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<東京怪談・PCゲームノベル>


夢見る・お豆ちゃん

1.楓香・草間より豆を譲り受ける
「ドリーム・ビーンっと言ってな。希望通りの夢が見られるうえになんと!お土産までもらえるという豆らしい」
どこぞの通販番組のような歌い文句で草間武彦は絶好の獲物を捕まえた。
そう。現役女子高生にして好奇心の塊である丈峯楓香(たけみねふうか)がこの草間興信所に現れたのである。
「へ〜・・なんか面白そうだね。・・でもこれタダ?」
「もちろんだ!俺はそんなモンで金取ろうなんて悪辣なことは考えてない」
正々堂々と言い切った草間に対し、楓香はじとーっと疑いの目で草間の本心を探ろうとしていた。
「草間さんがタダで物くれるのってなんか裏がありそうなんだよねぇ・・」
「・・な、何を言う。これも日ごろ我が興信所に対して多大なる功績を残してくれているおまえに労いの意味でだな・・」
普段の草間からおそらく聞き出せないような言葉を楓香は聞いて、確信した。

なんか裏があるんだな・・。
でも、あえてここでそれを突付くよりも後々何かのときに使える材料になるかもしれないから・・。

「じゃあ、遠慮なく貰ってくね〜♪」
楓香はにっこりと笑って「ありがとう」と付け加えると興信所から立ち去った。
残された草間はポツリと漏らした。

「あいつのあの笑顔の方が、よっぽど裏ありそうだな・・」


2.楓香・夢を語る
家に帰るってバタバタと時間がすぎた。
就寝時間。布団の上で楓香は豆を目の前に置き、見たい夢について考えた。
・・・いや、考えるよりも先に口が動いていた。
「見たい夢・・色々あるなぁ。素敵な彼氏とか・・。数学のテストで満点とか・・。美味しいケーキも食べたいし、新しいコートも欲しかった・・新しいパソコンとかもいいかも。欲しいCDもあったっけ・・仔猫は貰ったけど犬も欲しい・・大きいやつ! どれも捨てがたい〜!!」
そこまで言った楓香はふと気がついた。
「・・あれ? 今言ったの全部欲しい物かも・・・まぁ、いっか」
あっさりとそう言うと、楓香は布団にもぐりこんだ。

どんな夢が見られるんだろう・・・?


3−1.夢は語る
 いつもの登校風景・・に似た謎の風景画?が広がっている。
楓香はいつもの通学路で友達を待っていた。
2月の風は春の予感をさせつつも、まだ寒い。

うぅ。バレンタイン近いし、彼氏ほしいなぁ・・・。

過ぎ行くカップルはみなピカソばりの顔をしていたが、それでも楓香にはうらやましく写った。
「おはよー! 楓香〜!」
なじみの顔(・・の様でなんか違う顔)が楓香に近づいてきた。
と、「丈峯さん」と別方向から声を掛けられた。
振り向くとそこには・・
「『へのへの』君。おはよう!」
クラスメイトの『へのへのもへじ』君が意を決したように立っていた。

「俺・・君が好きなんだ!付き合ってくれないか!?」

突然の告白!
楓香は頭をハンマーでかち割られたかのような衝撃に襲われていた。
「すごいじゃん! クラスで一番かっこいい『へのへの』君に告白されるなんて!」
駆け寄ってきた友達にそういわれ、楓香は思った。

これを断ったらもったいない!?

「あたしでよければ・・」
顔をポッと染めて楓香はその申し出を受けた。
これでバレンタインは彼氏持ちだ!


3−2.さらに夢は語る
 学校に着き、一時限目は先週やった数学のテストが帰ってきた。
0点を覚悟していた楓香は思いもかけないものを手にした。
それは『100点』と記された自分の答案用紙だった。
「せ、先生・・これ・・全部回答してないのに100点って書いてあるよ?」
丸だけで構成された先生の顔をまじまじと見て楓香は恐る恐る聞いた。
すると・・・
「今度から答えがあっていない問題に点数をやる制度に変わったんだ。だからそれであってる」

・・ってことは、全問合ってなかったってこと?

喜んでいいのか、悲しんでいいのか・・・迷ったが、楓香は喜んでおくことにした。
「えー。全員、テストは戻ったな。ではいつもの様に100点を取った者に赤点の者はケーキを奢ること。以上だ」
そういうと先生はさっさと教室から去っていった。
何だかよく分からないが、楓香の知らぬ間にその様な制度になっていたらしい。
「あの・・丈峯さん。これ、どうぞ・・」
クラスメイトの『つるにはののむし』さんがおずおずと楓香の前に、見た目にも美味しそうなフルーツタルトを置いた。
「うっわぁ!!いいの!?これ貰っちゃって!」
「あの、私赤点取っちゃったから・・・」
恥ずかしそうに笑う『つるには』さんをよそに、楓香はフルーツタルトを頬張った。
フルーツの酸っぱさとカスタードの甘さが絶妙な一品で、楓香はそれだけで幸せだった。
だが、ふと疑問が横切った。
「ねぇ、赤点って何点だったの?」
「え・・あの・・6点・・・」

6点分の間違い・・ということは、本来の採点方法であれば94点。
よ、喜んでいいのかなぁ・・・??

