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リバース
オープニング
『なっ……』
今日もいつものように草間興信所で新聞を読んでいた草間武彦は突然驚きの声をあげた。
その理由はテレビに映っている人物にあった。
真っ赤な髪、真っ赤なスーツ、そして真っ赤なシルクハット、まるで奇術師のようなその人物は
何やら怪しげな呪文を唱えている、そして…数分後には死者が生き返っている。
「私はレッドラム。死者を生き返らせることができます。恋しい人、恩人、あなたにも会いたい人はいるでしょう？
もし、死んでいるから、という理由で合えないのならば私があわせてあげましょう」
一見穏やかな笑みを浮かべているように見えるが、草間武彦に言わせれば不気味だった。
何も疑う所のない笑み。それこそが不気味だった。
「きゃぁぁぁぁ！」
外からの悲鳴に草間武彦は慌てて窓から外の様子を見る。そこは…地獄だった。
生き返った人々と思われる人物は生きている人間を襲っているのだから…。
「こ、こんなのって…」
「願ったのはあなた方人間でしょう？」
まるで草間武彦の言いたい事を当てたかのようにテレビの中の人物は不気味な笑みを浮かべながら言う。
「‘どんな姿でもいいから生き返って,と願ったのはあなた方ですよ。私は生前と変わらない姿、といった覚えはありませんから」
まるで屁理屈のようなことを言いながらその人物はゆっくりと宙に浮く。テレビの中でもパニックに陥っているらしく人が次々に襲われている。
「お兄様、これではいずれここも危なくなりますわ」
零が落ち着いた口調で言う。
「…あぁ、誰かこの問題を解決してくれるものがいないか電話をしてくれるか？」
「分かりました」
視点⇒凌神・レイ
「くだらんな…」
いつもは黄色く神秘的な光を放つ月だが、今日の月は赤く不気味な光を放っている。
レイは赤い月を見ながらフンと小さく呟く。数時間前に草間武彦がレイに電話をしてきた。テレビなどで現在の異常状況を報道している矢先に電話がきたので、草間武彦の用件はなんとなく予想できた。
「もしもし…」
「凌神くんか？草間だが…」
「今テレビで言ってる状況を何とかしろ、だろ？」
レイがぶっきらぼうに言うと、草間武彦はグッと言葉に詰まる。
「図星、か。まぁいいけどな。俺もああいう偽善ぶった悪人は大嫌いなんでね」
「すまんな。十分に気をつけてくれ」
「あんたが心配する事じゃないさ」
それだけ言うとレイは電話を切った。そして、テレビを見る。テレビの中のアナウンサーは「我々人類はどうなるのでしょうか？！」と大げさに悲嘆した顔で言っている。
「どうにもなるかってんだ…」
リモコンのスイッチを押してテレビを消す。そして、寒い風が吹く外へと出かけた。
外に出ると、まず出迎えたのは真冬を感じさせる冷たい風。そして、血の匂いだった。死者が生きている人間を襲い、けが人が大勢出ているようだ。
「きゃぁぁぁっ」
目的の場所に向かう途中、女性の甲高い悲鳴が聞こえた。目を向けると若い女性が死者に襲われていた。
レイは式鬼を呼び、女性を襲う死者を倒す。女性はガクガクと震えながらお礼を言ってきたがレイは「別にお前を助けたわけじゃない」と素っ気無く呟いて止めていた足を動かし始めた。
レイが向かっているのは草間武彦から聞いた廃ビル。この屋上に怪しげな男がいると、先程の電話で草間武彦が言っていた。廃ビルに鍵はかかっておらず、中に入るのは容易かった。階段も上れば崩れてしまいそうな位のボロさだった。錆びた扉を力を込めて開けると、一人の男が気味の悪い笑みを浮かべながら柵に腕を置いて、下で起きている事件を見ていた。
「…おや、貴方はどなたですか？貴方も誰か生き返らせて欲しい人が―？」
「…くだらんな。貴様が誰であろうと関係無い。我が進むべき道に在る物は悉く退けるまで」
そう言って、レイは式鬼七体を放ち、各々天の北斗七辰と同じ配列に並ぶ結界を敷き、怨敵を北極星の位置に留め動きを縛る。
「中天の北極星は動かぬ星だ」
