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<東京怪談ウェブゲーム 神聖都学園>


学園七不思議を探せ?!

神聖都学園レクリエーション愛好会が掲示板に一枚の張り紙を出したのがすべての始まりだった。
『求む!学園七不思議に挑む者!!』
夏でもないのに七不思議?と誰もが通り過ぎる。
その張り紙にはこう書かれていた。
『好奇心旺盛なあなた!我が学園にははっきりとした七不思議がありません!』
『そこで、あなたの手で七不思議を見つけてみませんか?!』
『発見した七不思議は新聞部と共同編集で学園新聞に掲載します!』
わざわざ探さなくても…と、ツッコミを入れつつ通り過ぎる生徒達。
しかし中には足を止める者もいるようで…。



 寒さが一段と厳しさを増す深夜。
今夜も、G・ザニーは月光の下、ゆっくり、ゆっくりと歩を進めていた。
その大きな身体を揺らして夜の道を歩く姿は、
さながら獲物を求めて彷徨う獣のようにも見えた。
 いや、実際彼は、”獲物”への道を歩いていた事に違いはない。
ただその獲物というのが…神聖都学園の食堂の”残飯”である事は…
彼の姿を目撃した者の誰も思いうかばなかった事だろう。
 以前は、彼は『死霊』を喰らっていたのだが、
それだけでは足らずに人間の出した”残飯”を食すようになったのだ。
その所為で、すっかり体の形も変わってしまい『暴食神の化身』とまで言われるようになってしまった。
 毎日、色々な場所へ出向いて行っては、
人間の出した生ゴミをあさるのが最近の日課となっていた。
ゴミが増える一方の人間社会において、
彼の存在は実にありがたいらしく、場所によってはザニーの為に…と、生ゴミを用意している自治体もあるほどだった。
最近ではその自治体のおばさん方に、「ザニーちゃん」とまで呼ばれる程になっている。
まあ、その町の生ゴミも上手いと言えば上手いのであるが。
 彼が今まで食した中で、特別味をしめたのが…神聖都学園の食堂である。
ここの残飯は特別美味い。
しかし、昼間や夜早い時間では人が多く出入りしていて簡単には食うことができない。
それゆえに、草木も眠る深夜に出向いていくのだった。

今夜も、いつものように…学園へと向かう。

しかし、今夜はいつもと少し様子が違っていた…。




 ザニーが学園の敷地内に入ると、
いつもはいないはずの若い者達の声が聞こえてきた。
見つからないように物陰に姿を隠しながらその様子を窺う。
門の前で、男が二人、女が二人…そして、人間では無い者が一人…。
なんの話をしているのか聞こえはしなかったし、
聞いたところでザニーには関係の無い事である。
 彼は、音を立てないように…静かに…食堂へと向かって行ったのだった。
残飯がいつもたまっている場所は、食堂の裏手にある。
最近では、ザニーの為に残しておいてくれているのではないかと思う程の量が残っている事がある。
彼にとっては実に嬉しい事であった。
 しかし、今夜は少し少ない。
ザニーはそう言えば、今日は土曜日であったことに気付いた。
土曜は基本的に学年によっては休日だったり、半日だったりで生徒は食堂をあまり利用しないのだ。
そのため、料理自体の量も少なくなる。
「明日は無いのか…」
 ザニーは小さく呟いた。
とりあえず、今夜の分を食べられればそれでいい…と、ザニーは食事をはじめる。
静かな空気が流れる中…
彼の夜食タイムは開始されたのだった。
 しかし、やはり今夜はいつもと違っていた。
残飯を置いてある場所は外なのだが、ふと、建物の中からヒトの話し声が聞こえる。
何故こんな時間にこんな場所にいるのか謎は募るのだが、ザニーにはどうでも良かった。
とりあえず、食事さえできれば…。
 しかし。
その声の主たちは、建物から外に出て、どんどんザニーの居る方へと近づいてくる。
早く逃げるか身を隠すかしなければ…そう頭では思うのだが、食事を中断する事がどうしてもできなかった。
そうしているうちに、声はどんどんと近づいて来て。
「――アイスさん…あれ、なんですか?」
 一人の女が、そう声をあげる。
ザニーはおそらく自分の事を言われたのだろうと、もぞもぞと身体を動かした。
「――黒い獣の…怪物だ―――!!」
 不意に、男の一人がそう叫び声をあげる。
『違う…!』
 ザニーはそう言おうと口を開いたのだが、どうやら相手には自分が『喰う』とでも思われたらしい。
人間達は彼から全力疾走して離れて行ったのだった…が。
「うわ痛ッ!!」
 ドタ!と、にぶい音がして…誰かが転倒するのが見えた。
ザニーはのそのそとそちらに近づいて、溝に足を突っ込んでいるその者の肩をひょいと掴んで持ち上げた。
「うわあああああ!!」
「大丈夫…ザニーは食わない」
「…あああ…あ?え?」
 人間はきょとんとした顔をしてザニーの姿をじっと見つめた。
「ザニーは人間の残した者を食べに来ただけ…」
「え、えっと…ザニーって、あなたの名前?」
「そう」
 こくり、と頷いたザニー。
不思議そうに彼を見上げながらも、その人間は何か納得して。
「僕は新堂・愛輔と言います。えっとその…もしかして、最近噂の怪物って…ザニーさん?」
「噂?ザニーは知らない」
「あ。そりゃそうか…生徒の中での噂だもん…」
「シンドウはここで何をしている?」
「えっと…話してわかるかどうかわかんないですけど…」
 シンドウ、新堂愛輔はザニーにここにいる理由を話して聞かせた。
学園七不思議だとか、そういった物事がよくわからないザニーには謎だらけの話だったのだが、
とりあえず互いに危害を加えるつもりも無い事を確認し合う事はできた。
「あ、それじゃあ一応、みんなに紹介しておきたいんですけど?いいですか?」
「ザニーは別に構わないが?」
「やった!これってある意味七不思議の謎を解いたって事だよな♪」
 新堂愛輔は嬉しそうにそう呟くと、
ザニーと共に…全員が走って逃げた方へと向かったのだった。



