはいいよなぁ・・学校さえ行ってりゃ文句は言われない

まぁ、他人の芝生は青く見える・・・ということだ。
子供には子供なりにやることがいっぱいある。
だが、今の草間にはそんなことはどうでもいいことだ。

  俺もああやって自由に遊びたいぜ・・・

草間はいつの間にかウトウトとその瞼を閉じていった。

「兄さん、書類は終わりましたか?」
草間零がやる気のなさそうな兄を見かねてコーヒーを入れてきた。
が、書類の山の前で眠っている兄の横に1人の少年が立っていた。
「お姉さん誰?」
顔・形は草間を縮小しただけで、まさに瓜二つ・・・。
「か・・隠し子?」
零がそう呟くと、少年は訳が分からないといった顔で自己紹介をした。

「俺、草間武彦っていうんだよ。遊びに行きたいんだけど・・ここどこ?」


2.
門屋将紀(かどやまさき)はその日、初めて草間興信所を訪れた。
「なあなあ、ここの所長の草間とかいうおっちゃん、どこ?ボク、話があるから来たんやけど・・・」
草間武彦の顔を知らない将紀は目の前にいる子供の草間武彦(以下・武彦)にとりあえず聞いてみる事にした。
「おっちゃん?いや、俺は知らないけど・・」
「あ、キミ、ここの子?ボクは門屋将紀」
ニコニコと笑う将紀に武彦は「草間武彦」とぶっきらぼうに答えた。
「ふぅん…武彦っちゅう名前かいな。よろしゅうにな」
「よろしく」
「武彦くん、お父ちゃんとお母ちゃんは?」
「いや、今は・・」
現状を把握していない武彦に将紀は深く頷いた。
「子供にわからん『おとなのじじょう』っちゅうヤツでここに預けられたんやな。ボクもや。お父ちゃんとお母ちゃんが『りこん』したんや。それでな、おっちゃんとこの『いそうろう』しとんねん。大人は勝手やね。子供のことなんか考えんと、自分らのことしか考えてへんし。・・こんなん聞いてへんかったな。ちーとばかし待たせてもろてええやろか?」
「あぁ、構わないけど」
と、ワイワイと玄関が開き数名の大人が入ってきた。
「こっちです〜」
零の情けない声と共に入ってきたのはシュライン・エマ、丈峯楓香(たけみねふうか)、伍宮春華(いつみやはるか)である。
「・・・草間さんとシュラインさん、いつの間に?」
楓香の第一声にエマが「まだ作ってません!」と微妙な言い回しで赤くなって否定した。
「ホントに武彦のヤツ、寝てんのか?」
伍宮がぐーすかと寝ている草間へと歩み寄ろうとするのを見てエマが「悪いけど毛布を掛けておいてくれる?」と伍宮に渡した。
「さて、もう1人の僕は・・どこかで見たような?」
「ボク、門屋将紀いいます」
「・・門屋?門屋さんの息子さん?」
「ちゃいます。甥です、甥」
「あら、それはごめんなさいね」
エマはニコリと笑うと伍宮に「武彦さんどう?」と声を掛けた。
「駄目駄目。地震が起きてもおきねーんじゃねぇの?って感じ」
「ねぇ、俺遊びに行きたいんだけどダメなの?」
武彦が痺れを切らしたようにブスッとした顔で誰にいうでもなく聞いた。
「・・よぉし、お姉さんが遊びに連れて行ってあげよう!」
それまで何か1人で思考を巡らせていたらしき楓香が名乗りを上げた。
「お菓子買って〜、アミューズメントパークとかどぉ?」
ニコニコと聞く楓香に武彦は首をかしげた。
「あみゅーずめんとぱーくって何?」
「・・えぇと・・ゲーセンのこと・・かな?」
まさかそう切り替えされるとは思っていなかった楓香は焦りつつも説明した。
「げーせん?ゲームセンターのこと?ダメだよ。ゲームセンターって不良が行くとこなんだぞ?」
武彦は極真面目な顔でそういった。


2.
楓香、将紀、伍宮が噴き出した。
何故笑われているか分からない武彦はただ眉間に皺を寄せる。
「・・昔はそういう認識だったのよ」
シュラインが武彦を哀れに思ってか、フォローを入れた。
「ゲーセンが一般の人たちでも入れるような場所になったのはここ最近で、昔は『ゲーセン=不良の溜まり場』だったの」
そうシュラインが言うと、今度は将紀と伍宮はニヤニヤとして楓香にこう言った。
「不良〜」
「不良ねぇちゃん〜」
「なななな・・なによ〜!じゃあどこだったらいいのよ!!」
不良といわれたのが相当効いたのか楓香はブーっとふくれっ面で聞いた。
「俺、公園に行きたい。公園で遊びたいんだ」
ぱぁっと顔を輝かせて武彦は言った。
「おっしゃ!俺に任せとけ!鬼ごっこでも隠れ鬼でも缶蹴りでもなんでもこいだ!」
「缶蹴りはちーとばかし古ないか?」
ガッツポーズの伍宮に将紀が冷静にツっこんだ。
「・・とにかく、俺についてこい!」
伍宮が無言で将紀のツっこみを無視し、ダッシュで興信所を飛び出そうとした。
「ど、どこ行くのよー・・・」
楓香は伍宮を静止しようとしたが、時すでに遅し。
将紀、武彦ともども興信所から走りだしていた。
「ここの近くに子供らがいつもいる公園があるんだ。そこ行くぞ!」
伍宮が振り返りながらそう言った。
「おう!」
息もぴったりに将紀と武彦は返事をして伍宮に続いた。


