コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


リバース

オープニング

『なっ……』
 今日もいつものように草間興信所で新聞を読んでいた草間武彦は突然驚きの声をあげた。
 その理由はテレビに映っている人物にあった。
 真っ赤な髪、真っ赤なスーツ、そして真っ赤なシルクハット、まるで奇術師のようなその人物は
 何やら怪しげな呪文を唱えている、そして…数分後には死者が生き返っている。

「私はレッドラム。死者を生き返らせることができます。恋しい人、恩人、あなたにも会いたい人はいるでしょう?
もし、死んでいるから、という理由で合えないのならば私があわせてあげましょう」

 一見穏やかな笑みを浮かべているように見えるが、草間武彦に言わせれば不気味だった。
 何も疑う所のない笑み。それこそが不気味だった。

「きゃぁぁぁぁ!」
 外からの悲鳴に草間武彦は慌てて窓から外の様子を見る。そこは…地獄だった。
 生き返った人々と思われる人物は生きている人間を襲っているのだから…。
「こ、こんなのって…」
「願ったのはあなた方人間でしょう?」
 まるで草間武彦の言いたい事を当てたかのようにテレビの中の人物は不気味な笑みを浮かべながら言う。
「‘どんな姿でもいいから生き返って,と願ったのはあなた方ですよ。私は生前と変わらない姿、といった覚えはありませんから」
 まるで屁理屈のようなことを言いながらその人物はゆっくりと宙に浮く。テレビの中でもパニックに陥っているらしく人が次々に襲われている。
「お兄様、これではいずれここも危なくなりますわ」
 零が落ち着いた口調で言う。
「…あぁ、誰かこの問題を解決してくれるものがいないか電話をしてくれるか?」
「分かりました」


