 |
リリーを探して
■オープニング
妹尾静流はいつものように、庭園の中央に位置する噴水の前の四阿（あずまや）の椅子に腰を降ろして、読書にふけっていた。今は二月で、今日などは東京は雪が降っていたはずなのに、ここは相変わらず空は青く澄み、空気は暖かくさわやかで、吹き過ぎる風は心地よい。ちょうど、五月の晴天の一日のような気候だ。
そこへ、庭園の主である三月うさぎが、紅茶のポットとティーカップの載った盆を手に、姿を現した。彼がそれを四阿の中央にあるテーブルに置いたところで、ふいに声がかけられた。
「ねぇ、あなたたち、リリーを知らない？」
ふり返った二人は、四阿の入り口に中学生ぐらいの少女が立っているのを見つけた。
小柄な少女は、つややかな黒髪を肩のあたりで切りそろえ、丸い衿のあるブラウスとチェックのジャンパースカートを身に着けていた。問われて、小夜子と名乗る。リリーは彼女の大事な飼い猫で、どうやらこの庭園に迷い込んでしまったらしい。
彼女の話に、二人は思わず顔を見合わせる。時空図書館に迷い込む人間はいても、庭園に迷い込む人間はいない。ましてや猫を探してなど、ここではあり得ない話だった。
だが、そのあり得ない現象に、三月うさぎは興味を覚えたらしい。
「安心なさい。このお兄さんが、一緒に探してくれるそうですよ」
彼は優しく小夜子に話しかけ、静流をふり返って微笑んだ。
「探してくれますよね？」
抗議しようと口を開きかけた静流はしかし、その笑顔にそのまま口を閉じて溜息をつく。
「わかりました。でも、ここは広い。私一人では無理ですから、誰かに応援を頼んでもかまわないでしょう？」
「それは、どうぞご随意に」
三月うさぎが鷹揚にうなずいた。それを見やって静流はもう一度溜息をつくと、ポケットから携帯電話を取り出し、ＯＦＦにしていた電源を入れて、誰に応援を頼もうかと、番号を検索し始めた。
■庭園へ
シュライン・エマは、エレベーターに乗った時のような軽いめまいから覚めると、あたりを見回した。
さっきまで、見慣れた草間の事務所にいたはずなのに、そこは戸外で、しかも頭上には雲一つない空が広がり、あたりは温かな風が吹いている。そして、目の前には瀟洒な白亜の四阿の入り口があった。
今日の彼女は、すらりとした長身の体にワインレッドのタートルネックセーターと同色のパンツをまとっている。長い黒髪は後ろで一つに束ねられ、いつもは首から掛けている薄く色のついたメガネは、珍しく顔にあった。
実は、ほんの少し前まで、草間の事務所で帳簿整理をしていたのだ。草間は出かけており、事務所には零と二人きりだった。静流からの電話が鳴った時、近くにいたのは彼女の方だったので、受話器を取った。静流とはほとんど初対面だったが、「時空図書館の庭園で、猫探しを手伝ってくれる人を探している」と聞いて承知したのは、以前お茶会に誘われてここへ来たことがあったためでもある。
四阿には、薄紅色の髪と目に、途中から羽根と化した耳を持つ二十五、六歳ぐらいの青年と、彼より幾分年上らしく見える長身の青年、そして市松人形を思わせる黒髪と黒目がちの瞳の中学生ぐらいの少女の三人がいた。
薄紅色の髪と目の青年が、時空図書館の管理人でありこの庭園の主でもある、三月うさぎだった。シュラインは、メガネをはずすと四阿に足を踏み入れ、まず彼に挨拶する。
「こんにちわ、三月うさぎさん。理由はどうあれ、またお会いできてうれしいわ」
「こちらこそ。やっかいをかけますが、よろしくお願いしますよ」
三月うさぎは、穏やかに返して、彼女に静流と少女――小夜子を紹介した。
紹介されて、シュラインは小さく首をかしげる。電話の様子から静流が草間と知り合いらしいとは察していたが、こうして実際に相対してみると、どこか見覚えがあるような気もした。穏やかで優しげな顔立ちといい、均整の取れた長身の体つきといい、群衆に埋没してしまうようなタイプにも見えない。が、会ったことがあるなら、どうしてはっきり覚えていないのだろうと、シュラインは不思議に思う。
