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<東京怪談・PCゲームノベル>


→ 『女ふたり』の小旅行…?


 ずず、とふたり――綾和泉汐耶と香坂瑪瑙は、道すがらの茶店でのんびりと休憩をしていた。
「助かりました。お誘い下さって有難う御座います」
「なんだか妙な事になってたものねぇ…草間興信所」
 いつもの事と言えばいつもの事だけど。
 まぁ、ちょうど良かったと言うか何と言うか。
 しみじみしながら汐耶は珈琲を啜る。

 本日汐耶は、馴染みの古書店から探していた本が見つかった、と連絡を受けたので小旅行も兼ね行ってみようと思い瑪瑙を誘ったところ。その書店、比較的近場…とは言えるが、散歩がてらちょっと行って帰ってくる、と言うにはやや遠い場所でもあるのだ。ついでに場所が観光地。たまにはゆっくりして来ても罰は当たるまい…とそんな思惑。
 ただ、今は同居している妹もちょうど実家に行って――と言うか連れて行かれて――おり、そんな中ひとりで旅行と言うのもつまらないので…手が空きそうな友人を探してみた結果、白羽の矢が立ったのが妹と同じ名でもある彼女。
 で、連れ立って来て…今に至る。
 ちょうど、第一の目的を果たしたところ。
「綾和泉さん、いろんなところに伝手があるんですね」
「まぁね。欲しい本の為ならお金も労力も惜しまない事にしてるから」
 にっこり。
 微笑んでカップを傾ける汐耶。
 その向かいで、汐耶同様にカップとケーキの小皿を前に、のほほんとテーブルに肘を突いている瑪瑙。
「特に古書なんかだと…伝手が一番大事ですか」
「そう言う事。特定のジャンルが集まりやすい店もあるし。いろんなところでいろんな取り引きがあるからね。この業界も情報が命と言えるもの」
 ある程度顔利かせて唾付けとかないとすぐに流れちゃうし。
 それなりの数出回っているものであっても、何かの拍子で人気が出たりすれば…途端に入手困難になったり。
 原書等、元々が稀少な本だったり…真正の魔術書、禁書の類だったら――裏での取り引きだってある。
「奥が深そうですね…」
「まぁ、どんな世界でも似たようなもんだとは言えると思うけどね」
「…私なんかの場合だと大学の図書館で済ませちゃう事多いですね…」
「確かに、香坂さんの大学って和書の蔵書は品揃え良いものね」
「だからこそそれで済ませられるんですけどね」
 悪戯っぽく微笑する瑪瑙。
 干したカップを置いた汐耶はさりげなく時計の針を見、続けて瑪瑙を見た。
「まだ予約の時間までは間があるけど…せっかく鎌倉まで来た訳だし、旅館まで…ちょっと散策してみましょうか?」


■■■


「この辺りは文士にまつわる旧跡も多いからね」
 それにちなんでか、良い古書店もあるのよ。

 時折そんな風に汐耶が説明しつつ、ふたりはのんびり路を歩く。
 曰く、瑪瑙は鎌倉は初めてだと言うので…汐耶が案内役になっている。

「主だったところで言うと…鎌倉文学館とか吉屋信子記念館とか…」

 興味あるようなら行ってみる?
 あ、それより先に鎌倉のシンボル的なものとも言える『大仏様』がちょうど近くになるから、初めてだって言うならそっちかな。
 そうですね、折角来た訳ですし、御迷惑にならない程度なら色々行ってみたいですね。
 それと…オススメの御土産とかも、良かったら色々教えて下さいね?

 と、和気藹々と話しつつ暫く歩き。
 途中で見掛けた鎌倉彫のお店やら何やら、興味と御土産を兼ね覗いたり。


 …していたところ。


 ふと後ろから。
「ねえねえねえ、お嬢ちゃんたち観光? ふたりだけで?」
 男ふたりが声を掛けて来た。
「…はい?」
「いや、可愛いのに勿体無いなーって思ってね。放っといたら男が廃るって」
「そうそう。つー訳でさ、良かったら俺らと一緒に遊ばない? 良いトコ知ってンだけど」
「…いえ、間に合ってます」
「そんなつれない事言わずにさぁ」
「必要ないって言ってるんだけど」
「そんな風に突っ撥ねるところもまた可愛い♪」
「…止めといた方が良いと思いますよ。本当に」
 最後、何処か済まなそうに、しみじみと瑪瑙。
 と、彼女のその肩に片方の男の手が馴れ馴れしくも触れかかり――まだ触れないだろうところで。