視点⇒真行寺・恭介

「この事件を何とかできるかい?」
 恭介の知り合いの知り合いから、この異常事態の解決を依頼された。別に恭介が解決する義理もいわれも何もないのだが、この間偶然できた試作品を試すにはうってつけかもしれない。
「研究所の連中には何てイイワケをするんだ?」
「さぁ、結果を出せば文句はないだろう」
 こういう仕事をしている以上《結果》が全てなのだから。結果さえ出せば文句を言われる筋合いもなくなる。
「そういう考えはお前らしいな」
「そういう考えを持つのが仕事だろう」
 恭介がそう冷たく言うと「違ぇねぇな」と男も笑いながら答えた。
 今回の試作品、名前もまだないが拳銃のような形をしている。拳銃と違うところといえば弾丸がいらないという事だろうか。この試作品は《気》の力を弾丸の代わりにできるものだ。だから普通の拳銃のように弾切れを起こす心配もない。ただ、欠点をあげるなら《気》を操れない人間は使う事ができないと言うことだろうか。気のちから使うということは物理的にも、心霊的にも効果がある事になる。
「射撃の訓練をしていてよかったかもな」
 いくら便利とはいえ腕が悪ければ道具が泣く。
「出かけるのか?くれぐれも気をつけてな」
 男の「気をつけて」が何に対しての「気をつけてなのか」恭介には分からないが、とりあえず黙っておこう。
 外に出て、まず目に入ったのが赤い月。普段は神秘的な光を放っている月だが、今日の月は違った。あのレッドラムとかいう男のせいなのだろう。
「しかし…」
 恭介は誰に言うでもなく小さく呟く。試作品は今の所問題はない、試作品を扱う恭介にも問題はない。何が問題なのかというと―…。
「テレビか…厄介だな」
 そう、テレビだ。好奇心旺盛なマスコミはきっと恭介とレッドラムが戦い出せばカメラを回すだろう。それはもう確実に。だが、テレビに映るわけにはいかない。普通の人間ならば映っても問題はないのだが恭介が映ると研究所の連中が煩い、おまけにその道具は何ですか?などという質問もマスコミからされるだろう。考えただけでもうざったく感じる。
「どうしたものかな」
 無意味かもしれないが研究所の男からサングラスを借りておいた。だがサングラスをかけたくらいでは誰が映っているのか分かってしまう。
「姿を見せずに、あの赤い男を倒そう」
 口で言うのは簡単だが、実行するとなればそれなりに難しいことだ。
「人目のない場所へ上手く誘導できればいいが…」
 まぁ、そのときの状況次第だろうと納得したところで目的の場所へと向かう。
《レッドラム》という男がいる廃ビルには予想通り多くの報道陣がいた。中には死者達から逃げながらも取材を続けようとする人間もいた。
(記者の鏡だな)
 最も、記者として使命感で死んでしまったら何もならないのが分からないのだろうか?馬鹿と天才は紙一重だと言うが全くその通りだ。
「さて、どうやって中に入るかな…」
 運良く一箇所のドアが開いている。記者たちもそのドアには気づいていないようだ。
(あそこのドアから入るか)
 煩い記者たちに見つからないように足音をたてずにビルの中へと入る。どうやらビルの中にはマスコミの人間は入ってきていないらしい。
 階段をのぼるたびに錆びついた階段はギシと妙な音をたてる。やがて、屋上に着くと真っ赤な月をバックに一人の男が立っていた。月と同じ赤い服を着ている。
「おや、どちらさまですか?お招きした覚えはありませんが…?」
「招かれた覚えもないからな」
「じゃあ、何の用でこちらにらしたんでしょう?」
 男は穏やかな口調とは裏腹に顔は笑っていない。まるで蔑むような目に恐怖さえ感じるくらいだ。
「用件?決まっているだろう。この状況を何とかしてもらいに…と言いたいがコイツのためだな」
 そう言って恭介は試作品であるソレを取り出した。
「拳銃、ですか。人間になら効くでしょうが残念ですが私には効きま―…」
 男が言い終わらないうちに恭介は男の腕を撃つ。
「やれやれ、せっかちな人だ。せっかちな人は女性に嫌われますよ?」
「構わん。好かれたいとも思わないからな」
 銃を構えたままで恭介が言い放つと男は何が面白いのか笑い始める。
「何が可笑しい?」
「いえ、気を悪くされたのなら謝ります。貴方は面白い方なんですね」
 血がぽたぽたと流れる腕を見ながら男は笑いを止めようとはしない。
「お前は何者だ?」
 恭介はが聞くと「何に見えますか?」と疑問を疑問で返してくる。少し苛立ちを募らせる。
「質問しているのは俺だ。間違えるな」
「そうですねぇ。人間でないのは分かるでしょう?人間の言葉で言うなら悪魔、と言ったところでしょうか」
「そうか、では次の質問だ」
 恭介の言葉に男は「次は私の番でしょう?」といってくる。
「貴方のその道具、面白いですね。久々に痛みと言うものを感じましたよ。それは何なんです?」
「…試作品とだけ答えておこう」
「そうですか、完成されたものではないんですね」
「そうだな。お前は一体何がしたくてこんな状況を作り出した?」
「次の質問ですか?そうですねぇ…強いて言うなら暇だったから、でしょうか」
 クスクスと笑いながら男は言う。
「何とかしろ、と言ってもムダだろうな」
 恭介は諦め半分で言うと「力ずくで止めさせたらどうです?」などと言ってくる。よほど腕に自信があるのだろう。だが、腕に自信があるのは男だけではない。それに試作品の結果を報告しなければ嫌味な事を言われるだろう。それだけは何としても避けたかった。
「そうだな」
 言葉と同時に恭介は試作品を撃つ。今度は男のわき腹を掠めたようだが、効果はあまり期待できなさそうだ。
「効かないのか?」
「いえ、効いてますよ。結構痛いんですが私はあんまり表情が豊かでないもので」
 ニコニコと笑いながら言う言葉に説得力はない。
「気味の悪い男だ」
「それはありがとうございます。私にとっては最高の誉め言葉ですよ」
 そう言って男も攻撃を仕掛けてくる。鞭のようなものを使ってくる攻撃のようだ。
「無駄な鉄砲数打ちゃ当たる、という言葉をご存知ですか?」
 男がそういうと同時に鞭を振る速度が段々速くなる。避ける暇を与えない攻撃というほど効率がいい攻撃はないだろう。ただ、それができる者が少ないだけで。
「お前も覚えておくんだな。油断大敵、という言葉を」
 恭介は言い終わると同時に試作品を撃つ。どんなに早く攻撃を仕掛けても必ず隙が出てくる。恭介はそれを狙って攻撃したのだ。撃った弾(気)は男の心臓を見事に打ち抜いた。
 恭介は傷だらけになった身体を動かして男のところまで歩み寄る。
「…役者には不向きだな」
 恭介が言うと男の目がいきなり開いた。
「心臓打ちぬかれてまだ生きているなんて大したものだな」
「私は簡単にしぬということができない身体なんですよ。本気で危なくなっていたら逃げていましたけれど」
「それで?まだ続けるのか?」
 恭介の問いに男はにっこりと笑って「いいえ」と答えた。
「こんなことで死にたくありませんしね」
 男は首から下げていたペンダントを手で握りつぶす。すると今までの不穏な空気が綺麗になくなった。
「見逃していただけるんでしょう?」
「…殺す事が目的じゃないからな」
「それはどうもありがとうございます」
 そういうと男は恭介の前からフッと姿を消した。
「…まだまだ改良の余地あり、だな」
 本当は無傷で終わらせる予定だったのだが結構手間取ってしまった。
「さて、研究所に帰ってコレの改良でもしようか」
 そして、恭介はいつもと同じ神秘的な月を背に研究所へと戻っていった。



□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

2512/真行寺・恭介/男性/25歳/会社員

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

真行寺・恭介様>

初めまして、今回《リバース》を執筆させていただきました瀬皇緋澄です。
今回は発注をかけてくださり、ありがとうございました!
少しでも面白いと思ってくださったら幸いです^^
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくお願いします^^

               −瀬皇緋澄