（まあいいわ。とにかく、猫を探すのが先決だわ）
胸に呟き、静流とはじめましての挨拶を交わすと、彼女は小夜子をふり返った。視線を、やや低い少女の位置に合わせて尋ねる。
「ええっと……小夜子ちゃんね。私は、シュライン・エマよ。リリーの外見や、好きな場所を教えてくれるかしら」
「リリーは、真っ白で、とても毛が長くて真っ青な目をしているの。首に青い首輪をして、銀の鈴をつけてるわ。好きな場所は……お花の咲いている場所。特に百合が好きなの」
「百合？」
問い返すシュラインに、小夜子はふふっと笑ってうなずいた。
「そう。それも、おかしいのよ。百合の蜜を舐めるの。だから、リリーが百合の傍にいると、たいてい花粉にまみれて顔が黄色くなってるの」
「それで、リリー？」
「そうよ」
小夜子はまた笑って、大きくうなずいた。
「そっか。じゃあ、とりあえず、百合のある場所を中心に探すとして……」
呟きつつシュラインは姿勢を戻して、改めて三月うさぎをふり返った。
「この庭園の、簡単な地理を教えてもらえるとうれしいんだけど」
「百合なら、この庭園の西側に、たくさん植わっていますよ。温室にもいくつかあったはずですが……まずは、西の《白虎園》へ行ってみればどうでしょう？ 道は、彼が知っています。この庭園の他の場所へ行く方法もね」
三月うさぎは、穏やかに微笑んではぐらかすように告げる。シュラインは、相変わらずだと内心に吐息をついて、今度は静流をふり返った。
「すみません。でも、私がこの庭園に詳しいのは本当です。なにしろ、ここへは中学のころから出入りしていますので。……とりあえず、西の《白虎園》へ行ってみましょう」
三月うさぎの態度を彼に代わって詫びた後に言って、静流は立ち上がる。
「お願いするわ」
シュラインはうなずき、励ますように小夜子の背に手をやると、先に立って四阿を出る静流の後に従った。
■《白虎園》にて
静流に案内されて《白虎園》へ向かいながら、シュラインは小夜子にどうしてここへ迷い込んだのかを尋ねた。
以前に聞いた話では、時空図書館は、世界中のどの場所どの時代にも入り口が開いていて、迷い込む人間も数知れないという。だが、この庭園へ直接迷い込む者がいるとは、言っていなかったような気がするのだ。
しかし小夜子は、彼女の問いに小さくかぶりをふった。
「それが……よくわらからないの。リリーは何日か前から姿が見えなくなっていて、とっても心配してたの。でも、私も病気で……探しに行くことができなくて。毎日夢を見たわ。リリーが、たくさん花の咲いている場所で鳴いているの。だから、きっとそこにいるんだと思ってた。今日も、ベッドでその夢とリリーのことを考えてたの。そしたら、気がついたらこの庭園の入り口に立っていたの。真っ直ぐに道が続いていて、歩いていたら、あの噴水のある場所に出て、人がいたから声をかけたのよ」
「そうなの」
うなずきながら、シュラインはかすかに眉をひそめる。小夜子の話は、今一つ要領を得ない。だけでなく、いくつか首をかしげざるを得ないことがあった。
一つは、そもそもこの庭園に「入り口」などというものがあるのかどうかということ。
今回もそうだったが、以前来た時も、カードや本など普通は出入り口とは誰も考えないようなものが、ここや時空図書館への扉となっていた。なので、「気がついたら庭園の中にいた」というのが正しいのであって、「庭園の入り口に立っていた」というのはあり得ないのではないかと彼女には思えたのだ。
もう一つは、静流はともかく、明らかに人間ではない外見――途中から羽根になった耳を持っている三月うさぎを目の前にして、小夜子が驚くことすらしなかったらしいということ。たしかに今の東京には、奇怪な外見の者も多く見受けられるようになったが、かといってそれは、ごく普通の中学生が当たり前のこととして受け入れられるほど、日常的になったわけでもなかった。