3.
「おーっし!鬼ごっこやるぞー!」
公園に着いた伍宮は公園中にいた子供たちを巻き込んでそう言った。
『ジャンケンポン!!』
全員でジャンケンすると鬼が決まった。
「に、兄ちゃん、足速すぎや〜!!」
鬼になった将紀の声が公園中に響いた。
「こっちこっち〜」
伍宮がベーっと舌を出し、将紀を挑発する。
将紀がそれに気を取られ、伍宮を見ると今度は将紀の後ろを武彦や他の子供たちがすり抜けていく。
連係プレー・・というか単にいじめに見えなくもない風景ではあるが、将紀はそんなことでへこたれる様な子供ではない。
すかさず後ろを通り抜けようとした少年にタッチし、鬼の役を返上した。
「ちょろいちょろい」
将紀はタッチした後ダッシュで武彦の傍へと逃れた。
鬼になった少年は執拗に伍宮を追いかけていたが断然伍宮のほうが早く、ヘトヘトになっていた。
「いーれーてー!!」
元気に駆けてくる楓香の姿が見えた。・・・と思ったら速攻で鬼になった。
「ねぇちゃん、もうちびっと気合入れんとダメやで」
そういうと将紀はとりあえず楓香の動向を見ることにした。
「春華〜!覚悟!」
参加してすぐに鬼になった楓香はそう叫んだ。
「なにをー!ぜってー捕まんねーからな!」
楓香は先ほどの少年を見ていたのか伍宮をターゲットにした。
「ねぇちゃん気張りや!」
「ガンバレー!」
将紀と武彦が楓香を応援する。
「あー!おまえらもこいつの味方かよ!」
走っていた方向をクルリと変え、伍宮は将紀と武彦の方へ突進する。
「わわ!な、なにす・・!?」
「逃げろ!!」
逃げようとした2人だが、あえなく伍宮の手に捕まり大格闘戦へと発展した。


4.
公園でエマに応急手当をされた後、日が翳ってきた事もあり子供たちは次々に去っていった。
「私達も戻りましょうか」
エマがそういうと「そやな」と将紀は頷いた。
「おっちゃんもそろそろ帰らんと心配するかもしれんしな」
「俺はもうちょっと遊んでてもいいけどな」
「春華〜、お子ちゃまはもう帰らないといけない時間なのよ〜?」
「なんだとー!おまえだってお子ちゃまじゃないかよ!」
そんな他愛もない会話の中、武彦が言った。

「今日は楽しかったよ。俺、もう帰らないと」

『え?』
そう聞き返す一同の前で、武彦は夕日に紛れ込むようにその姿を消した。
「武彦さんの体に戻ったのかもしれないわね」
エマがそう呟いたのをきっかけに、伍宮を先頭に全員が走り出した。草間興信所に向かい・・。


「あ!皆さん!兄さんが目を覚ましました!」
草間興信所に戻ってきた4人を零が嬉々として迎え入れた。
「・・おう。どうした?そんなに息せき切って。なんかあったのか?」
書類に向かっていた草間は顔を上げて不思議そうに声を上げた。
そんな草間を見て4人はホッと溜息をついた。
「そうそう、俺おまえらの夢見てたぞ。どっかの公園で鬼ごっこやっててさぁ。伍宮に苛められた気が・・」
「よく眠れました?」
エマがそう聞くと草間は「あぁ」とめったに見せたことのない笑顔を見せた。
将紀はまじまじと草間の顔を見た。
「・・武彦くんにそっくりや・・あんたが武彦くんの親か!?『おとなのじじょう』っちゅーても『りこん』は子供の為にならへんのやで?わかっとるか?」
「・・なにを言ってんだ?この子・・」
突然説教を始めた将紀に、わけが分からないと草間が呟く。
「とりあえず、お腹も空いたしお茶でも飲みながら話しましょう」
エマがそういうと「賛成!」と伍宮と楓香が勢いよく手を挙げた。

結局お茶をしながら話を聞いた将紀は武彦=草間であるということを理解した。
初めての草間興信所はまさに不可思議な事件?だった。
次に来たときはもっと面白いんかな?
ついでにフクザワさんも貰えるとごっつ嬉しいんやけどな・・などと考えていた。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

2371 / 門屋・将紀 / 男 / 8 / 小学生

2152 / 丈峯・楓香 / 女 / 15 / 高校生

1892 / 伍宮・春華 / 男 / 75 / 中学生

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■         ライター通信          ■
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門屋将紀様

初めまして、とーいです。
この度は「君と遊ぼう」へのご参加ありがとうございます。
中々つらい立場ながら健気な将紀様・・。武彦と仲良く遊んでいただけて嬉しい限りです。
大阪弁は分からない部分が多かったので検索で探してきた大阪弁変換を使わせていただきました。
・・うまく大阪弁になっているのか判断いたしかねるのですが、これしか方法がありませんでしたのでご了承ください。
また機会があれば、草間の子供時代逆行は書けたらなぁ・・と密かに思っております。
それでは、またお会いできるのを楽しみにしております。