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<東京怪談・PCゲームノベル>


夢見る・お豆ちゃん

1.榊・豆を貰う
「夢が叶う豆やて? これ、ほんま?」
榊和夜(さかきかずや)はその日、運良く・・はたまた運悪く草間興信所に来てしまっていた。
そしてその『ドリーム・ビーン』を見つけてしまっていた。
「・・いるか? 何なら一個やるぞ?」
草間は珈琲を片手に、タバコを吸いつつやる気なさそうにそう言った。
が、内心はかなり実験体になってくれることを祈っていた。
「ええの? 喜んで使わしてもらうわぁ♪」
榊が無邪気にそういったので、草間はほくそえんだ。
が、その無邪気な榊が一瞬素に戻り、ボソッと言った。
「怪しいモンなんか今更やしな」
「・・なんか言ったか?」
「いややなぁ。何も言ってませんて」
草間の地獄耳に再び無邪気に笑う榊。
軽いステップで出て行こうとする榊に、草間は聞いた。
「で、おまえはどんな夢を見るつもりなんだ?」

榊は振り返ると「私の見たい夢はたった一つです〜」と言った。
そして、そのステップを保持しつつ草間興信所を後にした・・・。


2.榊・夢を熱弁する
「ねこねこねこねこねこねこねこねこねこねこねこ〜!!」
就寝時間。布団の上で榊は豆に向かってそれを繰り返した。
榊の見たいたった一つの夢・・・それである。
「猫とこれでもかいう程戯れるんやぁ!!」
ネコ好きのネコアレルギー・・・かつてこれほど最大にして深刻な悩みがあったであろうか。
榊は豆にさらに言う。
「できれば猫アレルギーの出ない猫を出してや!できればぎょーさんな♪」
パンパンッと豆に向かってかしわ手を打つ。
怪しい物とは思いつつ、願ってもない魅力的な豆である。

叶わなければそれまで・・。
だが、叶えばラッキー!願っとこ!

榊は小一時間ほど豆に祈り続けた後、ようやく床についた。
いい夢が見れますように・・・。


3−1.夢は語る
目の前にはねこ・ネコ・猫・・・。

猫のパラダイスやなぁ・・。

そんな感想を抱き、榊はふんっと鼻を鳴らした。
いつもならくしゃみが連発しそうなところなのに、くしゃみはでていない。
いや、それどころか出そうな気配すらない。

さすが夢ん中・・・草間さんに感謝やな。

が、その感謝はすぐに凍りついた。
自分の手に毛が生えていた。
さらに自分の足やお腹、顔を触っても毛むくじゃら。
近くにあった鏡に走りより、自分の姿を見て榊は思わず叫んだ。
「猫になってしもてるやんか〜!!」
体毛全てが茶色の子猫。それが今の榊の姿であった。
少しの間放心して、鏡を見つめていた榊はふと思った。

なんや、こういうのも夢ならではっちゅーことかなぁ・・。
でも、意外といけるかもしれんなぁ。この姿。

そう。夢は夢である。
ずっとこのままの姿でもあるまいし、まして夢には終わりが来るのである。
榊はうんうんと1人頷いた。
思いっきり遊ぶのがこの夢の目的であったはず。なら、遊ばなければ損なのだ。
「私も混ぜて〜♪」
ニコニコと榊は猫たちが集まる方へと走り出した。
4つ足で走るのは少々抵抗があったが、慣れればそんなこともない。
「おう! 新顔か。いいぜ? なにして遊ぶ?」
ワイルドな口調のロシアンブルーが榊を招き入れた。
「なんか、あなた普通の猫とは違うみたいね〜?」
クルンとおしゃまなスコティッシュカールが言う。

猫が喋るんは少々反則な気もするけど、まぁ、ええか・・。


3−2.さらに夢は語る
「新顔が入ったところで今日はなにする?」
エジプシャンマウがはつらつと皆に聞いた。
「影踏みとか・・いいんじゃないかな〜?」
日本猫の子がうにゃうにゃと恥ずかしげに言った。
「それはちょっと嫌だなぁ・・皆でえさ貰いに行くのはどうさ?」
短足マンチカンがのんびりとそう提言した。
「それはなんか・・違う気が・・あ! じゃあ新顔さんに決めてもらうのはどう?」
アメリカンショートヘアが勝気そうな瞳を榊に向けた。
「へ!?」
突然指名され、それまで猫たちに囲まれた幸せに浸っていた榊は我に返った。
「いいねぇ。新顔さんはどんな遊びがいいの?」
スコティッシュカールがニコニコと榊に聞いた。
「えぇ・・と・・・」
「何でもいいんだよ? 君のやりたいことを教えてくれよ」
シャムが澄ましてそう言った。
「じゃあ、日向ぼっことかじゃれあいとかしたいなぁ・・なんて・・・」
ごにょごにょと榊は言った。
本当は撫でたり、昼寝に添い寝とかしたかったがそれは猫同士では少々無理がある・・かなと思ったのだ。
「・・・」
猫たちの視線が榊に集まった。
クリンとした目の中の瞳孔が細長くなり、榊はドキドキした。
猫の目って見つめられると意外と怖い・・。