（何か、この子も変ね。……でもここは、人間じゃないものは入れないって話だったし……）
軽く眉をひそめたまま、シュラインは胸に呟く。人間以外のものどころか、それに類するものを身に帯びていても、ここのセキュリティに弾かれて意図した場所へ行けないことは、以前実際に目にしていた。
そんなことを考え巡らすうちに、彼女たちは目的の《白虎園》へと到着した。
緑の壁を思わせる生垣と、白い華奢な門によって他と区別されたそこは、名前のとおり、ほぼ白一色に埋め尽くされていた。植わっている花全てが、種類は違うものの白いものばかりなのだ。
さすがのシュラインも、一歩門をくぐった途端に、目を丸くする。
「すごい……！ よくもこんなに白い花ばかりを集めたものね……！」
「きれい……！」
小夜子も同じく、簡単の声を上げた。
「あの人は、妙なところで凝り性ですからね」
静流が、穏やかに笑って答える。そして訊いた。
「さて。ここをどうやって探します？」
「そうね……。百合はどのあたりに？」
少し考えて、シュラインは問い返す。
「けっこうまばらですよ。一つの所にだけ、まとめて植えてあるわけじゃないですから」
「そう……。なら、二手に分かれましょうか。足跡とか、鳴き声とか……そのあたりを手掛かりに、地道に探して行くしかないわ」
静流の言葉に、シュラインは言った。彼もうなずく。そして訊いた。
「時計はお持ちですか？」
「ええ」
「なら、一時間したら、もう一度ここへ集まりましょう。……もし道に迷って自分がどこにいるのかわからなくなったら、大声で私を呼んで下さい。あなたの声なら、ちゃんと届くと思いますから」
穏やかに言う静流に、シュラインはわずかに首をかしげた。どうやら彼は、自分のボイスコントロール能力を知っているらしい。
（武彦さんが、話したのかしら）
不思議に思いつつもうなずいて、彼女は小夜子をふり返った。
「じゃ、小夜子ちゃんは、私と一緒に探しましょうか」
「ええ」
小夜子が、大きくうなずく。
静流と別れてシュラインは小夜子と二人、その場を離れて歩き出した。
《白虎園》の中も、造りはあの四阿のある付近と変わらない。バラや百合、水仙、チューリップや菜の花、コスモスなどなど、現実には咲く季節がバラバラのはずの花々が咲き競う中に、石畳の道が作られていた。むろん、樹木に咲く花もある。木蓮や椿、かきつばた、梅に桜……白い種類のある花ならば、なんでも植えられているようだ。
こんな時でなければ、それらの花々の可憐な姿や香りをゆっくりと楽しみながら散策することもできただろう。だが今は、何より猫である。シュラインは、美しい花々から目をそらし、ひたすら下を向いて歩いた。それも、道の際や木々の根方、花々の間や生垣の隙間などを重点的に見て歩く。猫の足跡を探しているのだ。その際には、棘があって引っかかりやすいバラなどは避けた。リリーがわざわざ、体を傷つける所を通るとは思えなかったからだ。同時に彼女は、常に周囲の音に注意して、その鋭敏な聴力でもって、猫の鳴き声や鈴の音を捉えようとしていた。
小夜子も、彼女に習ってひたすら地面を見ながら歩く。
どれぐらいそうして歩き続けただろうか。驚くほどなんの足跡もなかった地面の上にシュラインは、小さな猫の足跡と思しいものを見つける。シュラインと小夜子は、歓喜に顔を見合わせて、そのままその足跡を追って行った。
しばらく行くと、シュラインの鋭敏な耳に、小さな衣擦れの音が響いて来た。そちらを見やると、翡翠色の髪と目をした優美な女性たちが数人、あたりの花に水をやっている。以前来た時には、お茶の給仕をしてくれた女性たちだと気づき、シュラインはそちらへ歩み寄った。
「このあたりで、白い猫を見かけませんでした？ 目は青で、青い首輪に銀の鈴をつけているそうなんですけど」
問われて女性たちは、声なく顔を見合わせる。が、やがて一人が白い指先で、彼方の一画を示した。
「ありがとうございます」