 ………………その男の身体が地面にひっくり返っていた。


「…間に合ってるって、聞こえなかったのかしら?」
 にこっ、と満面の笑みを見せ、ひっくり返った男を見下ろす汐耶。
 知ーらない、とでも言いたげに目を逸らす瑪瑙。
 げ、と引いた様子の、まだ立っている男。
 ひっくり返った男の方は何が起きたかわかっていない――まさか汐耶に投げられたとは思っていない。
「お、おい、大丈夫かよ」
「な、なんだぁ、今の」
「お前今この女に」
 投げられたぞ。
「なぁにぃ!? 冗談だろ」
「や、マジだって。危ねェよ、なんか」
「…ってよ。んな虚仮にされて黙ってられっかよ」
「おい、止めろって…」

 と、男たちが、汐耶たちを余所にがたがた言い出したところ。
 突然。

 場にそぐわぬ異様な殺気が何処からとも無く向けられ、男たちは思わず、きょろきょろと周囲を窺う。
 が、何も無し。
 だがその感覚は変わらない。
「…んっだよこれ」
「何かわかんねェけど…ヤバげ、じゃねえか?」
「お、おう。も、もう行くか」
 その得体の知れない殺気に脅え慌てつつ、男たちは逃げるように去って行く。
 汐耶は目を瞬かせた…が、ま、いっかとあっさり思い直し瑪瑙を見る。
「ま、よくわからないけど追っ払えたみたいね。行きましょ」
「…はは。そーですね。頼っちゃった方が楽ですもんね」
 うん。と頷き合うと、ふたりはつい今し方あった事も気にせず、楽しそうに古都散策――と言うか御土産選びを続ける事にした。


 …ちなみにそのちょっと後。
 人が容赦無く殴られるちょっと湿った鈍い重い音やらカラスか何かが人でも襲っているような…何かばさばさと激しい羽ばたき――にしては多少乾いた紙のような音――?が続き、最後、この世のものとも思えぬ断末魔が…物影で発されていた。
 何処からかもう少し詳しく言うと、先程のナンパ男たちが消えた方向の物影で。


■■■


「良いところですねー」
「暖まるわねー」

 …それから予約の時間になり、宿に着いて。
 部屋に入った汐耶と瑪瑙は、ひとまず温泉に行こうと湯けむり舞う中来たところ。
 で、今は、湯に浸かって、のほほんと外の景色を眺めたりしている。
 一応、露天風呂。
 別世界。

 が。

 …きゃあああ、と温泉の入口方面で何やら一騒動聞こえたのは気のせいだっただろうか。
 取り敢えず無視して、汐耶と瑪瑙は――ふぅ、と呆れたように溜息吐きつつも、のんびり温泉を楽しんでいる。


■■■


 で、のぼせる前に上がって、部屋に戻る。
 汐耶が入手した――今回の目的でもある当の本を開いてみたり、瑪瑙はそれを横から覗いていたり。で、ついでに数少ない友人の事、自分に良くしてくれるひと――特に共通の知り合い――の事を話したり。汐耶は仕事上のストレスやらお見合い話を持って来る親戚の話やら大変なのよとちょっと愚痴ったり。
 で、暫く経って、夕食の時間。
 宜しいですかと仲居に問われ、はーい、と肯定すると、御膳が次々と運ばれて来る。

 但し。

 二人前にしては…少々多い。
 と言うか。
 器や箸の数から考えて、どう見ても、『四人』前。

「さて」
「はい」
 静かに頷き合い、おもむろに…静かに立ち上がるふたり。
 そして、そーっと。
 仲居さんたちが去った廊下側とは逆、外に面した側の襖から外に顔を覗かせた。
 で。


「折角いらっしゃったんですからどうせなので一緒にどうですか?」


 と。
 当然の如く言われた科白に、外に居た方のふたり――真咲御言に空五倍子唯継のふたりは瞬間、停止していた。
「…えーと、ひょっとしてバレてないと思ってました?」
「そんなに心配だったのなら初めから一緒に来て下されば良かったのに」
 くすくすと笑いながら汐耶に瑪瑙。
 たっぷり数秒停止してから、はー、と真咲は漸く溜息を吐いた。
「…完敗です」
 で、一方の空五倍子はと言うと、あちゃー、とばかりに額に手を当てている。
「…このタイミングで来ますか。人が悪いっすよ綾和泉さん…」
 瑪瑙もっ、とむくれる空五倍子。すると、コレ、要らないんだったら構わないわよ? と汐耶は確り四人前並んだ御膳を指し示す。それを見て…いえ、折角ですから御馳走になります…と、空五倍子はがっくり項垂れつつ畳に上がった。
 少し遅れ、真咲も空五倍子の後に続く。
 悪戯でも成功したような汐耶と瑪瑙の楽しそうな笑顔に、真咲は思わず苦笑い。
「ひょっとして、初めっから想定されてました?」
「何となくは。それに香坂さんにも聞きましたし」
「…」
「さっきの御土産屋さんでのナンパ男ふたりにも…私たちに手を出すと後々貴方たちの方が危ないぞと忠告はしたつもりだったんですけどね…」
 わかってもらえなかったようで。
 と、瑪瑙は苦笑。
「…大丈夫だ。殺しちゃいない」
 逆に言うと殺してはいないだけ、と暗に含み、平然と真咲。
「あら、いっそ…」
 瑪瑙に言った真咲のその科白に、やや心外そうに声を上げる汐耶。
「…綾和泉さん、怖いっすから」
 と、再びげっそりと空五倍子。
 それでも汐耶と瑪瑙は楽しそう。
「ま、その件はひとまず置いといて。折角の御料理、冷めちゃったら勿体無いし」
 早く皆で一緒に、いただきましょ?
 と、箸を取り、汐耶はにっこり。


