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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


夢喰い

オープニング

投稿者:サラ
題名:友人を助けてください
本文:私はとある中学に通っている御堂サラと申します。
    今回この場所に書き込みをさせていただいたのは私の友人を助けて欲しいからです。
    私の友人は三日前に倒れて、一度も目を覚ましません。
    友人は前から自分の家のパソコンは変だと言っていました。
    自分の部屋に誰もいないのに、視線を感じてそのほうに目を向ければ
    パソコンがあるというのです。
    友人の気のせいかもしれませんが、私はもしかしたら…そのパソコンが原因なのでは、と
    思って書き込みをさせていただきました。
    どうか、私の友人を助けてください。

 これが、ゴーストネットに新しく書き込まれた記事だった。
 この書き込みがされる前からパソコンに巣くう魔物の話も出ている。
 この書き込みを見たあなたはどう調査する?


視点⇒榊船・亜真知


『書き込みが気になり、メールをさせていただきました。榊船亜真知と申します。ご友人のためにもぜひ協力させていただきたいと思います。今日の午後6時にカフェでお会いしましょう』
 これが今日の朝早くに亜真知が御堂サラに対して送ったメールの本文。恐らく彼女の友人は精神を取り込まれたのではないか?と亜真知は考えていた。最近『パソコンに巣くう魔物』というものも聞く。もしかしたらサラの友人が意識不明になった事と関係があるのかもしれない。
「まだ時間は十分ありますわね」
 亜真知が時計を見ると時間はまだ昼過ぎ。午後6時までまだまだ十分余裕がある。
「パソコンに巣くう魔物、とやらを調べてみる事にしましょうか…」
 誰に言うでもなく亜真知が小さく呟く。もしかしたら、いや、確実にパソコンに巣くう魔物とサラの友人が意識不明になった事は関係があるはずだ。なぜならパソコンに巣くう魔物の話が出始めてからあちこちで意識不明者が出ているらしい。
「さて…」
 亜真知はメールを送ってからほったらかしにしていたパソコンに向き直る。ネットでの問題ならネットで調べた方が情報の集まりがいいだろう。カタカタと手馴れた様子でキーボードを叩き《パソコンに巣くう魔物》に関しての情報収集をはじめる。検索をかけてみると何十万というサイトが出てきた。流石にこれを全部調べるのは無理そうなのでサラも行き来していたサイトに行って見ることにする。

―パソコンに巣くう魔物についての情報をどなたかご存知ありませんか?

チャットに参加してこの書き込みをした途端返事が山のように返ってきた。

―知ってるよー。何かトカゲにたいな化け物なんだろ?

―え〜?そうなの?私が聞いた話だと綺麗なお兄さんの姿した魔物だって聞いたよ?

「これは願望ではないんでしょうか…」
 最後の女の人が書いたと思われる書き込みを見て亜真知は小さく突っ込みを入れた。
「でもこれじゃ、どれが本当の事か分かりませんね…」
 困ったようにして呟くと意味深な書き込みを見つけた。

―何を聞かれても答えてはいけないよ。

「…なんでしょう、これは…」
 亜真知は「何の事ですか?」とすぐさま書き込んだが、その人物からの返事はなかった。
「答えては、いけない?」
 小さく呟いてみるが答えが分かるはずもない。
「とにかく何か聞かれるって事でしょうか…」
 それからも亜真知は色々と調べてみたが大した情報は得られなかった。そして時計を見ると6時10分前だった。
「あ、遅刻してしまいますわ!」
 慌てて亜真知はパソコンの電源を切り、約束の場所へと向かう。指定したのはこっちなのに遅刻したら会わせる顔がない。
 それから亜真知は小走りで約束の場所へと行く。着いたのはちょうど6時だった。走っても30分はかかる場所を10分で着いたのは我ながら凄いと思う。
「榊船さんですか?」
 声のするほうを見ると制服を着た可愛らしい女の子が立っていた。
「はい、貴方は御堂サラさんですね?」
 亜真知が聞くとその女の子はコクンと首を縦に振った。
「とりあえず中に入ってお茶でもしませんか?お話も聞きたいですし」
 亜真知の提案にサラも「分かりました」と言って中に入っていった。亜真知も続いて中に入る。
「私、ホットココアで」
「あ、わたくしは紅茶、ホットでお願いします」
 それぞれが注文を終えるとウェイトレスが「かしこまりました、少々お待ちください」と言って下がっていった。
「優…あ、優というのが私の友人で倒れる直前まで私と話をしていたんです。いきなりトカゲがどうのとか言いながら叫びだしたんです」
(トカゲ…あの女性の書き込みは見事に外れていますね…)
「多分、優様が昏睡状態にあるのは、その魔物に魂を取り込まれたからだと思います。ですから処置は早めにしないと、魂自体が消えてなくなるかもしれないんです。優様の家にご案内願えますでしょうか?」
 亜真知の言葉にサラは顔がどんどん青ざめて「じゃあ、こんな所で呑気にお茶を飲んでる場合じゃないでしょう!」と凄い剣幕で亜真知を問いただした。その後、サラはウェイトレスに注文を取り消し、優の家へと向かった。
 きっとあの店員は何が何だかワケが分からないことだろう。