礼を言い、小夜子を促してシュラインは、女性が示した方へと歩き出す。
しばらく行くと、白い花を満開に咲かせた桜の陰に、温室が見え始めた。
（温室……。本当にあったのね）
思わず胸に呟く。以前三月うさぎがそれについて口にしてはいたが、彼女はその言葉自体が戯言かもしれないと思っていたのだ。
と、風に乗って、温室の付近から猫のかすかな鳴き声がするのが聞こえた。
「猫の鳴き声だわ。急ぎましょ、小夜子ちゃん」
シュラインは小さく目を見張り、小夜子を促す。そのまま二人は、足を早めた。
■白い温室
二人が温室の入り口までたどり着いてみると、そこには静流が立っていた。
「妹尾さん……。どうしてここへ？」
シュラインが、驚いて問う。
「庭園の世話をしている女性たちが、猫の姿を見かけていたので……彼女たちに聞きながら、ここへ。あなたは？」
「猫の足跡を見つけて、それを追って来たわ。ここへ来れたのは、あの女の人たちのおかげだけど」
言ってシュラインは、改めて耳を澄まし、猫の声が聞こえる方向をたしかめた。
「鳴き声、この中からだわ」
「なら、ここにいるんですね」
うなずいて、静流が温室の扉を開けた。鍵などはかかっていないようだ。
中はこれまた白い花が群れをなしている。だが、どことなく熱帯のジャングルを思わせるのは、花や木々の種類が、熱帯に咲くものが多いせいだろうか。
その中を三人は、シュラインを先頭に猫の鳴き声をたどって歩き始めた。
先に進むにつれて、温室の中はうっそうと緑が濃く頭上に生い茂り、更にその中を色鮮やかな蝶や鳥が飛び回って、まさに本物のジャングルの様相を呈した。
「なんだか、ジャングルを冒険している気分になるわね」
鋭い鳥の鳴き声に、思わず足を止めて頭上を見上げながら、シュラインは呟く。タートルネックのセーターを着ていることもあり、額には汗が吹き出していた。彼女は、小さく吐息をついて、それを拭う。
「そうですね。でも、蛇やヒルなんかはいませんから、その点は安心していいですよ」
静流が小さく苦笑して言った。毛織のジャケットとセーターを着ているにも関わらず、こちらは汗一つかいておらず、涼しい顔だ。シュラインは、その彼を少しだけ恨めしげに見やった。
しばらく行くとふいにジャングルは途切れ、ガラス張りの天井を通して頭上からはさんさんとまぶしい太陽の光があたりにふり注ぐ。
そこは、広いテラスになっていて、清らかな水をたたえた人工の泉の傍には、白い丸テーブルと何脚かの椅子が用意され、そこで温かな日射しを浴びながらくつろげるようになっていた。
猫の声は、その人工の泉の付近から聞こえている。今度は、シュラインだけでなく、小夜子にも静流にも聞こえた。
「りりー！」
最初に猫の姿を発見したのは、小夜子だった。叫んで、泉の向こう岸へと走り出す。
「あ……小夜子ちゃん！」
慌てて、シュラインと静流も後を追った。
猫は、泉の向こう岸の小さな大理石の女神像の傍の、百合が群生している所にいた。丸い石の上に、白い猫はまるで置物のように座して、鳴いている。
「リリー」
駆け寄った小夜子が腕を伸ばすと、猫は一声鳴いて、大人しくその腕に抱かれた。小夜子は大事そうに猫を抱きしめ、その毛皮に頬擦りする。
「リリー。やっと会えた。よかった……」
呟くように言う小夜子の体がゆっくりと透き通り始めた。
「小夜子ちゃん？」
シュラインが、目をしばたたかせる。それへ向かって、小夜子はふり返り、微笑んだ。
「リリーを探してくれて、ありがとう……」
唇が小さく動いて、囁くような言葉が紡ぎ出される。そのまま彼女の姿は、光に溶けるようにして、かき消えた。同時に、鋭い鈴の音が響く。ハッとしてシュラインが見やると、たった今まで小夜子のいたあたりに、小さな銀の鈴が一つころがっていた。
呆然とそれを見詰めるシュラインの傍で、静流がそちらへ歩み寄ると身を屈め、その鈴を拾い上げた。
「やはり、小夜子さんは人間ではなかったようですね」
「どういうこと？」
