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<東京怪談ウェブゲーム あやかし荘>


メイド服がいっぱい…あやかし荘襲撃 〜Unlimited Maid Works〜

Prologue
ある日曜日だった。

柚葉はひょっこり倉庫あつかいの部屋を見る。封印された『箱』、前の草間興信所でも同じ『箱』があった。完全に封印されたのも関わらず…ヤツは動き出した。タイトルの部分「秋の新作」から…「冬、春用」に名前を勝手に『箱』は書き換えたのだ。

そして、かなり強力に封印していたはずの蓋…いや、段ボール全体が破裂したのだ。柚葉と彼女の悲鳴と共にメイド服は雪崩の様にあやかし荘を埋め尽くそうとする。
その光景たるや、幽霊のメイドのモブの様。
住民の悲鳴、悲鳴。そしてメイド服がバタバタと飛び交う音。
一瞬にして、あやかし荘はメイド服で占領されてしまった。

メイド服の山から顔を出す恵美と嬉璃。
「『箱』って生き物なんですね…」
恵美はもう、『箱』の事では呆れ返っているらしい。
「しかし、わしら、無理矢理メイド服姿になっているんぢゃが…」
「あ、でもかなり動きやすいです」
「そう言う問題ではないんぢゃが」
もう『箱』が届いたときは開けた方が良いのだという教訓を2人は学んだが、あやかし荘の廊下、部屋を埋もれているメイド服の数々。
そして、今もなお飛び交うメイド服をどうするかを考えるべきだとメイド服の姿のままで考える、恵美と嬉璃だった。


1.犠牲者いっぱい・あやかし荘住民
あやかし荘の住人である大曽根千春。目覚めたら、部屋はメイド服だらけであり、自分も自分の体に合う胸を強調しているような、メイド服を着ていた。
「あらら…夢で見たの事と本当に…」
驚いているらしいのだが、端から見ればそうは見えない。
「なんかたいへんですねぇ」
と、落ち着いた様子で布団を畳み、脱ごうとしても脱げないメイド服に悪戦苦闘している。
「又、あの夢の通りになったらいやですぅ…」
と、予知夢が気になっている千春であった。

一方、月下美人の間からは奉丈遮那が悲鳴を上げていた。小柄で女の子に見えるためか、メイド服は彼までも犠牲にしたようだ。
「はぁ、こんな姿…恵美さんに見られたらって、そうは言ってられない!」
と、海をかき分け管理人室に向かう。やはり、好きな人の身が心配なのだ。
管理人室にはいる遮那。そして彼の時間は止まった。
嬉璃と恵美がメイド服姿になっているからだ。しかも似合っている。赤面物だ。
「あ、遮那くん…被害にあったのね」
彼女の声で時間が動く。
「だ、大丈夫ですか?め、恵美さん!」
赤面して、彼女の姿を直視できない純な少年。
「ええ、もう『箱』の仕業というのは分かっていますし…それに…」
「それに?」
「似合いますか?」
「は、はい!に、似合います!」
遮那君の脳はパンクした。臨界点突破。頭でお湯が沸かせるだろう。
その言葉で、彼は気を失ってしまった。
いつの間にか居る、白兎みつきは大はしゃぎであり、メイド服姿で宙に浮かぶメイド服を追いかけ回している。
しかも、色々体格を変えて遊んでいる。しかも色々なものにメイド服をかぶせるようにして遊んでいるからたちが悪い。
柚葉も、歌姫も綾も、メイド服姿になってしまい、脱ごうにも脱げないようだ。歌姫は恋人に見られる事が恥ずかしいため、前の自分の部屋に引きこもってしまった。綾は綾で、キレてそこら辺でメイド服と格闘しているようだ。柚葉は大人状態になった嬉璃に何とか助けられる。しかし大人状態の嬉璃もメイド服であった。

蓮の間にもメイド服は侵略。家に帰らず蓮の間で目覚める織田義昭は驚く。
「なんだ?」
悲鳴と共に慌ただしいあやかし荘。おそらく他の女性がピンチなのは確かだろう。
ドアが壊れて、宙にはメイド服が舞う。
「まえに、せんせーが封印した『箱』の仕業なのかなぁ?」
メイド服の海をかき分け、管理人室に向かう義昭。事の状況を把握しなくてはと言うわけで進む。それでも、携帯を使い茜に連絡を入れる事にした。エルハンドは忙しいからメールだけで済ましておく。これが、彼にとって天国と地獄を体験する事になろうとは夢にも思わなかっただろう。