「いいねぇ。それ」

猫の一匹が言った。
「うん。僕も良いと思うなぁ」
一匹が言うと次々に賛成意見が出てきた。

榊が猫たちに認められた瞬間であった。


3−3.そして夢は語り終える
「よーし!いっくぞーーー!!」
日向でじゃれあう猫の群れ。その中に榊もいた。

あぁ。なんか微妙に違う気はするけど、やっぱ猫ってええねぇ・・。

ふわふわの毛が榊のほっぺたをくすぐっていく。
他の猫の尻尾にじゃれついてみたり、爪を立てない程度に寝転がってじゃれあってみたり・・・。
日向はぽかぽかでじゃれあっていると何だか妙に眠くなってきた。
それは榊だけではなかったようで、他の猫たちも段々とじゃれあうのをやめた。
そして一箇所に集まるとごろんと横になった。
ぽかぽかの陽だまりに、ホカホカの猫たちの体。
毛づくろいする猫もいれば、顔を洗う猫もいた。
そんな彼らを間近で見ながら榊は幸福の絶頂であった。

これや、これがしたかったんよ・・・。

ぬくぬくとした気持ちが、少しずつ睡魔に変わっていく。
猫たちに囲まれたまま、榊はその睡魔に誘われるまま眠りに落ちていった・・・。


4.現実の中の夢
目を開けた榊は、まだ自分が夢を見ていると思っていた。
なぜなら、榊の目の前に茶色の子猫が自分と同じ姿で寝ていたからだ。
そう、その茶色の子猫はまさに夢の中の榊の姿。
それゆえ、目が覚めたはずなのに榊はまだ夢を見ているのだと思った。
「うにゃ〜・・・」
子猫が寝返りを打った。
「うわわ!?」
榊は飛び起きた。飛び起きてまず、子猫の腹をつついた。
「うにゅ〜。うにゃ〜」
腹をつつくたびに鳴く子猫と、突付いた指にある確かな感触・・・。
「ゆ、夢ちゃうやん!」
完全にこれで榊の目は覚めた。
慌てて子猫から離れ、口を手でふさいだ。
くしゃみが出るとわかってつい体が動いたのだ。
だが、いつまで待ってもくしゃみは出ない。
「・・・あれぇ?」
榊は訳がわからなかった。
が、少し考えるとようやく『ドリーム・ビーン』のことを思い出した。

アレの・・副産物っちゅーことかぁ・・。

一生懸命祈った甲斐があったのか、どうやら豆は榊の望んだ『アレルギー反応の出ない猫』を産み出してくれたらしい。
「なんや、怪しいモンとか言って悪かったかなぁ・・」
少々草間興信所で言ったことを思い出しつつ、榊は呟いた。
「腹減った〜。なんか食わしてくれへん?」
「あ。そうやった。朝ごはん食べてへんかった。ちーと待っとってくれます?」
ニコニコと榊は布団から起きた。
が・・・

「誰? 今『腹減った〜』って言いはったん?」

素朴な疑問ながら、榊は凍りついた。
「僕です〜。アンタさんの横におります〜」
その声の主は・・・猫だった。
「・・・」
「僕、ハムエッグでいいですにゃ〜。うにゃ〜ん」
ニヤリと猫が笑った。

怪しいモンはやはり怪しかったんやなぁ。
・・・そやけどマンションてペットOKやろか?

榊はそんなことを考えながら、この猫をどうするかを考えていた。
取り合えず、朝ごはんを作りながら。
猫はそんな榊の苦悩を知ってか知らずか「にゃ〜ん」と一声鳴いた・・・。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

2084 / 榊和夜 / 男 / 21 / 大学生

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■         ライター通信          ■
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榊和夜様

初めまして、とーいと申します。
この度はPCゲームノベル『夢見る・お豆ちゃん』へのご参加ありがとうございます。
猫アレルギーにして猫好き・・・なんとも泣かせる設定ですね。
猫アレルギーが出ない猫が生み出されたわけですが、果たしてこれが猫といえる代物かどうか・・・?
あと、大阪弁というものが私にはよく分からないので、普通は大阪変換辞書なるものに頼っているのです。
が、榊様の大阪弁はごちゃまぜと書いてありましたので標準語(?)を交えつつ試行錯誤に書かせて頂きました。
上手く書けているとよいのですが・・・。
それでは、またお会いできる日を楽しみにしております。