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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


リバース

オープニング

『なっ……』
 今日もいつものように草間興信所で新聞を読んでいた草間武彦は突然驚きの声をあげた。
 その理由はテレビに映っている人物にあった。
 真っ赤な髪、真っ赤なスーツ、そして真っ赤なシルクハット、まるで奇術師のようなその人物は
 何やら怪しげな呪文を唱えている、そして…数分後には死者が生き返っている。

「私はレッドラム。死者を生き返らせることができます。恋しい人、恩人、あなたにも会いたい人はいるでしょう?
もし、死んでいるから、という理由で合えないのならば私があわせてあげましょう」

 一見穏やかな笑みを浮かべているように見えるが、草間武彦に言わせれば不気味だった。
 何も疑う所のない笑み。それこそが不気味だった。

「きゃぁぁぁぁ!」
 外からの悲鳴に草間武彦は慌てて窓から外の様子を見る。そこは…地獄だった。
 生き返った人々と思われる人物は生きている人間を襲っているのだから…。
「こ、こんなのって…」
「願ったのはあなた方人間でしょう?」
 まるで草間武彦の言いたい事を当てたかのようにテレビの中の人物は不気味な笑みを浮かべながら言う。
「‘どんな姿でもいいから生き返って,と願ったのはあなた方ですよ。私は生前と変わらない姿、といった覚えはありませんから」
 まるで屁理屈のようなことを言いながらその人物はゆっくりと宙に浮く。テレビの中でもパニックに陥っているらしく人が次々に襲われている。
「お兄様、これではいずれここも危なくなりますわ」
 零が落ち着いた口調で言う。
「…あぁ、誰かこの問題を解決してくれるものがいないか電話をしてくれるか?」
「分かりました」