楓香の胸の中に、隙間風の様な敗北感が吹き込んでいた・・・。


3−3.そして夢は語り終える
 「一緒に帰ろうと思って待ってたんだ」
一日の授業が終わった後、『へのへの』君が教室の前で待っていた。
クラスの女生徒達の羨望の眼差しを受けつつ教室を出るのはなんと気分がいいのだろう。

なんか、月9のヒロイン?
うひゃ〜!これこそ女の子の憧れってヤツだね!

「君に渡したい物があるんだ」
一緒に歩く『へのへの』君はそう言って楓香を自宅に招待した。
『へのへの』君の自宅はハンドフリーで描かれ、遠近感を全く無視した大豪邸であった。
だが、中はさらにすごいことになっていた。
定規でのみ描かれた様な直線の溢れる部屋。
いや、それだけ聞けば普通にも思えるかもしれないが、花や熊の剥製におけるものまでもが直線で表現されているのである。
「3つほど渡したいものがあるんだ」
そういうと、『へのへの』君は楓香の前にそれらを持ってきた。

「見たまえ! 1995年製・OSは『窓3.1』・未使用・未開封・新品・ノークレーム・ノーリターンで!」

どこぞのオークションの煽り文句をそのまま棒読みに、デンッ! と楓香の前にパソコンが置かれた。
・・・確かに、楓香は『新しい』パソコンが欲しいと思った。
だが、それはあくまでも『最新機種』であることが大前提である。
「そ・・そんなのいらないー!!」
「なんだって!?」
ガーンといった面持ちの『へのへの』君はさらに続けた。
「では、今なら君の欲しがっていたCDもお付けしてなんと! 驚きのこの価格!!」
「どこの通販番組よ!?」
「な・・ならば、次!」
へこたれず『へのへの』君は楓香の前に次の品を出した。
「ポリプロピレン100パーセント! どこをどう見てもCの偽物の新品のコートならどうだ!」
「誰がそんなもん着るかー!?」
だんだんコントになってきたことに気が付いたのか付かないのか、『へのへの』君は最後の切り札を出した。
「それでは! これなら君のハートは僕の物! カモーン!! マイケル!!」
と、なにやら『へのへの』君は何かを呼んだ。
そして段々と近づいてくる足音・・・。
嫌な予感がして楓香は振り向いた。
そこには・・・

「犬でかすぎーーーーーーー!!!!」

走り寄るにつれ、ドンドンその巨体が楓香よりもでかいことがわかる。
「さぁ! 思う存分丈峯さんと遊んでやってくれ! マイケル!!」
「いーーーーーやーーーーーーーー!!!!」
自分の体よりもでかい犬と遊んで無事なわけがない。
楓香は腹の奥から叫んだ。

その自分の叫び声で目が覚めたのだった・・・。


4.現実は夢よりも甘く
 「・・で?」
「だーかーらー。草間さんのあの豆のせいで悪夢見たんだから、お詫びにケーキぐらい奢ってくれるよね?」
翌日の草間興信所、夕方。
楓香はニコニコと笑い、草間へとケーキを要求していた。
実際のところ、あの夢が楓香にとってそんなに悪夢だったわけではないのだが、まぁ、それくらいの要求をしてもバチは当たらないだろう・・と判断したのだ。
「まだ肝心の夢の内容聞いていないんだがな?」
「乙女の夢をそんなに易々と話せるわけ無いじゃん?」
「・・じゃあ夢が形になった物がなんだったのかぐらいは見せてもらえるんだろうな?」
草間がしつこく食い下がる。
当然と言えば当然。
草間が知りたかったのは、まさにその部分なのだから。
だが、楓香はニヤリとその草間に向かっていった。
「そんなになにが出来たか知りたいなら、ケーキ2個奢って♪」
草間が後ろを向いてなにやらごそごそと探り始めた。
どうやら財布と相談しているようだ。

・・・勝った・・・。

心の中で楓香は勝利宣言をした。
数秒後、もしくは数分後にはきっと草間は楓香にケーキを奢る決断をするはずだ。
楓香はただその時が来るのを待てばいい。
そんな楓香の隣には学校用のカバンが置かれていた。
そこには、小さなキーホルダーが付いていた。
キーホルダーは人型で学生服を着ている物と、その人型よりも大きな犬のキーホルダーだった。

しかし、その人型の顔はなぜか『へのへのもへじ』であった・・・。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

2152 / 丈峯・楓香 / 女 / 15 / 高校生

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■         ライター通信          ■
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丈峯楓香様

PCゲームノベル『夢見る・お豆ちゃん』へのご参加ありがとうございました。
今回のお話は、とにかく楓香様の見たい夢を100パーセント再現しつつも、どこかおかしな夢を見せること・・というコンセプトに作られております。
プレイングで『普段からしっちゃかめっちゃかな夢』を見ておられるということでしたので、とにかく悩ませていただきました。
ので、普段どおりのしっちゃかめっちゃかな夢でありつつ、なおお笑い系に進んでみました。
絵を文字で表現するのが大変難しいことであると身に染みております。
それでも楽しんでいただけるのなら幸いなのですが・・。
それでは、またお会いできる日を楽しみにしております。
とーいでした。