【了】



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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)
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 ■整理番号/PC名
 性別/年齢/職業

■PC
 ■1449/綾和泉・汐耶(あやいずみ・せきや)
 女/23歳/都立図書館司書

■指定NPC
 ■香坂・瑪瑙(こうさか・めのう)
 女/20歳/大学生・ネットカフェのバイト長

 ■真咲・御言(しんざき・みこと)
 男/32歳/バー『暁闇』のバーテンダー兼、用心棒

 ■空五倍子・唯継(うつぶし・ただつぐ)
 男/20歳/大学生・メディア向け似非陰陽師・霊能ライター

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       ライター通信…改めNPCより
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 御指名が複数だったので座談会形式で。

瑪瑙:「御指名有難う御座いました〜。色々ありましたが、楽しい旅行をどうもです♪」
真咲:「それから…こちらのシチュノベ的おまかせシナリオを出すのが、お話があった時期から考えると随分遅くなりました(汗)。ああ、全然わがままではありませんよ。大丈夫です。お客様あってこそのWRですので…と、WRから伝言預ってます。それに、既にして御約束した汐耶さん以外の方からも御指名がありましたし、一応他でも需要はあるようですから本当にお気になさらず。
 …ともあれ、今回のノベルの方ではどうして俺たちの存在に気付かれてしまったのか…それくらい周りが見えてなかったって事かもしれませんね。…精進します(笑)」
空五倍子:「いや、やっぱ相手が悪かったんじゃないんでしょーかね? 何たって瑪瑙にあの綾和泉さんだし」
真咲:「ま、それもある」
瑪瑙:「…そもそも、真咲さんと空五倍子くんの御二人が一緒に行動している場合ってパターンが何となく読めるってのもありますし」
真咲:「…は?」
空五倍子:「マジ?」
瑪瑙:「うん。どーもそんな気がします。何と言うか、独特のオーラがあるとでも言いますか(苦笑)」
空五倍子:「あー、そう…」
真咲:「まぁ…細かい部分はさて置いて(咳払い)、汐耶さん、今回は御馳走様でした。次はこちらからも何か御馳走させて下さいね?(微笑)」
空五倍子:「あ、そろそろ下心があるんじゃないっすかー?」
真咲:「…何を言ってる」
空五倍子:「いや、だって、最近旦那綾和泉さんに対してちょっと態度違いますもん」
真咲:「…そこまで細かく観察される程お前が俺の近くに居た記憶が無いが」
空五倍子:「またまたー、誤魔化しちゃって」
真咲:「…覗き魔に言われる筋合いは無い」
空五倍子:「誰がっすかっ」
真咲:「お前。…女湯にずかずか入ってこうとしてただろうが」
空五倍子:「………………いや、そりゃ誤解ですって。旦那だって瑪瑙の事心配だって言ってたでしょうがっ。…てゆーか旦那だってあの時綾和泉さんの事も気になってたんじゃ無いんですかっ?」
真咲:「…お前な」
空五倍子:「ほーら困ってるー図星だ図星だ〜。って事みたいですよ〜、綾和泉さん(邪笑)」
瑪瑙:「…あのー…」
真咲:「…ガキかお前は。ったく。瑪瑙、本っ当にこんな奴で良いのか」
瑪瑙:「…いや、だからどうしてそーゆー話に」
真咲:「一緒に居る事が多いだろう? 何処が良くてだと思ってな。まぁ、瑪瑙が決めたなら俺がどうこう言う事じゃないんだがな…」
瑪瑙:「だーかーらー…」
空五倍子:「正直に行こーよって。旦那♪」
真咲:「…だから旦那と呼ぶなそこの男」
空五倍子:「だって旦那は旦那だし」
真咲:「…(嘆息)」
瑪瑙:「………………えー、どうも収拾が付かなくなって来た気がしますが(汗)、何はともあれ、この辺りでひとまず失礼を…。ってあ、その前に。…私たちとのピンナップもありがとーございましたー。綾和泉さんには色々良くして頂いているので嬉しいです☆ また何処か行きましょうね〜。と、それから…この件に関してはどうもWRは…他の何より真咲さんのあまりの美人さに絶句していた模様です(爆)。さて、もっと確りしたWRからの返信はまた後に譲る事にしまして、ではでは、また機会があったら宜しくお願いしますね」

 …と言う訳で無理矢理幕。