かわうそ?はあやかし荘の屋根でひなたぼっこをしていた。そこで、この騒ぎをしる。
彼の心理描写は、顔文字ですぐに片付けられるだろう。
|Д゚)…

恵美はこの状況を解決してくれる人に連絡を入れるために、服の海をかき分け電話をかけていくのだった。
「あの…もしもし、メイド服が…」


2.Unlimited Maid Works 1
まず、被害者でかつ、助っ人の状態を挙げてみる。
あやかし荘からの救援でやってきたのは、天薙撫子、長谷茜、石神月弥だ。当然、女性である撫子と茜は玄関に入った際にいきなりメイド服に着せ替えられた。
「きゃぁ〜!」
慌てる撫子。
「裕ちゃんの仕業だ!」
と、呆れても叫ぶ茜。因みに2人ともオーソドックスなロングエプロンドレスタイプで、青だったりする。
「長谷神社で着た奴と同じ」
頭痛を起こす茜。
石神月弥は、メイド服が余っているという話を聞いたので、30枚ほどもらいにいたはずだが、やっぱりメイド服の洗礼を受けてしまう。彼は愛玩用だった。とはいっても外見が中性的故にメイド服が襲ってきたとしか言いようがない。
「こまったなーどうしよう」
と、彼はそれ以外の事でこの数の多さに悩んでいた。

そして、偶々通りかかった者や別の意図で来た者は、海原みあお、空木崎辰一、銀野らせん、鈴代ゆゆだ。
当然ながら、この4人も洗礼を受けて唖然とする。
「暇であやかし荘に来たら…こんな騒動に巻き込まれる事はみあおの本能なのかなぁ?」
「どうして!僕がこんな目に!何で!」
「かわうそ?っていう可愛い謎の生き物が居るって聞いたのに…でも、このメイド服可愛いあ、そだ…鏡〜♪」
「やっぱり着て欲しかったんだね…」
と、思い思いの言葉を口にする。
さて玄関でこんなに人がいっぱいだと困るのだが、既にメイド服の群れで、玄関扱い出来るものか謎だ。幸い、半狂乱になる者は1名しか居なかったのでそれ以上大事には成らない。
正気を取り戻した遮那と、仕方なし事件解決で管理人室に向かう千春。そして、義昭が玄関で、この数名と出会う。
その時…
「な…撫子さん……」
義昭がそのまま卒倒した。
「よ、よしちゃん!」
今度は茜が慌てる。
「義昭くん!?」
そう、撫子のメイド服姿に気を失ったのだ。
―前なんか何も動じなかったくせに…!
という、茜の心の声など天然幼なじみは聞こえるはずもなかった。
相変わらず、みつきは別のところではしゃいでいる。もう、この騒ぎとは別空間だ。
「メイド服取り放題〜♪」

「面白い事になってますね♪」
と、メイドスキーの第一人者である田中裕介がヒョッコリ現れる。
「犯人だ!」
茜がいきなり指を指す。
「どうしてですか!」
否定するメイド魔神。
「犯人なんですかぁ?」
「どうしてくれるんです!」
千春と、辰一が裕介に近づく。
「いや、俺のメイド服センサーが、あやかし荘に強く感じたものだから来ただけですって!」
「じゃーこの服は見覚えある?」
と、青いメイド服をみせる。
「うー確かに見た事がありますが、少し違いますね。この裾のラインが前のデザインを…」
「講釈はイイ!」
茜のハリセンが裕介の頭にヒットした。
そのころのらせんは…。
どこかの部屋をこっそり借り、大きな鏡の前で、ドリルガールになって…
「ドリルガールメイド服仕様♪」
と、はしゃいでていたりするのだった。

「義昭くんはどうします?」
「撫子さんが看病して下さい…喜びますから」
撫子の言葉に、即答で拗ねている茜が答える。
「やきもちやき」
いつのまにか、静観するつもりで居たはずのナマモノが突っこんだ。
「フン!片付けしましょう!」
「そうですね」
「「異議なし」」
犠牲者の方々は声をそろえて答えた。