「ここです」
 サラが案内してやってきたのは、どこにでもあるごく普通の二階建ての家。
「嫌な空気がこの家を取り巻いてますね」
 亜真知が言うと、サラも家を見上げる。だが、何の力も持たないサラにソレを感じることはできなかった。
「中に入っても?」
「あ、はい。今チャイムを押しますね」
 そう言ってサラがチャイムを押す。中からは元気のない女性が現れた。優の母親だ。聞けば優は一人娘だったという。一人娘がいきなり昏睡状態になったのだから母親としては食べ物も喉を通らないだろう。
「サラちゃん…そちらのかたは?」
「榊船亜真知と申します。サラさんとは友人関係にありますわ」
 亜真知がにっこりと笑ってサラに「そうですわよね?」と同意を求めるように話しかける。
「え…えぇ。叔母さん、優のパソコンもう一回見ていい?」
「えぇ、いいわよ…。私はこれから優のところに行くけどゆっくりしていってちょうだい」
 そう言って優の母親は家を出て行った。
「二階が優の部屋です」
 サラが階段を指差しながら上っていく。階段を上って、優の部屋に近づいていくたびに嫌な空気が濃くなっていく。
「…うわ…」
 優の部屋に入った亜真知が最初に言った言葉。嫌な空気などと可愛いものではない。部屋にいるのもやっとの状態だった。亜真知でさえも足がガクガクと震えるというのに、何も感じないサラはある意味凄い人間なのかもしれない。
「…邪悪な気を感じますね…。サラさん、わたくしは今からネットの中にもぐりますが、決して何もしないでください。貴女まで守りきれる自身がありませんから」
 そういうと、亜真知の身体がガクンと倒れた。意識だけをパソコンの中に忍び込ませたのだ。


「ネットを介する魔物であれば本拠にしている場所があるはずですわ…。そこさえ見つければ…」
 広いネットの世界で見つける事ができるだろうか、と亜真知が悩んでいる時だった。
「…見つけましたわ…。というか、何でこんな目立つ場所を本拠にしてるんでしょう?」
 全く分かりません、と頭を抱えて亜真知は一人呟いた。そして、その場所を中心に封鎖聖結界を構築して電脳世界面から閉じた状態にする。これは逃げられないために。
 万が一逃げられた場合は見つける事ができなくなるからだ。
(…でもこのお馬鹿さんならすぐに見つけられそうですわ…)
「誰だ…」
「…貴女が奪った人の魂を返していただけますか?」
「イヤだね」
 説得はムダだと悟った亜真知は『困りましたね…』と苦笑をもらして魔物に攻撃をする準備を始める。
「説得を快く受けてくださるのでしたら手荒な事はしないつもりでしたけど…容赦しません」
 キッと魔物を睨みつけるように言うと、魔物が恐ろしい事を言ってきた。
「俺を攻撃するのなら構わないが、お前が助けたい人間も傷つけることを忘れるなよ」
 その言葉に亜真知は攻撃しかけていた手を止めた。
「…汚い方ですね」
「何とでも」
 魔物に捕らわれている優を傷つけるとなれば話は違ってくる。
(お馬鹿さんだと思っていたのに、結構知恵はあるんですね。いらない知恵ですけれど)
『優…』
 突然聞こえてきた声に魔物がビクリと震える。正確には魔物ではなく、魔物に捕らわれている優が。
「サラさん!そのまま優さんを呼び続けてください!」
 亜真知はパソコンの外にいるサラに聞こえるくらいに大きな声で叫ぶ。
「亜真地さん…?…分かりました。優、優!」
 サラは亜真知が言ったとおり『優』の名前を呼び続けた。その度に魔物がガクガクとゆれる。魔物に捕らわれている優が反応しているのだろう。やがて、捕らわれていた優の姿が魔物から浮き上がってくる。
(今なら、優さんを魔物から引き出すことができるかもしれない)
 そう思った亜真知は魔物に勢い良く近づき、優の腕を掴み思いっきり引っ張る。
「なっ!」
 驚いた声を出したのは魔物の方。まさか優を引っ張り出されるとは思わなかったのだろう。
「これでイーブンですわね」
 亜真知はにっこりと優を抱きかかえながら笑う。
「優様、ですわね?ここをまっすぐ行ったら光が見えます。その光を通ったらもとの世界に戻れますわ」
 だから、早く行ってくださいませ。と言って亜真知は優を見送った。
「きさまぁぁぁっ!」
 優を引き出されたのがよほど癪に触ったのか魔物が威嚇をしながら叫びだした。
「これでわたくしも全力で貴方を倒す事ができます」
「貴様のような小娘に―…」
 魔物が最後まで言葉を言うことはなかった。なぜなら亜真知が攻撃して魔物を倒していたからだ。
「おしゃべりが過ぎると命を縮めますよ…といってももう聞こえませんわね」
 ふぅ、と溜め息をもらして亜真知も現実の世界へと戻る事にした。


「亜真知さん!よかった…今、病院から電話があって優が意識を―…」
「良かったですね。早く行ってあげたらどうですか?大切なご友人なんでしょう?」
「は、はい!本当にありがとうございます!」
 サラは深々と頭を下げて家から出て行った。
「意識を取り戻して本当に良かったですわ」

 あの二人の友情は今回の事件でいっそう深まった事だろう。その点だけはあの魔物に感謝をしてやりたい。
「でも…本当にお馬鹿でしたわ…」
 亜真知の言葉に答えるものは誰もいなかった。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】


1593/榊船・亜真知/女性/999歳/超高位次元知的生命体・・・神さま!?


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■         ライター通信          ■
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榊船・亜真知様>

いつもお世話になっております、瀬皇緋澄です。
今回は『夢喰い』に発注をかけてくださいまして、ありがとうございます。
『夢喰い』はいかがだったでしょうか?
少しでも面白いと思ってくだされば幸いです^^
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくお願いします^^

          −瀬皇緋澄