レッドラムはレイの言葉の後に動く事を試みたが、結果は無理だった。
「く…」
レッドラムはこんな能力を持つ人間がいることを予想してなかった自分と、油断して術中にハマった自分を呪った。
「界に渡り厄を灌がんとする怨敵四魔は我が前より即滅すべし。獅子王の咆哮を聞け。呪謳の呪いし詩を聴け。我が刃の閃きに、貴様自身の断末魔を聞け。其は全て貴様の送り唄だ。呉れてやる。陽は東より光明を照らし西に陰が落ちるが如く…消え去るがいい、外道」
レイは呪を唱えながら神剣獅子王・妖刀呪謳・無銘刀の三振りの剣を召喚する。レイが剣を召喚した事で自分が今、どのような状況に置かれているのかはっきりと理解したレッドラムは何とかして緊縛呪から逃れようとするが、レイの呪は簡単に敗れるほどヤワなものではない。
「死を遊べば、滅びが共に現れ汝を攫う。生は還らない。魂は流転こそすれ、同じ場所に戻る事は決して無い。幾ら願おうとも、だ。そして、貴様に会う事も最早無い。全ては道理だ」
レイはそう小さく呟くが、恐らくレッドラムには理解できない言葉であろう。
そして、召喚した三振りの剣でレッドラムを貫いた。貫いた事により「ぐはっ」とレッドラムが呻き声をあげたが、それを気にすることなく次の攻撃の準備をする。妖刀呪謳を手に取り、ヒュンと空を切る。妖刀呪謳は振れば、歌声のような風鳴りがする。それをレッドラムに向けて振ると、炎のような気がレッドラムを包んだ。
―劫火。
まさにその言葉が一番似合うような激しい炎のようだった。この世には大きく分けて二つの種類の炎があるとレイは思っている。
一つ目は《浄化の炎》これは見た目的にも、想像的にも美しいイメージがある。そのイメージは決して間違ってはいないだろうとレイは思う。
もう一つは《殺意の炎》別のい方をすれば《滅びの炎》どちらにしても良いイメージはない。《浄化の炎》は敵を救う炎かもしれないが、レイの、いや…妖刀呪謳の扱う炎は《浄化の炎》と全く別の物になる。敵を確実に滅ぼすための炎、それが《滅びの炎》
「…もうお前は助からない。地獄の業火のような気に滅ぼされながら消えてゆけ」
レイが小さく呟くと、レッドラムはニッと笑いながら灰となっていった。
「最初から最後まで奇妙なやつだったな」
レッドラムだった灰が風に舞い、夜の空へと舞い上がっていく。先程は赤く不気味な光を放っていた月も今は普通の輝きを放っていた。
「…死者たちも元に戻ったか…」
ビルの屋上から下を見ると、何人もの死体が骨へと変わりながら消えていく。考えても見れば、静かに眠っていたところをいきなり起こされて死者たちからすればはた迷惑な話だ。
「これ以上こんな場所にい続ける必要はないな」
それだけ言うと、レイは階段を降りて、いつもの騒がしい街の闇へと消えていった。
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■ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ■
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【整理番号 ／ ＰＣ名 ／ 性別 ／ 年齢 ／ 職業】
2442/凌神・レイ/男性/27歳/導士
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■ ライター通信 ■
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凌神・レイ様＞
初めまして、《リバース》を執筆させていただきました瀬皇緋澄です＾＾
今回は発注をかけてくださいまして、ありがとうございます。
《リバース》はいかがだったでしょうか？
少しでも面白いと思ってくださったら幸いです＾＾
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくお願いします＾＾
−瀬皇緋澄
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