3.今回の主役は裕ちゃん?
「まず、たたみ方にコツがあります」
と、どこから出したのかホワイトボードに収納技術講座を始めた裕介。皆真剣に聞いている。特に、みあおは真剣に聞いている。
「こういう風に畳み、用意した箱などに入れます」
「燃やしていいか?」
辰一が聞くと裕介の目に殺気が宿る。
「だ、ダメなのか!」
「ダメです。其れはメイド服に失礼でしょう」
メイド好きに対してメイド服を燃やすというのは禁句だ。
「ぼ、僕はこれで辛い目にあったんだぞ!」
辰一は抗議する。
「滅多にない体験をするのが良いですよ、人生長いんだし」
誰ともなく、こんな愉快(?)な騒動で真剣になるなと宥める。
「いやだー!」
辰一はよほど嫌な目にあったのだろうが、そんな事は無視する方向だ。
「問題は『箱』壊れちゃったですね?」
遮那がいう。
「妖斬鋼糸で修繕できないかしら?」
と、義昭を膝枕している撫子が言う。
柚葉がそこで、こういった。
「まるで爆弾みたいに破裂したから…破片があるかどうかわかんないよ…」
「では、色々入れ物をかき集め、其れで封印できる方に封印して貰いましょう。裕介さん続きを」
遮那が、恵美を気にしながら言った。恵美のメイド服姿は似合いすぎて殺人的効果を持つ。
「まずは、皆で畳んで綺麗にしましょう」
「そうしましょう」
そして、皆は各所分担して、たたむ作業に入るわけだが、
「その前に記念撮影とかしたいけど?」
と、みあおが言う。皆さん少し沈黙。
「片付け手からの方が良いと思うけど?」
「う〜ん、分かった♪」
確かにこう足場も悪いと、記念撮影どころではない。
みあおは、大人の天使状態に変身し、手伝う事にした。

ドリルガールの姿をといたらせんは…かわうそ?がメイド服をたたんでいる姿を発見した。
そして、
「きゃー!かわいい〜!」
と、らせんはいきなりかわうそ?を抱きしめ頬すりする。
ナマモノにとって、其れは天国だった。
「美人に抱きしめられる…イイ…でも、先に片付け…」
「う、うんわかりました」
ナマモノに諭される女子高生、らせん…。
みつきとゆゆはそんな講義より宙に浮かんでいるメイド服をおびき寄せている。
「こっちだよー着てくれる人がいるから〜」
この2人の知り合いは大人が多いらしい。大人サイズのメイド服を拾って袋や段ボールに無造作に入れていくのだった。
『箱』が無くなった以上、代わりの入れ物を必要とされる。それが、お買い物袋だろうと紙袋だろうと関係無しだ。
撫子は、未だ目覚めない義昭の看病をしつつ、メイド服をたたんでいる。
茜は、蓮の間まで侵食したメイド服をエルハンドから習った次元魔法で収納する事にした。
千春も、ゆったりとだが先に自分の部屋のメイド服を何とかしている。
つくも神の月弥は裕介から教わったたたみ方と収納術を何とかこなして、唐草模様の風呂敷にメイド服をたたんで収めているのであった。


4.田中裕介versus空木崎辰一
空木崎辰一…。彼はもうメイド服に関わり合いたくなかった。過去の事件で彼をそうさせたのだろう。完全にトラウマになったようだ。メイド魔神であり着せ替え魔の田中裕介の言う事等本当な何も聞いていない。もう、段ボールを引っ張り出して詰め込み、スカートのため足下がスースーするのを我慢しつつ、庭まで其れを運ぶ。
その数、10。良く詰め込んだものだ。
他のメイド服があやかし荘から出て行かない様結界を貼っていたのだがメイド服自体にその意志はないようだ。
そんな事はどうでも良い。目の前にメイド服があるのが嫌なのだ。
「出でよ!朱雀!」
東洋の伝承で4つの門を守るとされる聖獣、朱雀。燃える翼を持つ火の鳥が呼び出された。
「この段ボールを燃やし尽くすんです!」
辰一は言った。
朱雀は術に応じ燃やそうとする。
しかし、
何かの一閃が朱雀を解呪した。
「!?」
其れは、そのまま朱雀を呑み込み、ガラスのように砕けた。
「ダメじゃないですか、燃やしたら。さっき言ったでしょ?」
彼には殺気の言葉が込められている。
神気でなくても闘気を具現化するなど、天空剣特別門下生として当たり前の技だった。
「う、うるさい!ぼ、僕はもうメイド服に関わりたくないんだ!」
既に泣いている。
「もう28歳というのに情けない」
冷徹な声で答える裕介。
「何故、メイド服がこうも暴れているか考えた事があるのかな?」
「そんな事知らない!考えたくもない」
「其れで神職が務まるというのが悲しい、一種のメイド服の怨念と考えれば良い事では?其れも分からなければ」
更に殺気が篭もる。何故此処までメイド服に拘るのか辰一には分からない。
「なぜ、この状況を楽しむ事が出来るんだよ!」
「面白いから。それに俺のコレクションが更に増える」
即答。
田中裕介は、メイド服やメイドが大好きである。趣味の領域をこえてマニアックだ。愚問と言うものだ。その言葉で辰一は田中裕介の考えている事を理解できなくその場で跪き、何も考える事が出来なくなってしまった。
そう、見てはいけない世界。知らなければ幸いな世界をこの目の前で体験し、其れこそがユートピアと言わんばかりの男に殺されそうになったのだからだ。
裕介は殺気を解き、
「あーめちゃくちゃに入れちゃって…仕方ないですねぇ」
と、何事もなかった様にてきぱきとメイド服を愛でるよう、畳み、そして段ボールに収めていった。