視点⇒ベル・アッシュ


「うざったいわね!」
 そんな声をあげながらベルは草間興信所の中に入る。草間武彦から連絡を受けたベルはすぐさま草間興信所に向かった…、が途中で生き返った人間と思われる死者に襲われた。もちろん簡単にやられるベルではないが、数が多いため結構時間を取られてしまった。
「やぁ、よく無事にたどり着けたね。外を歩くのも今は危険だと言うのに」
「…その中を呼んだのはあんたでしょうが。で?大体の予想はつくけど、用件を一応聞いておこうかしら」
 ベルがソファに座って草間武彦を見やる。草間武彦は新聞を捲りながら「うーん」と唸っている。
「この事態を何とかできないか?」
 まじめな顔で言われ、ベルもからかい口調で答えを返すのは止めた。
「魂よこす?」
「……………」
「冗談よ、マジになんないでくれるかしら?」
 冗談の通じない人間ね、と言いながらベルはソファから立ち上がる。
「何とかできるか、じゃなくて、何とかしろ、でしょう?あたしもね実はかなり怒ってるのよ。商売しにくいったらないわ」
 そう言って、ベルは草間興信所から出て行った。外は満月。月が赤く見えるのはきっとこの異常事態のせいだろう。死者が生きてるものを襲う中、一人だけ異様な雰囲気を纏った男性が目に付いた。この状況を作ったレッドラム本人だ。
「物の道理を見抜かずに上面だけなぞって賢人気取り。解っていてやっているとしても、とんだ道化だわアンタ」
 腰に手を置きながらベルが言う。ベルの存在に気がついたのかレッドラムはゆっくりとこちらを見てくる。
「あなたは?」
「ベルよ。でも名前は呼ばないでね。あたしの名前はそんな安くないから。仕事はただの行商人よ。人間あっての商売なのに、この世を地獄に変えてどうすんのよ。商売上がったりだわ」
 ベルは大げさに溜め息をついてみせるとレッドラムを鋭い視線で睨む。
「レッドラム…逆さ読みするとマーダー…殺人者ね。日本の未年は去年で終わったわよ?赤い羊サン?流行遅れは改めて、今年の干支に倣って赤い猿とでも名乗りを変えた方が良いんじゃないの?やってる事まんまだし」
 ねぇ?とベルが言うと少々癪に障ったようでレッドラムもベルを睨んでいる。
「死人は生き還りゃしねえのよ。人間の思惑と道理に乗っかって、世の中回してりゃいいものを。とんだ邪魔だわ、アンタ。おとなしくモトに戻してくれる気は…」
 一旦言葉を区切ってベルは怪しげに笑う。
「なさそうね」
 今回はベルもかなりご立腹のようで暴言を吐きまくる。地面を次々と鋭利に隆起させ銀に転化させ、鋼の巨大な刃をレッドラムに向ける。
「…腕づくでも止めさせるわよ!」
 そう言ってコンクリートを吹き飛ばして大きな破片、小さな破片全てを銀に転化させてレッドラムに集中させる。レッドラムはたじろぐ事なく屈んで極力傷が増えるのを避けている。だが、ベルの勢いは止まることなくレッドラムの服は細かく裂けて袖などあってないようなものになっていた。
「なかなかやりますね」
 レッドラムはにっこりと笑いながら手を上げる。手を上げると同時に他の人間を襲っていた死者達がベルに襲いかかってくる。
「…あなたに切り裂く事ができますか?これらは全て生きていた人間なんですよ?できるはずが――……」
 レッドラムが言い終わらないうちにベルは襲ってくる死者たち全てをなぎ倒す。
「…甘い事言ってんじゃないわよ。悪魔であるあたしに人間の人質なんか取れると思ったのかしら?だったらお門違いよ。あと数百年生きて出直してくるのね、ボウヤ」
 ふ、と笑みを浮かべてベルはレッドラムに言う。だが、このときレッドラムは気づいていなかった。さっきまでのベルの攻撃は時間稼ぎなのだと言う事に。
「……ッ?!」
 回りの空気の違いにレッドラムが気がついたのだろう。回りを見渡した後にベルを睨む。
「今頃気がついた?もう遅いけどね」
 ベルが言葉を言い終わらないうちに空気中の水分を銀に変えた刃がレッドラムを串刺しにする。
「うわぁぁぁぁっ!」
 レッドラムは大きな声で悲鳴をあげながらその場にガクリと膝をつく。
「あんたのかけた術、解いてくれるよねぇ?」
 にっこりと笑いながらベルが言うと『言う事を聞くと思っているのか?』とレッドラムは悪態をついてきた。
「…っぐ…」
 その態度に更に腹をたてたベルはレッドラムの顎を砕くような力で掴む。
「…勘違いしてんじゃないわよ。あたしはオネガイしてるんじゃなくて、命令してんのよ。分からないのなら…」
 隠し持っていたナイフをレッドラムの首筋にヒタリとあてた。
「死にたい?あんたみたいな魂はいらないから捨てていくけど」
「…ッ…わかったよ!」
 すると、レッドラムはブツブツと呪文のようなものを唱えて握りこぶしを作った。それと同時に暴れていた死者たちが次々にドサッと倒れていく。赤く見えていた月もいつものような黄色に戻っている。
「…これで終わったと思うなよ。生かしたことを必ず後悔させてやる」
「はいはい、その時はまた返り討ちを期待しておきなさい」
 レッドラムはふん、と小さく言うと闇夜に溶け込むように姿を消した。
「…あー、疲れた。今までにない重労働だったわね。なんか美味しいもんでも食べてくかな」

 そう言ってベルは騒ぎが静まった闇の中を歩き出した。




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

2119/ベル・アッシュ/女性/999歳/タダの行商人(自称)

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■         ライター通信          ■
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ベル・アッシュ様>

いつも発注をかけてくださいましてありがとうございます。
瀬皇緋澄です^^
今回は「リバース」に発注をかけてくださいましてありがとうございます。
いかがだったでしょうか?戦闘シーンが思ったとおりに表現できていれば良いのですが…。
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくお願いします^^

            −瀬皇緋澄