「おーい!みんなー!」
 新堂愛輔がよろよろと集まっている者達へ声をかける。
「ば、馬鹿野郎!後ろ!後ろ!!」
「新堂さん!!はやく!」
「食べられちゃいますよアイスさん!」
 やはりと言うか、集まっている者はみな、ザニーの事を見て驚いているようだった。
「大丈夫〜!彼はそういうのじゃないから!!」
 愛輔は手を振りながら、ザニーと共に門の外へ、全員の元へやって来た。
「こちら、G・ザニーさん」
 愛輔に紹介されてザニーは小さく挨拶をする。
「――すまなかった。ザニーは腹が減っていた…だからここの学園の残飯を食っていただけだ…」
 ザニーはそう言って巨大な口元を手で拭った。
「あ、いや…とりあえず良かった…何事も無くて」
 全員はほっと一安心したようで、それぞれ苦笑いを交し合う。
さて、どうしようか…と相談しようとした彼らだったのだが―――
『誰かそこにいるのか?!』
「!!」
 警備員らしき数人の男性が、少し離れた場所からこちらをライトで照らしているのが見えた。
そういえば、あれだけ騒いで走って逃げたら…バレる上に、誰かに通報されていてもおかしくはない。
「最後にまだ一個残ってるけど、仕方ないね…解散します!」
「おい!待てよ新堂!!」
「もう…アイスさんってば…」
「あの、ここは素直に謝った方が…」
 女の一人がそう提案したのだが、時すでに遅し。
男が逃げたのを見て、ザニーもその隙に退散していたのだった。




 再び、ザニーは夜空の下、暗い道を歩いていた。
神聖都学園から飛び出してきた所為で、腹はまだ満たされない。
また、食事を探す為に…町へ出ることにした。
 いつもなら、学園での食事を終えて幸せな気分になりつつ、
まったりとした時間を過ごせたはずなのだが…。
 思ったようにいかなくても、どこかザニーは楽しげな雰囲気だった。
少しの時間とはいえ、普段あまり遭遇しないような者達に遭遇するというのは…なかなか面白い事で。
また会えるかもしれない…そう思いながら、ザニーは歩いた。
 おそらく、彼は月曜の夜に再び姿を見せる事だろう。
そして…学園七不思議の一つ『食堂の怪物』の話は事実として語られるようになるのだ。 

食を求めて町を歩きながら、
ザニーは先ほど聞いた声の主の叫び声を聞いたような気がした。



<終>

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1431/如月・縁樹(きさらぎ・えんじゅ)/女性/19歳/旅人】
【1974/G・ザニ−(じー・ざにー)/男性/18歳/墓場をうろつくモノ・暴食神の化身】
【2182/倉前・沙樹(くらまえ・さき)/女性/17歳/高校生】
【2619/龍神・吠音(たつがみ・はいね)/男性/19歳/プロボクサー】
NPC
【***/新堂・愛輔(しんどう・あいすけ)男性/18歳/高校生・レクリエーション愛好会会長】

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■         ライター通信          ■
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このたびは、学園七不思議の調査にご参加いただきありがとうございました。
季節はずれの話題だったのですが、参加いただけて嬉しいです。(^^)
『ほんとうにあった怖い話』のような雰囲気で作りたかったのですが、
果たして雰囲気が伝わるかどうか不安な感じでございます。
最後の「声」は果たして何者だったのか…という雰囲気で終わらせていただきました。
今回、皆さんから七不思議のネタを提供していただくという形にしていただいて、
皆さんに書いていただいた内容を見て、こんな話もあるのか…と、大変興味深かったです。
今度は百物語でもチャレンジしてみようかな?とすら思ってしまったくらいです。(笑)

なお、プレイングの違いからG・ザニーさんは個別の内容になっております。
第五談で皆さんと遭遇するまでの経緯を書いておりますので、
そちらも合わせて楽しんでいただけたら幸いです。

また皆様にお会い出来るのを楽しみにしております。


:::::安曇あずみ:::::

>G・ザニー様
こんにちわ。はじめまして。この度は参加ありがとうございます。
ザニー様の、語る側でなく語られる側のプレイングを拝見して非常に面白かったです。
これは面白くできるかも!と頑張って執筆させていただきました。
ですので他の方とは別の内容になってしまっておりますが、楽しんでいただけたら幸いです。
またお会い出来るのを楽しみにしております。


※誤字脱字の無いよう細心の注意をしておりますが、もしありましたら申し訳ありません。
※ご意見・ご感想等お待ちしております。<(_ _)>