低い彼の呟きに、シュラインは尋ねる。
「この庭園に直接入ることができるのは動物か、管理人――庭園の主である三月うさぎが呼んだ人間だけなんです」
鈴を手にして身を起こし、静流は淡々と言った。
「この庭園に、図書館からではなく直接、そして管理人の許可なく入れるのは、純粋な魂を持つものだけ――言い換えれば、本能に忠実に、自然に生きているものだけということです。だから、猫であるリリーはここへ入り込むことができました。そして小夜子さんは……おそらく、『小夜子』という少女のリリーを案じて探すその想いが形を取ったものだったのでしょう」
「想いが形を取ったもの……」
呟いて、シュラインはふいにハッとして顔を上げる。
「まさか、じゃああの子はもう……」
「この世の人ではない可能性は、高いですね。……リリーの方も、たぶん……」
静流は言いさして、猫がいた百合の群生のあたりに視線を巡らせた。シュラインも、それを追って、顔を巡らす。そこにはもう、小さな白い動物がいたという痕跡は、何一つなかった。だが、猫はその死を誰にも見せないと聞いたことがある。もしかしたら、死期を悟ったリリーは死に場所を求めてここに迷い込み、そのまま好きな百合の群生するあの場所で、死を迎えたのかもしれないと、シュラインはふと思った。
「行くべき所に行けたのかしら。小夜子ちゃんとリリー」
彼女は、呟くように言う。
「ええ、きっと」
うなずいて、静流は彼女に持っていた銀の鈴を示した。
「これ、どうします？」
「そうね。記念にいただいてもいいかしら。それとも、ここから持ち出したら、消えてしまうのかしら？」
「それはわかりませんが」
言って彼は、シュラインの手を取って、鈴を彼女の手のひらの上に置いた。
「さて。管理人の所に戻りましょうか。歩き回って、喉が乾いているでしょう？ 手伝っていただいたお礼に、お茶をごちそうします」
静流の言葉に、シュラインは破顔した。ここのお茶が絶品なのは、すでに彼女も承知している。実際、喉も乾いていたし、それは何よりうれしい申し出だった。
素直にうなずくシュラインに笑い返して、静流は先に立ち、歩き出した。
■エンディング
シュラインが草間興信所に戻った時には、すでにあたりは暗くなっていた。
以前もそうだったが、あの庭園では時間の観念がなくなってしまう。あたりの景色がほとんど変化しないこともあるが、あそこで出されるお茶やお菓子はどれも絶品で、その味わいに時の経つのも忘れてしまうというのが本当のところだ。
パンツのポケットの中に手を入れると、小さな丸い感触があって、ちりりと音が鳴る。取り出したそれは、あの温室の中で拾ったリリーの鈴だった。それは、庭園を後にしても消えてなくなりはしなかったのだ。
手のひらの上でそっとそれをころがし、シュラインは小さく微笑む。そして思った。きっと自分は、これを見るたびに、百合の好きな青い目をした白い猫と、その飼い主の愛らしい少女のことを思い出すだろうと――。
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号 ／ ＰＣ名 ／ 性別 ／ 年齢 ／ 職業】
【００８６ ／シュライン・エマ ／女性 ／２６歳 ／翻訳家＆幽霊作家＋草間興信所事務員】
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■ ライター通信 ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
●シュライン・エマさま
ライターの織人文です。
いつも依頼に参加いただき、ありがとうございます。
「異界」登録を見て窓口が開くのを待っていて下さったご様子で、
とてもうれしいです。
今回は、こんなふうにまとめてみましたが、いかがだったでしょうか。
少しでも楽しんでいただければ、幸いです。
どうぞ、これからもよろしくお願いします。
|
|
 |