らせんはかわうそ?を抱いて、その一部始終をみていた。
「こわいね」
「うん、怖いけどヴァカ」
「…」
と、おしゃべりしながら、のんびり仕事をしていた。


5.Unlimited Maid Works 2
みつきはもうそこらの物に飽きたらず、ゆゆの手伝いを止めメイド服で遊ぶ。そのターゲットが既に自分の分を終わらせて他の人の手伝いに向かおうとする石神月弥だった。
「わーい」
と彼にメイド服をかぶせる。
「な、何するんだ!」
すると、今まで着ていたメイド服と今のメイド服が入れ替わる。
「面白―い!」
もうみつきは其れが気に入って月弥の抵抗も関係なく、手当たり次第に彼を着せ替え人形のごとくメイド服をかぶせていく、
「わーやめてー!」
既に虚しい叫び声。
しかし其れは5分ともたなかった。いや彼ではない。みつきだ。はしゃぎすぎ、彼女はその場でスースー眠っていたのだ。
「た…たすかったー」
月弥は安堵するも何かの気配で後ろを見た…。
いつの間にか今か今かと待ち続けていた、着て欲しいメイド服の群れが彼を襲ってきたのだ。しかも全部愛玩用メイド服。
「うわ―――――」
あやかし荘で間の抜けた悲鳴が響き渡った。

そんな事に構っていられないのは全員であり、掃除の達人因幡恵美はてきぱきとメイド服を片付けていく。
撫子は困った顔して義昭の看病をしていた。
「夕暮れになりそうですね」
「そうですわね」
「でも不思議ですね?普通なら茜さんが」
「そうですよね?」
2人は知っている、茜はヤキモチを妬いていると。
流石に口に出すと、嫉妬の焔が誰かに向かって八つ当たりするという事から口にしなかった。
ため息をつく2人。
そして遮那が、メイド服姿で
「こっちは片付けました。だいぶ纏まったみたいですね」
と報告。
ゆゆは、天使状態のみあおとお手伝い。裕介は辰一が詰め込んだ10箱のメイド服を5箱までにまとめている。
茜はと言うと…
小さな箱のミニチュアとハリセンを持ってきただけだ。
「???」
「蓮の間周辺はこれで片づいたよ!」
未だ彼女は怒っている。
千春もよたよたとメイド服をたたんでまとめた事を告げにきた。
「あのー一通り纏まったので、大掃除というのはどうでしょう?」
「其れは名案です」
「では、もう一汗かきますか」
皆頷く。
「義昭くんはどうしましょう?」
撫子は茜に訊く。
天然剣客は未だに夢の中だ。しかも幸せそうな顔をしている。それを見てワナワナ震える茜。其れを宥めようと止める裕介だが、
「忙しいときに、呑気に夢見てんじゃないわよ!」
怒りの焔を燃やし、裕介を丸焦げに、そして怒りのハリセンがあやかし荘に響き渡った。
「こ、これで今年二度目…」
裕介はこんがり焼けてその場で倒れた。
何故か、一部関係者だけ、茜の焔に焼かれるという効果があるみたいだ。
「いってー…ハリセン持つな茜」
とりあえず剣客は起きた。
「で?何故裕介さんが燃えているの?」
間抜け過ぎる質問。
「もう知らない!裕ちゃん!いくよ!」
茜はそのまま掃除用具と裕介を引きずって次の仕事に取りかかる事にした。
「義昭くん、茜さんを怒らせてはダメですよ」
と優しく撫子は諭す。
「は、はい。よく分かりませんが気を付けます」
義昭は、メイド趣味ではないのだが、流石に大好きな清純おねえさん天薙撫子のメイド服姿には不意打ちを食らったのだ。其れを高速思考で理解した青春真っ盛りな義昭だった。

さて、宙に舞うメイド服達はというと、ゆゆが悪戦苦闘している。
隣で悲鳴が聞こえたので駆け寄ると、月弥が宙に舞うメイド服に埋もれていた。
「た、助けて…」
「う、うん」
ゆゆの力だけでも何とか引っ張り出せた。その隣では静かな寝息を立ててみつきが眠っている。
「何とかならないかなぁ」
ゆゆと月弥は考えた。
「俺、つくも神だからといっても鉱石等しか無理なんだよなぁ」
「あたしも鈴蘭だから…布になった物と意思疎通はむり…」
二人してため息をつく。
そして、上に漂うメイド服を見て…又ため息をついたとたん…。
メイド服モブプレスが待っていた。
「きゃ―――――――――――!」
これは皆が駆けつけ、2人とも救助され事なきを得るのだった。


6.Unlimited Maid Works 3
「ふんふんふ、ふ〜ん」
鼻歌を歌いながら、千春はモップがけをする。
「こっちお願いしますね」
「はい、かしこまりましたぁ」
気分はすっかりメイド気分だ。
動きやすいしこれで掃除というのは快適である。まるで大きな屋敷に雇われたメイド。
しかし、そんな気分でもドジはする。お約束だ。
バケツに水を入れて、持って行こうとしたのが、恵美の達人の技は床を滑らせる。その床で滑ってしまった。
「あ〜ん、びしょびしょですう」
思いっきり水を被る千春。
身体のラインがはっきり見える。其れで更に豊満な身体と下着のラインが見える。男性陣は目のやり場がない。遮那は其れを一瞬見て、顔面赤面で呆けてしまうが、恵美の嫉妬のモップ攻撃がみぞおちに…。
「ご、ゴメンナサイ」
謝る遮那。
「急いで服を着替えましょうって…どうすればいいのでしょうか?」
そこで、裕介の出番だった。
「じっとして下さいね」
白い布で彼女を覆い、瞬間に引くと、先ほどのメイド服の乾いたもの(と言っても同じタイプ)に着せ替えたのだ。
「あ、ありがとうございますぅ」
千春は感謝の言葉を裕介に言った。
「流石着せ替え魔神裕ちゃん」
「そのあだ名何とかなりませんか?」
「いえ、事実だから」
「はぁ…茜さんには叶いません。それより、メイド服を脱ぎたい人はいませんか?」
裕介が尋ねる。女性陣は不思議と気に入っているらしく、返答はないが
「ぼ、僕です…」
先ほどまで頭の中が真っ白になっていた辰一だ。
「ダメです、貴方は暫くメイドの奥深さを知る必要があります」
と即答
「そんなぁ〜」
「冗談ですよ、冗談」
辰一に布をかぶせ、すぐさま引っ張る。そして元の服装に戻った辰一だった。
「あー助かった…」
「もう少し着ていればいいのに」
「え―――――――――――――っ」
辰一にまた心の傷が…
「彼が言っていたあの病院に行こうかな…」
辰一は流石に幼なじみの臨床心理士にこの事を相談できそうになかった。言ったら絶対笑われそうだからだ。


7.Unlimited Maid Works 4
掃除も出来て、メイド服もたたんで大仕事は終わった。
術師や天空剣士が一部の段ボールに封印を施し、今後どうするかを決める。
みあおが子供に戻って、記念撮影をしたいと言う事から、その祭りが開始された。異議のある者は居ない。居ても居ない事にする。これも決まりだ。
らせんはと言うと、もうナマモノにぞっこんで頬刷りしている。かわうそ?もまんざらではないようでなすがままだ。
メイド服の知識は裕介、メイド魔神と妹分の茜に言われている。それ以前に神室川では悪名轟く裕介なのだ。なので、彼の蘊蓄を聞きながら、皆で思い思いのメイド服を着る事になった。
着せ替えは裕介がするので、手間がかからないし、裕介も好きでやっているので疲れる事なんて無い。
驚くのは撫子も気に入ってしまい、色々試着大会に参加するのだから、茜も突如参加する。当然、義昭は苦笑するしかなかった。
「なーにライバル心燃やしているんだろう…」
のんびり茶をすする天然剣客。
こんな一面も、
「ご主人様、お茶が入りましたぁ」
「良い香りですね」
「良い紅茶の葉が入りましたのでぇ」
と、あやかし荘の庭でメイド姿の千春に、裕介から着せ替えてもらったブルジョア風のスーツに身を包んだ遮那と、その婦人の恵美でティータイムごっこもしたりする。
「でも、遮那さんにとって、恵美さんがメイド服でメイドになっていただいた方が嬉しいと思うんだけどなー」
と、ゆゆが言うと、遮那と恵美は赤面した。
「ですよねぇ〜」
クスクスと笑う千春。

既に自棄気味の茜はというと…、完全に別世界に…入っているようだ。気持ちは分からなくもないが其れは何ともということだが…。
スタンダードな黒いメイド服にポニーテールで、裕介に向かって
「お兄ちゃん」
と、裕介を呼んだ。
裕介は完全にそこでノックアウト。もう不意打ちも良い所で、思わず抱きしめてしまう。
もう呆れ返って何も言えない幼なじみの義昭がため息を付いたのだが…、やっぱりヤキモチを妬いたのか…
「2人とも其れやりすぎ…」
と、ハリセンで、2人を軽く叩くのだった。
「折角の現実になった夢を何するんですか!」
「よしちゃんはね、撫子さんと一緒にいればいいのよ!」
「う…ふん!そうするよ!」
3バカトリオの漫才を微笑ましく見る撫子さんが其処にいた。


Epilog
散々遊んだ後、普段着に着替える事が出来た。
「でも、こんな大騒ぎ起こすんだろう?」
答えは簡単だった。
ゆゆが前に言っていたように、メイド服達は「着て欲しい」、「使って欲しい」という事だったのだ。開けもせず、封印されると其れは怒る。服にも心があったのか、作った作者がそう思っていたのだろう。着ようと思ったときそれは簡単に脱げるようになったからだ。

みあおは自分の物と姉妹分、月弥が病院で欲しい分を貰って帰ることにする。
遮那は、裕介に売りつけようと思ったが、彼が居なかったら此処までスムーズに解決できないと言う恵美のお達しで却下され、余り物全部は田中裕介のコレクションとなった。
こっそり天薙撫子は、数着お気に入りの物を貰って帰ったのだった。
辰一は、更に心の傷を背負い、背中が泣いて居る事を感じさせてあやかし荘を去っていった。
ゆゆは知り合いを呼んでいっぱいのメイド服と、みつきを連れていつもの店に向かうらしい。

しかし、これで終わっては居ない。
数日後のことだが、町中で起こる謎の怪人事件との戦闘で、メイド服を着たドリルガールというヒロインが現れるという噂が流れたのは言うまでもない。しかもマスコットでかわうそ?付きらしい。
「銀の螺旋に勇気を込めて、回れ正義のスパイラル ドリルガールらせん、メイドバージョンで只今見参!」

遮那が柚葉と一緒に倉庫をみる。
「手がかりってあるかな?」
「あればいいよね」
と、『箱』の破片を見つけ調べてみる。
「…なにか感じる…」
一瞬頭の中であらゆるビジョンが映った。
それは…ぼやけて場所は分からなかったが…名前だけは見えた。
〈不思議堂?〉
店自体に「?」が付く事も謎だがこれはかわうそ?に属するナマモノ並みに謎だった。
さて、これからどうするべきか…。

『箱』の手がかりが一つ見付かった…。

End


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0170 大曽根・千春 17 女 高校生】
【0328 天薙・撫子 18 女 大学生】
【0428 鈴代・ゆゆ 10 女 鈴蘭の精】
【0506 奉丈・遮那 17 男 高校生・占い師】
【1098 田中・祐介 18 男 高校生兼何でも屋】
【1415 海原・みあお 13 女 小学生】
【2029 空木崎・辰一 28 男 神職/門屋心理相談所事務員】
【2066 銀野・らせん 16 女 高校生(/ドリルガール)】
【2099 白兎・みつき 5 女 バケウサギ…って職業じゃない】
【2269 石神・月弥 100 男 つくも神】

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■         ライター通信          ■
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滝照直樹です。
はい、英語タイトルは気にしないで下さいね。分かった人だけにやりと笑ってください。

かなり楽しませて書かせていただきました。もうしっちゃかめっちゃかですが(謎)。楽しんでいただけたら幸いと存じます。
とりあえず、謎の『箱』の手がかりが…。アレで手がかりになるのかは、やっぱ謎です。

空木崎様、銀野様、石神様初参加ありがとうございます。

又機会が有ればお会いしましょう。